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海水はほぼ無制限量の重要な電池材料を提供する可能性がある

Seawater Could Provide Nearly Unlimited Amounts of Critical Battery Material

By Robert F. Service

Science, Jul 13, 2020

 

 電気自動車の販売が急増していることからリチウムの需要が高まっている。しかし、充電式電池の製造に欠かせない軽金属は豊富ではない。現在、研究者達は事実上無制限量のリチウム供給を利用することに向けた大きな一歩を報告している。それは海水から直接的に抽出することである。

 ソウル国立大学の化学技術者で、この研究に関与していなかったJang Wook Choiは「これはこの分野にとって大きな進歩を意味する。」と述べている。このアプローチが使用済み電池からリチウムを回収するのに役立つかもしれない、と付け加えた。

 リチウムは他の電池材料よりも重量でより多くのエネルギーを蓄えるため充電式で高く評価されている。製造者は毎年160,000トン以上の材料を使っており、数量は今後の10年でほぼ10倍以上になる予測されている。しかし、リチウム供給は限られ、金属は採鉱またはかん水からの抽出されている一握りの国に集中している。リチウム不足により将来のふそくにより電池価格が高騰し、電気自動車や屋上太陽光発電の貯蔵によく使用されている固定電池であるテスラ・パワーウオールなどの他のリチウム依存技術の成長が妨げられる可能性があるという懸案が高まっている。

 海水が救助に来る可能性がある。世界の海には推定1,800億トンのリチウムが含まれている。しかし、非常に薄く、ほぼ0.2 ppmでしか存在しない。研究者達は海水からリチウムを選択的に抽出するために数多くのフィルターと膜を考案した。しかし、これらの取り組みはリチウムを濃縮するために水の多くを蒸発させることに依存しており、これには膨大な土地利用と時間が必要である。今日までその様な努力は経済的であると証明されていない。

 Choiと他の研究者達はリチウム・イオン電池の電極を使用して最初に水を蒸発させることなく、リチウムを海水や塩水から直接的に引き出すことも試みた。それらの電極は電池の充電時にリチウム・イオンをトラップして保持するように設計されたサンドイッチ状の層状材料で構成されている。海水中でリチウムを補足する電極に負の電圧を印加すると、リチウム・イオンが電極に引き込まれる。しかし、またリチウムの約100,000倍も海水に豊富に含まれる化学的に 類似した元素であるナトリウムも取り込む。2つの元素が同じ速度で電極に取り込まれると、ナトリウムはリチウムをほぼ完全に押し出す。

 この問題を回避するために、スタンフォード大学の材料科学者であるYi Cuiが率いる研究者達は、電池材料をより選択的にする方法を探した。最初に彼等はバリアーとして二酸化チタンの薄層で電極をコーティングした。リチウム・イオンはナトリウム・イオンよりも小さいため、電極サンドイッチをくねくねと通りやすくなる。研究者達はまた、電圧を制御する方法を変更した。他の人が行ったように電極に一定の負の電圧を印加する代わりに、彼等はそれを循環させた。最初に彼等は負の電圧を印加し、次にそれを一時的にオフにした。次に彼等は正の電圧を印加し、それを再びオフにしてサイクルを繰り返した。

 電圧の変化により、リチウム・イオンとナトリウム・イオンが電極に移動し、停止し、電流が逆になると元に戻りは始める。しかし、電極材料はナトリウムよりもリチウムに対してわずかに高い親和性を持っているため、リチウム・イオンが最初に電極に移動し、最後に離れる。したがって、このサイクルを繰り返すと、リチウムが電極に集中する。このようなサイクルを10回した後、わずか数分でCuiらはリチウムとナトリウムの比率が11になると、Jouleに今月報告している。

 「少なくとも選択性は2倍になる。」と以前はCui研究室でポスドクを務めていたシカゴ大学の材料科学者であるChong Liuはリチウムを採取するために電池電極を使用する以前の試みと比較して述べている。Liuによると、この進歩は陸上でリチウム採掘と競争するのに十分なほど安くはないだろう。しかし、彼女のグループは他のタイプのリチウム・イオン電池電極を使用して選択性を高めようとしている、と彼女は言っている。このアプローチは廃棄された電池からリチウムを回収し、金属に2回目の寿命を与え、電気自動車の優位性を過給する可能性があることにも役立つ可能性がある、とChoiは付け加えている。