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高塩食は感染症を阻止するか?  

Does High-Salt Diet Combat Infections?

By Kate Wheeling

Science  2015.03.03

 

多すぎる塩摂取量は健康に良くないというのがこれまでの知識である。高塩食は高血圧、心臓血管疾患、自己免疫不全とも関係していた。しかし、新しい研究は、塩摂取量が免疫向上効果も持っていることを示している。皮膚の高い塩濃度はネズミが細菌と戦って繁殖を防ぐのに役立っており、ヒトでも感染場所に塩を蓄積するらしいことを研究者達は報告している。

“塩の蓄積は宿主防衛を引き出すと言う考えは非常に興味深い。その代わり考えは非常に新しいので受け入れがたい。免疫研究社会がこの考えが受け入れるためには時間を要すると私は思う。”とセントルイスにあるワシントン大学の免疫学者であるグエン・ランドルフは言っている。彼は研究に参加していなかった。

大量の塩を摂取した時、皮膚の結合組織がナトリウム・イオンの貯蔵器として働くことを科学者達はごく最近学んだ。ナッシュビルにあるバンダービルト大学医学部の臨床薬理学者で研究論文の筆頭者であるジェンス・タイツはネズミで塩摂取量を研究し、低塩摂取量のネズミでも化膿した皮膚では通常高い塩濃度であることに気付いた。感染症と戦うために化膿した皮膚に到達する免疫細胞は塩辛い環境に入ることをタイツと同僚達は理解した。体は侵入者に対して守るために感染した皮膚に塩を送り込む、と彼等は仮説を立てた。言い換えれば、“我々は自己を守るために細胞を塩漬けにしている、”とドイツにあるレーゲンスブルグ大学の微生物学者ジョナサン・ジャンシュは言っている。彼は研究の筆頭者で、Cell Metabolismの今月号に掲載されている。

 余分な塩化ナトリウムの全てが免疫に有害か、役立つのかを明らかにするために、研究者達は侵入してくる病原体を飲み込み消化する免疫細胞であるマクロファージを研究し始めた。活性化されたマクロファージは反応性酸素種と呼ばれる微生物殺害分子を放出して侵入者を殺し、高い塩濃度はこれらの化合物を生産させるように免疫細胞の引金を引くのではないかとチームは考えた。チームはネズミからのマクロファージを培養し、シャーレに塩を散布して、ネズミの感染した皮膚で観察した同じ塩化ナトリウム濃度で細胞の増殖を観察した。塩は免疫細胞の微生物殺傷能力を増加させた、とチームは報告している:高濃度の塩化ナトリウムに晒されたマクロファージは、塩のない培地で増殖した微生物よりも有意に多くの微生物殺傷分子を放出した。次にチームはマクロファージを通常の病原体であるEscherichia coliまたはLeishmania majorで感染させた。24時間後、高濃度の塩化ナトリウムに晒されたマクロファージ中のE. coli負荷は、塩がなくて培養されたマクロファージの病原能力を半分以下にし、L. major感染も同様に低下した。

 塩摂取量の増加が生きているネズミの免疫防御力を強化するかどうかを調べるために、研究者達は2週間、片方のグループのネズミに高塩食を与え、他のグループには低塩食を与えて、その後、ネズミの足裏の皮膚にL. majorを感染させた。20日間の追跡中、両グループのネズミは食事に関係なく、感染させた時のように足裏にかなりの腫れを示した。しかし、その期間後に高塩食のネズミは低塩食グループよりも足の傷を癒し、菌の増殖を抑える改善効果を示した

 “極端な塩摂取量は感染した皮膚に余分な塩を集め、実験的に免疫防御力を向上させることを実験は示している、”とジャンシュは言っている

 ヒトでは塩の蓄積が感染場所に限られているらしいエビデンスをグループは知った。皮膚のナトリウムを測定する新しいMRI技術を使って、高塩食を食べた人々の細菌で感染した皮膚には通常、高濃度の塩が蓄積されることをチームは知った。

 同時に、ネズミとヒトは両方とも免疫防御力に塩で後押しされた利益があるらしいことをグループの結果は示している。しかし、フライドポテトにまだ塩を振りかけ始めてはいけない。“この研究から塩を減らしたくないと思っている一つの事は、免疫力を強化するためにもっと塩を食べることが公認されることだ、”とランドルフは言う。抗生物質が現れるまで、または心臓血管疾患を発症させるまで十分長生きする前は、高塩食は我々の祖先で感染症と戦う有力な方法であったかもしれない。しかし今日では、ジャンシュによると高塩食の有害な効果は潜在的な免疫恩恵より優っている。塩辛い静脈内注射、創傷用ゲル、包帯等で組織を治療して体の外から感染した皮膚の塩濃度を上げることがより現実的な可能性のある適用法である、と彼は言う。

 そのような治療法を可能とする前にはさらなる研究が必要であるが、“この比較的簡単な機構が免疫を強化させる、または促進させることが出来るらしいと言う可能性を結果は高める。その観点から非常に刺激的である。”とノースカロライナ州ダーラムのデューク大学医療センターの腎臓病学者トーマス・コフマンは言っている。