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塩をよこさないで

Don’t Pass on the Salt

塩がニュースに帰って来た。減塩しなさい、といわゆる専門家達は派手に書き立てる。しかし、ちょっと待って。何十年間も科学は、少ない塩の摂取量は多過ぎる摂取量よりもずっと体に悪いことを示している。

By Michael S. Fenster

Pacific Standard May 23, 2013

 

 

 無塩、低塩、塩を含まない、心臓に良い塩代替物-何らかの加えられた塩は体質を損なうだろう。それは何とも奇怪なスーシアン物語のように読める。我々がそれを適任のガイセル博士からではなく医学界でから聞いたことを除いて、公衆保健当局はどこでも主張している。名声のあるシェフが“健康に良く改善された”料理を作る時に塩を除いて調理することに挑戦してきたことを我々は見ている。自称“専門家達”が我々に減塩するように要請し、上手く説得し、丸め込んでいる。減塩しなければ、心臓発作や脳卒中の亡霊が我々に良い手段として地獄の責め苦の贈り物と一緒に襲い掛かる。結局、それは明らかに我々一番の個人的な関心とより大きな公益である。

 仮説は健全で、裏付けデータは完全である、本当か?

 その理論は次のようである:塩は我々の体液を維持させるように作用する。より多くの体液を保持すると、血圧は(たとえ一時的でも)上昇する。上昇した血圧は高血圧である。高血圧は心臓発作や脳卒中のように心血管疾患の危険因子である。心臓発作や脳卒中は危険である。したがって、高血圧は危険である。つまり、塩は悪いに違いない。;Cの原因となるBAの原因となる。したがって、ACの原因となる。Aを除けば、Cを除ける-単なる基本的な数学である、間違っているか?減塩すれば血圧が下がり、そのため、脳卒中や心臓発作の発症率を下げる。減塩することは良いことである-簡単で、効果的で、紛れもない今日の一般的で習慣的な知恵である。

 

研究者達はほぼ8年間3,500人の参加者を追跡してきた。驚いたことに、塩摂取量の少ない人は最高の死亡危険率で、多い人は最低の死亡率であった。

 

ただし…一つの事が欠けている。

 決定的なデータ-あるいは減塩が死亡率を減らす、または有意に心血管疾患罹患率を減らすことを決定的に示す何らかのデータ。1960年代に始まって半世紀以上もの間、この問題の両側にいる尊敬されている科学者を含めた公聴会で激しい辛辣な論争が行われてきた。しかし、公衆保健利益を仮定して減塩する積極的な公共政策が現れ、減塩食の悪い結果を示唆する研究が現れると、論争騒ぎが一段と熱気を帯びている。

 塩の関する公共政策は1977年まで遡る。当時、上院議員ジョージ・マクガバーンがアメリカ合衆国の食事目標を発表した。最初の国家塩目標量を導入した報告書である。これは3 g/dを設定した。高血圧を引き起こすとした前述の理論は摂取量データに基づいて直ちに科学的事実または都市伝説となった。10年後に発表された公衆衛生局長官報告書はこの論争に焦点を当てた。低塩食が血圧上昇を阻止するらしいことを証明した研究がない中で減塩政策は実行されてきたことを報告書は認めていた。80年代を通して決定的な答えは分からなままであった。

 1948年以来マサチューセッツ州フラミンガムのアメリカ人コホ-トを追跡した基本的な試験であるフラミンガム心臓研究は心血管危険率、疾患率、死亡率に多くの画期的な眼識を得てきた。しかし、研究は塩摂取量と血圧との間に何の相関関係も見出せなかった。日系の男子8,000人以上の1985年の別の研究は塩摂取量と脳卒中との間に何の関係も見出せなかった。地球を半周したスコットランドの男子7,000人以上で研究されたが、“塩摂取量と血圧との関係は極めて弱い”との結論であった。1990年に、食品医薬品局の栄養部長はAssociated Pressの論文で“塩摂取量は高血圧の原因となると言う決定的なエビデンスはなく、それは仮説にすぎない、”と述べた。

 この結論がないにもかかわらず、公式なニューヨーク市ウェブサイトによると、2008年にミカエル・ブルーンバーグの下で、“ニューヨーク市保健精神衛生部は国民減塩イニシアチブの発進、85州以上と地方の保健当局との公私共同、包装食品やレストラン食の塩含有量を下げる自主的な目標を設定した国立保健機関を統合した。”2年後の2010年に、医学研究所は報告書で減塩法を勧めた。重要な疑問であった減塩が何らかの利益があるかどうかを評価しないで、そのグループは減塩戦略を発展させるように要請されてきた。研究所の行動計画は、塩摂取量の増加は重要な害を引き起こすと言う仮定に基づいていた。この報告書に基づくと、アメリカ心臓協会を含む他の専門機関に加えて疾患管理予防センター長であるトーマス・フリーデンは減塩を目標としたミリオン・ハーツ・イニシアチブのような全国キャンペーンを前進させてきた。このような計画は投資に対するリターンについて確かなエビデンスがあるにもかかわらず、20%減塩することを目標としている。

 2011年に、塩に関して行われた研究の厳密な科学的レビューに関与している何人かの専門家達は、“多くの国々が無批判に減塩を採用しており、それは予防医学の歴史で多分、最大の思い違いであることには驚いている”と述べた。この注意の呼び掛けにも関わらず、“世界、国、地方レベルの公衆保健勧告は、減塩すべきであるエビデンスは議論の余地がないほど明白であるとの主張でほとんど満場一致である。”

 主張の最重要点には二つの基本的な疑問がある:

  低塩食は高血圧を予防するか?

  人口レベルの減塩は命を救うか?

これらの疑問に答えるにはエビデンスに基づいたアプローチが必要である。現在のエビデンスの水準が十分であると感じている人々は、もっとデータを集めるにはもっと時間と金を必要とし、命をかけることもあると主張する。しかし、過去45年間で、塩摂取量は上昇してきたが、心疾患による死亡は減少し続けていることに気付くべきである。エビデンスに基づいた手段を成功裏に実行するための鍵となるツールは、個々の小規模な研究で明らかになっていないかもしれない効果を明らかにするためのメタアナリシスや偏向を除くのに役立てるためにランダム化比較試験の使用を含めることである。

 塩を含む最初のメタアナリシスは1986年に行われた。減塩は特に前高血圧者では血圧を下げるかもしれないが、その効果は極めて小さいことが分かった。その後のメタアナリシスは同様の結果を述べた。

 減塩主張達は、“ガイダンスは一番利用できるエビデンスに基づいている”と信じている、とイギリスの国立健康・臨床研究所の所長であるミカエル・ローリンズ卿は述べている。“しかし、エビデンスはあまり良くなく、不完全であるかもしれない。”

 減塩についてのこれらの提案者達も、低塩食に対する結果はないことを仮定している。これは真実でないかもしれない;ある程度の量の塩は声明に必要である。低塩食はいくつかのネガティブな効果が知られている。食事で塩をかなり減らすことは腎臓からのレニン分泌を増加させる。レニンは高血圧発症と関係しており、心血管罹患や死亡の増加に寄与している。減塩はまた副腎からのアルドステロン分泌、交感神経活性、インシュリン抵抗(二型糖尿病と関係している状態)を増加させる。

 これは全て理論的ではない。2011年に、高血圧遺伝子に関するヨーロッパ・プロジェクト(EPOGH)研究者達が行った研究は、減塩が多くの心血管疾患の罹患を減らすことを確認しようと努めた。彼等はほとんど8年間3,500人以上の参加者を追跡した。驚いたことに、あまり塩を摂取しなかった人々は最高の死亡危険率であり、最も塩摂取量の多かった人々は最低の死亡率であった。

 カナダのマックマスタ―大学グループによって同じ年にもっと大規模な研究が行われ、アメリカ医学協会誌に発表された。30,000人以上が約4年間追跡された。研究者達は低塩摂取量(5.8 g/d以下)、中程度塩摂取量(5.8 – 17.8 g/d)、高塩摂取量(17.8 g/d以上)を調べた。中程度塩摂取量グループ(平均的なアメリカ人の8.6 g/dを反映している)は最低の心血管疾患罹患と死亡の危険率であった。低塩摂取量は心血管疾患による死亡の危険率増加と心不全による入院の危険率増加に関係していた。さらに、低塩摂取量グループはコレステロール量に2.5%の増加、トリグリセライド量に7%の増加を示し、他のグループでは変化はなかった。

 さらに、167件の小規模研究を調べた他のメタアナリシスは同様の結論を導き出した。研究論文の著者であるデンマークのコペンハーゲン大学病院のニールス・グラウダルは“全てのエビデンスをあなたが見たとしても、全人口で減塩に利益があると信じる何らかの理由があるとは私は本当に見られなかった。”と結論を下した。

 

“多くの国々が無批判に減塩を採用したことは驚くべきことで、そのことは予防医学の歴史で最大の思い違いである。”

 最後に2件のコクラン報告書を考えてみよう。それらはメタアナリシスとランダム化比較試験から成っており、利用できるデータのレビューを提供するさいのゴールド・スタンダードと考えられている。2011年に発表された最初の報告書は高血圧でない人々に焦点を置いていた。減塩が全ての死因による死亡率を減らす“強いエビデンスはない”ことが分かった。同じ年に発表された二番目のレビューも高血圧出ない人々を調査した。その報告書は、低塩食が健康を改善するか、または悪くするかのどちらかを決定できなかったと結論を下した。しかし、“150件以上のランダム化比較試験と減塩が好ましいと言う明らかな信号のない13件の研究後に、別の立場の人々は、そのような信号は存在しないかもしれないことを受け入れられるようになった。”

 我々が学んでいることは、鍵は塩の絶対量にあるのではなく、ナトリウムとカリウムとの比にあり、その目標は1以下の比を達成することである。健康利益は減塩の結果であるとの仮説に代わることはカリウム摂取量の増加によって良い結果が生ずるとの考えである。ナトリウムとカリウムは自然なバランス状態で体内に存在し、カリウムはしばしば塩代替物、新鮮な果物、野菜、豆類、サーモン、鶏肉の成分である。しかし、加工処理はNa/K比に影響を及ぼす。

 例えば、新鮮な豚肉100 gはほぼ60 mgのナトリウムと約340 mgのカリウムを含んでいる。しかし、それを工業的に平均的なハムに加工すると、ナトリウムは920 mgに上昇し、カリウムはわずかに240 mgとなる。

 スェーデンの研究はほとんど270,000人からのデータを調べた前の10件の試験を調査した。カリウム摂取量が高いほど、脳卒中危険率は低くなることを研究は明らかにした。第三回国民保健栄養試験調査(NHANES III)の一部を含む他の研究は12,000人以上を調査し、15年間で最高の心血管疾患危険率のグループは食事で非常に高いNa/K比であったことを明らかにした。

 これは引き続き厳しい調査分野である。

 

我々が知っていることは?

 医学療法による高血圧の治療は命を救い、心血管疾患や合併症を減らすことを我々は知っている。我々は生きるために塩を必要とすることを知っている;我々の身体の70%は塩水である。体内ではナトリウムはカリウムとのバランスで存在していることも我々は知っている。カリウムは適正な機能のために必要な他の元素で、特に心血管の視点から重要である。ほとんどの正常血圧者にとって塩摂取量は大きな問題なしに日々大きく変化していることを我々は知っている;塩摂取量を5倍にしても血圧に悪い影響を及ぼさない。地球上で最も長寿の人々(そしていくつかの理由で最も健康である)は日本人で、日本人は平均的なアメリカ人(過去30年間以上、塩摂取量は変わらなかった)2 – 3倍の塩を日常的に摂取している。血圧に及ぼす減塩の効果は、あるとしても極端にささやかであるらしいことを我々は知っている。そして、かなりな減塩は潜在的に他の悪い健康結果をもたらすことを我々はしっている。

 減塩が健康に利益をもたらすかどうかを我々は知らない。食品中の塩含有量を減らした結果を我々は知らない。1970年代にアメリカで脂肪摂取量を減らすための運動が始められた。運動が進められて、飽和脂肪酸でもアメリカ食の脂肪パーセントは下がり続けた。しかし、人々はもっと多く食べており、そのことは肥満や糖尿病が上昇している理由を説明している。添加または削除のどちらかで系を操作することはある程度、意図しない結果の法則-多分、悪い結果を伴う-に訴えている。閉経後の婦人のためのホルモン置換療法は、これらのホルモンが血圧やコレステロール量に及ぼす望ましい効果の外挿に基づいていた。この治療法と関係している心臓発作、肺ガン、脳卒中の危険率増加のためともはや日常的に言えない。

 我々は悪い政策を特に、実行時に本当に良い意図(と科学的無知)が生まれてくれば、単純に責められない。科学に似て政策は人類の範囲であり、したがって、我々固有の傷と痛みを伴う問題である。しかし、良い科学が深刻な懸念を生み出してきたとき、何より重要な公共政策を実行することは公的な愚行に従事することである。