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塩コーティングは不活性膜を機能化して感染性呼吸器疾患に対する高性能フィルターにする

Salt Coatings Functionalize Inert Membranes into High-Performing Filters against Infectious Respiratory Diseases

By Ilaria Rubino, Euna Oh, Sumin Han, Sana Kaleem, Alex Hornig, Su-Hwa Lee,

Hae-Ji Kang, Dong-Hun Lee, Ki-Back Chu, Surjth Kumaran, Sarah Armstrong, Romani Lalani, Shivanjali Choudhry, Chun Il Kim, Fu-Shi Quan,

Byeoghwa Jeon & Hyo-Jick Choi

Nature 2020.08.17

 

要約

 例えば、COVID-19パンデミックによって強調されているように、呼吸器の保護は空中感染症の感染予防の鍵である。従来の技術にはいくつかの欠点がある(例えば、交差感染リスク、呼吸困難によって制限されるろ過効率の改善、そして安全に再利用できない)、つまり単一の器機にはまだ取り組まれてこなかった。ここで、我々は呼吸保護装置の大きな技術的挑戦に打ち勝つフィルターの開発を報告する。高い通気性を提供するが細菌の捕獲は少ない大きな孔のある膜は繊維上に均一な塩の層を持たせて機能化された。塩で機能化された膜は通常の膜とは対照的に高いろ過効率を達成した。高い通気性を維持しながら最大48%の差があった (テストされた最も厚い塩フィルターでも、市販の外科用マスクと比較して60%以上増加)。塩で機能化されたフィルターは試験管内で空気中のグラム陽性菌とグラム陰性菌を素早く殺し、5分以内と言う早さでコロニー数の減少があり、生体内で塩の再結晶により構造的な損傷を被った。塩のコーティングは過酷な環境条件(37℃で相対湿度70%、80%そして90)で病原体の不活性能力を保持していた。1枚のフィルターでこれらの特性の組合せは世界的に感染伝播を包括的に軽減して効果的な装置の生産を導くだろう。

 

はじめに

 細菌やウイルスを含めて大気中の病原体は液滴の形(5μm以上)またはエアロゾル(5μm以下)で環境中にある。長い移動距離とエアロゾルの呼吸性のため、大気中の移動は容易に起こる。それとして、呼吸保護対策が医療現場、集会場(例えば、刑務所、軍の兵舎、ホームレス避難所、難民キャンプ、寮、そして看護施設)、家庭(家族や介護者を含む)、そしてパンデミックまたはエピデミック発生の場合で不可欠な最初の防衛線である。WHIOや科学界は感染症を止め、次の疾患発生に備えることの緊急性を強調しており、COVID-19のような新しいパンデミック株が出現し、効果的で直ぐに利用できる感染管理対策の開発が医療の主要な課題として認識されている。

 特に医療施設でKlebsiella pneumoniae (K. pneumoniae), Staphylococcus aureus (S. aureus), Pseudomonas aeruginosa (P. aeruginosa), Streptococcus pyogenes (S. pyogenes) and Escherichia coli (E. coli) を含む細菌は院内(病因関連)感染の主な原因である。細菌は、手術室、廊下、集中治療と廃棄物容器、火傷と整形外科装置のような場所で空気を通して感染できる。Nosocomial K. pneumoniae 感染は50%という高い死亡率で、さらに、WHOは、第Ⅲ世代のセファロスポリンとカルバペネムに対する世界的な耐性をそれぞれ30 – 60%と最大50%の症例で報告している。大気を通して感染できるMethicillin-resistant S. aureus (MRSA)は院内感染のもう一つの病原体であり、世界中で黄色ブドウ球菌の院内感染の20%から80%を超えている。

 医療で最も一般的に使われている呼吸保護装置はN95マスクであり、それはエアロゾルを捕獲できるように設計されている。手術中に大きな液滴をブロックするために一般的に使用されている外科用マスクは歴史的に生物エアロゾルに対して利用されてきた。外科用マスクは不適切な使用にもかかわらず、ごく最近の発生中に全社会でこの目的のために使われ続けてきたように思う。これは高い有効性、手頃な価格、快適さによる。人工呼吸装置やマスクは生物エアロゾルに対する防護で重要な役割を演ずるが、それらはフィルターの4つの主要な技術的問題によって制限される:(i) 交差感染、(ii) ろ過効率、(iii) 通気性、そして(iv) 再使用性である。人工呼吸装置/マスクが生物エアロゾルを捕獲するとき、それらは汚染され、フィルターの表面上で病原体は生きている。これは着用者と彼等が接触する人々に脅威をもたらす。それらは容易に感染源となるので、市販のマスクは一回の使用に限られる。さらに伝統的な技術で、ろ過効率を上げると、フィルター全体の圧力損失が大きくなり、息苦しい結果となる。通気性の低下を克服できるフィルターの生産に向けて幾つかの努力が行われてきた。しかし、これらの方法はフィルター上に捕獲された病原体の生存から生ずる危険性に対処できない。

 我々は、従来の呼吸保護装置では対処できない全ての主要な技術的課題を同時に解決する技術の開発を構想した。我々が開発した機構は塩が着いた大きな孔(60μm)のある膜のポリプロピレン繊維を機能化することである。大孔膜は市販のマスクと比較して通気性が高いが、病原体のろ過機能はない。我々が仮定していることは、塩コーティングは(i) 通気性のある膜のろ過効率を高め、活発なろ過装置に変える、そして(ii) 細菌を不活性化する。我々の前の報告は、塩化ナトリウム()で外科用マスクのフィルターをコーティングすることは多数のインフルエンザウイルス株を殺し;さらに、通常の外科用マスクフィルターと比較してNaCl-コーティング・フィルター上のウイルス・エアロゾルのろ過効率でかなりの増加が観察されたことを示した。この研究で、機能を持たない大孔の膜は3種類の塩類[NaCl、硫酸カリウム(K2SO4)と塩化カリウム(KCl)]でコーティングされた。我々は、塩機能化が大孔の膜のろ過効率を大きく増加させ、同時に圧力低下をほとんど起こさなかったことを示している。提案されたろ過機構は本質的に非機械的で、これは、層数の増加に対するろ過効率の鈍感さと、大孔フィルターメッシュでも塩で機能化されたフィルターのトップ層(エアロゾルと作用し合う最初の層)の高いろ過効率によって証明されている。さらに、塩で機能化されたフィルターをウイルスのあるエアロゾルに曝したときの塩の再結晶が菌株(K. pneumoniae, MRSA, P. aeruginosa, S. pyogenes and E. coli ) とは無関係に細菌の物理的損傷を引き起こし、それらを不活性にする。そとして、我々は、広範な技術努力なしに製造され、迅速な一般的な病原体の不活性化、高いろ過効率、高い通気性、安全な再使用を全て1つのマスクで実現する多様な呼吸保護システムを報告する。

 

結果と考察

塩コーティングされたフィルターの生産と特性

細菌エアロゾルに対するろ過効率

塩コーティングされたフィルターの圧力低下

塩コーティングされたフィルター上のK. pneumoniaeの不活性と生体内での保護効果

塩コーティングされたフィルター上の菌株に無関係な細菌の不活性化

過酷な環境条件への塩コーティングの暴露

以上の項目は省略

 

結論

 要約すると、大孔膜の塩機能化技術に基づいて通常のマスクと比較して高いろ過性能と改善された通気性を持った抗微生物性呼吸保護システムを開発した。異なった塩類でコーティングされたフィルターはコーティングされていない膜よりもより多くの病原体を捕獲でき、非機能システムを機能性のある呼吸保護ユニットに変えた。本研究でテストされた感染性を持ったエアロゾルは小さな粒径(2.5 – 4μm)であるので、大きな液滴を介した感染の原因となる大きな粒子に対しても高いろ過効率が期待できる。さらに、市販マスクのフィルターは溶融吹き込み法によって生産される;より安価な不織布性の大孔ポリプロピレン膜を塩コーティングと最終的なマスク設計の制御により機能性フィルターに変え、マスクの製造費を下げる。同時に、ろ過効率の増加は伝統的な技術では達成されなかった大孔膜の通気性の低下の原因にはならない。短時間でグラム陽性菌とグラム陰性菌の両方を物理的に無毒にする自然な塩再結晶のために、塩コーティングされたフィルターは幅広い細菌に対する防護を提供している。これは交差感染の危険性をなくし、さらに加工することなく装置を安全に再使用でき、微生物学的危険性のある廃棄物の量を減らし、急激な感染中に人工呼吸装置の短所による危険性をなくする。さらに、塩コーティングは高温、高湿度に長く曝され続けるフィルター上で安定したままであった。これはフィルターの再使用を保証すると同時に、使用または保管の様々な環境条件で完全な防護を提供する。結局、我々の技術は高いろ過性能と通気性能を持った呼吸保護装置を製造するために使えることを結果は示している。特に塩による簡単でコスト効果のある機能化工程は単一のシステムで呼吸保護装置の全ての主要な技術的課題に対処しており、建築物や病院のフィルターで既に使われている他の装置にも直ちに応用される。この包括的な技術はエピデミックやCOVID-19の場合のパンデミックへの強化されたタイムリーな対応につながり、世界的に疾患を防ぐための安全で効果的な解決策を提供する。

 

方法

フィルターの準備

細菌培養

ろ過効率テスト

圧力低下テスト

生体外のフィルター上の細菌安定性変化のテスト

生体内のフィルター上の細菌安定性変化のテスト

様々な環境条件でのフィルター性能

電子顕微鏡解析

統計解析

以上の項目は省略