最近の進歩と展望:低温で使用されるナトリウム・イオン電池
Recent Progress and Perspective: Na Ion Batteries Used at Low Temperatures
By Peiyuan Li, Naiqi Hu, Jiayao Wang, Shuchan Wang, and Wenwen Deng
Nanomaterials 2022;12:3529 2022.10.09
要約
電力の急速な発展により、レアメタル材料であるリチウム材料は50年後には使い尽くされていると言われている。ナトリウムは、周期表のリチウムと同じ主族に属し、地球の表面に豊富に存在する。しかし、ナトリウム・イオン電池の研究においては、その低温性能に依然として課題が残されている。その影響要因には主に、陽極材料、陰極材料、電解質の3つの部分が含まれる。本論文で説明しているように、陰極には、プルシアン・ブルーおよびプルシアン・ブルー類似物、層状酸化物、および4つの部分に分かれたポリアニオン型陰極がある。しかし、陰極には、硬質炭素、アモルファス・セレン、金属セレン化物、およびNaTi2(PO4)3陰極がある。次に、電解質を4つの部分に分ける。有機電解質、イオン液体電解質、水性電解質、そして固体電解質である。ここでは、より低い温度で充放電の比容量が高い電極材料を見つけることを目指している。一方、高電位の陽極材料や低電位の陰極材料も存在する。さらに、空気中での安定性とスルセルおよびハーフセルでの性能劣化が分析される。電解質に関しては、上記のような側面にもかかわらず、低温での電気伝導率も報告されている。
1.はじめに
現在、携帯型電子器機の急速な発展とエネルギー消費の増加に伴い、リチウム・イオン電池に対する人々の需要が拡大している。しかし、現在のリチウム資源の不足から判断すると、コストと流通の両方の観点から、リチウム・イオン電池は将来の市場において最良の選択肢とは言えない。ナトリウムはリチウムに似た化学的性質持っているため、リチウム・イオン電池の代替電池としてナトリウム・イオン電池が期待されている。リチウム・イオン電池と比較してナトリウム・イオン電池にはいくつかの利点がある。ナトリウム資源は豊富で、価格も比較的安い。また、低濃度の電解質を使用できるため、コストを削減できるという利点もある。同じ濃度のリチウム・イオン電解質と比較すると、イオン電解質中のナトリウム・イオンの移動効率はリチウム・イオンの移動効率よりも20%高くなる。一方、リチウム材料はアルミニウム金属と相互作用しやすいため、リチウム・イオン電池の集電体としてアルミニウム箔を使用すると、電池の初期価格と初期重量を大幅に削減できる。大規模エネルギー貯蔵の観点からは、ナトリウム・イオン電池の安定した放電性能により、放電深度の管理が容易になる。ナトリウム・イオン電池の製造は、リチウム・イオン電池に関連する既存の製造プロセスおよび装置に従うことができる。上記で認識された利点に基づいて、ナトリウム・イオン電池は近年高い研究関心を維持している。ナトリウム・イオン電池の電極および電解質材料システムについては多くの報告がなされている。これまでのところ、ナトリウム・イオン電池のエネルギー密度は100 Wh/kgを超える可能性がある。さらに、ナトリウム・イオン電池を使用すると、電力コストは0.1/USD未満に達する可能性がある。
しかし、報告されているナトリウム・イオン電池はほとんどが室温でテストされており、低温で動作できるナトリウム・イオン電池はあまり注目されていない。ナトリウム・イオン電池の開発に伴い、研究者は低温性能を考慮する必要がある。報告されているように、ナトリウム・イオン電池の大規模応用を制限する要因の1つは、低温での性能が低いことである。その主な理由は、低温では電池内のナトリウム・イオンの移動が遅くなり、電圧の変化が抑えられ、電池の容量が低下するためである。第二に、ナトリウムの反応は不可逆的な相移転を起こしやすい。同時に、低温では反応速度が遅くなる。これらの要因により、ナトリウム・イオン電池は安全性のリスクが大きくなり、実際の用途では性能が不安定になる。ナトリウム・イオン電池に適した材料、電解質システム、およびプロセスの開発は、ナトリウム・イオン電池の開発が直面する大きな課題であり、注目に値する。本レビューでは、主に電極および電解質材料システムの観点から、低温ナトリウム・イオン電池の研究の進歩と、ナトリウム・イオン電池の低温性能を向上させるために使用される技術および方法を要約する。これらの材料は、陽極材料、陰極材料、電解質の3つの部分に分かれている。低温におけるいくつかの代表的な材料と電解質を図1(省略)に示す。
2.陽極材料
2.1. プルシアン・ブルーとプルシアン・ブルー類似物
2.2. 層状酸化物
2.3. ポリアニオン型陽極
2.3.1. リン酸塩
2.3.2. フルオロリン酸塩
3.陰極
3.1. 硬質炭素
3.2. アモルファス・セレンと金属セレン化物
3.3. NaTi2(PO4)3
4.低温ナトリウム・イオン電池電解質
4.1. 有機電解質
4.2. イオン液体電解質
4.3. 水性電解質
4.4. 固体電解質
以上の章と節は省略。
5.結論
要約すると、ナトリウムはリチウムの代替としてエネルギー貯蔵材料として使用され、地表に豊富に存在する。ナトリウム・イオン電池では、Na+はLi+よりも高いイオン伝導率を持っている。ナトリウム・イオン電池は陰極としてアルミニウムを使用でき、大規模に使用する場合は軽量で安全である。しかし、ナトリウム・イオン電池の研究においては、その低温性能が依然として課題となっている。本論文では、ナトリウム・イオン電池の低温性能の改善について、陽極材料、陰極材料、電解質の3つの側面から説明する。
プルシアン・ブルーおよびプルシアン・ブルー類似物は、ナトリウム・イオン電池の従来の陽極材料として広く使用されている。カーボン・ナノチューブと組み合わせることで、陽極材料のイオン伝導性が向上し、充放電比容量とサイクル安定性も向上した。同時に、立方体ナノ粒子や結晶粒子などのいくつかの特殊な陽極構造も電池を作り、低温で理想的な安定性を示す。そして、遷移金属で構成される層状酸化物は良好な電気化学的性能を示す。NaTi2(PO4)3コーティング、NaCrO2ナノワイヤ製造、階層的柱状構造設計などのさらなる構造変更により、低温での電池性能の低下を軽減できる。ポリアニオン型陽極に関しては、炭素コーティング、カーボン・ナノチューブ、および炭素ナノウェアも、低温陽極の性能を向上させる効果的な方法である。低温での陽極性能を総合的に考慮すると、多くの材料は約100 mAh/gの比容量と約3 Vの比較的安定した電圧ウィンドウを備え、明るい応用可能性を示す。
硬質炭素は主にナトリウム・イオン電池の陰極材料として使用される。低温では、硬質炭素に対するいくつかの効果的な修飾も、その性能を促進する役割を果たす可能性がある。陽極と同様に、炭素コーティングや構造状の微細孔などの特別な方法で、硬質炭素は陽極の導電率を高め、理想的な電池固有の容量を得ることができる。一方、アモルファス・セレンおよび金属セレン化物は、Seと金属元素Zn、Fe、またはSnを組み合わせて陰極として使用し、カーボン・ナノチューブまたはグラファイトで修飾した後、より低い充放電電位を得ることができる。NaTi2(PO4)3は、陰極にsp2型炭素や高結晶性NaV1.25Ti0.7504を組み合わせることにより、良好な電気化学的特性を得ることができる。代表的な材料を考慮すると、依然として硬質炭素が最も低い電圧と最大の比容量を持つ材料であることが分った。
結局、低温条件下では、電解液中のNa+移動速度が遅くなり、電解液のイオン伝導率と活物質中のNa+の拡散速度が低下する。材料表面の固液相界面では電荷の移動が困難である。本論文で説明した4つの電解質では、効率を向上させるために、従来の有機電解質を異なる割合の有機化合物と混合する必要がある。イオン液体電解質は、最高のイオン移動速度と誘電率を持っている。また、水性電解質は低温でも理想的な誘電率を示し、環境に優しいものである。固体電解質は比較的安全な品質を備えており、有機電解質による火災の危険を効果的に回避でき、実用的な低温性能を備えていることが証明されている。この記事では、低温でのナトリウム・イオン電池の将来の開発に対する実現可能な提案を提供する。