戻る

減塩 - 心血管疾患の保健に有益か危険か?

Low Sodium Intake Cardiovascular Health Benefit or Risk?

By Suzanne Oparil

N Engl J Med  August 14, 2014

 

 高血圧は心血管疾患と死亡にとって最も一般的な治療できる危険因子である。世界中で10億人以上の成人が高血圧になっていると推定され、その数字は2025年までに15億人になると予測されており、高血圧は年間900万人以上の死亡原因となると言われている。高い発症率と関連した疾患や死亡のため、血圧を下げ、その結果で心血管疾患の負担を減らす人口規模のアプローチが勧められてきた。これらの戦略の中には減塩とより少ない程度のカリウム摂取量増加が高血圧の治療や心血管疾患の予防のために多くのガイドラインに取り入れられてきた。しかし、最近の研究で心血管疾患や死亡を含めた重要な健康結果に関して減塩と関係した逆効果があるらしいと言う疑問が生じてきた。

 減塩の健康効果についての論争に応じて、医学研究所は塩摂取量と健康結果との関係についてのエビデンスを評価する専門委員会を招集した。ほとんどのエビデンスは塩摂取量と心血管疾患危険率との間のポジティブな関係を支持しているが、健康結果で見た研究からの結果は、低塩摂取量(現在の食事ガイドラインで勧められている5.8 g/d以下または3.8 g/d以下)が全集団で心血管疾患の増加または減少した危険率と関係しているかどうかを結論付けるには次十分でないと委員会は結論を下した。低塩摂取量は心不全または心血管疾患の他の形態、糖尿病、または慢性腎臓疾患の患者を含めたいくつかのグループで悪い健康効果と関係があるかもしれない限られたエビデンスを委員会は見出した。

 雑誌の本号で報告されている3件の研究からの結果はこの件に関係がある。将来の都市田園疫学(PURE)研究は早朝尿試料から推定したナトリウムとカリウム摂取量と血圧、死亡、重大な心血管疾患との間の関係について新しいエビデンスを提供している。電解質排泄量を推定する方法は他の場所でも有効とされた。PURE研究は経済発展中で都市生活様式に変わりつつある17ヶ国の全集団から抽出した100,000人以上の成人を対象とした。参加者の約90%は塩摂取量で高い(15.2 g/d以上)か中程度(7.6 – 15.2 g/d)のいずれかで、7.6 g/d以下の塩摂取量は約10%、わずかに4%だけが塩摂取量についての現在のアメリカ人の食事ガイドライン(5.8g/dまたは3.8 g/d)と関連した範囲の塩摂取量であった。

 この幅広い範囲の集団の全域で、塩摂取量と血圧との関係はポジティブであるが、一律ではなかった。すなわち、高塩摂取量の参加者で強く、中程度範囲の参加者ではささやかで、低塩摂取量の参加者では関係なかった。世界中の集団の非常に小さな比率の集団が低塩摂取量であり、これらの人々の血圧は塩摂取量に関係ない結果から著者らが結論を下したのは、血圧を下げるために集団ベースの戦略としての減塩は無益で可能性に疑問がある。

ナトリウム排泄量とカリウム排泄量との間の相互作用もあった。すなわち、高ナトリウム排泄量は低カリウム排泄量の人々の血圧上昇とより強く関係していた。カリウムの豊富な高い品質の食事を勧めると言う別の方法は積極的に減塩だけを勧めるよりも血圧低下を含めてより大きな健康利益を達成できるかもしれないことを著者らは示唆した。平均3.7年の追跡後に、死亡や心血管疾患という色々な要素を含む結果が3,317人の参加者(3.3%)で起こった。中程度の塩摂取量の人々と比較して、高塩摂取量または低塩摂取量の人々は心血管疾患による死亡危険率が高かった。

 中程度の塩摂取量の人々と比較すると、低塩摂取量の参加者は同じ様な平均NTERHEART Modifiable Risk Scoreで果物や野菜の摂取量が多く、集団の90%以上はこれまでに心血管疾患を起こしていなかったことを示して彼等の結果についての説明として著者らは残りの混乱因子や逆相関を排除しようと試みた。前に心血管疾患、癌、血圧治療者を除いても、観察して最初の2年間に起こった疾患を除いても、あるいは全ての確認できる混乱因子について調整しても結果は変わらなかった。

 研究設計や見通しに固有のPURE研究の大きな弱点は多くの場合で24時間尿排泄量を直接測定していないことである。それは電解質摂取量の調査のために容認されたモデルであり、血圧と心血管疾患結果に及ぼすナトリウム摂取量とカリウム摂取量を変えた時の直接効果を調査する介入要因に欠けており、したがって、因果関係を確立させることができなかった。それにもかかわらず、高能率大規模な研究は高塩摂取量と低塩摂取量の両方とも死亡と心血管疾患結果を増加させる危険率と関係しているかもしれないし、カリウム摂取量の増加は高い塩摂取量の悪い効果を相殺させるエビデンスを提供している。これらの挑発的な結果は通常食と減塩食を比較するためにランダム化比較試験を要求している。そのような試験がない中で、結果は他に類のない公衆保健勧告として減塩を議論している。

 Global Burden of Diseases Nutrition and Chronic Diseases Expert Group (NutriCode),からの三番目の論文の著者らは世界の塩摂取量と心血管疾患死亡率に及ぼすその効果を推定するためのモデル化技術を使った。研究者達は66ヶ国から公表されている調査に基づいて世界の塩摂取量を定量化し、世界の塩摂取量を推定するために階層的なベイジアンモデルを使った。その後、彼等は107件の公表されている試験のメタアナリシスで血圧に及ぼす塩摂取量の効果を推定し、個人別データを含む2件の大規模な国際的にプールするプロジェクトの結果を組み合わせることによって心血管疾患死亡率に及ぼす収縮期血圧の効果を推定した。彼等は塩摂取量と心血管疾患発症との間に強い直線関係を発見し、2010年の165万人の心血管疾患死亡は過剰な塩摂取量によるものと推定された。NutriCodeの研究者達は過剰な塩摂取量の潜在的な有害性に関する大量のデータを統合することに大変な努力を賞賛すべきである。しかし、高品質のデータがないために必要とされる数々の仮定を行っているので、研究の結果を解釈するには注意すべきである。全体的にこれら3件の論文は減塩食の危険性と有益性の両方に関する高品質のエビデンスを集める必要性を強調している。