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賛成論:集団レベルの減塩:本当に公衆保健で優先権があるか?

Pro: Reducing Salt Intake at Population Level: Is It really a Public Health Priority?

By Francesco P. Cappuccio

              Nephrology Dialysis Transplantation 2016;31:1392-1396  2016.08.03

 

要約

 減塩は血圧、脳卒中、慢性腎臓疾患を含めて他の心血管疾患を23(すなわち、世界中で125万人の死亡)ほど減らす。減塩は男女、年齢、少数民族グループ、高・中・低所得の諸国で有効である。集団減塩計画は可能で有効である(予防規範)。減塩計画は全ての設定で費用節約(高・中・低所得の諸国)(経済的規範)である。公衆保健政策は強力で、迅速で、公正で、費用節約(政治的規範)である。公衆保健における重要な変更は、集団の高塩摂取量から引き出された利益に主として関心のある機関からの頑強な反対なしには起こらず、公衆保健利益のあまりない。否定戦略の主要な成分は誤報である(‘偽’論争による)。一般的に、不十分な科学は不確実性を作り出し、不活動を支持するために使われてきた。本論文は世界的な減塩戦略に賛成するエビデンスを要約し、間違った論争の背景にある月並みの神話を広めることを解析している。

 

はじめに

 1985年以来、世界保健機関(WHO)は国の通常の消費量から平均5 g/dに集団の塩摂取量を減らすことを勧めてきた。しかし、日本やフィンランドで通知すべき実行は集団の塩摂取量で実質的な低下と関係した心血管疾患罹患率と脳卒中罹患率に劇的な低下をもたらしたけれども、世界的に行動計画は採られなかった。その後の20年間で、科学的エビデンスと公衆保健主導は両方とも5 g/dと言う集団平均塩摂取量を超えないように2007年と2012年のWHOの勧告値を更新するように導いてきた。世界的な政策行動に向けての重要な段階は非伝染性疾患に関する国連の2011年高度会議であった。そこで2025年までに早期心血管疾患死亡率を減らすための優先事項として集団の減塩目標を設定した。現在、改訂されたWHOガイドラインは2025年までに30%の減塩を、最終的な最高目標値を5 g/dとすることを勧めた。後者の目標値はその後、2013年にその解決を通して第66回世界保健機関会議で採択された。世界的に国家計画の実行についての多くの政策意見は今や役に立ち、集団の減塩は世界中の多くの国々で実行中である。

 

塩論争

 これらの行動と並行して、‘塩論争’が何年間も健康雑誌や新聞のページを満たしてきた。1988年のジョン・スェールスの最初の懐疑から1996年にゴッドリーが現実への鋭い呼び掛けをするまで、論争は科学的舞台を次第に激しくなる調子で公衆意見やメディア運動に移してきた。科学的研究の結果を公衆保健や政策行動に反映されて、‘塩論争’がちょっとした‘塩戦争’になって以来、論争は特に加熱してきた。科学を実行に移すことは確定されている利害と衝突する時、この論争が戦争に進展したことは過去と現在の論争(ジョン・スノウと19世紀のコレラの流行、20世紀の喫煙の害の長く続いている否定、21世紀の地球温暖化と気候変動論争について考えて見よう)に似ている。

 

エビデンス

塩と高血圧

 科学的事実は:塩が因果関係的に関係している、塩摂取量が高いと血圧が高くなる、生まれた時から効果は見られることである。わずかで継続的な減塩(現在、我々が食べている量の50%以上)は血圧の全範囲でほとんど全てに人々の血圧に低下をもたらすが、個々人については、年齢、民族、血圧の最初の値、体重といった要因に依存して血圧は上下する。これらの要因は何回も証明されてきて、高血圧者と正常血圧者で小規模や大規模の臨床試験の繰り返えされた総合レビューとメタアナリシスで要約されてきた。

 図1(省略した)は成人の血圧に及ぼす減塩の効果に関して今日までに発表された全てのメタアナリシスの集合した推定値を示す。メタアナリシスは解析の時間で異なり、したがって、利用できる研究では、採択基準(4週間以内の短期間研究対4週間以上の長期間研究)、正常血圧者と高血圧者の比率、研究設計(交絡、並行グループ、盲検と非盲検)、関連したサブグループの比率(性別、年齢、民族グループ)で差がある。研究間の差にもかかわらず、効果のプールされた加重推定値の範囲は全て減塩に有利である。さらに、推定値の95%信頼区間はお互いに矛盾なく、ランダム変動のためと思われるが、推定値間の差に一貫性を示した。さらに、塩摂取量に非常に大きな変化をさせている非常に‘短期間の減塩’試験を使う時、代謝変数やホルモン変数の変化が生ずるかもしれないと主張されてきた。これらの変化は交感神経のアドレナリン活性や血液濃度の急速で一時的な活動のためである。長期間で中程度の減塩試験では検出されなかった。結論として、発表時には様々な解釈があったにもかかわらず、これらの解析結果は全て次のことで一致している:(i) 塩摂取量は集団と個人の血圧の主要な決定要因の一つである;(ii) 減塩は血圧に投与量応答の低下を引き起こす;そして(iii) 効果は男女両方で、全ての年齢と民族グループの人々で、そして全ての始発の血圧で見られた。同様の結果は子供でも述べられてきた。

 

塩と心血管結果

 高血圧は脳卒中や心臓発作に寄与し、血圧低下はそれらの低下に関係している。その効果は血圧低下の大きさに関係している。したがって、集団で中程度の減塩は血圧低下を通して脳卒中や心臓発作を減らすのに役立つだろう。展望的で長期的な研究の総合レビューからの集合的なエビデンスは、低塩摂取量が致命的な、そして非致命的な心血管疾患、特に脳卒中の低い発症率と関係している。これは、致命的な、そして非致命的な結果を測定したデータで得られる数少ないランダム化された臨床試験のメタアナリシスによって支持される。しかし、長期間にわたる集団の減塩が脳卒中や心臓発作の発症率を下げることを証明するために、ランダム化された二重盲検プラセボ比較臨床試験が必要とされる。そのような‘全ての試験の母’は決して行われないだろうが、それにもかかわらず、我々は利用できる限りのエビデンスに基づく公衆保健政策を実行することを止めるべきではない。喫煙が肺がんの原因であり、我々は結局、タバコを禁ずるべきであることを‘証明’するためにヒトで行われた喫煙と肺がんのランダム化された臨床試験はなかった。さらに、減塩の集団行動の基礎となっているエビデンスの大部分の調査は、減量、運動不足、がんと心血管疾患の両方を予防するための繊維、果物、野菜の摂取量に関して今日、受け入れられている政策を支持するエビデンスを弱くする。低い塩摂取量は心血管疾患、特に冠状心疾患や心臓発作の危険率増加と関係しているかもしれないことを示唆した展望的な観察研究の解析と言う一連の報告書によって最近の論争は活気付けられてきた。これらの研究は、結果に致命的な偏向(間違い)、したがって、間違った結論をもたらした観察研究に示されている数多くの方法論的な問題のための強力な調査の目的であった。これらの問題の総合的な根拠はアメリカ心臓協会によって発表されてきた。

 表1(省略)は結果を対比することを決めるこれらの方法論問題の概要を示している。簡単に言うと、誤差の危険性は塩摂取量の調査、‘逆相関’偏向の存在、残った混乱因子の存在、ランダム誤差、不十分な統計力と言った系統誤差の範囲に関係している。さらに、前向きの観察研究は本当の‘原因-効果’関係を意味せず、それらの研究は、心血管結果に関するランダム化された臨床試験からの限られてはいるが首尾一貫したエビデンスを含めて、他の利用できるエビデンスに関係させて解釈されなければならない。

 

費用効果

省略

 

神話

 高い集団の塩摂取量を維持することから得られる利益に大きな関心を持ち集団の健康にはあまり関心を持たない大規模多国籍会社は公衆保健行動に対して反対する妨害運動と活動に長く携わってきた。会社は主として食品・飲料産業から成っている。彼等の戦略はマスメディア運動、研究結果を偏向させ、政策立案者や健康専門家達を取り込み、政治家や役人にロビー活動をし、公衆保健規制に反対する有権者を激励することである。彼等の戦略の重要な点は‘偽’論争と古臭い神話の宣伝を通した誤報である。一般的に不十分な科学、欠陥のある方法、偽造データ、粗末で論争のある結果を使うことは不確実性を作り出すために操作されてきた。特に、低塩摂取量が心疾患を‘引き起こす’かもしれないと言う主張は正当で適正な方法を使ったアメリカ合衆国、オランダ、世界的な研究によって最近論破されてきた。

 

論争で誰が得する?

 どうして食品・飲料産業は減塩に反対するのか?塩は安いのに。

 2009年にアメリカ合衆国で販売された2,700 万トンのうちわずかに150万トンが食用であった(6%以下)。しかし、収益は約16%であった(20億米ドルの総収益の中で32千万米ドル)。それにもかかわらず、食品製造における塩使用量は食品・飲料産業について多くの利益を出す(2012年で4,220億米ドル以上の年間収益と併せて)。高塩摂取量は次のことで利益を生ずる:(i) 味蕾の脱感作により塩辛い食品の要求を生ずる;(ii) 安定剤と結合したナトリウム塩を製品に注入して包装前に肉製品の重量を増す;(iii) 特別な費用をかけないで安くて旨くない食品を食べられるようにする;そして(iv) 喉が渇いて飲料摂取量が増える。高い塩摂取量は特に子供で高カロリー砂糖含有飲料の消費量とアルコール摂取量を増加させる。勧められた減塩目標の履行は~350 ml//dの飲料消費量を平均的に下げる結果となり、それは1週間に子供一人当たり甘いソフトドリンクで少なくとも2.3 gの砂糖摂取量の低下に相当する。これらの効果は政府にとって莫大な健康と財政収入を得る結果となるが、瓶詰水、ソフトドリンク、アルコール飲料の販売量低下により業界では数十億ドルの損失となる。

 

結論

 減塩は血圧、脳卒中、他の血管疾患を23%も減らす(すなわち、世界中で125万人の死亡)。減塩は男女、年齢、人種集団、高‐、中‐、低‐収入諸国で有効である。集団の減塩計画は可能で有効である(予防的な規範)。減塩計画は全ての設定(高‐、中‐、低‐収入諸国)(経済的な規範)で費用節約になる。公衆保健政策は強力で急速で公平で費用節約(政治的な規範)である。