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コレスポンデンス

塩を巡る科学的論争の偽オーラ?

A False Aura of Scientific Controversy around Salt ?

By Ronald Bayer, David Merritt Johns, Sandro Galea

Lancet 2016;388:2109  Correspondence

 

 塩摂取量、心臓血管疾患発症、死亡との関係に関して130,000人以上からなる4件の前向き研究からのデータをプールして解析したメンテと同僚達による最近の論文は低ナトリウム摂取量(3 g/d以下)と高血圧者および正常血圧者の危険率増加との間に関係を見出し、一方、高ナトリウム摂取量(6 g/d以上)は高血圧者だけの危険率増加と関係していた。結果は“全人口に減塩させることを目標とした公衆保健政策が適正であるかどうか”について疑問を生じさせた。

 誰もこの見解を共有していない。オンラインで研究が発表されて二週間も経たないうちの61日に、アメリカの食品医薬品局は、食品供給で塩を制限するために食品産業界は新しく提案した自発的なガイドラインを発表した。同時に、アメリカの疾病予防管理センターの科学者達は、90%のアメリカ人が1日当たり5.8 g以上として定義されている過剰な塩を摂取していると主張する意見を発表した。塩の危険性についての混乱が多数の参加者による観察研究を過剰に強調して説明されているが、塩摂取量の測定は信頼性がない、と疾病予防管理センターの著者らは主張した。疾病予防管理センターの理事長はこの意見を別の意見論文に繰り返し発表し、“矛盾した結果を出した2,3の研究が塩を巡る科学的論争の偽オーラを”を作り出した、と述べた。

 しかし、塩を巡る論争のオーラは本当に妄想に過ぎないか?2013年に、医学研究所は塩摂取量と健康結果に関するエビデンスをレビューし、過剰の塩摂取量は有害に思える一方で、利用できるデータはその量を定義する、または1日当たり5.8 g以下の塩摂取量に下げることは健康に有益であると結論を下すには不十分であった。 “活発な論争”を引き起こした医学研究所の報告書は当時のカナダの健康科学アカデミーの会長を観察したが、塩に関係した多くの権威者達は医学研究所の結論を重視しないか、無視した。2014年のメタアナリシスは同様に利用できるエビデンスの強さに疑問を投げている。そして2016年に、引用ネットワーク解析は塩文献の強い対立を明らかにした、つまり発表されている論文の約60%は減塩事例を支持し、40%は反対していた、と同時に自分達の立場を支持している論文を引用するために論争の両側の参加者にも同様の傾向があった。

 この手紙で、我々は塩論争でどちらかの側に付こうとは思っていなくて、政策決定者達は不確かで矛盾するエビデンスに直面しても行動を起こして、しばしば公衆保健政策を決めることを我々は主張する。塩の挑戦に対する常識的なアプローチには、我々が知っていることと知らないことの率直な知識と同様にエビデンスの冷静な読み取ることが必要である。この考え方で我々は問う:現在の塩論争が論争の“偽オーラ”によって進められている、と述べることは正確か?