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論説

減塩にはエビデンスに基づく政策が要求される

Evidence-based Policy for Salt Reduction Is Needed

Lancet 2016;388:438  Editorial

 

 エビデンスに基づく医療が治療ガイドラインの基本原則となってきた。しかし、どうしてエビデンスに基づく医療がエビデンスに基づく政策に反映されないのか?世界中の政府や保健機関は塩摂取量を減らすように主張しているが、全員について減塩を支持する確かなエビデンスはほとんどない。事実、正常血圧者で減塩の利益を強く支持するランダム化比較試験はほとんどない。高い塩摂取量が高血圧と関係していると言う本当の不一致はなく、ほとんどの研究は高血圧が比較的多い心臓血管疾患による死亡と関係していることを示している。しかし、塩摂取量が高いと考えられるレベルとは一致していない。一層の懸念は主張されている塩摂取量目標値で有益性についてのエビデンスが実質的にないことである。すなわち、塩摂取量が5 g以下になっても健康結果を測定したランダム化比較試験がない。

 今日のランセットでアンドリュー・メンテと同僚による論文は、ほとんどの集団で現在の塩摂取量は最低の心臓血管疾患による死亡率と関係していると言う合理的なエビデンスを提供している。一層重要なことに、毎日のナトリウム摂取量を3 g以下に下げる提案は高血圧者と正常血圧者の両方に有害な結果をもたらすらしいことを彼等は示している。ランダム化比較試験によってではないが、これらのデータは低いレベルへの減塩を主張するために使われたデータと同程度に確かである。最低でも、これらのデータは、その様な低下を支持するための高いグレードのエビデンスのない減塩知識の再評価を要求している。

 法制化されない減塩プログラムが強要される前に、有益性と同様に有害性は確固たる科学的エビデンスだけに基づくことを社会は要求すべきである。強く支持するエビデンスがないのに潜在的に有害な変化を法制化することは避けるべきである。