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塩の科学:食品中ナトリウム量の変化に関する世界的なレビュー

The Science of Salt: A Global Review on Changes in Sodium Levels in Food

By Joseph Alvin Santos, Emalie Sparks, Sudhir Raj, Briar McKenzie, Kathy Trieu, Annet Hoek, Claire Johnson,

Rachael Mclean, JoAnne Arcand, Norman R.C. Campbell, Jacqui Webster

Journal of Clinical Hypertension 2019;21:1043-56   2019.07.13

 

要約

 本レビューは減塩介入結果として包装食品製品、レストラン食、病院または学校給食のナトリウム量の変化に関して報告している研究を要約して統合することを目的としている。研究は20136月から20182月までのScience of Salt Weeklyに発表された論文から抽出された。24件の研究が特定された:17件は包装食品、4件はレストラン食、2件は病院または学校給食、そして1件は包装食品とレストラン食の両方の変化を調査した。3種類の介入が研究の一環として評価された:自発的な減塩(目標値を含む)、標示、そして企業設定への介入である。ナトリウムの低下は全ての研究(n=8)で観察された。それには2つの時点で一致した包装食品があり、病院や学校で行われた研究もあった。しかし、レストラン食の平均ナトリウム量にはほとんど変化はなかった。包装食品ナトリウム量の変化をプールした解析は比類のない食品製品と5つの食品カテゴリー(朝食のセリアル、パン、加工肉製品、ポテト・チップスとスナック、そしてスープ)のナトリウム低下を示した。24研究中22研究は高所得諸国からの研究で、その結果、設定値を低下させるために適用するには限界がある。

 

1.はじめに

 過剰な塩摂取量は世界的な公衆衛生問題で、塩と血圧上昇との間の関係を示す高品質研究が増加している。次には血圧上昇心血管疾患(CVDs)に対する十分に確立された危険因子であり、世界中で死亡の主因である。最近の疾患の世界的負担(GBD)研究は次のように報告した。高い収縮期血圧は全体的な死亡率の主要因で、2017年に世界で21,800万人の障害調整生存年数(DALY)を占めた。全ての食事危険因子の中で、高塩食が全死因数の最大値(320万人の死亡)と約7,000万人のDALYの原因であったことを同じ研究は示した。ほとんどの人口はWHOが勧めている5 g/d以下の塩摂取量よりも多くの塩を摂取しており、推定された世界の平均塩摂取量は約10 g/dであった。

 2013年以来、WHOのメンバー国は2025年までに人口の塩摂取量を30%減らすことを明言した。多くの国々が減塩介入を始め、多くのレビューが人口の減塩で何某かの進歩を示してきた。減塩介入を実行し、人口の塩摂取量低下を達成している国々をさらに支援するため、2016年にWHOSHAKE Technical Package for Salt Reductionを発表し、それには5つの鍵となる分野、監視、より少ない塩を含む製品の再構成、標示、消費者教育、そして設定作業がある。これらの努力のモニターを実行し評価することは塩を巡る政策や行動を強化するための基本である。

 The Science of Salt Weeklyは塩を巡る増え続ける一連の文献について最新の説明を提供する目的で2013年に設立された。この手始めの一環として、塩摂取量と健康結果に関する定期的に更新される系統的レビューと減塩介入の実行がJournal of Clinical Hypertensionに発表されている。今日まで、11件の研究(塩摂取量と健康結果に関して6件、減塩介入の実行に関連して5)が発表されてきた。最近の実行レビューは塩に関連した知識、態度、行動を報告している研究に焦点を置いたテーマ別アプローチを採用した最初のものであった。同様に、現在のレビューは食品中のナトリウム量変化を調査した研究テーマの焦点を採用している。

 多くの高所得諸国で、調理食品あるいは包装食品は塩摂取量の約75%に寄与している;そして低ー中所得諸国の包装食品消費量に増加傾向が見られる。ほとんどの諸国は自国の減塩戦略で加工食品中のナトリウム量を減らす介入を行っており、例えば、食品産業界との関わり、包装前面の栄養表示、そして減塩目標値の設定である。本レビューの目的は次のようである:(a) 食品や食事中のナトリウム量を減らす目的とした減塩介入に関する文献を要約し統合する;そして(b) これらの介入に従って包装食品、レストラン食、病院や学校給食中のナトリウム量に変化があったかどうかを調べること。

 

2.方法

3.結果

3.1 研究の特性

3.2 包装食品、レストラン食、病院あるいは学校給食で介入

3.3 食品中のナトリウム量の変化

3.3.1 包装食品製品

3.3.2 レストラン食

3.3.3 病院あるいは学校給食

 

以上の項目は省略

 

4.考察

 本レビューは、包装食品、レストラン食、病院や学校給食中のナトリウム量に変化を測定した20136月から20182月までの24研究を確認した。我々の結果は、包装食品中と幾つかの食品カテゴリー中のナトリウム量の中程度の低下と同様に病院または学校給食中のナトリウム量低下があったことを示唆している。しかし、レストラン食の平均ナトリウム量にはほとんどかた全く変化はなく、1つのアメリカの研究では、食品のナトリウム量に実質的な増加があった。ほとんどの研究(n=22)は高所得諸国7ヶ国、中所得諸国2ヶ国からであった。低ー中所得諸国からの研究が少ないのは我々の以前のレビューと一致しており、現在のレビューから発生した結果の適応はこれらの設定値に制限されるかもしれないことを意味している。さらに、38ヶ国(高所得諸国28ヶ国、中所得諸国10ヶ国)が食品に対して自発的なまたは強制的なナトリウム目標値を持っていることを報告した世界中の減塩主導の2015年レビューと比較して、現在のレビューは、これらの諸国(高所得諸国7ヶ国と中所得諸国1ヶ国)だけが製品中のナトリウム含有量を減らすために食品産業界の進歩を測定するための変化に関する利用できるデータを持っていることを示している。これらの結果は低-中所得諸国の食品中のナトリウム量を減らすためにさらなる介入とモニターする必要性、および食品中のナトリウム目標値が設定されている諸国の評価研究の必要性を示唆している。

 本レビューは食品中のナトリウム量を減らす3つの介入を明らかにした-自発的な低減、標示、制度的設定値の介入である。自発的な低減(目標値そして/または製品中のナトリウム量を自発的に減らす食品産業界との政府の関与を含む)は、13件の包装食品介入と5件全てのレストラン食介入を含む研究の評価で使われた最も一般的な介入であった。これは驚くことではない。食品産業界との約束を含む減塩戦略を持つ諸国の約80%は食品について自発的な目標値を設定していたことを前の研究は示したからである。2014年の研究は、様々な食品カテゴリーについて自発的なナトリウム目標値の設定に向けて増加傾向があることを示した;しかし、これらの国々の食品中のナトリウム量の変化に関する評価研究を我々は見つけなかった。本レビューで明らかにした4研究だけが表示介入に、3研究だけが制度的設定値の介入に基づいていた。これは次の事実にも係わらずである。2015年のレビューは、43ヶ国が制度的設定値の介入、31ヶ国が食品中のナトリウム量低下のために包装前面の栄養表示を明らかにした。多くの知られている介入と発表されている評価研究のこの矛盾はモニターとこれらの介入の評価の欠如を示唆しているかもしれず、食品データ中のナトリウム量が利用できるが、発表されていない(したがって、我々の研究範囲外である)こともある。モニターと評価の系統的なアプローチが記録されてきたからである。それにもかかわらず、表示や制度的設定値を通してナトリウム量を減らす介入は、進歩を示しレッスンを共有することを確保していることで評価されていることは重要である。

 包装製品中のナトリウム量の変化を測定することは本レビューからの研究の大部分の焦点であった。特に、ほとんどの研究はそぐわない包装食品を含んでおり、調査時にスーパーマーケットまたは八百屋で入手できる全ての製品が含まれていたことを意味する。そぐわない包装食品中のナトリウム量の変化を報告した多数の研究はメタアナリシスの結果を結び付ける好機を提供している。時間と共に平均ナトリウム量に中程度であるが、かなりの低下、36 mg/100 gがあったことを我々のプールされた解析は示した。介入方法と期間に従って我々のサブグループ解析で一貫した低下が示された。しかし、確かな結論(例えば、これが食品中の本当のナトリウム量低下を反映しているかどうか)を引き出すにはまだ難しい。研究は様々な食品カテゴリーに関して報告し、それぞれの研究内の製品数に大きな差があったからであった。さらに、各々の食品カテゴリーで様々な国をプールしたナトリウム量変化の調査は、パン、朝食のセリアル、加工肉、クリスプやスナック、そしてスープ内のナトリウム量に有意で適度な低下があったことを明らかにした。朝食のセリアルで最大の差があり、109 mg/100 gの低下であった。これらは再構成のために一番目標にされた製品カテゴリーであるので、これらのカテゴリーで明らかにされた低下は介入効果を反映しているようである。

 報告された結果の異質性および基準測定値と追跡測定値との間の相関係数の欠如のために、そぐわない食品製品(経時時追跡された同じ食品セット)中のナトリウム量の変化をプールすることはできなかった。それにもかかわらず、適した包装食品上の利用できるデータを持つ8研究のそれぞれの調査は、全体的にまたは少なくとも1つの食品カテゴリーにおける平均ナトリウム量の経時的な低下を全ての研究は示したことを明らかにした。これは製造者によって行われた再構成の効果を反映しているようである。再び、確かな結論を引き出すことはできない。これらの低下は研究間で同じサンプル法の差と採択された製品の数と種類によるためである。しかし、マッチした食品とマッチしなかった食品の両方がナトリウム量の低下傾向を示した事実は注目に値する。会社は既存の製品中のナトリウム量を減らしながら、より低いナトリウム含有量の新しい製品も生産していることを示唆している。

 レストラン食中のナトリウム量の変化は高所得3ヶ国(カナダ、アメリカ合衆国、オーストラリア)で評価された。一方、病院と学校食はアメリカ合衆国だけで調査された。レストラン食について、アメリカ合衆国からの3研究はファーストフードの平均ナトリウム含有量の低下または増加を示したことと一致していたが、オーストラリア(-43 mg/100 g)とカナダ(-11 mg/100 g)では少ないが低下が報告された。これは、アメリカ合衆国が2009年から2014年にかけて国民減塩イニシアティブ(NSRI)を通してレストラン食の自主的なナトリウム目標値を設定していることを考えると、驚くべきことである。2016年に食品産業界が加工食品とレストラン食のナトリウム量を減らすアメリカ食品医薬品局ガイダンス案を続けているが、カナダとオーストラリアにはレストラン食についての目標値は設定されていない。それにもかかわらず、レストラン食のナトリウム量は(オーストラリアとカナダで観察されている低下にもかかわらず)高止まりで、幾つかの食事は推奨一日ナトリウム摂取量を超えている。家庭外で食べる傾向が高まっている中で、我々の結果は、家庭外で食べる食品中のナトリウム量を減らすより強い行動が必要であることを示唆している。他方、食事中のナトリウム量を減らすために施設内で行われた2つの研究(1つは学校、1つは病院)は両方ともポジティブな結果を示し、学校または病院で設定したナトリウム基準値は最もらしい介入であることを示唆しており、特に補完的な支援構造、サポート、およびリソースを組み合わせたときがそうである。しかし、これら2つの研究が小規模(市-または郡の規模)で実行されたことを述べることは重要で、これらはほとんどモニターがない設定であり、したがって、幅広い実行の可能性とこれらの介入の効果を支持するためにさらなる研究が必要である。

 この研究には長所と短所がある。我々の知識最良に向けて、プールされた解析からのマッチしない食品製品中のナトリウム量の全体的な変化を報告するこれは最初の研究である。研究で報告されている全ての利用できるデータを使って我々は解析に包括的なアプローチを採用している。例えば、グループ間の推定値を結び付け、平均値と標準偏差値の範囲値と中央値に変換する公表されている公式に従ってこれは行われた。しかし、我々の結果は研究間で高い変動性を示した。しかし、我々は可能な情報源を調査するために2つのサブグループ分析を行ったけれども、それらは主要な解析で観察された異質性を説明できなかった。これは、我々の解析で考慮しなかった他の要因が機能していることを示唆しており、したがって、我々の結果は注意して解釈されるべきである。それにもかかわらず、我々は食品カテゴリー・レベルと我々のプールされた解析結果を捕捉しているマッチした食品製品中の平均ナトリウム量の変化も調査した。本レビューの強さはレストラン食と病院学校食(包装食品に加えて)を含めていることで、これらの食品は食品中のナトリウム量変化の完全な情況を提供した。レビューの限界には言語と発表日による制限がある。食品中のナトリウム量変化は、我々が検索に含めていない灰色の文献で報告されていることもありそうである。最後に、変化を計算する相関係数の欠如、あるいは研究で結果が報告された方法の差のために、マッチした食品製品の結果を我々はプールできない。

 結論として、多くの国々が食品中の平均ナトリウム量を減らす目的で減塩介入を実行した;しかし、これらの介入に従った研究の評価はほとんど発表されていないことを我々の結果は示している。高所得諸国で自主的な減塩を通して包装食品のナトリウム含有量を減らすことは可能であることを我々の結果は示唆している。この設定で塩摂取量に対する包装食品の高い寄与とより低いリソース設定でこれらの食品消費量に急速な増加傾向があることを考えると、これは重要である。最後に、2025年までに人口の塩摂取量を30%減らす世界的な目標値を達成させるために、特に低-中所得諸国で十分なモニターと評価システムを併せて、食品中のナトリウム量を減らすためにより強い行動の必要性を本レビューは強調する。