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塩の科学:塩と健康結果調査の定期的に更新される系統的レビュー(20184-10)

The Science of Salt: A Regularly Updated Systematic Review of

Salt and Health Outcomes Studies (April to October 2018)

By Rachael M. McLean, Kristina S. Petersen, JoAnne Arcand, Daniela Malta, Sarah Rae,

Sudhir Raj Thout, Kathy Trieu, Claire Johnson, Norman R.C. Campbell

Journal of Clinical Hypertension 2019;21:   2019.06.27

 

要約

 塩の科学レビューは予め指定された方法に従って塩摂取量と健康結果に関して発表されている研究を明らかにし、要約し、批判的に評価する。本レビューは201843日から1030日まで期間を扱っている。ここにはレビューと要約のための予め指定された基準に合う19研究が含まれている。これらの中の3研究は、前向きコホート研究、ランダム化比較試験、そして偏向調査の危険性と論評を含む詳細な批判的評価のために品質基準を満たしたDASH-ナトリウム試験の事後分析である。2試験は塩摂取量と血圧との間にポジティブな関係を示した。イタリア老人のコホ-トでは、基準線で~16 g/d以下の塩摂取量で総死亡の危険率増加が観察された;心血管疾患発症または心血管疾患死亡について予め指定された関係はなかった。方法論的な品質について我々の基準に合った発表されている研究不足が関心事である。

 

1   はじめに

 非感染性疾患が2109年に健康に対する上位10件の驚異の1つとして明らかにされ、世界の死亡の70%以上を占めている。WHOの非感染性疾患低減についての2013-2020年の世界行動計画は、非感染性疾患低減のための9つの自発的優先世界目標の1つとして2025年までに母集団の平均塩摂取量を減らすことを明らかにした。これは、世界人口の塩摂取量はWHOによって勧められている値よりも実質的に高いままであることを示すエビデンスによって支持されている。2010年に、世界の平均塩摂取量は10.0 g/dであると推定された(95%不確定信頼区間:9.9 – 10.2 g/d)。対照的に、WHO5.1 g/d以下を成人に平均母集団塩摂取量を、子供達についてはエネルギー摂取量に比例して低い摂取量勧めている。

 一貫した一連のエビデンスは高塩摂取量と血圧上昇との間に因果関係を示している。高血圧と心血管疾患との間によく書かれている関係を別にして、実質的なエビデンスは脳卒中と心筋梗塞を含む心血管疾患結果と高血圧とも直接的に関係している。これにもかかわらず、塩摂取量と死亡危険率との関係に関して、特に低塩摂取量で矛盾したデータがある。心不全のような患者グループで減塩の役割についても論争が続いている。この矛盾したエビデンスについての論争の多くは方法論に関連した事項、特に測定誤差の役割、混乱因子、逆相関、そして心不全と潜在的な利尿剤との相互作用について集中している。この論争にもかかわらず、世界中の食事ガイドラインは集団の減塩を一貫して勧めている。

 系統的レビューと批判的な評価について塩の科学の毎週のシリーズは、塩摂取量と健康結果の分野で予め指定された厳密な方法基準に合った研究に焦点を置いて最近の文献につて科学的、臨床的、政策的な第三者に情報を提供している。本論文は201843日から1030日までに発表された論文を含んでいる。

 

2   方法

3   結果

4   選択された研究の詳細な批判的評価

以上省略。

 

5   考察

 本系統的レビューは6ヶ月間に品質について予め指定された基準に合った19研究の中で3研究だけ明らかにした。これらの中で、コホート研究はイタリア成人で低塩摂取量(15.9 g/d以下)と死亡増加との関係を明らかにし、彼等のほとんどは基準で一回の24時間尿収集で調査によると勧告されている塩摂取量以上に十分摂取していた。2つのランダム化比較試験は塩摂取量と血圧上昇との間の前に明らかにされたポジティブな関係を確認した。DASH-ナトリウム管理給餌試験の事後分析は、黒人と白人の参加者の部分集合の間で、塩摂取量は血圧に関係しており、この関係は比較的高いエネルギー摂取量よりも低いエネルギー摂取量の人々の間で強かった。コミュニティーに住む中国人集団のランダム化比較試験は、低塩製品の使用は6ヶ月期間で低塩摂取量と関係しており、収縮期高血圧者の低い収縮期血圧と関係しているが、高血圧者では関係ない。しかし、研究で比較的低い数は、これが効果を発揮するのに十分な能力を備えていなかったかもしれないことを示唆している。

 2つの重要なテーマが本レビューで焦点を当てられている。第1に、我々の前のレビューに焦点を置いた高品質研究について我々の基準に合う比較的少数の研究が残っている。特に、観察研究で不十分な塩摂取量調査の使用が問題である。スポット尿収集が個人の通常の塩摂取量調査で精度を欠いていることを示す多くの文献があるにもかかわらず、6研究が通常の塩摂取量を推定するためにスポット尿収集を使った。個人のスポットと24時間尿排泄量による測定値間で首尾一貫してあまり一致を示さないブランド-アルトマン解析によって示されるように、誤分類の危険性はこれらの研究で高い。さらに、集団レベルで、スポット尿試料からの塩摂取量推定値も偏向している。大きな懸念は、過剰または過少推定値が平均塩摂取量に比例することによって存在する比例偏向である。本レビューに含まれる2つのコホート研究は、韓国やイランの正常な腎機能者間で基準の塩摂取量と慢性腎臓疾患の発症との関係を調査するためにFFQを使った。FFQは個人の塩摂取量を定量化するためには十分ではないことを最近のレビューは明らかにした。食事調査法は確立した慢性腎臓疾患者で必要であるけれども、これら両研究は基準線で正常な腎機能者だけを含んでおり、したがって、複数の24時間尿収集は通常の摂取量のより正確な測定値となるだろう。詳細な臨床評価や論評を含まないが、本レビューで明らかにされたメタアナリシスは、骨ミネラル密度と骨粗鬆症の危険性と塩摂取量との関係を調べたコホ-トと横断的研究を含んでいた。通常の塩摂取量を調査するためにFFQ、食事思出法、そしてナトリウム排泄量のような塩摂取量を調査するための方法の範囲を使った研究を含んでいた。結果は、食事調査法によって調査された塩摂取量と骨粗鬆症の危険性との間にかなりの関係があったが、塩摂取量を尿素排泄量で調査したときには関係なかった。本研究は観察研究で正確な測定の重要性を強調している。

 本レビューで強調している第2のテーマは塩摂取量と観察(コホ-ト)研究およびランダム化試験によって示された健康結果に関連した明らかな矛盾であり、コホート研究は低塩摂取量で有害なエビデンス(死亡率増加)を示唆し、ランダム化比較試験は有益なエビデンス(血圧低下)を示した。観察研究とランダム化比較試験の結果間の明らかな矛盾は集団の塩摂取量を減らすための勧告値に関する最近の論争の多くに対する中心である。幾つかの他のコホート研究は低塩摂取量による健康に関連した悪い結果である危険率増加を報告しており、研究のほとんどは基準線の摂取量を定量するためにお粗末な方法を使っており、あるいは一般的に健常な集団グループよりもむしろ疾患のあるコホ-トによる研究であった。基準線の摂取量を推定するためにスポット尿収集の使用は、24時間排泄量と比較した時、その大きな変化性と系統的な偏向のために特に問題である。スポット尿と24時間測定に基づく推定値間の一致性を調べるためにブランド-アルトマン・プロットを使う確認研究は大きな平均値差と幅広い一致限界を示している。例えば、南アメリカで複数民族試料の確認研究は、スポット尿推定値を24時間尿排泄推定値に変換するための3つの式を比較し、川崎式と田中式について大きな差を示した(それぞれ5.7 g2.1 g)。インターソルト式に基づく推定値は12.7 g/d以下で過大な推定塩排泄量であり、12.7 g/d以上で過少な推定塩排泄量であった。3式全てを使った推定値は幅広い一致限界を示し、個人基準では24時間排泄量を予測するには非常に低い能力 を示した。

 高血圧予防試験に参加した患者のコホ-トの死亡に関連したスポット尿と24時間尿調査からの推定値間差の最近の調査はコホート研究のスポット尿使用に固有の誤差を示している。24年間の中間追跡期間を含むデータのこの再解析は、基準線塩摂取量を24時間尿収集を使って測定したとき、死亡とポジティブな直線関係が示され、一方、川崎式推定値が使われたとき、関係は変わり、J字型曲線が示唆されたことを示した。この解析は、スポット尿からの塩摂取量推定値と幾つかの発表されている臨床結果との間の明らかなJ字型関係は本当の関係よりも塩摂取量の測定誤差によるためであるらしい。基準線で24時間尿調査による他のコホート研究で、混乱因子と逆相関も考察すべきである。低塩摂取量参加者は、幾つかの研究で示されたように高塩摂取量の人々と比較して他の悪い臨床危険因子を一層多く持っているようである。一方、塩摂取量介入と臨床結果のランダム化比較試験はほとんどなく、2011年に行われた試験のメタアナリシスは、減塩はそれぞれの管理条件と比較して心血管疾患発症で20%の低下と関係していたことを明らかにした。

 代替終点よりも厳しい臨床結果を持つ栄養介入の十分に力を持った臨床試験と十分な追跡時間は可能ではない。これは食事介入と長期間の食事変化の維持に対して自由に生活している個人をランダム化することが難しいためである。したがって、このコンテストでランダム化比較試験はコホート研究に完全に置き換えられそうにない。しかし、確認研究は、基準線と追跡で複数の完全な24時間尿調査を含めて厳しい方法論、すなわち、逆相関の可能性を最少にする被験者の採択・排除基準、潜在的な混乱因子の測定と混乱因子の見込みを減らす適当な統計的方法、そして十分な追跡期間で行わなければならない。その後、異なった研究設計の強さと弱さ決定する代理と臨床結果の両方を含むエビデンスの全体性の調査は政策を導くために使われるべきである。

 

6 結論

 塩の科学レビューは塩摂取量と人の疾患に関する最近のエビデンスについて科学者、医者、政策立案者への情報提供を目的としている。この第7回目の塩の科学レビューは塩摂取量と血圧との間のポジティブな関係のさらなるエビデンスを提供し、特に幾つかの集団グループで塩密度(エネルギー摂取量当たりの塩)と血圧との関係を強調している。コホート研究はイタリアの高塩摂取量成人の低塩摂取量で死亡増加を示した。19研究の中で3研究だけが方法論的観点と調査された結果のために、詳細な臨床評価の基準に合っていた。個人の通常の塩摂取量を推定するためにスポット尿を使った研究の数は、特にこの方法の不正確性についてのエビデンスが増加しているので、心配である。公衆衛生政策立案者はこの分野の関係者に知らせるために厳密な研究だけを使うことが極めて重要である。