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正常血圧成人における高血圧および低血圧の発生率に対する

塩代替物の影響

Effect of Salt Substitute on Incidence of Hypertension and Hypertension among Normotensive Adults

By Xianghui Zhang, Yifang Yuan, Chenglong Li, Xiangxian Feng, Hongxia Wang, Qianku Qiao, Ruijuan Zhang, Aoming Jin, Jiayu Li, Huijuan Li, and Yangfeng Wu

JACC Journals      2024;83:711-722    2024.02.12

 

要約

背景:正常血圧者における塩代替の効果に関する報告は少なく、議論の的となっている。

目的:本研究は、塩代替物(NaCl 62.5%、KCl 25%、香料12.5)が正常血圧の高齢者における高血圧および低血圧の発生率に及ぼす影響を評価することを目的とした。

方法:48ヶ所の高齢者介護施設で2年間実施された大規模多施設共同クラスターランダム化試験であるDECIDE-Saltに参加した正常血圧の高齢者を対象に、事後解析を実施した。高血圧発症リスクの比較にはフレイル生存モデルを用い、低血圧エピソード・リスクの比較には一般化線形混合モデルを用いた。

結果:通常の食塩群(n=298)と比較して、食塩代替群(n=313)では高血圧の発生率(100人年当り11.7 vs 24.3、調整HR:0.6095%信頼区間0.302)=0.92、低血圧エピソード(100人年当り9.0 vs 9.7P=0.76)が低かった。介入終了時まで、食塩代替群では平均収縮期血圧/拡張期血圧はベースラインから増加しなかったが、通常の食塩群では増加した。介入群間では、収縮期血圧で-7.5 mmHg、拡張期血圧で-2.0 mmHgの差があった。

結論:正常血圧の中国高齢者において、通常の食塩を代替食塩に置き換えることで、低血圧エピソードを増加させることなく、高血圧の発生率を低下させることができる可能性がある。これは、高血圧および心血管疾患の集団全体にわたる予防と管理のための望ましい戦略を示唆しており、今後の研究でさらに検討する価値がある。

 高血圧は心血管疾患および死亡の主な危険因子であり、世界中で14億人以上の成人が罹患し、年間1,080万人が死亡している。中国では、成人の約27.5(3億人)が高血圧を患っている。

 減塩は、健康を改善するための最も費用対効果の高い方法の一つとして認識されている。しかし、世界保健機関(WHO)による最近のナトリウム摂取量削減に関する世界報告書によると、世界の塩摂取量削減目標の達成は遅く、計画通り2025年までに達成される可能性は低いことが明らかになった。人口減少、高血圧や心血管疾患の有無にかかわらず、個人に適用できる効果的な対策が緊急に必要とされている。塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムに置き換える強化塩代替品は、心血管疾患の予防と管理のための集団全体のナトリウム削減戦略として大きな可能性を示している。しかし、塩代替に関するこれまでの研究野ほとんどは、正常血圧の個人を対象に実施されており、正常血圧の個人のサブグループで塩代替の血圧低下効果が報告されたいくつかの研究を除き、結果は一貫していない。さらに、高血圧の発症を予防する塩代替効果は、公開されている研究で有意性が求められたが、村落で認められた。さらに、通常の食塩を塩代替品に置き換えることで正常血圧の個人の血圧が低下できる場合、低血圧のリスクも増加するかどうかという疑問に答える必要がある。

 中国および世界的に高齢化が加速する中、大規模で急速に増加している高齢者人口は、高血圧と心血管疾患のリスクが最も高くなる。高齢者集団を対象としたDECIDE-Salt試験では、2年間で、収縮期血圧/ベースライン拡張期血圧が代替食塩群では0.8/0.1 mmHg増加したのに対し、通常の食塩群では7.1/1.9 mmHgという純効果が実証された。DECIDE-Saltデータの事後解析として、本研究では、塩代替介入が高血圧患者の高血圧発症リスクを予防するかどうかを解明することを目的とする。

 

 以下、本文は省略。