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高血圧管理における栄養要因のレビュー

A Review of Nutritional Factors in Hypertension Management

Ha Nguyen, Olaide A. Odelola, Janani Rangaswami, and Aman Amanullah

International Journal of Hypertension Vol.2013, Article ID 698940

                                            


要約

 高血圧は世界中の主要な健康問題である。それに伴う罹患と死亡の合併症は患者の生活の質と生存に大きな影響を及ぼす。最適に血圧を管理すれば、総合的な健康結果は改善される。薬剤治療に加えて、食事改善のような非薬物療法は血圧管理で重要な役割を果たす。ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムのような多くの食事成分が過去数十年間で大体研究されてきた。これらの栄養素の幾つかはそれらを勧めるために明らかなエビデンスがあるが、幾つかは論争中であり、まだ研究中である。食事改善はしばしば患者と共に議論され、血圧制御で大きな利益を得られる。それ自体、現在のエビデンスをレビューすることは意思決定する患者や患者の医者そして/または栄養士をガイドする上で非常に有益である。高血圧管理における栄養要因についての本レビュー論文で、我々は全食事パターンの成分として栄養要因の役割を個別に調べることを目的とする。

 

1.はじめに

18歳以上の成人で、高血圧は、高血圧の予防、検出、評価、治療に関する共同委員会(JNC)の第7回報告書による2回以上の外来でそれぞれ適正に測定された2回以上の座位血圧値の平均値に基づいて収縮期血圧140 mmHg以上そして/または拡張期血圧90 mmHg以上として定義されている。WHO(世界保健機関)によって報告された2012年世界保健統計値によると、高血圧は様々な地域で19.7%から35.5%までの範囲の世界人口の約24.8%に影響する。高血圧は外来や入院に至る最も一般的な疾患の一つで、脳卒中、鬱血性心不全、心筋梗塞、末梢血管疾患、そして総合的な死亡についての主要な危険要因である。高血圧に伴うこれらの疾患の多くは診断未確定で、検出された疾患の中で約2/3は最適状態ではなく管理されている。早期治療は血圧と高血圧合併症を大きく改善する。治療オプションには生活様式の変更(減量、禁煙、運動の増加を含む)、降圧剤、特別な場合の手術がある。

臨床と人口に基づく研究は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、繊維、魚油のような食事のいくつかの成分が血圧に影響を及ぼし、これらの栄養要因の変更は、前高血圧段階(収縮期血圧が120 – 139 mmHgそして/または拡張期血圧が80 – 89 mmHg)またはステージⅠ高血圧(収縮期血圧が140 – 159 mmHgそして/または拡張期血圧が90 – 99 mmHg)で特に血圧を管理する重要な戦略を提供する。これらの食事要因の一つだけで、または組合わせて血圧を制御する役割とそれぞれの寄与度がどの程度かについて数十年間の研究課題であったが、それにもかかわらず、まだ論争中である。ヒトの食事を修正することは難しく、生活で重要な変化で、多くの患者はこれに反対または何回か試みても失敗する。しばしば臨床医が患者にこの勧告を勧め、患者の健康における総合的な結果に及ぼす潜在的な影響を与えるために、高血圧管理に対する栄養的なアプローチにおける現在のエビデンスを研究することは大きな利益がある。本論文では、我々は全体的な食事パターンと同様に個別のそれぞれの食事要因の役割をレビューすることを目的とする。

 

2.ナトリウム

 塩摂取量と血圧変化との関係は数十年間、議論の話題であった。高血圧は5.8 g/d以上の平均塩摂取量社会で広く観察され、2.9 g/d以下の摂取量社会では非常に稀である。しかし、塩と高血圧との関係はまだ論争中である。塩感受性対塩抵抗性の概念は塩摂取量の変化に対して多様な血圧応答を示した研究から始まった。これらの変化は高血圧者と正常血圧者の両方で観察された。今日まで、研究方法、技術、期間、塩摂取量の程度、血圧変化に関する発表された研究に非常に大きな変動があったために塩感受性の一貫した定義はない。しかし、ほとんど一般的に使われている方法はワインバーガーによって導入された。2リットルの標準塩水を静脈内投与で塩負荷、0.6 g/dの塩含有食と3錠のフロセミド(1錠に40 mg)の服用による塩欠乏に対する平均動脈血圧応答に基づいて、著者らは2つの血圧測定値を比較して、10 mmHg以上の平均動脈血圧の低下を塩感受性、5 mmHg以下の低下を塩抵抗性として任意に分類した。

生理学の短いレビューとして、ナトリウムのホメオスタシスは腎糸球体ろ過と尿細管からの再吸収によって維持される。ナトリウム再吸収の65 – 75%は近位尿細管で神経液性ホルモン(アンジオテンシンⅡとノルエピネフリン)と再吸収尿細管(アルドステロン、心房性ナトリウム利尿ペプチド)によって媒介され、一方、3035%はヘンレループと遠位尿細管で起こり、これは流れに依存している。ナトリウムの腎糸球体ろ過における変化に応答する腎糸球体活動における並行調節は尿中ナトリウム排泄量をほとんど変化させない。これは進行した腎不全の場合でもナトリウム量がいっていの範囲内であることを説明している。

塩感受性は幾つかの集団:高齢者、黒人、インスリン抵抗性、マイクロアルブミン尿、慢性腎臓疾患、低レニン量で高い発症率であることが分かった。異なった機構、例えば、腎細管のNa+K+ATPase活性に影響を及ぼす、腎臓近位尿細管のドパミン受容体機能を低下させる、またはエンドセリン受容体活性を変えることを通して塩感受性高血圧の発症に幾つかの遺伝的多形性の寄与を最近の動物と分子研究は示唆してきた。塩感受性は血圧に関係なく、左心室肥大、心血管疾患、累積死亡率の増加した危険率について独立した前兆となる要因であると報告されてきた。

幾つかの専門機関によって高血圧やその結果の心血管疾患罹患率や死亡率の予防や治療のための生活様式の行動変化として減塩は強く主張されている。その効果に関する多くの研究にもかかわらず、結果は矛盾しており、この介入を患者に勧め続ける利益に関して自然に疑問を引き起こしている。

幾つかの臨床研究からのエビデンスは、減塩が心血管疾患の危険率減少と同様に正常血圧者と高血圧者の血圧に中程度から大きな低下をもたらすことを示している。

32ヶ国から52センターの横断的な集団研究であるインターソルト・スタディは10,000人以上の参加者で塩摂取量と血圧との関係を調べた。塩摂取量は非常に低い摂取量(0.01 – 3.0 g/d)4センターを含めて非常に幅広く変動していた(0.01 – 14.2 g/d)。個人の塩摂取量と血圧とのかなりポジティブな関係が総合的に報告されてきた。しかし、最低の摂取量である4センターのデータを除くと、関係は無くなった。

高血圧予防食療法(DASH)‐ナトリウム試験はDASH(果物、野菜、低脂肪乳製品が豊富で、飽和脂肪と総脂肪が少ない)またはコントロール食(脂肪が高くて果物、野菜、低脂肪乳製品が低い典型的なアメリカ食)とのいずれかに被験者をランダムに分けた。研究期間中参加者を各グループ内で塩摂取量について段階的(高、中、低)に分けられた。研究は収縮期血圧と拡張期血圧で総合的に意味のある投与量応答低下と減塩による血圧の年齢に関連した上昇を鈍化させることを示した。DASH食と減塩はそれぞれ実質的に血圧を下げるが、組合せると効果は大きかった。

10 – 15年間の高血圧予防試験のフェーズⅠとⅡにおける参加者の前向き追跡研究に関する研究者達は心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、冠状血管移植)と心血管疾患死亡でそれぞれ30%と20%の危険率低下を明らかにしたが、死亡低下は統計的に有意ではなかった。

対照的に、幾つかの研究は、心筋梗塞、全ての死因と心血管疾患死亡、交感神経ホルモン、空腹時の血漿中グルコースとインシュリン濃度、コレステロール、さらに高い鬱血性心不全による再入院と脳ナトリウム利尿ペプチド濃度を含む重要な臨床結果に及ぼす低塩摂取量の有害な効果を示している。高い死亡率と最終段階腎疾患の発症も糖尿病者の中で低塩摂取量と共に報告されてきた。

数年間に及ぶ大規模な集団研究と臨床研究にもかかわらず、全体として、減塩推進を支持するエビデンスは用心して解釈されるべきである。

減塩は“それだけで全て解決される”方法ではないとすれば、塩感受性高血圧者と塩抵抗性高血圧者で個人を区別することは有益である。しかし、研究プロトコールで全ての高血圧患者に塩感受性テストを受けさせる問題は不都合で実行できないように思える。したがって、疑問はどの様にして医者が臨床的に塩感受性を決定できるかであるように思える。この疑問に取り組むために、数件の研究が塩感受性を評価する上で移動性であるが間接的な方法を示唆してきた。De la Sierraと共同研究者達は、外来血圧モニターリングによる患者の行動は塩感受性を調査する有用な機器となることを報告した。彼等の研究で、塩感受性患者は低塩食と高塩食の両方でノンディッパーのプロフィールを示し、一方、高塩摂取量の塩抵抗性者は24時間血圧に大きな変化がないが、睡眠中の血圧を上昇させた。ガレッティらは、塩感受性者患者で24時間尿中ナトリウム排泄量と血圧変化との間に強い相関があることを明らかにした。89人のカリブに住むスペイン系高血圧患者を含む別の研究で、血漿レニン濃度は降圧剤治療に対する患者の応答を評価するために使われた。患者の62%は低レニンの本態性高血圧患者で、ハイドロクロロサイアザイドまたはカルシウム・チャネル・ブロッカーによる治療だけに選択的に応答した。塩感受性を明らかにすることでフルドロコルティゾン投与をテストするフェーズ4のランダム化された研究が現在行われている。高血圧患者の治療を評価するそして/またはガイドする時の通常のテストについて考察される前に、これらの方法は大規模な研究で確認される必要性がある。

利用できるエビデンスに基づいて現在、WHO5 g/d以下の塩摂取量に制限することを勧めており、一方、アメリカ高血圧協会は3.8 g/d以下の塩摂取量をアドバイスしている。

 

3.カリウム

 カリウムと血圧の関係は多くの研究で述べられてきた。アメリカ合衆国の南カリフォルニアに多く住んでいる白人で685人の男女を含む集団に基づく研究で、カリウム摂取量は拡張期血圧と収縮期血圧の両方で逆相関にあることが分かった。同様の結果はロッテルダム研究で示された。それは55歳以上の老人参加者を3,239人含む大規模な集団に基づく研究であった。1000 mg/dと言うカリウム摂取量に増加した患者は収縮期血圧で0.9 mmHg、拡張期血圧で0.8 mmHg低かった。クリシュナとカプールによる研究で、カリウム欠乏はナトリウム排泄量の低下、血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度、収縮期血圧で7 mmHg、拡張期血圧で6 mmHgの増加と関係していることが示された。

 幾つかの介入研究は血圧低下に及ぼすカリウム補給のポジティブな効果を示してきた。カプチーオとマッグレガーは19件の臨床試験をレビューした。そこでは、経口カリウム補給は収縮期血圧(平均‐5.9 mmHg95%信頼区間‐6.6 -‐5.2 mmHg)と拡張期血圧(平均‐3.4 mmHg95%信頼区間‐4.0-‐2.8 mmHg)で有意に低下させた。最低2週間の期間で成人による27件のカリウム試験からなるメタアナリシスもカリウム摂取量の増加で血圧に変化を示した:収縮期血圧で平均‐2.42 mmHg(95%信頼区間‐3.75 -‐1.08 mmHg)と拡張期血圧で平均‐1.57 mmHg(95%信頼区間‐2.65 -‐0.50 mmHg)。ディッキンソンと同僚達はより厳しい採択基準を使い、2006年のコクラン・データベースに発表された彼等のメタアナリシスについて5件のランダム化比較試験だけを選んだ。著者らは血圧に及ぼすカリウム補給の統計的に有意な効果を見出せなかった。しかし、少数の被験者、短い追跡期間、これらの試験の実質的な異質性の主張は、このメタアナリシスの結果についての可能な説明として議論された。

 血圧低下に及ぼすカリウム摂取量の利益は高血圧患者、長期間の補給、同時に高い塩摂取量の場合に大きくなるように思われる。

 血圧低下の程度は数値では小さいように見えるが、高血圧合併症による死亡で利益があると解釈されるかもしれない。6件の異なった集団の研究で、冠状心疾患による25年間の死亡危険率の相対的な増加は収縮期血圧で10 mmHgの上昇当たり1.17(95%信頼区間1.14 – 1.20)と拡張期血圧で5 mmHgの上昇当たり1.13(95%信頼区間1.10 – 1.15)であった。被験者内の血圧変動を調整後、この相対的な危険率は1.28であった。収縮期血圧で5 mmHgの低下は脳卒中者の1/3以下と関係していると報告された。

 心血管の健康に及ぼす高カリウム摂取量の幾つかの保護効果は血圧とは無関係かもしれないことは述べる価値がある。第三回国民健康・栄養調査のデータに基づくアメリカ合衆国成人のナトリウムとカリウム摂取量との死亡率の解析は、比較的高いナトリウム摂取量は全ての死因による死亡率増加と関係しており、一方、比較的高いカリウム摂取量は比較的低い死亡率と関係しているように思えることを示した。注目すべきことに、この結果は性、年齢、高血圧、運動量、体格指数には無関係であった。12年間の前向き研究で、毎日10 mmolのカリウム摂取量増加は脳卒中に関係した死亡の危険率で40%の低下と関係していた。このカリウム保護効果は他の食事変数や知られている心血管危険要因(年齢、性、血圧、血中コレステロール濃度、肥満、空腹時血中グルコース濃度、喫煙)とは異なっていなかった。

 カリウム補給の抗高血圧効果は様々な機構によるものであろう:(1) 近位尿細管におけるナトリウム再吸収を阻止し、レニン分泌を抑制することによるナトリウム利尿、(2) ジキタリス様物質の血漿濃度の正常化、(3) 尿排泄量の増加、(4) 酸化窒素産生を増加させそして/または膜電位過分極の結果で修正K(+)チャネルを刺激することによる血管平滑筋の弛緩とその後の血管拡張、(5) フリーラジカル産生の抑制、そして(6) 塩感受性高血圧の血管傷害に対する保護。これらの機構のどれか一つが血圧低下で主役を演じ、そして/または心血管死亡はこの時点では全く明らかでなかった。

 利用できるデータに基づいて、全ての成人についての十分な摂取量として医学研究所は4700 mg/d (120 mmol/d)のカリウム摂取量を勧めた。同量のカリウム摂取量が血圧低下の潜在的な利益を達成するために2006年にアメリカ心臓協会によっても示唆された。高血圧管理に関する2003年のWHO/国際高血圧協会の声明はカリウム摂取量の増加を支持したが、域値は特定されなかった。しかし、示唆された日々のカリウム摂取量は、慢性腎臓疾患、鬱血性心不全、副腎不全症、そして薬の服用(アンジオテンシン転換酵素阻止剤、アンジオテンシン受容体ブロッカー、カリウム保存利尿剤、トリメトプリム、シクロスポリン、ヘパリン、等)によるカリウムの腎臓排泄不全者のような高カリウム血症を発症させ易い患者で低いかもしれない。これらの患者は頻繁にモニターされる必要がある。

 実際には、多くの国々の平均カリウム摂取量は推奨されている量よりも比較的少ない。第三回国民健康・栄養調査1988-1994年調査からの報告書にあるように、アメリカ合衆国成人の推定平均カリウム摂取量は男性で2900 mgから3300 mg、女性で2200 mgから2400 mgの範囲であった。上記推奨値が出された期間中の2003年から2008年までのNHANESのデータは、成人の2%以下とアメリカ合衆国男性の約5%はカリウム摂取量の推奨値(すなわち、少なくとも4700 mg/d)と一致していた。ヨーロッパ諸国では、成人の1日当たり平均カリウム摂取量は4700 mg以下と報告された。数値はフィンランドで3200 mgから4000 mg/d、またはイギリスで2655 mgから3371 mg/dまで変化した。中国では、カリウムの平均摂取量は都会で1950 mg/d、田舎の食事で1830 mg/dであった。

 カリウムの多い食品は野菜、果物、乳製品、ナッツなどである。カリウムの自然な給源が好ましい。現在、薬物によるカリウム補給はアドバイスされている毎日のカリウム摂取量を得るための方法として勧められない。

 

4.カルシウム

 カルシウム摂取量と高血圧との関係は複雑で、食事中の他の栄養素との相互関係、カルシウム摂取量データの信頼性ある収集の難しさ、重要な限りない混乱変数のために大まかに分離することが難しい。

 血圧に及ぼす食事効果または補給カルシウムに関する多くの研究にもかかわらず、カルシウムの利益に関するエビデンスは確定的でなく論争が続いている。カルシウム摂取量と血圧との逆関係は多くの研究で報告されてきた。同様に、1000 mg/dのカリウム補給は血圧低下をもたらすことを示してきたが、結果は主に高血圧者で首尾一貫していなかった。対照的に、他の研究は血圧に及ぼす食事からのカルシウム摂取量または補給の効果はないか、ごくわずかな効果を報告している。さらに、矛盾した結果は看護師保健研究やNHANESによって例証のような同じデータの解析から導き出されてきた。研究結果の差は、研究参加者の不均一性、研究設計の欠陥、血圧とカルシウム摂取量の測定における限界、短い研究所期間、異なった解析法を含む様々な要因と同時にマグネシウム、繊維、タンパク質、カリウムのような他の食事要因との同一線上にあることによって説明されるかもしれない。

 2つのメタアナリシスはカルシウム補給と血圧との関係を調査した。著者らは収縮期血圧でわずかな低下(1 -2 mmHg)を明らかにし、結果は拡張期血圧についてはもっと小さく、取るに足らないものであった。

 同様の結果はvan Mierloらによる別のメタアナリシスで報告された。収縮期血圧に関する効果は-1.86 mmHg(95%信頼区間-2.91から-0.81 mmHg)と拡張期血圧では0.99 mmHg(95%信頼区間-1.61から-0.37 mmHg)であったが、収縮期血圧への影響は800 mg/d以下の比較的低いカルシウム摂取量の人々で大きかった。2006年に発表されたコクラン・レビューは高血圧治療として経口カルシウム補給の効果を調べた。少なくとも8週間の期間で全部で485人の参加者による13件のランダム化比較試験だけが含まれた。統計的に有意な低下は収縮期血圧で見られたが(-2.5 mmHg95%信頼区間-4.5から-0.6 mmHg)、拡張期血圧では見られなかった(-0.8 mmHg95%信頼区間-21.から0.4 mmHg)。試験の多くは貧弱な品質で、著者らは高血圧治療としてカルシウム補給を勧めるにはエビデンスが不十分であると結論を下した。

 現在、高血圧予防または治療でカルシウム補給の利益に関するエビデンスは弱い;したがって、年齢と性別に基づく1000 – 1300 mg/dと言う推奨摂取許容量以上のカルシウム摂取量を増加させる正当性はない。カルシウムの多い食品は牛乳、チーズ、ヨーグルトのような主に乳製品(多分、低脂肪)である。

 カルシウム摂取量によって血圧を制御する提案されている機構は細胞内カルシウムの変化を含んでおり、それは次に血管平滑筋の収縮、カルシウム代謝と制御ホルモンの効果、ナトリウム利尿の増加、交感神経系の機能調整に影響を及ぼす。興味深いことに、食事でカルシウム摂取量の低い人々の中で、高塩摂取量は高い血圧値と関係しており、高塩摂取量の高血圧効果はカルシウム摂取量の増加によって軽減されるかもしれないことが示唆される。レズニックもまた塩負荷、カルシウム補給、カルシウム・チャネル・ブロッカーに対する血圧応答を調節することでレニンーアルドステロン系、カルシウム制御、塩感受性の連結に関して広範囲に発表した。カルシウム補給または血清レニン濃度と塩感受性に基づいたカルシウム・チャネル・ブロッカーで高血圧者を明らかにし、治療することを目標にした方法をこれらのモデルが提供するかもしれないと彼は示唆した。

 

5.マグネシウム

 マグネシウム欠乏は個別の研究で血圧上昇の結果を見出せなかった。しかし、29件の観察研究で行ったメタアナリシスはマグネシウム摂取量と血圧との間にネガティブな相関を指摘している。

 マグネシウム補給と血圧低下とのあいだの因果関係についてのエビデンスは8から26週間の間で追跡した12件のランダム化された試験を含むメタアナリシスで弱かった。20研究による他のメタアナリシスでは、投与量応答パターンは観察されたが、マグネシウム摂取量だけでは、収縮期血圧について平均-0.6 mmHg(95%信頼区間、-2.2 – 1.0 mmHg)と拡張期血圧で-0.8 mmHg(95%信頼区間、-1.9 – 0.4 mmHg) と血圧にわずかな低下を示した。

 

6.アルコール

7.繊維

8.オメガ-3ポリ不飽和脂肪酸(魚油)

9.ニンニク

10.有害な可能性のある製品

10.1.カフェイン

10.2.カンゾウ

  以上省略

 

11.食事全体のパターン

11.1DASH

 DASH食は果物・野菜(4 5/d)と低脂肪乳製品(2 – 3/d)の多い食事で、全穀粒、鶏肉、魚、ナッツを含んでいる。この食事はカリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維、タンパク質が豊富で、脂肪(総と飽和)とコレステロール(25%以下)、赤肉、スィーツ、砂糖を含む飲料を減らしている。

 2件の比較臨床試験は血圧低下におけるDASH食の効果を確立した。最初のDASH試験は前高血圧者とステージⅠ高血圧者で未治療の459人の参加者を登録し、(1) 果物・野菜・乳製品が少なく高脂肪の典型的なアメリカ食を食べているコントロール・グループ、(2) 果物・野菜の多い食事、または(3) DASH食塩摂取量の3グループに彼等を割り付け、8週間の研究期間中、体重は一定に維持された。コントロール・グループと比較して、血圧はDASH食と果物野菜食でそれぞれ5.5/3.0 mmHg2.8/1.1 mmHg低下させた。この低下は、DASH食を食べた正常血圧者についての3.5/2.1 mmHgと比較して高血圧者で11.4/5.5 mmHgと高かった。さらに、血圧低下は2週間以内に始まり、その後の6週間維持された。

 DASH-ナトリウム試験は横断試験で、そこでは412人の被験者がコントロール食またはDASH食と3段階の塩摂取量(低:1.2 g/d、中:2.3 g/d、高:3.5 g/d)のいずれかにランダムに割り当てられ、4週間各食事を食べた。参加者の収縮期血圧は120 159 mmHg、拡張期血圧は80 – 95 mmHgであった。初期の研究と同様に、DASH食は塩摂取量とは関係なく血圧を有意に下げた。各食事で、減塩は血圧をかなり下げ、これらの効果は異なった人種、性に関係ないと同時に高血圧者でも正常血圧者でも維持された。DASH食と減塩の組合せは最大の影響を及ぼし、コントロール食と高塩食を比較して高血圧者と正常血圧者でそれぞれ収縮期血圧を11.5/5.7 mmHg7.1/3.1 mmHg下げた。高血圧者の低下程度は薬剤治療だけで得られる値と比較できる。

 高血圧のアフリカ系アメリカ人はDASH食の血圧低下効果からの利益を一番得られるが、彼等はその食事にあまり固執しないようである。さらに、加齢に伴う血圧上昇は減塩とともにDASH食を採用することにより下げられる。

 DASH食の他の潜在的な利益は二型糖尿病の予防と同様に、心血管罹患、心血管死亡、鬱血性心不全、心血管危険要因の低下を含んでいる。

 DASH食と減塩食はアメリカ心臓協会、合同国家委員会、臨床内分泌学者のアメリカ協会、そして高血圧予防治療のためのカナダ高血圧教育計画を含む専門機関によって支持されてきた。

 DASH食に従うことの障害はコスト、有効性、利便性、情報不足、文化的な食事嗜好である。アメリカ合衆国保健福祉省はガイドブック、DASH食で血圧を下げるガイドを出版した。それはDASH食に従って食事を用意する患者をガイドする情報源である。

 PREMIER試験は120 -159 mmHgの収縮期血圧と80 - 95 mmHgの拡張期血圧の飯伊の810人の成人を研究した。患者は3つの介入グループに分けられた:1回のアドバイス、確立された勧告に基づく“確立された”行動介入、そして“確立された食事+DASH食”。食事は参加者によって用意され、電話インタビューで追跡された。勧告だけを受けたグルコースと比較して、行動介入を行った2グループは高血圧発症と6ヶ月間の追跡で最適血圧の高いパーセントにかなりの低下をもたらしたことを結果は示した。しかし、それらの間には統計的に有意な差はなかった。

 

11.2.ベジタリアン食

  省略

 

12.結論

 食事修正は血圧管理で重要な治療的役割を持っている。高カリウム、中程度のアルコール、そして高い繊維摂取量の食事を勧める強いエビデンスがある。全体として、DASHパターンの食事は果物、野菜、低脂肪乳製品、全穀粒、ナッツ赤身の少ない魚が多く、脂肪、砂糖で甘くした食品や飲料の少ない、そして/またはベジタリアン食で、それは野菜、果物が多く、動物性ンタパク質が低いことも考慮されている。これらの食事目標を達成させるために薬物補給の使用はアドバイスできない。減塩は専門機関によって強く勧められているが、様々な患者集団で潜在的な有害効果やその結果、不均一な効果に関連したエビデンスを個別に提示して、これは注意深く解釈される必要がある。勧告はカルシウム、マグネシウム、魚油、ニンニクの摂取量増加に関して必ずしも確定しているわけではない。不規則なコーヒー飲みやカンゾウ消費者は高血圧を発症させる可能性に直面している;したがって、これらの習慣は危険性のある患者では避ける必要がある。

 確立された栄養勧告は血圧を下げ、それにより高血圧に関連した合併症や総合的な死亡を減らすのに役立つと証明されている。しかし、危険要因、患者の特性、高血圧の病因の異質性を考慮して、アプローチは個別に考えられるべきで、それぞれの患者の明らかな疾患特性の理解に基づいて、患者と医者そして/または栄養士との間の詳細を考察すべきである。

 高血圧管理で食事改善の重要性は有望な結果をもたらして過去数十年間しっかりと研究されてきた。追加的な研究は、特別な集団におけるこの状態を予防し治療するこれらの栄養因子の役割をさらに探索することが望まれる。