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食事中のナトリウム()と血圧との関係および

他の食事要因によるその可能な調節

Relation of Dietary Sodium (Salt) to Blood Pressure and

Its Possible Modulation by Other Dietary Factors

The INTERMAP Study   

By Jeremiah Stamler, Queenie Chan, Martha L. Daviglus, Alan R. Dyer,

Linda Van Horn, Daniel B. Garside, Katsuyuki Miura, Yangfeng Wu,

Hirotsugu Ueshima, Liancheng Zhao, and Paul Elliott and for the INTERMAP Research Group

Hypertension 2018:71;631-637

 

要約

 入手可能なデータは、食事中のナトリウム(塩として)が血圧に直接関係していることを示している。これらの調査結果のほとんどは、食事データが不足している研究からのものである。したがって、このナトリウムと血圧との関係が他の食事要因によって調節されるかどうかは不明である。体格指数ではなく複数の非食事因子を管理することで、INTERMAP(マクロ/微量栄養素および血圧に関する国際研究)24時間尿中ナトリウム排泄量の血圧および4059歳の4,680人の男性と女性との間の尿中ナトリウム/カリウム比と直接的な関係があり(中国、日本、イギリス、およびアメリカの17ヶ所の人口試料)、そしてその2,195人のアメリカ人参加者の間で、例えば、2 SD高い24時間尿中ナトリウム排泄量(118.7 mmol)3.7 mmHg高い収縮期血圧と関係していた。これらのナトリウムと血圧との関係は性別、老若男女、黒人、ヒスパニック、白人、社会経済層の両方について、13の主要栄養素、12のビタミン、7のミネラル、18のアミノ酸を管理しながら持続した。体格指数を制御すると、ナトリウム-血圧(ナトリウム/カリウム-血圧ではない)の関係が弱くなった。正常な体重と肥満の参加者は、尿中ナトリウムは血圧と有意な関係を示した。太りすぎの人にとっては、関係が弱かった。より低いがより高いレベルではない24時間ナトリウム排泄量では、カリウム摂取量はナトリウムと血圧との関係を鈍らせた。食事中のナトリウムと血圧との悪影響は、他の食事中の成分によって最小限に抑えられる。これらの発見は、前高血圧と高血圧の予防と管理のために塩摂取量を減らすことの重要性を強調している。

 

はじめに

 習慣的なナトリウム()の摂取量は血圧に直線関係していると言う研究証拠が利用可能である。例えば、10,079人の女性と32ヶ国の52ヶ所の集団試料からの2059歳の男性を含むインターソルト(塩、他の要因、そして血圧に関する国際共同研究)で、生態学的(集団間)分析(n=52)は、試料の24時間中央ナトリウム排泄量と試料の中央血圧値と高血圧発症率との間に有意で独立した関係を示した。個人(n=10,079)に関する集団内分析でインターソルトは24時間ナトリウム排泄量と収縮期血圧との間に有意な正の独立した線形関係を示した。食事データはインターソルトでは収集されなかった。広範な研究データに基づいて、専門家グループは人口全体のナトリウム摂取量を減らすための推奨を繰り返し行ってきた。しかし、食事療法の塩の重要性に関しては意見の不一致が続いている。

 日本、中華人民共和国、イギリス、アメリカの17の母集団試料からの4059歳の4,680人の女性と男性のINTERMAP(マクロ/微量栄養素および血圧に関する国際研究)では、各参加者は24時間尿試料を2回集めた。研究スタッフは4つの詳細な24時間食事思出法から詳細な栄養データを収集した。個々での分析では、これらのINTERMAPデータを使用して、24時間尿中ナトリウム排泄量の血圧および尿中ナトリウムとカリウム(Na/K)の定量的関係を評価する。そして複数のマクロ/微量栄養素の摂取量がこれらのナトリウム摂取量と血圧との関係を調整したかどうかも評価する。

 

方法

 

結果

 以上の章は省略。

 

考察

 ここでの4,680人のINTERMAP参加者全員と2,195人のアメリカ参加者の主な調査結果は、モデルに体格指数がない多変量解析における24時間尿中ナトリウム排泄量およびNa/K排出量の血圧との有意な直接関係である。多変量モデルに体格指数追加すると、ナトリウム摂取量と血圧との関係は減衰するが、Na/K-血圧関係は減衰しない。通常の体重と肥満の参加者の両方にとって、かなりのナトリウム摂取量-血圧関係である。NaまたはNa/Kと血圧のJ字型関係の証拠はなく;低レベルのナトリウム摂取量でのカリウム摂取量によるナトリウム摂取量-血圧関係の強さの適度な変調(減少);そして1度に1ずつまたは4つの多変量の組み合わせ(微量栄養素、ビタミン、ミネラル、アミノ酸)と見なされる80の他の食事変数のいずれかによるNa-血圧またはNa/K-血圧の関連性の減衰はない。

 NaおよびNa/K摂取量の定義された集団から血圧への個人の直接的な関係に関してこれらの調査結果は、民族的および社会経済的層全体で、若年および高齢の女性と男性に普及した。それらは、インターソルト・スタディの結果と一致しており、これらの関連性が他の複数の食事要因の制御に優勢であり、他の複数の食事要因によって弱められていないことを示している。

 多変量解析分析への体格指数の追加がナトリウム摂取量-血圧関係の減衰をもたらしたという発見は、より高い食べ物、したがって、より高い体格指数による高いナトリウム摂取量、およびナトリウム摂取量-血圧と体格指数-血圧との関係を統計的に反映している可能性がある。これは栄養素変数とは異なり、身長と体重(体格指数の定式化に使用)が高精度で測定され、重回帰分析では適切に測定された変数が優先的に選択される可能性があるために発生した可能性がある。栄養素と血圧関係の体格指数によるこのような減衰は以前の分析で見られた。対照的にNa/K比は食べた食物の量(むしろ食物の質)に依存せず、体格指数との相関は低くなり(0.13と言う偏相関)、したがって、偏向が発生する可能性ははるかに低くなる。我々の研究の限界にはその断面設計が含まれるため、因果推論は不可能であり、不正確な測定に関連する回帰希釈バイアス、および残留交絡の可能性がある。ただし、これらの制限を最小限に抑えるために多大な努力が払われた。

 ここで報告されたナトリウム摂取量-血圧関係に関する調査結果は、動物実験、疫学調査、および年齢に伴う血圧上昇におけるナトリウム摂取量が関与したランダム化比較試験、中年から高齢までの血圧上昇や高血圧の高い発症率からの多くのデータを加えている。DASH(野菜、果物、全粒粉、無脂肪および低脂肪の乳製品、マメ科植物、無塩ナッツと種子、シーフード、および不飽和の栄養豊富な摂取量増加を伴う植物油)のような食事療法は血圧低下に効果的である。DASH-ナトリウム試験はNaの減少がDASH食単独の効果を超えて追加の血圧低下を引き起こすことを示した。血圧に対するDASH食とNaの独立した相互作用の影響を説明するメカニズムと経路はまだ解明されていない。しかし、17の試料と4ヶ国で一貫性があり再現性のある食事中のナトリウム摂取量-血圧に関する調査結果は、公衆衛生にすぐに実用的な影響を及ぼし;食事中のNaNa/K比が血圧に及ぼす悪影響の予防と管理には人口全体の塩摂取量を大幅に減らす必要があり;それらは他の食事/生活様式の手段を代用することによってのみ達成することはできないが、DASHタイプの食事を含めて有用である。アメリカ人や他の多くの国々が摂取する塩の大部分は市販の製品からのものであるため、食品業界による製品の塩含有量の大幅な削減は、世界の血圧上昇の広がりを制御するための重要な取り組みである。

 要約すると、全体的なINTERMAPデータとアメリカのINTERMAPデータは、食事中のNaおよびNa/Kと血圧との不利な関係を確認し、血圧に影響を与えるものを含む他の複数の食事要因(主要栄養素および微量栄養素)がナトリウム摂取量-血圧関係に及ぼす僅かな効果しかないことを示している。前高血圧および高血圧症の進行を予防し制御するために、食物供給の塩含有量を大幅に減らす必要がある。