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    塩摂取は本当に有害か? 複雑な論争が熱をおびる   

Is Dietary Sodium Really Harmful? A Complex Debate Heats Up

By Taylor Wolfram

Food & Nutrition March-April 2016   2016.02.26

 

 減塩は既に高血圧であり人々については当然有益であるが、国民全員に益々頑なな塩摂取量勧告は熱く論争されており-そして少な過ぎる塩摂取量は他の健康問題を引き起こす可能性があると言う関心は複雑な論争を生み出している。

 減塩を勧めている公衆保健は正確には新しくない。1980年に発表された最初のアメリカ人の食事ガイドラインは“塩の摂り過ぎを避けるように”アメリカ人に奨励し、以来、改訂される度に食事中の塩含有量を制限することに関する鍵となる勧告を含めている。

 2015年の食事ガイドラインは5.8 g/d以下、前高血圧者や高血圧者には3.8 g/d以下の塩摂取量を勧めている。減塩は高血圧を改善することに医学研究所は同意しているが、全員に低塩摂取量を勧める十分な証拠はないとも述べており-ある人々にとっては健康結果を悪くすることもあることを指摘している。そして現在、アメリカ心臓協会は全ての人々に3.8 g/d以下の塩摂取量を勧めている。

 

塩摂取量研究の裏にある歴史

 これらの勧告の発展を理解するには手短な塩摂取量研究の要約が必要である。20世紀の半ばに、高血圧と戦うために減塩に賛同する強い証拠が初めて出て来た。1980年代と1990年代からの高血圧予防試験(またはTOHP)と呼ばれる一連の研究は前高血圧集団に減塩に賛同する追加的なデータを提供した。2000年代の始めにTOHP追跡研究は塩摂取量と心血管疾患との有意な相関関係を明らかにし、2.54 g/d塩摂取量毎に17%の危険率増加を示唆した。TOHP研究者達は、“集団の大多数で当時の食事ガイドラインと矛盾しない3.8 – 5.8g/dに減塩する総合的な健康利益がある”と結論を下した。ナトリウム-カリウム摂取量比は心血管疾患の結果に重要な影響を及ぼすことをTOHPデータも示唆している。

 TOHPデータの限界はエネルギー摂取量についてのコントロールがないことであった。ほとんどカロリーを摂取しない人々は当然、塩摂取量も少なく、必然的に彼等を低い疾患危険率に置かない(そして逆もある)。さらに、個人が塩摂取量にどう反応するかは彼等の基準血圧に依存する。TOHP参加者は既に血圧を上昇させており、血圧が高い時に少ない塩摂取量は大きな血圧低下効果を発揮する。しかし、血圧が正常であると、減塩は血圧にほとんど影響を及ぼさない。

 2014年は塩摂取量研究で重要な年。総合的な文献レビューによると、8.6 g/d以上塩摂取量と7.4 g/d以下の塩摂取量は集団全体で心血管疾患の発症、全ての死因、入院を増加させたと言う限られた証拠があると結論された。その年にも、6.7g/dから12.6 g/dの塩摂取量の人々は最低の心血管疾患と死亡危険率であり-塩摂取量と死亡率とをプロットすると、最高と最低の塩摂取量で有意に増加する危険率を持ったU字曲線を描くことをメタアナリシスの著者らは明らかにした。17ヶ国で15万人以上を追跡した大規模疫学研究から幾つかのより説得力のあり議論となる結果が現れた。

 最低死亡率と心血管疾患危険率の参加者は7.6 g/d – 12.4 g/dの塩摂取量と1.5 g/d以上のカリウム摂取量であった。血圧が高い時、高塩摂取量は死亡と心血管疾患の危険率増加とだけ関係しており、一方、12.4 g/d以上の塩摂取量である正常血圧者は死亡や心血管疾患の危険率増加を経験しなかった。さらに、7.6 g/d以下の塩摂取量の人々は、血圧が正常である時、危険率増加を経験しなかった。

 これらの研究の懐疑論者は介入試験の欠如、不審なナトリウム調査手段、ランダム化しがちな統計解析、体系的な間違いを挙げている。逆相関の疑問もある:人々が病気になった時、あまり食べない傾向があるので、塩摂取量も少なく-減塩が健康を悪くするのか、あるいは悪い健康が塩摂取量を少なくするのかどうかを疫学研究は決定できない。

 

両側とも事例となる

 2015年のアメリカ心臓協会の科学セッション中に、いずれの側の著名な研究者達はこの問題の複雑さを論争した。減塩支持者達は健康を守るために減塩を主張し、アメリカ人は減塩しなければならない-そしてアメリカ人の塩摂取量の大部分は加工食品からであるので、この努力は産業界が広く介入することに焦点を置くべきである。反対側の支持者達は血圧上昇のない人々について6.4 g/d以下の塩摂取量に対しては利益がなく、幾つかの場合には実際に有害であるかもしれず、データの外挿に関する一般的なガイドラインに基づく減塩は根拠が薄弱であると主張した。

現在、塩論争を解決するための完全な研究はない。長期間の追跡期間を伴った大規模なランダム化された比較試験は難しく費用がかかり、理想的な塩摂取量調査手段はまだ開発されていない。その間、DASH食-塩摂取量(DASH食試験は平均約7.6 g/dの塩摂取量)よりも果物や野菜により重点を置いている-は高血圧の最も有効な食事介入である。

そして患者と正常血圧者について開業医は臨床判断、ガイドライン勧告、科学的証拠に基づく個別の食事パターンを開発し続けるべきである。