塩欲求の中枢制御
Central Regulation of Sodium Appetite
By Joel C. Geerling, and Arthur D. Loewy
Experimental Physiology 2008.01.16
要約
塩摂取の行動的衝動である塩欲求は多くの動物種で長引いた生理学的塩欠乏によって刺激される。実験動物で塩欲求の原因となっている同じ神経機構は人間の行動にも同様に影響するかもしれない。特に心不全、腎不全、そして塩感受性高血圧のような疾患を持つ患者の塩摂取量に関連している。1930年代のカート・リッチャーの最初の実験研究以来、塩摂取行動の制御について多く学習されてきた。ここで、我々は生理学、薬理学、神経解剖学そして神経行動的研究から塩欲求を制御する刺激信号や抑制信号までのデータをレビューする。刺激された摂取応答を駆動させるために塩の味覚検出のための神経信号でナトリウムの必要性を表す末梢情報を調整する脳回路のために基本構成が提案されている。このモデルに基づいて、残っている不明瞭領域は、さらなる情報が塩欲求を引き起こす神経回路のより詳細な理解を許す所に強調されている。
‘金を探さない人はいるが、塩を必要としない人は生きていけない。’カッシオドルス
塩として知られている塩化ナトリウムは我々の食事の不可欠な物であり、ナトリウムは必須微量栄養素以上の物である。塩資源の管理を巡って戦争が戦われてきた。塩は歴史の様々な点で金よりも貴重な日用品であった。英語の‘サラリー’は塩(サラリウム)についてのラテン語に由来し、ローマ兵士に支払うためにかつては使われた。今日、生産的な人は‘彼の塩の価値’があると言われている。
塩についての他の優れた参考書が歴史を通して出版されている。ホーマーの詩は‘神の物質’として塩をあげており、プラトーは、塩は‘神々にとって特に貴重’であると述べた。‘塩’と言う言葉は聖書に50回以上も書かれており、‘汝は地の塩である’のようによく知られた詩句がある。シェクスピアーのリア王はヨーロッパの有名な民話に基づいており、その中で娘は‘塩のように’王を愛するように言ったために、王は彼の娘を追放したが、その後、塩なしで生きることを試みた後、彼女を許した。
塩は我々の近代的な食事で主要成分(塩があまりにも大きな成分であり過ぎると主張する人がいる)である。我々は塩味を望むようにマグネシウム、ヨード、あるいはカリウムのような他のミネラルを切望することはない。塩摂取量と高血圧との間で論争されている関係はアメリカ医学協会を含む多くのグループに食品、特に加工食品中の塩含有量を徹底的に減らすことを呼び掛けてきた。一方、疫学者達は健常人対高血圧者における様々な塩摂取量の害と益を巡って衝突しているが、本レビューは別の疑問を考察する:どうして塩をそんなに欲しがるのか?ここで我々は、塩の魅力を説明するのに役立てるため実験動物で発見されている多くの生理学的条件と神経機構をレビューする。
どうして我々は塩を食べることを必要とするのか?
体液収支は神経ホルモン制御系によって精密に調整されている。細胞外液(血漿を含む)の量または成分の変化後に、これらの制御系は狭い限界内で元に戻すように適切な補正をしている。体液収支の方程式で、2つの主要な変数は水とナトリウムである。それらの摂取量と排泄量の補足的な調整を通して収支は維持される。
水の摂取量と排泄量を調整する制御系は細胞外液中の溶質濃度の調整用の主要な手段であり、一方、水とナトリウムの両方の制御は心臓による最適組織灌流に十分な血液量を維持するために必要である。水摂取量(喉の渇き)、水排泄量そしてナトリウム排泄量のための基本的な制御機構はかなり上手く特性付けられ、広く認識されているが、ナトリウム摂取量の調整についてはほとんど理解されていない。
ナトリウムは最も多い細胞外液溶質である。細胞外液(血漿を含む)の浸透圧はナトリウム濃度とその付随陰イオン濃度によって主として決められている。細胞外液浸透圧はほぼ290 mosmol/l(浸透圧の大部分は140 mM Na+とその結果、付随陰イオン、主に塩化物からなっている)の設定点近くに精密に維持されている。
体液ホメオスタシスにおけるナトリウムの役割を認識するために、細胞外液浸透圧は水の摂取量と排泄量によって主として調整されており、一方、細胞外液量は体内総ナトリウム含有量に正比例していることを理解することが重要である。すなわち、体内の総細胞外液量は細胞外空間に存在するナトリウム量に大きく依存している。その周囲の水の出入りは浸透圧をきちんと管理するために調整される。ナトリウムが血漿量を減らすために排泄されなければならない理由がこの調整準備で、ナトリウムは摂取されて血漿量を増加させるために保持されなければならない。
したがって、細胞外液量の増加(成長と体液損失を補充するために必要)はナトリウム摂取量によって完全に限定される。ナトリウム損失以上に水損失が大きいためにナトリウム濃度が上昇するときだけ、量の損失を置き換えるために水摂取量だけで十分である。対照的に、図1に示すように、大きなナトリウム量を含む体液損失(例えば、長引いた発汗または出血)は水摂取量だけでは十分に置き換えられない。
図1 細胞内液と細胞外液の脱水
A, 体液が失われた後、細胞外液量は低下し、その溶質濃度(浸透圧)は増加し、そして水が高張細胞外空間に移動するので細胞は収縮し、‘細胞内脱水’と言われる状態になる。この状況は抗利尿と喉の渇きを刺激し、その結果による飲水と水の保持は細胞外液量と浸透圧を正常に復帰させる(簡単に言えば、細胞外液浸透圧を復帰させないもっと長引いた脱水中に起こる腎臓のナトリウム利尿をこの図は示さないが、細胞外液量の追加的な損失を少なくする結果となり、喉の渇きに加えて塩欲求をわずかに刺激する)。
B, 対照的に‘細胞外液脱水’はナトリウムを含む体液の損失のために、細胞外液量のより大きな低下(浸透圧変化の有無)である。この場合、飲水だけでは細胞外液量を正常に復帰させるには十分でない。事実、過剰な飲水は細胞外液浸透圧の低下を引き起こし(低ナトリウム血症)、それは十分な溶質(ナトリウム)が復帰されるまで、追加的な溶液の摂取と保持を阻止する。
そのような状況で、塩のない多くの水を飲むことは低ナトリウム血症を引き起こし、そのことは典型的にさらなる飲水を阻止する。‘水中毒’として知られる過剰飲水はラジオ局コンテストで2ガロンの水を飲んだ後死んだ女性の場合のように致命的となる。時々、この問題は過剰な発汗で大量の水を飲んだ後、危険な低ナトリウム血症になるマラソン・ランナーのような耐久競技者で起こる。しかし、水と一緒に塩を摂ると、体は摂取したナトリウムと水の等張混合物を保持し、血液量をより効果的に保持する。
ナトリウムは重量で細胞外液の1%以下であるので、液量復帰の必要なナトリウム量は飲まなければならない水量に比較して全く少ない。したがって、抗利尿と喉の渇きは体液損失に応答して刺激される主たるホメオスタシスな駆動力で、最初のナトリウム調整の最も重要な点は腎臓による保持である。
細胞外液量が増加すると、血圧が上昇し、上昇した灌流圧が腎臓にもっとナトリウムを排泄させるように働く。逆に、細胞外液量が減ると、ナトリウムが保持される。この保持はステロイド・ホルモンのアルドステロンによって主に媒介される。副腎で作られるアルドステロン濃度の上昇は尿からのナトリウムのほぼ完全な保持を刺激する。この注目すべき調整機構は生存のために重要である。副腎切除または全体的な機能不全は、アルドステロンの外因性置換または連続的なナトリウムの食事補給のいずれかがなければ常に致命的である。
しかし結局、ナトリウム保持は戦いの半分に過ぎず;腎臓は体内に既にある量だけを維持できる。この制御システムの他の重要な点は塩摂取量の調整である。正常な状態下で、必須のナトリウム損失は少なく、必要に応じて、腎臓は時間をかけてもほぼ完全な尿中ナトリウム保持を維持できる。これにより動物はナトリウムのない食事で何週間も生存できる。しかし結局、細胞外液量はナトリウムの排泄がなければ増加も復帰もない。慢性的な容量不足とナトリウム欠乏による血漿カリウム中の二次的な増加は知らない間に厳しい健康結果を引き起こす。慢性的なナトリウム欠乏は成長妨害、生殖障害、筋肉量の低下、骨組成の変化そして様々な他の病状を引き起こし、それらは結局致命的になる。
簡単に言えば、正常な成長はナトリウムの摂取と保持を必要とする。塩の摂取がなければ、成長は遅くなり、再生は失敗し、そして動物は早死にする。ヒトではナトリウムのない食事を継続すると、骨の石化作用が止まり、脂肪を除いて全ての組織で成長が止まる。ヒトでは短期間のナトリウム欠乏でも厳しい筋肉痙攣、食欲喪失、吐き気、疲労、そして著しい減量を引き起こす。
これらの深刻な健康への影響、特に成長や再生の欠損を考えると、長期間のナトリウム欠乏に応答してナトリウム摂取量を促進させるために配線された行動機構が進化してきたことは驚くことではない。
ナトリウム欲求とは何で、どうしてそれが重要か?
ナトリウム欲求(塩欲求としても知られている)は特にナトリウム欠乏に対する応答として多くの種で生じる動機付けられた行動状態である。名前が示しているように、それが動物にナトリウムを含んでいる食べ物や飲み物を探させ食べることに駆り立てる。塩欲求は配線された調整機構で、喉の渇きのように細胞外液量を復帰させるために極めて重要である。
塩辛い食事や飲物が自由に摂取できるとき、動物(ヒトを含めて)は自然に基準線または緊急な必要量または成長の要求量を超える摂取する‘必要のない’量を示すことを述べることは重要である。この塩(と水)の規準摂取量はかなりの水損失がなくても体液収支を維持するために十分な量以上で、過剰なナトリウムまたは水は簡単に尿中に排泄される。‘必要のない’塩摂取量の程度はナトリウム欠乏の事前の症状発現特に、妊娠中の妊婦の病気に伴う出生前の経験によって影響される。しかし、どの程度の自然な塩摂取行動が、ナトリウム欠乏に対する特別な応答として行動的に定義されるナトリウム欲求(塩欲求)の原因である同じ脳回路に関わっている。
ナトリウム欲求についての多くの逸話風エビデンスが何世紀も存在したが、直接的な実験的証明はカートの生産的な研究を待った。この時点で、副腎切除は副腎皮質で産生される重要な‘ミネラロコルチコイド’ホルモン(アルドステロン)の損失のために動物に尿中ナトリウムを排泄できないようにすることが認められた。動物の餌が連続的にナトリウムを追加しなければ、副腎摘出された動物は急速に衰えほぼ1週間後に死んだ。塩が突然動物の生存に必要となれば、特別な塩を探し摂取するように動物に強いる先天的な行動メカニズムを動物が持っているかどうかをリッチャーは知りたいと思った。彼が副腎摘出されたラットに塩水を与えたとき、ラットは高濃度(3%NaCl,ほぼ海水濃度)でも大量に飲んだ。手術前にはラットはわずかに少量を飲んだだけであった。この劇的な行動変化は彼の元の図の一つに明らかで、図2に再現した。これらのラットによる自発的な塩摂取量増加は尿中ナトリウム損失を補うに充分な量以上であり、それでもラットは生存し続けた。
図2 カート・リッチャーがナトリウム欲求についての最初の実験的エビデンスを提供し、ラットが生理学
的欠損に応じて塩水の飲量を大きく増加させることを示した。
これらの実験で、副腎切除で深刻で連続的なナトリウム欠乏が生じた。副腎は腎臓によるナトリウム保持に
決定的なステロイド・ホルモンであるアルドステロンを産生する。最も説得性があるのは右側の図に示すデータ
で、3%NaCl溶液は海水濃度とほぼ同じであり、通常、ラットがごく少量しか飲まない塩水濃度でも、副腎除
去後に大量の塩水を飲み始める典型的なラットの飲水行動を示している。これらの図は許可を得てリッチャー
の古典的な論文から再製された。
この飲水高度の変化はナトリウム欠乏に応じて特に生じたことは、機能のある副腎組織が副腎切除されたラットに移植して戻された時、塩水摂取量は正常に戻されたことを示すことによって確認された。同様に、ナトリウム保持が補充量のミネラロコルチコイド注入によって回復されたとき、ラットの塩水摂取量増加はなくなったが、ホルモン置換を止めたとき、直ちに再現した。
副腎を除去しなくてもナトリウム欲求を刺激する継続的なナトリウム欠乏を引き起こす多くの他の実験方法をその後の研究は明らかにした。これらの方法には慢性的なナトリウム摂取量欠乏、腹膜透析、コロイドによって誘発される血液量減少、そして短期間のナトリウム摂取量欠乏と結びついたフロセマイド利尿がある。
ふさわしくは、ナトリウム欠乏によって刺激された欲求はナトリウム塩類の味に対して非常に特別である。ナトリウム欠乏のラットは非ナトリウム塩類(カリウム、カルシウムなど)以上に絶えずナトリウムを選び、その対となる陰イオン(塩化物、酢酸など)はこの嗜好にはほとんど、あるいは全く影響しない。
ナトリウム欲求は非常に動機付けられた行動状態である。ナトリウム欠乏ラットは塩辛い報酬のために運動量を増加させる行動(バーを押す)をする。また塩に飢えているときには、塩水管に繋がっている走路を非常に速く走り下る。興味深いことに、砂糖のような通常の報酬刺激である他の快楽値はナトリウム訴求の増加に連携して低下するように見える。事実、塩に勝る砂糖に対する通常の嗜好はナトリウム欠乏中には逆転する。そのような状態のラットはグルコースまたは他の糖液よりも塩水を多く飲水する。選択させるとき、ナトリウム欠乏ラットは、大脳刺激に直接報いると言う中程度の強度に勝って塩味を選ぶ。
ナトリウム欲求の潜在力は種間で幅広く変化するが、それは維持されている行動的な応答である。野生で容易に観察される塩を探す行動を示す草食動物を選ぶための特異な現象を一度失うと、ナトリウム欲求の決定的なエビデンスはネズミ、ラット、ウサギ、ハト、カンガルー、ヒツジ、山羊、家畜、馬、猿そしてヒトを含めて幅広い様々な種で明らかにされてきた。
塩を探し求める性質は多くの野生動物に必要なこととして残っており、特にナトリウムの少ない環境の草食動物ではそうであるが、ヒトではそうでない。今ではナトリウム(塩)はどこでも入手でき、我々の食事には多く存在し、そのような状況では、ほとんどの人々は塩欲求を刺激するに十分な長く厳しい欠乏を経験することはない。血液量減少(継続的なナトリウム欠乏)を生じさせることに失敗した古い臨床試験がヒトのナトリウム欲求の存在に対してのエビデンスとして引用されたが、本当のナトリウム欠乏を含む臨床観察やその後の実験はエビデンスでないことを示唆している。
1940年に、ウィルキンスとリッチャーは、診断未確定の副腎疾患(多分、先天的な副腎過形成による重症の塩消耗)に罹っている子供の塩渇望を述べた。この魅力的な事例報告で述べられているように、少年は非常に早い年齢から塩と水の両方について極端で持続的な欲求を示した。彼が述べた前でも、彼が食べた全ての物に塩を要求し、‘塩’は彼が覚えた最初の言葉の一つであった。彼は純粋な塩や塩辛い食品を食べる代わりに好んで砂糖や甘い物に関心を持つことはなかった。リッチャーの副腎切除ラットのように、この少年は生きるために正に定期的にナトリウムを摂取する必要があった;彼は標準的な病院食を食べるように強制され塩を食べさせられないようにされた後まもなく彼は死んだ(彼の副腎疾患は解剖されるまで診断されなかった)。
もっと最近の研究は先天的な副腎過形成による塩消耗の子供達によって自主的に塩摂取量を増加させたエビデンスを提供した。先天的な副腎過形成では、酵素21βヒドロオキシナーゼ産生を指定する遺伝子の突然変異体の結果として副腎ステロイド産生が欠如している。同様に、腎臓のナトリウム輸送体の欠陥によって起こる遺伝的な塩消耗疾患であるギッテルマン症候の子供達は低目の正常血圧を維持するために十分な細胞外液量を維持するために(彼等の影響のない家族メンバーと比較して)塩を多く摂取する。
塩欲求の増加は成人でも報告されてきた:透析後の腎臓患者で、と持続的なナトリウム欠乏後にテストされた正常被験者で、である。後者の研究では、健常な成人被験者は暑い室内の運動で、大量の発汗によるナトリウム損失でナトリウム欠乏にされた。その後の日々にわたって(消費のために水と塩のない食品だけを摂取)ナトリウム欠乏が続いた後、濃い塩水の味覚について被験者の指向性の評価は腹膜透析または薬剤による利尿後に実験動物でナトリウム欲求の遅れた発現に似た時間経過と共に頂点に達した。もっと長引いたナトリウム欠乏を経験したヒトでナトリウム欲求のより厳密な実験研究は、様々な生理学的条件と病態生理学的条件でヒトの塩摂取量に及ぼすナトリウム欲求の影響を測定するために有用である。
ヒトの塩摂取量に影響を及ぼすメカニズムを理解することは重要である。過剰なナトリウムは選ばれた人々のグループで影響を損なうからである。ほとんどの健常人で、塩摂取量の大きな変化でも血圧はわずかにしか(全てであっても)変わらない。それにもかかわらず、過剰な塩摂取量は様々な慢性疾患で悩んでいる人々の数が増加する重要な危険因子である。減塩は鬱血性心不全、肝不全、腎不全そして塩感受性高血圧を含む多くの疾患について好結果をもたらす治療の第一歩である。残念ながら、これらの疾患を持った患者は、低塩食を食べるように言われたとき、よく知られているように従わない。正常な塩嗜好で確かに従わないが、多くの患者は、自分達の疾患のシンポジウム参加者として塩欲求の逆説的な増加を経験していることもある。
塩欲求についてのメカニズムがより良く理解されたとき、塩飢餓を緩和させるように患者を援助するエビデンスに基づいた治療法を設計できるようになるかもしれない。現在幾つか利用できる薬剤が動物モデルで塩欲求を減らすことが既に知られている。例えば、ヒトの心不全治療で有益な効果のあるミネラロコルチコイド受容体治療薬であるスピロノラクトンはしっかりと確立されており、心不全ラットで通常示されている塩摂取量増加も妨げる。これ、または他の塩欲求阻止剤が減塩しようとしている人々に役立てば、患者は長生きでき、より健康的な生活をできるかもしれない。特に薬剤で既に疾患率や死亡率を減らすことが示されている。
しかし、治療的な可能性以上に塩欲求の神経基盤を理解することは全体的に我々の欲求大脳回路を理解することに広がっていく。この塩欲求の最も基本は他の動機付けられた行動についての重要なモデルである。塩の必要性を検知し塩を摂取を動機付ける大脳回路は飢えや渇きのような他の欲求動機をコントロールする回路と共通した(または並行した)構成要素を共有しているかもしれない。塩欲求を十分に理解することは塩欲求を刺激する生理学的、内分泌学的、神経的変化の総合的な認識を要求し、そして最終的に、これらの入力を総合し、塩摂取を動機付ける特別な大脳回路の証明である。
何が塩欲求を引き起こさせるか?
塩欲求は長引いた塩欠乏期間後に典型的に増加するが、この行動変化の原因となる正確なメカニズムは完全に理解されないままである。上記で説明したように、体内のナトリウム量の低下は細胞外液量の損失に相当する。血液量減少の開始後1 – 2時間内に、渇きの増加が明らかになり、細胞外液損失量に直接比例して水が摂取される。渇きと対比して、血液量減少の開始後かなりになるまで、塩欲求は増加しない;実験モデル(図3)によると数時間または数日後に始まる。最初にこの識別は、細胞外液浸透圧の結果として萎縮し、渇きを刺激する中枢浸透圧受容細胞に類似して、塩欲求について遅れた刺激を作り出す特別な細胞または組織があり、それらは過剰のナトリウムを徐々に細胞外液に放出し、上昇した濃度勾配を下げた。
図3 生理学的なナトリウム欠乏に応答して遅れた形で塩欲求が増加する
塩摂取の強化された動機は、より明確な渇きの増加後に数時間または数日遅れて明らかになる。
この図の時間目盛りは任意である;塩摂取の強度は数日間にわたって増加し、塩摂取量欠乏に応
じて生じ、出血、利尿剤、透析、または他の手段により急性血液量減少後に生じる時には12 – 48
時間という短期間で生ずる。
しかし、そのような様子の直感的な訴えにもかかわらず、塩欲求はナトリウムの血漿濃度低下(低ナトリウム血症)によって引き起こされない。食事による塩欠乏を含めて塩欲求についてのほとんどの刺激は血漿ナトリウム濃度を低下させない。逆に、低ナトリウム血症だけでは(血液量減少なく)塩水摂取量を増加させない。低ナトリウム血症と塩欲求はもっと極端な状況下で一緒に生ずるが、これらのモデルのほとんどで、血漿ナトリウム濃度が正常に戻った後でも数時間まで塩欲求は一般的に増加しない。また、そのような実験操作後の塩摂取量は、低ナトリウム血症を予防するために追加的な手段が採られたときでも、影響されないままである。例えば、副腎を切除されたラットは重症の低ナトリウム血症になることがあるが、低ナトリウム血症が水摂取量制限で予防されても、ラットは同じ摂取量増加を示す;同じ観察がナトリウム欠乏羊でも行われた。多くの研究者達は、高ナトリウム血症が塩摂取量を阻止することを示してきたが、これらの事例は、低ナトリウム血症が塩摂取を刺激するために必要でも十分でもないことを明らかに示している。
塩欲求と渇きとの間の他の差は、塩摂取量がナトリウム欠乏を一般的に過大評価していることである。水と塩摂取量との間のこの後者の差は塩欲求に対する自然の刺激:塩欠乏によって一番良く示される。ラットでは、ナトリウム欠乏の最初の1 – 2日でわずかに1 – 2 mmolのナトリウムが失われる。アルドステロン濃度が増加するにつれて、ほぼ完全な尿閉が続く。それにもかかわらず、その後の6 – 7日間のナトリウム欠乏は、非常に大きな容量欠乏を作り出す他の操作と同程度多くの塩摂取量を刺激する(図8(省略)参照)。したがって、塩欲求が目的論的な感覚で血液量減少に対する適正な応答である一方で、その程度は細胞外液量の最初の低下に必ずしも常に比例しない。
それではナトリウムを探して摂取することを大脳に指示する生理学的な信号は何か?この重要な問題は未解決のままで、多くの提案されている答えは論争中である。図4(省略)は以下で考察する刺激と抑制要因の数を強調する。
アルドステロン 副腎皮質で生産されるアルドステロンは長期間のナトリウム欠乏により著しく増加し、副腎グルココルチコイドまたはアンジオテンシンⅡ産生の変化には関係ない。事実、ナトリウム摂取量欠乏はアルドステロン産生のために最も影響力のある生理学的刺激である。高濃度ステロイド・ホルモンは細胞外液量を維持する、または増加させるために2つの相補性の工程を促進させる:(1) 腎臓ナトリウム保持(前述した)と(2) 塩欲求である。
副腎切除で引き起こされた塩欲求によるリッチャーの元の実験は、このホルモンが塩欲求には必要ないことを示したけれども、その後、彼はコントロール動物でも副腎ミネラロコルチコイドの高投与による治療は大量の塩水摂取を刺激することを発見した。基準の腎臓ナトリウム保持を単に復帰させる低投与量では、副腎ミネラロコルチコイド(アルドステロンまたはデオキシコルチコステロンのような他の物)の投与は副腎切除動物で塩欲求を低下させる。しかし、高投与は副腎切除ラットと副腎切除のないラットの両方で大量の塩水摂取を強く刺激する。
ミネラロコルチコイドで刺激された摂食行動はナトリウムについて唯一特別である。アンジオテンシンⅡのような他の刺激に対して厳密に対照して、ミネラロコルチコイドは水摂取に関してほとんど、または全く影響を及ぼさない。アンジオテンシンⅡの全身注入により塩摂取量を増加させるに必要な直接の薬理操作より少ない操作と違って、ラットに選択的に塩欲求を強める全身のミネラロコルチコイド投与の強い能力に関する曖昧さはない。残念ながら、この刺激は数日間にわたって大量で広く超生理学的投与量の反復投与を要求している。アルドステロンだけの生理学的投与量の急性投与は塩摂取量にわずかで不定の増加を作り出す。
したがって、塩摂取量を刺激するためのアルドステロンの特異性は独特であるけれども、その生理学的役割は塩欲求を次第により強めることにあり、この行動状態のための急性刺激としてではない。重要な役割は大脳中のミネラロコルチコイド受容体(MRs)の活性化のために示されてきたが、利尿剤使用後の塩摂取量は副腎ステロイド合成の完全な阻止によって低減されなかった。アルドステロンの効果は副腎グルココルチコイドの同時に起こる上昇、またはペプチド・ホルモンのアンジオテンシンⅡの大脳内注入によって大きく拡大される。また、塩摂取のためのミネラロコルチコイドの独特の特異性は脳幹のアルドステロン感受性神経の独特なグループの確認に導く。それらの神経は塩欲求と関係して特別に活性化される。
アンジオテンシンⅡ 血液量減少中の循環アンジオテンシンⅡの上昇は渇きの重要な刺激である。渇きのように、循環アンジオテンシンⅡ産生は血液量減少に応じて急速に増加する。腎臓の腎糸球体に近い器官の細胞からのレニンの放出に続いて、アンジオテンシンⅡは循環アンジオテンシノーゲンの酵素による分裂でアンジオテンシンⅠに変えられ、それはアンジオテンシン転換酵素によってさらにアンジオテンシンⅡに変えられる。アンジオテンシンⅡは塩欲求刺激で重要な役割を演ずるが、それ自身では演じられず、水と比例して塩摂取を選択的に刺激する。塩欲求の刺激に対してアンジオテンシンⅡの寄与に関する多くの詳細は論争事項で残っている。
大脳へのアンジオテンシンⅡの直接注入は水摂取量の大きな増加を刺激し、塩水の摂取を増加させる。しかし、塩摂取量欠乏によって刺激される塩摂取量の選択的増加に対して厳しい対照で、アンジオテンシンⅡは高い水/塩水摂取量の比を刺激する。塩欲求のアンジオテンシンⅡについて潜在的な役割とのこの矛盾と調和させるために、様々な生理学的状態下で別の細胞内信号カスケードの異なった活性化に対する塩欲求対喉の渇きにアンジオテンシンⅡは別々に影響を及ぼすことが示唆されてきた。また、その後の小区分で考察されるように、アンジオテンシンⅡで刺激された塩水摂取量の大きな増加は中枢神経のオキシトシン放出の抑制後、または摂食行動の内臓感覚フィードバック抑制を媒介する脳幹の内臓感覚領域に様々な神経伝達物質拮抗剤の注入後に得られてきた。
末梢的に発生すると言う仮説と明らかに反対して、アンジオテンシンⅡは血液量減少中に塩欲求の鍵となる刺激であり、アンジオテンシンⅡの静脈投与は水摂取量を急速に増加させるが、塩水摂取量のその後の増加は数時間後まで起こらず、アンジオテンシンⅡで誘導される圧力利尿によって引き起こされる全身的なナトリウム欠乏に対する第二の刺激であるかもしれない。また、アンジオテンシンⅡを増加させることは、塩欲求の開始を促進させることも、その後の塩水摂取量を増加させることもないナトリウム欠乏後に直ちに一様になる。しかし、ラットが前日に利尿剤投与によって最初にナトリウム欠乏が起こり、その後、カプトプリル(内生アンジオテンシンⅡ産生を防ぐため)大量を反復投与し、その後次の日にアンジオテンシンⅡを注入すると、アンジオテンシンⅡの静脈投与は塩水摂取量を急速に増加させる。
循環アンジオテンシンⅡが塩欲求の重要な刺激であると言う仮説と別の反対で、カプトプリルのようなアンジオテンシン転換酵素阻止剤によるアンジオテンシンⅡ産生の抑制はラットの塩水摂取量を幾分増加させる。このカプトプリルで刺激された塩摂取量増加はアンジオテンシン転換酵素阻止剤(またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)を直接大脳に同時に投与することによって、またはカプトプリルの極端に大量(例えば、100 mg/kg)の末梢投与によって阻止される。それらの薬剤は両方とも同様に生理学的なナトリウム欠乏後に塩水摂取量を低下させる。アンジオテンシンⅡが塩欲求の重要な刺激であると言う仮説と共にこれらの逆説的な結果を調和させるために、転換されていないアンジオテンシンⅠの循環濃度を増加させることによって、カプトプリルは、ある大脳領域、多分、カプトプリルによりも血液中のアンジオテンシンⅠにより影響を受けやすい領域、またはカプトプリルが極端な高投与で与えられなければ、または直接大脳に注入されなければ、カプトプリルによる阻止を無効にするために十分なアンジオテンシン転換酵素を局所的に産生する領域でアンジオテンシンⅡに転換されて末梢で増加する。
アンジオテンシンⅡ産生で刺激された塩欲求(と喉の渇き)の増加は、ミネラロコルチコイドで慢性的な前処理後に大脳室系に直接アンジオテンシンⅡが投与されたとき、もっと大きくなる。塩摂取量を刺激するために使われたアンジオテンシンⅡ投与量は脳脊髄液でこのペプチドの超生理学的濃度と循環アンジオテンシンⅡに関して神経活性の非生理学的パターンを一般的に作り出す。
これらの結果は‘共同作用仮説’に導き、その仮説は、塩欲求が大脳自身のレニンーアンジオテンシン系で産生された末梢アルドステロンとアンジオテンシンⅡの同時上昇の結果であることを提案している。この仮説の支持で、アルドステロン(末梢に投与)とアンジオテンシンⅡ(中枢に投与)の域値下投与はいずれか一つのホルモンだけよりも塩摂取量をより刺激するように補強する。また、大脳内の組織ミネラロコルチコイド受容体とアンジオテンシンⅡ受容体の同時薬理学的阻止はフロセマイド利尿後に塩欲求を防止した。しかし、塩欲求についての多様な実験モデルの様々な結果に基づいて、アンジオテンシンⅡとアルドステロンの作用が生理学的なナトリウム欠乏に応答して塩欲求の刺激のために十分であるかどうかは不明のままであり、追加的な信号を送るメカニズムが重要な役割を演じているらしい。
圧受容器入力 塩欲求は血液量の継続的な低下中に生じ、血液量増加によって阻害されるので、中心静脈圧の変化を検出する抹消圧受容器は鍵となる情報を提供する良い位置であるように思う。この可能性と一致して、右心房がバルーン・カニューラで拡張され(血液量が増加したとき生ずる静脈還流の増加を模倣)、そしてその後カニューラが縮小された後に元に戻るとすれば、長期間の血液量減少またはミネラロコルチコイド処理によって刺激された塩摂取量は大きく減少する。この効果の部分は心房ペプチドまたはB-タイプナトリウム利尿ペプチドに媒介される。それらのペプチドは大脳に直接投与されたとき、塩摂取量を抑制する。しかし、この結果は塩欲求の抑制で中心の静脈圧受容器からの神経入力にも役割を示唆している。
静脈または動脈圧受容器信号が塩欲求の刺激に関連しているかどうかは不明である。動脈血圧は塩欠乏または塩欲求の刺激のために十分な細胞外液量の実験的減少後に十分に補償されたままである。事実、何人かの研究者達は慢性塩欠乏中に動脈圧の増加さえも明らかにした。それにもかかわらず、塩水摂取は低下した動脈圧によって強化されるかもしれない。逆に動脈圧受容器からの感覚情報を伝える神経切断後のラットで塩欲求は減少した。しかし、これらの神経によって刺激される脳幹領域の破壊後では何の影響もなかった。
大脳内のナトリウム濃度 脳脊髄液のナトリウム濃度は血漿のナトリウム濃度と直接的に関係している。多数の種で利用できるエビデンスは、この液体区画の増加したナトリウム濃度は喉の渇きを刺激するだけでなく、塩欲求も抑制することを示している。例えば、大脳室系に高張塩水の直接注入はナトリウム欠乏羊の塩摂取量を一貫して減少させ、そして同様の結果は血液量減少ラットで報告された。
大脳内ナトリウムの低下は塩欲求を増加させるかどうかは不明である。マンニトールやスクロースのような幾つかの浸透圧的に活性なナトリウムのない分子の脳室内注入はナトリウム欠乏とナトリウム欠乏でない羊の塩摂取量を増加させた。これらの注入効果の一つは脳脊髄液[Na+]の低下であったので、これらの実験者達は、塩欲求が大脳のどこかにある低ナトリウム・センサー(喉の渇きを増加し、塩欲求を抑制する高ナトリウム・センサーとは別に)の活性化によって増加されると示唆した。しかし、脳脊髄液[Na+]の同量の低下が水の注入または細胞透過性溶質(グルコース)によって生ずるとき、塩摂取量は増加しなかった。この矛盾は、脳の低[Na+]センサーが室上皮関門の後ろのどこかにあり(血液脳関門のない前脳室周囲の臓器にある高[Na+]センサーと違って)、それ故に神経網内でこの境界を横切って[Na+]の移動だけを検出するエビデンスとして解釈される。
これら仮説の低[Na+]センサーの重要性と位置の両方はまだ分らない。これらの結果はウサギ、ラット、ネズミを含む他の実験種で再現されず、低[Na+]を感じるメカニズムについてのエビデンスは細胞レベルでもまたは分子レベルでも検出されなかった。しかし、トランスジェニックマウスでその後の結果は独特な濃度活性化されたナトリウム・チャンネルとして大脳内で高[Na+]についてのセンサーの存在を確認した。
脱抑制仮説 塩欲求を増加させる(生理学的に関連したモデルで)重要な刺激についてのエビデンスがないことは新しい思考の学校に導き、その思考は、塩に対する欲求は血液量減少による喉の渇き(主としてアンジオテンシンⅡ)として同じ分子信号によって基本的に刺激されるが、支配的な抑制信号によるチェックで通常維持されることを示唆している。血液量減少の開始後、水対塩の摂取間の長い遅れを説明するために、この仮説は、十分な水量が摂取されるまで、塩欲求(喉の渇きではない)を阻止する一つまたはもっと中心的なメカニズムに依存している。このモデルで、水摂取が細胞外液の浸透圧低下を来すので、塩欲求は抑制から次第に解除される。塩欲求を刺激するために知られている様々な条件で全体的な浸透圧低下は必要ないが、鍵となる抑制機構はこのモデルと一致していることを明らかにしてきた。
初めに、視床下部室傍核からの中枢性オキシトシン作動姓放出が塩欲求の抑制のための主要メカニズムとして提案された。塩摂取が様々な方法で中枢性オキシトシン遮断後に強化されたことを示す多数魚薬理学的エビデンスによってこの仮説は支持されている。前述したように、上昇した血漿ナトリウム濃度(高ナトリウム血症)が大脳内の特殊な細胞で検出されたとき、塩摂取量も抑制されるが、この抑制メカニズムは中枢性オキシトシン作動経路とは別に作用するように思える。
塩摂取量の追加的な抑制制御は、脳幹を通して最終的に前脳へと続く迷走神経によって伝達される摂取後のフィードバック信号によって媒介される。これらの信号は、ナトリウム飢餓動物が摂取する塩の量を制限する上で重要な役割を演じている。さらに抑制メカニズムは、アドレノメデュリン、心房ナトリウム利尿ペプチド、コレシストキニン、ニューロメディンB、セロトニン、そしてソマトスタチンを含む様々な神経モデュレーターの大脳内注入後の塩欲求低下から推論されてきた。これらの抑制信号が脳内の何処で正確に作用するか、またはどれかの信号が生理学的欠損によって塩欲求刺激の部分として低下されなければならないかどうかは不明である。
したがって、脳は塩摂取量を制限するために多数のメカニズムを持っているが、生理学的条件下で、塩欲求の独特な活力が脱抑制的制御だけで完全に説明されるかどうかは不明である。例えば、ノックアウトネズミによる実験は塩摂取量の抑制モデュレーターとしてオキシトシンのための役割を確認したが、結果は、アンジオテンシンⅡのような刺激に応答してこのペプチドが個々に塩摂取を制御する原因であると言う仮説を支持しなかった。同様に、喉の渇きを強力に強めているにもかかわらず、外側結合腕傍核の破壊は塩欲求を強化するようには思えない。事実、塩欲求は橋背側の近隣領域を含む障害後に低下され、または除去され、強化されなかった。これらと他の結果は、塩欲求が塩摂取量を制御する神経ネットワークによって調整される刺激と抑制の両方の入力信号によって支配されることを示唆している。
塩欲求は大脳の何処で制御されるか?
ナトリウム欠乏動物が塩を味わうとき、異常に大量を活発に食べる。この明白な行動スイッチを説明するために、我々は図5(省略)に示す3つの中枢構成要素を持つモデルを提案した。第一に、慢性ナトリウム欠乏中に塩探索行動を動機付ける特別なグループの神経が活性化され、ナトリウム必要信号を強くする。第二に、一度塩を味わうと、味覚器官はナトリウム検出を表す相性信号を伝える。第三に、これら2つの信号は動機付けられた摂食行動を最終的に駆動させる一つ以上の前脳領域に(様々な抑制信号と共に)集約される。
これらの操作のそれぞれを行う神経の全体的な場所を確定することは塩欲求を制御する中枢回路構成のモデルのための基本的な要求である。最初に、脳幹中の何処かにある神経細胞の重要な関与は運動神経と食物摂取筋肉組織の制御のための運動前野パターン発生器の必要性のためと、口腔からの味覚神経による延髄サイトの直接神経支配のために本質的に明らかである。したがって、2つの疑問が生ずる。(1) 末梢のナトリウム欠乏に関連した刺激を検出し、ナトリウム必要性を強くする信号を発生させる細胞も脳幹は含んでいるか?(2) 含んでいれば、塩味検出の信号とナトリウム必要性のこの信号を発生させる神経も含んでおり、それにより次には摂取運動の活性化を促進させるか?すなわち、脳幹内で塩欲求は局所の反射性応答を下げられるか?
第一の疑問は論争事項として残っているが、第二の疑問の答えは何のことはない:塩欲求の原因である感覚総合運動ネットワークは脳幹内で自己完結型の反射経路ではない。吻側接続が関与してなくてはならないことを我々は知っている。前脳から脳幹への接続を切断することは、無傷で様々な他のホルモンと味覚行動反射神経を残しているにもかかわらず、塩欲求についての全ての行動的エビデンスを排除しているからである。前脳の神経について重要な役割は、内側前脳束(脳幹と前脳との軸索相互接続の大規模な集積)の場所に大体置かれている視床下部の背面領域内の電解病変によって塩欲求が解消されると言うエビデンスによっても支持されている。
しかし、驚いたことに、感覚と行動皮質の広範な病変はナトリウム欠乏に応答して塩摂取量を減らさない。内側前頭前皮質と多分他の皮質領域の小地域は塩摂取に関して行動的に関連した影響を発揮させるように思えるが、これらの結果は、大脳皮質は塩欲求の基本的な制御に必要ではないことを示しており、塩欲求の総合的なコントロールの主とした原因となる前脳神経は核皮質下内にあることを示している。
脳皮質下側の広い範囲は塩摂取量に潜在的な影響を及ぼすことについてテストされてきた。これらの大脳側の網羅的なカタログを用意するよりもむしろ次の要約は、前述したモデルの情況(ラット脳内のそれらの場所を図6(省略)に示す)に塩欲求を特に結びつける大脳側の仮定的な枠組みを提供している。
ナトリウムの必要性:体液性と内臓感覚経路 脱水で誘発された喉の渇き(水摂取)は第三脳室の前壁に沿ってある視床下部視索前野神経に決定的に依存している。薄膜末端のこの大脳領域には細胞外液浸透圧とナトリウム濃度の上昇に対して独特の感受性のある特別な神経やグリア細胞がある。この領域内の多くの細胞は循環アンジオテンシンⅡに対しても直接的に感受性があり、血液量減少中にこのペプチドの濃度上昇によって活性化される。ここでアンジオテンシンⅡ感受性神経は2つの感覚器官に集中している:弓下器官(SFO)と末端ラミナの血管網(OVLT)で、それら2つはアンジオテンシンⅡによる水摂取行動の刺激に重要である。
以下、この節省略
ナトリウム検出:味覚経路 味覚は塩欲求の行動を起こすために必要である。ナトリウム欠乏ラットは、溶液が胃に直接注入されたとき、あるいは味覚ナトリウム・チャンネルを阻止する薬剤を投入されたとき、塩水と他の溶液を区別できなかった。
ナトリウム検出と味蕾内の変換の正確な分子機構は不明であるが、脳幹を通して前脳に味覚入力を伝える上昇軸索経路が多くの神経解剖学研究、電気生理学研究、病変研究で位置付けられてきた。
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ナトリウム必要性と塩検出する信号の前脳統合 塩欲求を制御する前脳の場所を明らかにすることに向けての論理的な第一段階は塩検出についての信号と同様にナトリウム必要性と特に関連した入力信号受ける場所を考えることである。神経解剖学でたどるデータに基づくと、集積している主な場所は中央拡張扁桃体複合体中の2つの場所内にあった:分界条の腹外側ベッド核と扁桃体の中心核である。これらの場所のそれぞれについて、回路データは塩欲求で病変による低下の実験的証明で補足される。以下にこれらの場所のそれぞれについて、塩欲求の総合的な制御に関連している追加的な前脳領域に沿って存在するエビデンスを考察する。
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要約
ここに述べられている結果は塩欲求を制御する大脳領域を明らかにすることに向けた初期の進歩を表している。この情報は、この行動状態の原因となる神経構成要素を示す回路図の最終的な完成についての出発点を提供している。重要な進歩にもかかわらず、我々が表現型やここに挙げた大脳領域内やこの回路構成の追加的な構成要素を表すかもしれないまだ確認されていない大脳領域と神経の適切な部分集束の結び付きや機能的な相互作用を理解する前に、多くの研究が残っている。
将来の方向
現在、塩欲求研究の進展に隠れた主要な問題は、塩欲求を刺激する基本的な信号に関する不明確さと論争である。ナトリウム欠乏は、循環アンジオテンシンⅡとアルドステロンの増加を含む様々な自律神経系や神経ホルモンの変化を起こす。塩欲求の生理学的刺激におけるこれら2つのホルモンについての重要な役割を支持するエビデンスの多くは、不自然な薬理学的モデルまたはアンジオテンシンⅡを直接大脳の脳室系に注入することを含んでいる。超生理学的容量を注入すると循環アンジオテンシンⅡの生理学的増加よりも神経活性の幾分異なったパターンが生ずる。多くの研究は塩欲求を刺激する時のアンジオテンシンⅡについて重要な役割を支持する一方、他の結果は、それが塩摂取量のための重要な刺激ではないことを示唆している。同様に、塩欲求についての重要な阻害制御機構としてオキシトシンの相対的な重要性は論争点で残っている。一方、正反対に対する明白なエビデンスにもかかわらず、塩摂取量は細胞外液のナトリウム濃度変化によって排他的に制御されることを何人かの研究者達は示唆し続けている。
この欲求について現存するほとんどの研究はナトリウム欠乏を使ったより直接的で非侵襲性の実験を含んでいない。野生動物の自然な習慣である塩欲求を刺激する生理学的状態を模倣する慢性的な塩摂取量欠乏は、摂食行動をより急速な増加を引き起こすためにしばしば使われる他の薬剤投与を混乱させる多くの顕著な自律神経系変化、ホルモン変化そして行動変化なくして塩摂取量を大きく増加させる。我々の経験でも、このより生理学的な刺激によって生じた神経活性は、フロセマイド利尿、コロイドで誘発される血液量減少、あるいは副腎切除のような塩欲求を増加させるために使われる他のより劇的なモデルに対して相対的に非常に制限される。塩摂取量欠乏は他のもっと侵襲的な操作よりも塩欲求(対喉の渇き)についてより選択的な刺激であるので、この実験モデルは、塩欲求の原因となる繊細な機構対喉の渇きの主として原因となる機構を覆い隠すかもしれない多くの脱線的な変化を最小化することを探求している研究者達のためにはより有用な‘フィルター’を表しているかもしれない。何れにせよ、塩欲求を引き起こす原因となる末梢的な機構を解決する追加的な実験はこの行動を制御する中枢回路を研究する将来の進行を刺激するために重要となる。
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