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地下塩鉱山の空気中粒子の起源、分布および将来見通し的な健康利益

Origin, Distribution, and Perspective Health Benefits of Particulate Matter in the Air of Underground Salt Mine: a Case Study from Bochnia, Poland

By Aleksandra Pulawska, Maciej Manecki, Michal Flasza and Katarzyna Styszko

Environ Geochem Health   2021.01.23

 

要約

 塩鉱山の様々な場所の浮遊粒子の組成と分布がそれらの起源、空気取り入れ口からの距離、採鉱後の部屋や観光客および一般聴衆のための坑道の適応の観点から調査された。空気中エアロゾルの組成も人の健康への将来見通しから評価された。現在、観光やレクレーションのアトラクションが行われ、療養所のあるボフニア(ポーランド)の歴史的な地下塩鉱山で携帯空気ポンプを使用して空気試料をフィルター上に集めた。石英フィルターを秤量する重量分析法を用いて微小粒子状物質(PM)濃度を測定した。炭素、可溶性成分、痕跡元素、ミネラルの濃度も測定された。浮遊物質の遺伝的分類が提案され、3グループを構成した:地質学的物質(岩塩破片や鉱床に関連したミネラル)、人為性物質(観光客の交通からの炭素含有粒子や少量のフライアッシュ、すす、錆)、および生体性粒子(たまに花粉)である。空気中の総PM濃度は21 – 79 /m3(PM44-24/m3を構成)の間で変化した。地表から来る空気中のダスト成分量は低く、通気口からの距離で低下し、したがって、自己浄化工程を示した。NaClが可溶性成分を支配しており、一方、FeAlAgMn、およびZnが痕跡元素支配しており、それらの大部分の濃度が30 ng/m3以下であった。これらの金属は天然資源と地下の機能空間にある鉱業および観光施設の摩耗または/および腐食の両方から空気中に放出される。潜在的に有毒な元素または成分は検出されなかった。岩塩鉱内の空気中の塩粒子と塩辛い水滴の存在は坑炎症性と抗アレルギー性を持っている可能性があり、人の健康に有益である。本研究は、医学的および規制の観点から地下の岩塩鉱におけるハロセラピーの可能性をより広く見ることを可能にする。

 

はじめに

 

材料と方法

場所の特性

鉱内の観光交通

試料採取法

分析法

 

結果と考察

空中浮遊粒子の起源と分類

地質学的物質

人為性物質

人々の高越に関連した粒子

すす粒子

産業粒子

現地の供給源からの金属粒子

生体性粒子

空気中浮遊粒子の濃度分布

空気中浮遊粒子の化学成分の分布

可溶性イオン

痕跡元素 

起源の識別

以上の各項目は省略

 

結論

 地下の岩塩鉱山にある浮遊粒子の詳細な遺伝的分類が提案され、3つの主要なグループを構成した:地質学的物質、人為性物質、生体性粒子である。地質学的物質が支配的で、岩塩破片や関連したミネラルを含んでいる。人為性物質グループはほとんど炭素を含む粒子で、観光客の交通領域の室内空気に典型的なもので、健康への危険性はない。花粉で代表される生体性粒子の成分は空気の流れが通る自己浄化工程の進行の証拠として、換気口からの距離に伴って減少した。この分類により、監視方法の最適な選択が可能になる。より重要なこととして、潜在的に望ましくない粒子の含有量を積極的に減らし、将来的に例えば、塩水滴中の望ましい成分の含有量を増やすのに役立つだろう。

 初めて、地下の塩鉱山内の空気の流れに沿って浮遊粒子の分布の総合的な研究が行われた。研究は地下塩鉱山内で行われ、そこは世界の他の廃鉱になった岩塩鉱山と同様に、現在は観光、レクレーション、保健に焦点を置いている。粒子の定量的な形態学的、鉱物学的、および化学的特性が得られ、比較された。鉱山で行われた活動に邪魔されずに、総PM濃度は低いと見做される。塩鉱山内の空気は粒子や人に対して有毒となる、あるいは観光客の健康に悪い影響を及ぼすほどの濃度で化学成分を含んでいない。エアロゾルの主成分は母岩の風化に由来する天然素材である。これらの地質粒子(岩塩、アルミノケイ酸塩、無水石膏、石膏、石英、および方解石)が優勢である。ミネラル組成と粒子形態だけでなくこの物質量も人の健康に有害ではない。対照的に、鉱山内の現地のエアロゾル生成は、人為性粒子が優勢な地表環境では達成が難しい独特の環境ヲ作り出す。

 粒子濃度の局所的な増加と典型的な屋内粒子(例えば、皮膚、髪、衣類の破片)の放出は鉱山内の観光交通や活動の増加領域で観察される。これは屋内空間で典型的で、観察された何処の濃度よりも超えない。さらに、鉱山内の粒子状物質の乾式堆積と同時の適切な換気装置の工程は地下室の適切な空気純度を効果的に確保できる。自己浄化工程は、人間の活動が減少している期間(夜間など)または技術的操作(例えば、適切な浄化法や厳密な換気装置)を通して強化される。

 すす、花粉、産業粒子などの屋外空気に一般的な粒子のある物は外部から鉱山内に持ち込まれるが(一部は観光客によって)、その量は非常に少ないので、人に危険になることはない。これらの粒子の量は換気口(鉱山への空気取り入れ口)からの距離とともに低下することが観察された。冬期の化石燃料の燃焼に関連した人為性物質の比較的高い含有量は除かれた。したがって、将来の研究は季節的な差の効果を調べるべきである。しかし、換気口から地下塩鉱山の観光領域の入り口までの距離が非常に長いと、多分、地表からの潜在的に汚染された空気の十分な浄化が行われる。したがって、サナトリウムを目的とした地下の部屋を選ぶ工程で最も重要な要因の1つは換気口からの距離である。屋内空間に典型的な汚染物質の効果的な除去に役立つ可能性がある追加の空気の流れで部屋を換気することも非常に望ましい。

 地下塩鉱山はハロセラピー用に一般的に使われるので、空気中エアロゾルの成分は人の健康的な観点からも調査された。他の塩鉱山からのこれまでの報告書と同様に、ボフニア塩鉱山の空気中エアロゾルはハライト()粒子を含んでいることを鉱物学的分析は示した。様々な形態のNaClも他の空気成分を伴っていることを化学分析法で確認された。しかし、その量はろ過ベースの方法を適用したため過少評価された。不燃性で抗アレルギー性である塩の存在が人の健康に利益をもたらす。エアロゾルはハロセラピーで治療因子として考えられている。空気中の塩水滴の存在は地下塩鉱山内でサナトリウム活動のさらなる発展の可能性を示している。

 ハライトや他の塩エアロゾルに加えて、塩鉱山の地下坑の空気は他の蒸発ミネラル(例えば、無水石膏、石膏)と鉱物破片(例えば、粘土、石英)の数個も含んでおり、それらの少量は人の健康に危険性はない。さらに、鉱山で使われる機械や建設資材の操作や腐食が空気中に少量の望ましくない成分(錆、金属化合物)をもたらす可能性がある。これらの物質に関連した潜在的なポジティブ効果または危険性は様々な種類の粒子の同時存在と共に考察されるべきである。地下の岩塩鉱山に存在する浮遊粒子の提案された詳細な遺伝的分類は、この研究を容易にすることを目的としている。ハロセラピー専用の全ての採掘施設のための挑戦は空気の純度を維持し、天然の望ましい塩エアロゾルの存在を維持しながら、観光客にサービスを提供するようにそれらを適応させる必要がある。我々の研究結果は、これらの治療が医療で伝統的に認められている全ての国でハロセラピー用に使われる施設の空気品質標準のために法的要件を規制する必要性を支援している。岩塩鉱山で適切に用意されたホールや部屋に配置されたサナトリウムとハロセラピー室はまた、この治療法の有効性に関するもっと詳細なデータを提供するために将来的に質の高い研究を行える。