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溶融塩金属空気電池は輸送を電化できる

Molten Salt Metal Air Battery Could Electrify Transportation

The Engineer    2021.02.01

 

リチウム・イオン電池の代替品となり、電荷輸送への移行を加速するのに役立つ可能性がある充電式溶融塩空気電池を研究者達は設計した。

 

Molten salt metal air

      準固体(QSS)溶融塩電解質とQSS溶融塩鉄空気電池の構造。 (画像:ノッティンガム大学)

 

 充電式リチウム・イオン電池は時間経過と共にエネルギーを失う可能性があり、幾つかの条件下では放電中または充電中に過熱し、電池寿命を短くし、充電当たりの走行距離を減らす。

 現在、ノッティンガム大学は固体酸化物燃料電池と金属空気電池の性能上のメリットと組み合わせたエネルギー貯蔵装置を開発するために中国中の6ヶ所の科学研究機関と協力している。新しい電池は完全にリサイクル可能で、環境に優しく、低コストで安全であり、電気自動車の範囲を大幅に拡大する可能性がある、と主張している。

 固体酸化物燃料電池は化学反応により水素と酸素を電気に変える。それらは燃料からエネルギーを抽出するのに非常に効率的で耐久性があり、低コストでより環境に優しく生産できるが、再充電できない。金属空気電池は、電気を発生させるために鉄のような安い金属と空気中にある酸素を使う電気化学的電池である。充電中にそれらは酸素を大気中に放出する。あまり耐久性ではないが、これらの高エネルギー密度電池は再充電でき、リチウム・イオン電池と同程度の電気を蓄え放出でき、ずっと安全で安い。

 初期の研究段階で、研究チームは電気伝導性のために熱で活性化される電解質として溶融塩を使う高温、鉄空気電池構想を探求した。安くて不燃性の溶融塩は電池に印象的なエネルギー貯蔵と電力能力および好ましいライフサイクルを与えるのに役立つ。声明で、研究を率いているノッティンガム大学のジョージ・チェン教授は言った:「極端な熱で、溶融塩は激しく腐食し、揮発性になり、蒸発または漏れる可能性があり、そのことは電池設計の安全性と安定性に対する挑戦である。電池性能を向上させ、将来の電気輸送での使用を可能にするために、これらの電解質特性を微調整することが急務であった。」

 研究者達は固体酸化物ナノ粉末を使って、溶融塩を軟質固体塩に変えることによって技術を現在上手く改善している。中国科学院の上海応用物理学研究所のJianqiang Wang教授はこの共同プロジェクトを率いており、この準固体(QSS)電解質は金属空気電池用に適していると予測している。それは800℃で操業でき、高い操業温度で生ずる可能性のある溶融塩の蒸発と流動性を抑えるからである。

 Wang教授の同僚、Cheng Peng博士は、固体酸化物粒子の柔軟に接続されたネットワークを構築するためのナノテクノロジーを使って準凝固が達成された、と言った。これらは構造的なバリアーとして働き、溶融塩電解質を閉じ込めながら極度の熱で電気を通すことができる。

 ノッティンガム大学で溶融塩電解実験室を率いていChen教授は、チームの「有望な結果」が高い安定性と安全性を持った低コストで高性能溶融塩金属空気電池の設計により簡単で効率的な方法を確立することに役立つだろうと、希望を持っている。「修正された溶融塩鉄酸素電池は、電気輸送や我々の家庭および配電網で新しい貯蔵の解決策を要求している再生可能エネルギーを含めて新しい市場に大きな潜在的用途を持っている。電池はまた、原理的に電気と同様に太陽熱を蓄えることができ、そのことは家庭用と産業用の両方のエネルギー需要のために非常に望ましい。溶融塩はスペインと中国で現在大規模に使われており、太陽熱を捕まえて蓄え、その後電気に変えるが、我々の溶融塩金属空気電池は1つの装置で両方の仕事をできる。」

 チームの結果はEnergy Storage Materials誌に論文「再充電高温溶融塩鉄-空気電池」として発表されている。