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塩感受性高血圧:腎臓内メカニズムの展望

Salt-Sensitive Hypertension: Perspectives on Intrarenal Mechanisms

By Dewan S.A. Maid, Minolfa C. Prieto, and L. Gabriel Navar

Curr Hypertens Rev 2015;11:38-48

 

要約

 塩感受性高血圧は塩摂取量の増加に応答した血圧上昇によって特徴付けられ、心血管と腎臓罹患の強化された危険性と関係している。ヒトの塩感受性はどのようにして生じてくるのかを理解するために研究者達は数十年間も探してきたが、高塩摂取量に対する応答で血圧上昇が生じるメカニズムは複雑で、部分的にしか理解されていない。現在まで、どうしてある人々は塩感受性で、他の人々は塩抵抗性であるのかを科学者達は説明できなかった。塩感受性と高血圧の発症で腎臓の中心的な役割が一般的に受け入れられているが、高血圧は多因子に基づいていることも認識されており、様々な要因が塩摂取量の操作に対する血圧応答を引き越し、あるいは妨げる。影響を受けやすい人々で過剰な塩摂取量は不適当な中枢と交感神経系応答も引き起こし、腎臓内のアンジオテンシンⅡ、カテコラミンそして酸化ストレスや炎症性サイトカインのような他の要因の産生を増加させる。1つのキーファクターは高塩摂取量に付随する不適当な活性または腎臓内レニンーアンジオテンシン系の逆説的な活性である。これは塩感受性モデルで高塩摂取量中の尿中アンジオテンシノーゲンの増加で反映される。神経内分泌因子と腎臓との間の複雑な相互作用は、ある人々が塩を保留し、塩依存性高血圧を発症させる性質に従っているかもしれない。本レビューで、慢性塩摂取量と高血圧発症との間の機械論的な関係を提供している腎臓の関与に我々は主に焦点を置く。

 

はじめに

 塩摂取量と高血圧発症との関係は何十年間も続いてきた論争事項であった。塩摂取量と血圧との関係を示す多くの疫学的、実験的、介入観察があるにもかかわらず、どれくらいの高い摂取量が血圧上昇に機械論的に関係しているかに関しては懐疑論がまだ残っている。この懐疑論はヒトの塩摂取量増加に対する血圧応答の異質性に部分的に依存している。‘塩感受性’として言われているある人々で塩がどうして血圧を上昇させ、‘塩抵抗性’と言われる他の人々では血圧を上昇させないかを説明できない我々の能力は、どうして高塩摂取量が塩感受性者で高血圧を引き起こすかとの総合的な理論の発展を妨げてきた。塩摂取量増加に対する応答の多様性の基となっている病態生理学的メカニズムを明らかにするために多数の研究が行われてきた。

 原発性腎疾患または腎臓への不適切なホルモン/神経影響のいずれかによる腎機能の変化は全ての形態の高血圧で基本的な特徴で、高血圧を発症させることになる過剰な塩分を排泄する腎臓能力の低下と関係している。腎臓内メカニズムの証明と高血圧を引き起こすナトリウム収支(Na+)の異常は遺伝的な高血圧ラットにおける数多くの実験結果から来ている。さらに、Na+再吸収増加を導く特別な糸球体の輸送システムにおける特別に1つの突然変異体によるヒト高血圧の1遺伝子形態の発見は、高血圧発症における腎臓の決定的な役割に対するさらなるエビデンスに導く。Na+収支と適正な範囲内に細胞外液量を維持するための腎臓能力が妥協したとき、動脈圧増加は正常な収支を再び確立するために必要である。腎機能の様々な程度の低下が高血圧患者で明らかにされ、腎臓内欠陥または不適正なホルモンまたは神経刺激の欠陥のいずれか1つによる糸球体輸送機能または微小循環の動力学における微妙な乱れが高血圧発症に決定的な因子である。多数の腎臓の混乱が、損なわれた腎臓の血行力学、腎臓の自動制御能力、圧力ナトリウム尿排泄亢進、血管作用刺激と強化されたNa+再吸収活性を含めて明らかにされてきた。しかし、酸化体分子と同様に様々な炎症促進性と抗炎症性サイトカインの全身生産のような多くの腎臓外因子も変化した腎機能や高血圧に対して重要な寄与因子である。

 多くの高血圧性プロセスの中心は様々な病態生理学的メカニズムによる腎臓内レニンーアンジオテンシン系(RAS)の不適切な活性化である。RASの重要な役割は腎臓内RASの異常な活動を示す様々な実験モデルを含む多くの研究によって支持されている。特別な事例にはTGR(mRen2)27ラット・モデルがある。ラットのゲノムに挿入された特別なレニン遺伝子を入れたモデルで、また幾つかのマウス・モデルではそのゲノムに挿入された特別なレニンまたはアンジオテンシノーゲン(AGT)遺伝子のいずれかがある。重要なことに、特別なAGT遺伝子が腎臓に限定されたとき、同じ程度の高血圧がAGT遺伝子の全身追加で発症した。

 

高塩摂取量に対する生理学的応答

 専門的な内容のため省略。

 

塩感受性とRASSの不適正な応答

 専門的な内容のため省略。

 

慢性的なアンジオテンシンⅡ注入中に腎臓障害を媒介するメカニズム

 専門的な内容のため省略。

 

結論

 要約すると、高血圧応答を誘引する塩を媒介する多数の複雑な腎臓と神経ホルモン要因があることが明らかに認められる。塩感受性高血圧の発症を導くNa+保持を強める腎臓の血行力学と糸球体再吸収機能を調整するキーファクターである腎臓による腎臓内RASの調整不全、酸化ストレス、炎症性サイトカインによる高塩摂取量に対する不適正な腎臓応答が特に強調される。