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レビュー 2018年慢性腎臓疾患の進歩

慢性腎臓疾患患者で塩摂取量と血圧:手に負えない関係

Sodium Intake and Blood Pressure in Patients with Chronic Kidney Disease: A Salty Relationship

By Nerbass F.B., Calice-Silva V., Pecoits-Filho R.

Blood Purification 2018;45:166-172  2018.01.26

 

要旨

背景:高血圧はほとんど全ての慢性腎臓疾患患者に影響を及ぼし、悪い結果と関連している。塩摂取量はこの集団の血圧値と関係しており、その摂取量を下げることは短期間比較試験で特に血圧管理を一貫して改善する。しかし、本論文で考察した幾つかの要因や障壁のためにガイドライン勧告にしたがって、ほとんどの患者は塩摂取量に関して管理された食事に従おうと奮闘する。

要約:本レビュー論文は塩摂取量、血圧、そして心血管疾患と慢性腎臓疾患の危険率との間の関係に関する現在の知識を要約する;如何にして減塩を達成するかの忠告も提供する。

キーメッセージ:慢性腎臓疾患の腎臓結果と心血管疾患の標識に関する塩摂取量の低下でエビデンスは利益を促進させる。試験は短期間の追跡をし、長期間の塩摂取量管理を続けることは大きな挑戦である。厳しい終末を見届ける大規模で長期間の追跡研究が将来の忠告を出すために重要である。

 

はじめに

 慢性腎臓疾患患者は正常な腎機能者よりも一般的に高い血圧である。これらの人々は高い塩摂取量に対して特に感受性であり、高塩摂取量は慢性腎臓疾患のない人々よりも慢性腎臓疾患患者で血圧に大きな影響を及ぼす可能性があるかもしれない。この観察は腎機能不全者で観察された尿中に負荷された塩を排泄する能力低下よって説明されるかもしれない。減塩介入は簡単で、費用のかからない、効果的な方法で血圧を下げる可能性を提供しており、心血管疾患や慢性腎臓疾患の進行危険性も改善する。本レビュー論文で、塩摂取量、血圧、心血管疾患と慢性腎臓疾患の危険率との関係に関する現在の知識を我々は要約し、如何にして減塩を達成するかの忠告を提供する。

 

塩摂取量と血圧との関係

 血漿量と血漿浸透圧の維持のためにナトリウムは必須栄養素であり、生命を維持するために必須な幾つかの代謝経路に関与している。しかし、過剰に摂取したとき、高塩摂取量は高血圧に重要な危険因子となり、心血管疾患と腎臓疾患の危険率増加とも関係している。

 90ヶ国による人口ベースの研究で最近発表された総合的な解析は、2010年で世界成人の1/3は高血圧で、10年間に年齢調整した高血圧発症率は高収入諸国で2.6%低下したが、低収入や中収入諸国で7.7%増加した。事実、高血圧に関連している重要因子の1つは高塩摂取量である。Global Burden of Diseases Nutrition and Chronic Diseases Expert Groupはモデル研究の手法で次のように結論を下した。2010年で生じた10%または心血管疾患による165万人の死亡原因は5.1 g/d以上の塩摂取量によるものであった。事実、高血圧は世界中の早死や疾患の大きな予防できる危険因子として知られている。

 したがって、確実な科学的エビデンスに基づいて、塩摂取量は5.1 – 6.1 g/dを超えないことを食事ガイドラインは勧めている。しかし、現在の摂取量は世界中のほとんどの集団ではるかに高い。また、2010年に関して、世界中の推定平均塩摂取量は10.0 g/dで、51ヶ国(総成人人口の44.8)では、勧告値の2倍以上であった。

 

塩摂取量、高血圧、心血管疾患と腎臓疾患との関係に関与している機構

 心血管疾患は慢性腎臓疾患集団で主要な死因であり、慢性腎臓疾患が重症に進むよりも慢性腎臓疾患のために死ぬ危険率増加が5 – 10倍になる。この集団では慢性腎臓疾患の発症に幾つかの要因が寄与しており、そのほとんどは高血圧や糖尿病のような前の合併症に関係していた。しかし、他の危険因子は慢性腎臓疾患に特有である。すなわち、貧血症、骨ミネラル障害と(特に本レビューに関連した)必要な塩摂取量を排泄する能力不足とその結果による体液量増加である。事実、塩摂取量は、血圧上昇、体液増加、左心室肥大、炎症や内皮損傷を含めて慢性腎臓疾患患者で心血管疾患についての数多くの緩和できる危険因子と関係していた。さらに、タンパク尿のような腎臓傷害の標識は高塩摂取量とも関係しており、その後の全死因や心血管疾患死亡についての主要な危険因子である。塩摂取量、血圧、心臓と腎臓に関連する主な機構を図1に示す。

 

 

1 塩摂取量、血圧、腎臓障害そして冠状心疾患間の関係の図解。慢性腎臓疾患で過剰の塩摂取量は塩排泄量の低下と高塩摂取量(特に味覚感度によって媒介される)によって引き起こされる。これは細胞外液量増加の変化を通してだけでなく、血管内の塩の直接的な毒性効果を通しても心血管疾患危険率を増加させる(McMahonらから改作)

 

 一部遺伝的に決定される塩感受性は血圧応答の大きな決定要因の1つである。老齢、肥満、糖尿病、そして特に腎臓の機能不全も塩感受性工程を修正できる。ポジティブな塩収支は浸透圧を上昇させ、その結果として水摂取量を増加させ、急速に血液量増加を引き起こす。時間経過にしたがって、自動制御を通して抹消血管抵抗の増加は血圧の支配的な決定要因となる。塩の非浸透圧的貯蔵もよく記述されており、集団の心血管疾患や腎疾患の危険率増加に干渉するように思える。慢性腎臓疾患患者は高い塩摂取量を排泄する能力を減少させ、そのことは図1で述べたように器官中の塩の悪い効果に対する感受性を増加させる塩収支に干渉する。

 線維症や他の病変を促進させる高塩摂取量の効果は腎臓に限られておらず、心血管疾患系でも観察される。アンジオテンシンⅡとアルドステロンの効果は高塩摂取量によって増幅されることで知られている。しかし、高塩摂取量の直接的と血圧とは無関係な効果に関与する他の機構は、腎臓や大動脈内皮細胞における増殖要因の発現の変容を増加させるなど、心血管疾患や腎臓の構造や機能に悪い影響を及ぼすことを明らかにしてきた。

 最近、心房ナトリウム尿排泄亢進ペプチドと大脳ナトリウム尿排泄亢進ペプチドの測定値は、乾燥体重を達成した進行した慢性腎臓疾患患者でどれくらいしばしば血液量増加が存在するのかを記録してきた。血液量増加を管理することは降圧剤治療を使わなくても正常血圧値を達成でき、塩摂取量の低下と全ての段階の慢性腎臓疾患の血液量増加の管理を関連させることにより左心室肥大の寛解も可能である。

 塩摂取量の心血管疾患効果を考えると、心室肥大だけでなく脈圧や血管のような血管の特性もすでにここで述べた幾つかの機構の結果として、血圧とは関係なく塩摂取量または高い血圧に対する応答を増幅することによって影響される。血圧上昇、体液増加、増加した塩収支の結果としても腎疾患の発症は慢性腎臓疾患患者の死亡危険率を増加させる長い道筋で心臓にもっと損傷を加えるだろう。

 

塩収支と慢性腎臓疾患における血圧

 慢性腎臓疾患患者の間で、高血圧発症は92%上昇し、不十分な塩摂取量の結果は全集団データからのデータと異なっている。これらの集団の60 – 90%は過剰の塩摂取量であることを示してきた。しかし、減塩努力はこの集団で血圧を低下させるのに特に有効であることを文献は示してきた。負荷された塩を排泄できなく、塩排泄緩衝能力の低下のために慢性腎臓疾患患者が塩感受性集団を表していると考えられているため、このことが生じる。

 大いに勧められているけれども、多くの理由で十分な塩摂取量を低下させたり、維持することは難しい。第一に、現在の健康管理は塩摂取量ガイドラインを毎日の生活に組み込むために必要な支援を患者に提供していない。第二に、支援が役立つとしても簡単な方法がないため、臨床実践において慢性腎臓疾患患者で塩摂取量はしばしば評価されていない。WHOで考えられた黄金標準法-反復24時間尿収集-は患者に高度な負荷をかけ、高い分析費、過少または過大尿収集の可能性から限界がある。他方、食事調査法は実行容易と考えられるが、記憶間違いに関係した誤差を受けやすく、偏向やインタビュー技術を報告している。24時間塩摂取量を推定するためのスポット尿収集を使うことは簡単であり、最近調査されてきたが、現在までに様々な慢性腎臓疾患集団でテストしたとき、一回方式は十分に行われなかった。

 第三に、毎日低塩食にする参加者の誓約を難しくする幾つかの追加的な障害がある。イングランドに住んでいるバングラデシュ人の間で、De Brito-Ashurstらは、減塩に対する障害は食事的な信仰、気持ち、文化的に確立された塩味に深く根付いている。実践的な知識と本質的な動機が患者にないこと、不適切な病気認識と拒絶技術、疾患の進行と塩摂取量に関する社会的支援とフィードバック、そして低塩食品の入手可能性などがフォ-カス・グループによる調査で明らかにされたように、オンラインの患者に対しては障害であった。

 最近、Meulemanらは156人の慢性腎臓疾患患者を調査し、彼等は塩摂取量を制限した食事は利益があると思っているが、彼等は多くの困難さをまだ経験していないことを明らかにした。非常に重要な障害として分類されている事項は製品中の高塩含有量、塩フィードバックの欠如、目標設定と減塩戦略考察の欠如、そして症状に関連した慢性腎臓疾患を体験した知識がないことであった。さらに、減塩を障害する事項は年齢、教育レベル、合併症の数、自覚している自立支援、鬱症状そして自己効力感である。

 これらの研究は低塩食を守る事に役立つ促進事項として従うことを明らかにした:嗜好に影響を及ぼさないで少ない塩で調理する受容できる戦略を開発する(習慣的な食事を塩で調理することが主なナトリウム源である諸国で特に重要である)。さらに、様々な減塩障害を目標にする戦略を支持し、自己効力感と自立支援に関して強化された信念が非常に重要である。さらに加工食品中の塩含有量を減らす介入、塩に関連した成品表示を改善し消費者への警告を増加させることは、これらの製品が塩摂取量の主要源である場所で主として重要である。

 

塩摂取量低下と心血管疾患や腎疾患危険率の影響

 慢性腎臓疾患における減塩効果を分析した研究はほとんどなかった。2015年にマクマホンらは8件のランダム化比較試験結果を含む総合レビューを行った。全参加患者は258人で、平均調査期間は6週間であった(1に要約、省略)5件は異質介入法により慢性腎臓疾患患者で行われ、そのほとんどは初期段階の慢性腎臓疾患であった。興味深いことに、減塩は8/3mmHgの血圧低下と一貫して関係しており、20 – 50%の範囲でタンパク尿の低下を反映していた。

 述べられたメタアナリシス後に2件のランダム化比較試験が発表された。58人の患者が4週間減塩するようにアドバイスされたサランらの交絡研究で;3.3 gの減塩はアルブミン尿に影響を及ぼすことなく収縮期血圧を10.8 mmHgの低下結果であった。教育、意欲的なインタビュー、血圧と塩摂取量の指導と自己モニターに焦点を置いて追加のインタビューを受けた人々で6ヶ月以上通常追跡された患者とMeulemanらは比較した。彼等は最初の3ヶ月後の結果(塩排泄量、血圧、タンパク尿)にわずかな改善を見出した。それらは追跡時間を低下させた。したがって、短期間の腎臓と心血管疾患結果についての危険因子の管理を改善するのに効果的であるが、臨床診療は、長期間低塩食を守ることは医療スタッフや患者にとって大きな挑戦であることを示している。

 腎臓や心血管疾患の結果で低塩摂取量の効果に関して、臨床試験は行われなかった。この関係に関する利用できるデータはこの後の解析と観察研究からの物である。高塩摂取量の回避はこれらの結果における臨床試験の2件のこの後の解析でレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系阻害効果を増大させた。確定した慢性腎臓疾患患者の大規模コホ-トの解析は、心血管疾患発症、慢性心不全疾患の進行、そして全死因のような悪い結果と共に高尿中ナトリウム排泄量の予期された関係を示した。

 2012KDIGOの慢性腎臓疾患の血圧管理のための臨床診療ガイドラインは禁忌を示すことがなければ、塩摂取量を5.1 g/d以下に下げることを勧めている。これらの勧告値を実行するには特別な戦略が重要である。塩摂取量と食事パターンは世界中で非常に変化しているので、戦略は現地の実態に基づく必要がある。ブラジル、南アフリカ、日本そしてイタリアで開発された幾つかの実用的な戦略が発表されている;現地のパターンや特性を考慮してた現地のレベルで実行例としてそれらは役立てられる。

 

要約と結論

 心血管疾患と慢性腎臓疾患患者における腎疾患の代理標識に及ぼす減塩のポジティブな効果を支持する良いエビデンスがある。さらに、その領域で利用できる試験のほとんどは比較的短期間の追跡ですみ、低塩食の長期間継続が大きな挑戦である。患者の自己動機だけでなく、ぴったり合う学際的なアプローチ、家族ぐるみに遵守そして政府の行動に繋がるからである。厳しい結末を観察できる長い追跡期間で大規模に研究することは塩摂取量に関連する将来の勧告値を決定するために重要となり、特に腎臓や心血管疾患で潜在的な影響を伴うこの低コスト測定を実行するための効果的な対策が開発される。