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ナトリウムと健康-一致点と論争点

Sodium and Health – Concordance and Controversy

By Nancy R Cook, Feng J He, Graham A MacGregor and Niels Graudal

BMJ2020;369:m2440

 

ナンシー・クックと同僚達はナトリウム()の健康効果についての賛成と反対の根拠とそれらが解決されるかもしれない方法を述べる。

 

 動物とヒトの両方で数十年の研究調査があるにもかかわらず、健康に及ぼす塩(塩化ナトリウム)の効果についての意見の相違がある。ナトリウムは健康に対して必須で、細胞外液にあり、細胞輸送と共に血漿量を調節する。それは栄養吸収や体液バランスの維持を含め多くの生理学的機能を果たす。

 ヒトは生肉、魚、野菜を含め多くの食品に少量含まれているものから十分なナトリウムを摂取できるが、我々が現在摂取しているナトリウムのほとんどは食品加工工程や食卓で加えられる。何世紀もの間保存剤として塩は使われてきて、今では食品製造中に味付けのために使われる。それはまた、塩水中に漬けるとナトリウム含有量の増加によりジュシーな製品を作れるようにして肉のテクスチャーを変えられる。リン酸ナトリウムまたはグルタミン酸ナトリウムも味や他の特性を強化するために使われるが、本論文では我々は塩化ナトリウムに焦点を置く。

 世界人口のほとんどで塩摂取量は最低の生理学的必要量を大きく超えている。少量のナトリウムは健康に必要であるが、多すぎると健康問題の原因となる。例えば、ナトリウムは体液量制御に影響を及ぼすので、高ナトリウム摂取量は体液増加により血圧を上昇させるかもしれない。しかし、どこまで塩摂取量を減らすべきかについて論争がある。現在アメリカの平均人口塩摂取量は約9.1 g/dであり、国によって幅広い範囲があるが、推定された世界の平均値は9.3 – 10.2 g/dである。アメリカ、カナダ、イギリスの最近のガイドラインは5.8 – 6.1 g/d以下に塩摂取量を下げるように要求している。しかし、いくつかの機関はもっと低い要求をしている。アメリカ心臓協会は5.8 g/d以下を勧めているが、ほとんどの成人、特に高血圧者には3.8 g/dと言う理想的な限界を示している。WHO5.1 g/d以下を要求している。他の機関は、最適範囲はもっと高いと結論している。本当であれば、最高レベルを除いてほとんどの諸国の現在の摂取量を減らす必要はほとんどない。

 

ナトリウム摂取量の測定

 ナトリウム摂取量の測定は難しく、全ての方法には限界がある( 1)。研究用厨房で正確に調理された食品だけを参加者が食べる給食研究は摂取量を直接的に管理できるが、そのような

1 ナトリウム摂取量を調査する方法

方法

解説

利点

欠点

食事

 

 

 

給食研究

提供される全ての食品はナトリウム含有量の正確な測定が出来る研究用厨房で調理

摂取された実際のナトリウム量の正確な測定

管理された短期間の条件下でのみ可能

24時間思い出し法

前の24時間に参加者は何を食べたかに関して質問

大規模な集団での管理が容易

偏向を思い出しがち

食品記録

例えば、3日間で食べた全ての食品の詳細な記録

数日間で食べた全ての食品を補足できる

大規模なコホ-トで管理するとこが難しい;観察の偏向が入りやすい

食品頻度アンケート

長期間(過去の年)にわたる特別な食品の平均摂取量について尋ねるアンケート

集団調査が容易;長期間のパターンを把握できる

加工食品、外食、食卓で加えられたナトリウムの主要給源を捕らえる能力に限界あり

尿

 

 

 

スポット尿

一回の尿素排泄から試料採取

集取が容易

ナトリウム濃度を測定;摂取量を計算する必要がある

夜間尿

夜間または例えば、8時間に排泄される全ての尿の時限集取

濃度よりも排泄量を推定

夜間尿素排泄量は昼間よりも多いかもしれない;前日だけの摂取量を捕捉

24時間尿

24時間で排泄される全ての尿を収集

前の24時間のナトリウム摂取量を90%以上正確に捕捉

前の24時間だけの摂取量捕捉する参加者の挑戦は不完全であるかもしれない

複数の24時間尿

24時間に排泄された全ての尿の複数収集、理想的には非連続

長期間にわたるナトリウム摂取量の正確な平均値

参加者の挑戦;誤差は平均化される可能性があるが、不完全な可能性がある

ような方法はランダム化比較試験のような短期間の研究だけで可能である。その代わりの長期間観察研究は、食品頻度アンケート、食事記録、または24時間思い出し法による栄養素摂取量の推定にしばしば依存している。これらの方法は偏向しがちで、摂取した食品のナトリウム含有量、特に調理中や食卓で加えられたナトリウムを推定することも難しい。

 ナトリウム摂取量のより客観的な測定法は尿収集から得られる。最も正確な測定法は24時間尿収集である。管理された条件で行われた収支研究と尿、便、汗からの排泄量に等しい全てのナトリウム摂取量を測定することは、摂取されたナトリウムの90%以上が実際のナトリウム摂取量の近い推定値となる24時間の尿中に排泄されることを示唆している。24時間尿収集に参加者が挑戦して以来、多くの研究が簡単であるがあまり正確でない測定法を使っている。幾つかの研究は夜間または8時間の試料を集めているが、スポット尿試料がより一般的に使われている。スポット尿試料からの結果は川崎式のような式を使って24時間排泄量の推定値に変換される。その式はアジア人で開発された。ブランドーアルトマン・プロットは、24時間尿収集と比較してスポット尿試料によって高い値は過少評価され、低い値は過大評価されることを示唆している。

 24時間尿でも食事の変動によって日々変化する。尿中のナトリウム排泄量は摂取量に依存しているだけでなく、骨や皮膚のナトリウム貯蔵との内部変動収支にも依存しており、したがって、摂取量から実質的に偏向しているかもしれない。管理された条件下の収支研究は、3 gの差の塩摂取量を検出するには一回の24時間尿収集は十分でないことを示唆している。24時間ナトリウム排泄量の反復測定は精度を改善し、3 – 7回の試料が個人の通常のナトリウム摂取量を推定するために勧められている。しかし、集団の平均値用にはあまり正確でない測定法でも十分であるかもしれない。

 

ナトリウムと血圧

 幾つかの横断観察解析は塩摂取量と血圧との間に直線関係を明らかにした。最大の解析の1つはインターソルトで、1988年に最初に発表された52センターで10000人以上の参加者で電解質と血圧の国際研究である。センター内で最高に調整された解析は、24時間尿排泄量で測定したナトリウム量と拡張期血圧でない収縮期血圧との間に有意な関係を示した。注目すべきは、非常に低いナトリウム排泄量(1000 mg/dよりずっと少ない)4つの孤立した集団の低血圧であった。非常に少ない量は生理学的に可能性であることをこれは示しているが、ナトリウムと血圧との関係はこれらの孤立した集団では他の要因によって混乱させられているかもしれない。ナトリウムと血圧とのポジティブな関係は最近のPURE研究を含む他の観察研究で繰り返された。

 塩摂取量と血圧との間の因果関係のより直接的なエビデンスが塩摂取量介入をした多くのランダム化試験から得られている。DASH(高血圧予防の食事療法)-ナトリウム試験は30日間DASHまたはコントロール食と高、中、低塩摂取量(平均して大体8.4, 6.1, 3.8 g/d)に対してランダムにした給食研究であった。適格な参加者は22歳以上で120 – 159/80 – 95mmHgの血圧で、降圧剤治療を行っていないことであった。両食事療法の低塩食で血圧の段階的な低下があり、基準線で高血圧者間でより強い効果を示した。

 ナトリウムとカリウムのアメリカ人食事参考摂取量の2019年版のために最近行われた47件の減塩試験のメタアナリシスで、24時間ナトリウム排泄量で平均42 mmolの低下は成人で3.3/2/2 mmHgの平均血圧低下と関係していた。効果の幾つかは生活様式介入を使った試験で他の栄養素の変化によるためである一方で、食品提供または塩補給を使った交絡試験は同様の効果推定値を与えた。

 減塩の大きさと血圧応答との間にかなりの投与量応答関係をメタアナリシスは報告した。しかし、主に基準線血圧に関連して試験間にかなり大きい異質性があった。効果は140/90 mmHg以上の高血圧者で大きかった(- 4.0 mmHg収縮期血圧、- 2.7 mmHg拡張期血圧)。しかし、低血圧者でも存在した(- 1.3 mmHg収縮期血圧、- 0.7 mmHg拡張期血圧)。さらに、高血圧予防の3試験のメタアナリシスは減塩介入者で20%低い高血圧発症率を示唆した。結局、少なくとも平均血圧以上の人々で減塩は血圧に有益な効果を持っていると言うコンセンサスがあるように思える。

 

ナトリウムと心血管疾患

 血圧に及ぼす塩の総合的な投与量依存効果と血圧と心血管疾患との間の知られた関係のために、これらの関係から心血管疾患に及ぼす減塩効果を推定するためのモデル化を多くが使ってきた。例えば、死亡率の利点は3つの異なるアプローチを使用して発見された:冠状心疾患政策モデル、高血圧治療試験に基づく推定値、そして高血圧予防試験(TOHO)からの血圧と心血管疾患の両方に関するデータに基づくより直接的な推定値である。減塩が高血圧者に制限された場合でも、実質的な利益が見られた。

 心血管疾患を直接調べた減塩試験はほとんどないが、減塩と血圧の追跡試験はある。TOHP9 – 12年間の追跡は、減塩介入でランダム化された「高めの正常」血圧(8089 mmHg拡張期血圧)の人々で心血管疾患に25%の低下を明らかにした。前高血圧者あるいは高血圧者で5件のランダム化比較試験のメタアナリシスで、心血管疾患に18%の低下があった。他のメタアナリシスは心血管疾患について同様の結果を明らかにしたが、推定値は不正確であるが、全死因で低下はなかった。

 健常な正常血圧者の健康結果の試験は行われなかった。集団間の自然な実験-例えば、フィンランドやイギリス-は塩摂取量低下と低い集団血圧と心血管疾患死亡率に関係がある。しかし、これは喫煙率の低下、スタチンの使用、医療の利用と利用率、そして医療介入と手順のような他の同時発生的変化によって影響を受けるかもしれない。

 観察的なコホート研究からの結果はより複雑になっている。TOHPと幾つかの他の研究は基準線のナトリウム排泄量と心血管疾患の発症率との間に直線関係を明らかにした。(1上部)。しかし、幾つかの他の研究-高危険率コホート研究、遺伝的危険性のある前向きコホート研究、そしてPURE研究(1下部)を含む-は心不全、そして塩摂取量の高い端と低い端の両方で全死因を含む心血管疾患の高い危険率でU字型曲線またはJ字型曲線を明らかにした。

1 高血圧予防試験(上部)PURE研究(下部)でナトリウム排泄量と心血管疾患との関係

 

 観察研究のメタアナリシスは塩摂取量を5.8 g/dの推奨値以下にすることに賛成と反対の結論を持って同様の多様な結果を示した。西欧集団の研究は低塩摂取量の参加者が少ないので、このグループ間の発症率を計算することを難しくしている。多数のナトリウム排泄量測定を使った研究で、より正確な摂取量推定によりこの範囲の参加者は少ない。

 

どうして結果は異なるか?

 どうして様々な減塩研究からの結果が様々に異なった結果をもたらすかについて多くの議論があった。特に、塩摂取量と血圧との間に投与量応答関係があれば、どうして幾つかの研究が低塩摂取量で心血管疾患の高い危険率を示すのか?示唆される説明は研究集団間の異質性、測定誤差、混乱因子、逆因果関係、あるいは低塩摂取量で悪い生物学的効果(囲み1)を含んでいる。

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囲み1

コホート研究で塩摂取量と心血管疾患との間の関係に関する矛盾した結果についての可能性のある説明

ランダム変化

 試料が同じ背景を持つ集団から採られているとしても、異なった集団からの異なった結果になるチャンスだけでもあるかもしれない。

測定誤差

 疫学研究は潜在的に面倒で高価であるがより正確な方法(例えば、24時間尿測定)よりもしばしば安価で実用的な方法(例えば、スポット尿測定)を使う。そのような簡単な方法は、ランダム化しても関係を検出する可能性を減らすかもしれない個別の誤差をもたらすかもしれない。最近の研究は、誤差が投与量応答曲線の形を変えることさえあることを明らかにした。系統的に分布しておれば、誤差は病人を低塩摂取量グループに入れ、低塩摂取量に対して高い死亡率を誤って述べることがある。本研究の限界は、空腹時早朝スポット尿用に設計されているけれども、24時間尿試料に式を用いて適用されたことであった。

混乱因子

 全塩摂取量の異質性は研究間の差の幾つかを説明できることがある。研究内で、多くの因子が性、年齢、エネルギー摂取量、喫煙、血圧、社会的状態、そして依存症のような結果に影響を及ぼすかもしれない。これらの因子の調整は塩摂取量と結果との間の関係を弱める、あるいは強めるかもしれない。研究内のそのような調整にもかかわらず、研究間には説明できない差がまだあるかもしれない(残余混乱因子)

逆因果関係

 暴露の確立は研究されている結果によって原因となるように影響を受けるときに、逆因果関係が生ずる。例えば、高血圧者または心血管疾患者が減塩するようにアドバイスされているかもしれない。これは見かけの摂取量を下げながら、心血管疾患危険率の1つの側面だけを変える。他の疾患者は食欲低下によりあまり食べないため、塩摂取量だけを下げるかもしれない。したがって、高い死亡危険性の人々は低塩摂取量グループに集められることがある。同様に糖尿病や高血圧で食事摂取量が多い肥満者は高塩摂取量グループに集められることがある。

脂質とレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系に及ぼす影響

 約5.1 g/dへの中程度の減塩は交感神経系を活性化せず、あるいは血清中の脂質を増加させないで、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン(RAAS)系にわずかな影響を及ぼすだけである。しかし、5.1 g/d以下の大きな減塩は交感神経系とRAASを大きく活性化させ、血清脂質を大きく増加させる。その様な効果が心血管疾患や死亡のような健康結果に大きな影響を及ぼすかどうかについては不一致がある。さらに、最近の研究は、塩摂取量が生理学的最低量よりもむしろ最適量を達成させるために神経ホルモン系によって制御されているかもしれないことを示唆している。これは世界人口の比較的狭い塩摂取量範囲を説明できる。

既存の病気

 心疾患や高血圧の人々は利尿剤またはRAASをブロックする薬で通常治療される。これらの治療は全て低ナトリウム血症を誘発させる。特に低塩摂取量によって増幅される心不全患者でそうである。低ナトリウム血症は死亡率増加と関係しているので、この影響は低塩摂取量グループで観察される死亡率増加に寄与するかもしれない。

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合意の分野

 結局、減塩は特に高血圧者で血圧を下げると言う一般的な合意がある。その効果は高血圧の軽い(収縮期血圧で130 – 139 mmHg、拡張期血圧で80 – 89 mmHg)人々では小さいが、それでも減塩は高血圧の進行を遅らせ、このグループで疾患に関連した血圧の危険性を低下させる。正常血圧(120/80 mmHg以下)の人々は減塩でほとんど利益はない。遺伝因子が血圧に及ぼす塩の効果を変えるかもしれない。例えば、ある人々は塩によってあまり影響を受けず、したがって、血圧上昇と関係した摂取量にもかかわらず、低い血圧を維持している。

 高塩摂取量は一般的に身体に有害であると言う合意がある。U字型曲線あるいはJ字型曲線を明らかにした研究でも、心血管疾患による死亡率は最高摂取量(12.7 g/d以上)で増加した。1つの研究はこの関係を高血圧者だけで明らかにし、正常血圧者では関係なく、再び塩感受性の何らかの影響を示唆している。減塩に関するアドバイスを高血圧者に限るべきか、あるいは集団全体に適用されるべきかを取り巻く論争がある。人口アプローチの支持者達は、高血圧発症率は高齢者で高く、集団戦略は加齢に伴う血圧上昇を予防できると主張している。

論争の分野

 最大の論争は推奨塩摂取量をどれ程に低くするかである(囲み1)。幾つかの国際ガイドラインによって示唆されているように推奨量を5.8 g/d以下、現在の平均塩摂取量に近い9.1 g/d、あるいは12.7 g/d以下に推奨量をすべきか?その差はJ字型曲線が本当に存在しているかどうかに依存している。塩摂取量と血圧に関するデータは減塩で少なくとも何らかの改善を示している。これが心血管疾患の危険率を下げることに必ずしも一貫して言い換えられない理由は明らかでない。PURE研究でも塩摂取量と血圧との間に直接的な横断関係を明らかにしたが、その後の心血管疾患で見ると、J字型曲線が現われた。血圧が脳卒中の強い危険因子であると言う事実にもかかわらず、幾つかの研究は低塩摂取量で脳卒中の増加を示してさえいる。他の研究は主に心不全で増加を示している。インターソルトの孤立した社会で示されているように、ヒトの集団は極端に低い塩摂取量でも生きられる。

 J字型曲線は血圧介入と肥満を含む研究の多くの他の分野で観察され論争されている。潜在的な逆因果関係を示す(囲い1)結果の前に、あるいはメンデルのランダム化のような遺伝的解析を通して結果の直前に傾向を調べる履歴を調べることによってそのような曲線は説明できることを幾つかの研究は明らかにした。

 

論争を解決する方法

 他のタイプの研究と組み合わせて血圧に関して現存する減塩試験は公衆政策を支持するに十分なエビデンスを提供している、と何人かの研究者達は主張している。血圧、ホルモン、そして脂質に関する現存する試験と健康結果に関する観察研究は現在の公衆政策を拒否するに十分なエビデンスを提供している、と他の研究者達は主張している。塩摂取量と心血管疾患について決定的に大規模なランダム化試験は論争を解決する、と何人かの研究者達は要求している。しかし、理想的な長期間塩摂取量介入がどんなものかは明らかでない。他の栄養素と違って、一般的にナトリウムが食事から除去される必要があり、サプリメント錠で与えることは出来ない。長期間の生活様式介入は難しく、特に少なくとも5年間追跡しなければならないので、研究を複雑で費用のかかるものとしている。

 最近、多様な塩摂取量研究者達のグループがランダム化塩摂取量試験のための推奨に関してコンセンサスに達しようと努めた。彼等は様々な管理された環境を考えた。例えば、台湾の試験で使われた退役軍人の家庭環境である。彼等の示唆は刑務所集団内の試験であった。塩摂取量は厨房業務のクラスターのランダム化を通して管理できる長所をこれは提供している。短所は実行性で、例えば、長期間の追跡が達成されるかどうか、そして刑務所の人々で行う実験について倫理問題と同様に、既存の状態の有病率である。

 難しいが、他の可能なアプローチがある。塩代替物と脳卒中研究(SSaSS)は中国で行われている大規模なクラスターのランダム化比較試験である。中国の600村で脳卒中歴または脳卒中の危険率増加を持った参加者を通常治療または低ナトリウムで高カリウムの塩代替物治療のいずれかにランダム化した。結果は脳卒中、大きな血管疾患、そして総死亡を含む。試験は2020年に終わり、少なくとも高危険率の人々で塩の役割に関するエビデンスをもっと提供すべきである。成功すれば、この研究設計はもっと代表的な集団試料で使われる。

 進行中のもっと小規模な塩摂取量試験は慢性腎臓疾患者105人の慢性腎臓疾患における塩摂取量(STICK)試験と心不全患者約1000人のナトリウム-心不全試験である。しかし、これらの高い危険率患者からのデータは幅広い集団に一般化できないかもしれない。

 他の可能な試験設計はインターネットに基づくものを含むが、塩摂取量の十分な分離を達成する可能性は不明である。慢性腎臓疾患患者で1つのウェッブに基づく試験は短期間達成されたが、長期間のナトリウム排泄量低減は出来なかった。しかし、全ての栄養的なエビデンスのように長期間のランダム化試験は実行問題のために不可能である。しかし、多数の24時間尿排泄量測定による長期間観察追跡研究は塩-心血管疾患曲線の形を解決するのに役立つ。

 遺伝的研究からもっと多くの情報が得られる可能性もある。例えば、心血管疾患に及ぼすアルコール摂取量の影響を調査するために行われたように、メンデルのランダム化設計は因果関係を調査するために使われるかもしれない。イギリスのバイオバンク・データセットを使ったメンデルのランダム化研究はナトリウム/カリウム比と血圧との間の因果関係を明らかにした。この研究はスポット尿試料から求めたNa/K比と心血管疾患との間の逆観察関係を明らかにしたが、これらの疾患のためのメンデルのランダム化を行えるほどの十分な力はなかった。パゾキらはメンデルのランダム化、機能的な調査、共同位置測定、遺伝的危険率スコアー、そして経路解析を使って、尿中ナトリウムとカリウム排泄量と幾つかの心血管疾患特性との間で共有された遺伝的要素を明らかにした。ナトリウムとカリウムの発現のための座は人体測定特性と食習慣、例えば、食品に加える塩やアルコール摂取量と関係していた。彼等のナトリウムの遺伝的危険率スコアーは年々の血圧上昇と関係しており、メンデル解析は、尿中ナトリウムが拡張期血圧や冠状心疾患とポジティブに関係していることを示唆した。行動と体温調整の両方に影響を及ぼす異なった機構を通して作用するかもしれない様々な効果をナトリウムは持っていることを経路分析は意味していた。これらの線に沿ったさらなる研究は、ナトリウムの効果が関係した行動または血管や他の組織に及ぼす直接効果から来るかどうかを決定するのに役立つことがあるだろう。

 幾つかの他の不確実性が残っている。併存症またはある人々を塩の効果に対してより感受性にする人口統計学的で遺伝的な差があるか?ナトリウム要求量が身体の大きさに合わせて調整されるか?カリウムなどの他の陽イオンとの関係と同様に血管と他の身体システムに及ぼすナトリウムの長期間効果について我々はもっと知る必要がある。これらは相互作用するが、公衆保健のための合同推奨値を決定する必要がある。科学者達は偏向のないエビデンスを調べ、不完全な現存するデータを信頼する必要性を減らすためにさらなる研究を行うべきである。

 

キー・メッセージ

 

  減塩は少なくとも高血圧者で血圧を下げるために一般的に合意されている。

  血管疾患や死亡を含めて他の健康結果に及ぼすナトリウムの効果を巡って論争が残っている。

  幾つかの観察研究はU字型曲線またはJ字型曲線を示唆しており、一方、他の研究は心血管疾患と総死亡とに直線関係を示している。

  結果の不一致を説明するためにさらなる研究を行う必要がある。その不一致は研究間の異質性、偏向、測定誤差、または説明できない生理学的効果によるためであった。