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どれくらい多くの塩が多すぎるのか?

How Much Salt Is Too Much Salt?

By Franz H. Messerli, Alexandra Neagoe, and Belinda Nazan Walpoth

Anatol J Cardiol 2019;22:2-4   The Anatolian Journal of Cardiology

 

はじめに

 トルコの成人人口の高血圧総合発症率は21.4%で、65歳以上の患者で最高43.3%に達している。SALTURK研究は、トルコの塩摂取量は平均14.8 – 18.1 g/dであることを報告した。このことから、どれくらい多くの塩が多すぎるのか?と言う簡単な疑問が生ずる。

 

ガイドラインの推奨値

 アメリカ心臓協会は全人口に3.75 g/d以下の塩摂取量を勧めている。これは、トルコ市民の塩摂取量がアメリカ心臓協会が勧める量よりも5倍以上高いことを示している。したがって、塩摂取量はどの規準よりもトルコでは高い。しかし、我々は大規模な反塩運動に乗り出す前に、我々はアメリカ心臓協会の勧告値に関するエビデンスをあげる必要がある、すなわち、健康な人々、老若男女、そして子供達が3.75 g/d以下の摂取量にすべき科学的エビデンスは何か?減塩に関するアメリカ心臓協会の勧告値は塩が血圧を上昇させるような数多くの良く確立された観察に基づいており、高血圧は心血管疾患を引き起こすことで知られている。しかし、3.75 g/dと言うアメリカ心臓協会の勧告値は、ほとんどの食事勧告値のように恣意的である。WHOやヨーロッパ心臓協会のような他の機関は5.2 – 6.4 g/dの塩摂取量を勧めている。しかし、高血圧であるか正常血圧であるかに関わらず、塩摂取量が過剰、中程度、過少にかかわらず、減塩による血圧低下は一貫して心疾患の危険率低下させることを必ずしも意味しない。アメリカ合衆国では、我々は過去数十年間に心血管疾患に劇的な低下を観察してきた。しかし、平均的なアメリカ人は約9 g (平均的なトルコ人の塩摂取量の約半分)を摂取し続けており、心疾患の低下にもかかわらず何年間も変化しない量である。思うに減塩は高血圧者で塩摂取量の高い人で有益であることを証明するかもしれない。しかし、正常血圧者では、減塩者はほとんどいなくて、何らかの効果があったとしても、行き過ぎれば有害になるかもしれない。

 

塩と寿命

 記憶に値することに、香港の女性は平均8 – 9 g/dの塩摂取量であるにもかかわらず、世界で一番高い寿命で87.3年という平均寿命である。潜在的な混乱要因を調整して、181ヶ国の24時間ナトリウム排泄量と健康平均寿命との関係をざっと見ると、非常に高い場合をできるだけ除いて、塩摂取量は予想に反して実際に寿命を延ばすかもしれないことを示しているように思える。図1

1 182ヶ国の年齢標準化推定ナトリウム摂取量と健康平均寿命

破線は毎日の推奨限界摂取量を示す。

AHA:アメリカ心臓協会; ESC:ヨーロッパ心臓協会; NHS:イギリス国民保健サービス

 

追加として我々は死亡率を調査し、塩摂取量と全死因との間に逆相関を明らかにした。世界中で寿命と直接的に相関し、全死因と逆相関している塩摂取量についての我々の観察は、寿命を短くする理由になるとか早死にの危険因子になると言う塩摂取量に反対の議論を持ちかけている。しかし、重要なことにこれらのデータは観察したもので、それぞれの国について推定された平均値を表している。明らかにそれらは栄養勧告値の基礎として使われるべきではない。

 

ナトリウムとカリウム

 18ヶ国の高・中・低収入諸国のナトリウムとカリウムの尿排泄量を心血管疾患と死亡に結びつけた関係を評価したオドンネルらの最近のデータは興味深い。中程度の塩摂取量(7.6 – 12.7 g/d)と高カリウム摂取量との組み合わせは死亡と心血管疾患の最低危険率と関係している。塩摂取量と死亡および心血管疾患とのJ字型関係は現在の低塩摂取量(5.1 g/d)と言うWHO勧告値を支持していない。対照的に、カリウム排泄量と死亡または心血管危険率との関係は逆で直線的である。したがって重要なことに、高カリウム摂取量は高ナトリウム摂取量と関係した心血管危険率増加を緩和する。驚くととではなく、高ナトリウム摂取量による心血管危険率低カリウム摂取量者で最も顕著であった。

 

トルコについての特異点

塩の隠れた給源

 赤胡椒はトルコ料理で幅広く使われている;それはほとんどの食卓で小さな容器の中にある。ほとんどの消費者には伝統的に気付かれないで、塩(とひまわり油)はわずかに湿らせた混合物を維持するために唐辛子に多く加えられている。したがって、トルコでは胡椒は塩の実質的な供給源であり、一方、他の諸国では、胡椒は完全に塩とは関係ない。同じことはアイランにも当てはまる。それは通常のヨーグルトよりも10倍も多くの塩を含んでいる。

 

結論

 高血圧者であるなしにかかわらず、トルコでは総合的な塩摂取量は非常に高いことは疑いない。ほとんどの他の諸国の塩摂取量と比べて多すぎる。驚いたことに、限られた調査では、トルコで脳卒中率はわずかに控えめに増加している、多分、オドンネルらによる挑発的な論文で示唆されるようにカリウムの多い食事のためである。トルコ料理では野菜(なすび、胡椒、タマネギ、レンズ豆、豆類、ズッキーニやトマト)、ナッツ類(ピスタチオ、アーモンド、ヘーゼルナッツやクルミ)、そして果物(メロン、アンズやブドウ)が多く、それらの全ては非常にカリウムが高い。

 地中海食で他の成分と共に、これは過剰な塩摂取量による損傷をある程度十分に和らげる。それにもかかわらず、あまりにも多くの塩があまりにも多くの塩であると我々はまだ考えている、トルコでさえも!