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塩、トマト・スープ、そしてアメリカ心臓協会の偽善

Salt, Tomato Soup, and the Hypocrisy of the American Heart Association

By Franz H. Messerli, Stefano F. Rimoldi, Sripal Bangalore

The American Journal of Medicine November 21, 2016 

 

 アメリカ心臓協会はランセットに掲載されたメンテらの最近の研究を明確な言葉で非難した:“本研究の結果は根拠が確かでなく”…“欠陥のある研究”…“どのように食べて行くかについてその情報を使うべきではない、”アメリカ心臓協会のコメントで幾つか読める。疑問の研究は、ほとんどの人々に減塩は利益がないだけでなく、塩摂取量が低くなり過ぎると実際に有害になるかもしれないことを示唆した。高血圧患者が10,000人以上の集団研究のわずか約11%で、減塩が心疾患、脳卒中、死亡の危険率を下げるのに役立った。

 キャンベル・スープ社による製品スコアーで“心臓によい”と無批判に保証するための料金を何年間も受け入れてきたアメリカ心臓協会とこれは同じである。その製品は心臓に良い食事のためにアメリカ心臓協会自身が勧めているよりもはるかに多くの塩を含んでいる。特に、消費者は3.8 g/d以上の塩を摂取すべきではなく、一回当たり0.4 g以下の塩を含むとして定義されている低塩食品を優先的に選ぶこともアメリカ心臓協会は勧めた。キャンベルのアメリカ心臓協会が保証した製品は一回当たり約1 gあるいは単位当たり1.5 – 2.5 gの塩を含んでおり、アメリカ心臓協会の提案よりずっと多かった。アメリカ心臓協会の勧告塩摂取限界値3.8 g/dを守ろうとすると、キャンベルの通常トマト・スープ一回分がほぼその量の1/3であることを考える。現在、平均的なアメリカ人の摂取量は8.9 g/dで、アメリカ合衆国で心疾患の劇的な低下にもかかわらず過去数十年間に変化しなかった量である。1961年からアンディ・ウォーホルのキャンバスに記されているように、アメリカ心臓協会の“心臓に良い”お墨付きが有る無しのキャンベルの缶詰スープは半世紀以上も多くのアメリカ人で高塩摂取量を維持することに成功してきた。

 ほとんどの研究のようにメンテらの研究は完全ではなく、批判される。著者ら自身も批評家であり、それに付随するエオイン・オブライエンの論説もそうである。減塩についてのアメリカ心臓協会の思考は、塩は血圧を上げ、そのことによる高血圧は心血管疾患を引き起こすことで知られていると言う多くの確立した観察に基づいている。しかし、減塩による血圧低下は、高血圧者であるか、正常血圧者であるか、塩摂取量が過剰、中程度、過少であるかに関係なく心疾患の危険率を一貫して低下かさせることに必ずしも従っている必要はない。メンテらの研究や他の多くの研究によると、減塩は高血圧者でも高塩摂取量者で有益であることは非常にありそうに思われる。しかし、正常血圧者で減塩は効果があったとしてもわずかで、厳しく減塩すると有害にさえなるかもしれない。メンテらの論説と同様に、通常の塩摂取量と総死亡との間の直線関係があり、低塩摂取量でUまたはJ字型曲線の証拠はないと言う最近の結果に我々は疑問を持っている。これらの結果は低塩摂取(5.8 g/d以下)の安全性または効果の鉄壁の証拠を提供していない。死亡率は低塩摂取量と中塩摂取量との間で有意に低くなかったからである。低塩摂取量は交感神経系とレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系のカスケードを刺激することが記述されてきた。この両方とも心疾患発症と死亡率の増加と関係しているかもしれない。明らかに、医学では真実でないよりもしばしば真実であるように、減塩だけで全てに当てはまるものではない。

 アメリカ心臓協会の偽善的な支持政策にもかかわらず、はっきりとアメリカ心臓協会は、一律の減塩は議論があるかもしれず、事実、塩摂取量と心疾患との関係は我々が元々考えていたよりもはるかに複雑であるかもしれないことを認めたくない。したがって、多分、アメリカ心臓協会はH. L. メッケンが言っていることを心に留めるべきである:“全ての複雑な問題について、明らかで、簡単で、間違った答えがある。”