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通常のナトリウム摂取量と比較すると、低ナトリウム食と

過剰ナトリウム食は死亡率増加と関係している:メタアナリシス

Compared with Usual Sodium Intake, Low- and Excessive-Sodium Diets Are Associated with Increased Mortality: A Meta-Analysis

By Niels Graudal, Gesche Jurgens, Bo Baslund, Michael H. Alderman

Am J Hypertens 2014;27:1129-1137   20 March 2014

 

(現状の塩摂取量が死亡率から最適とする論文。オドンネルらの論文とほぼ同様の結果。方法、結果、図表を除き紹介する。ナトリウム摂取量を塩摂取量として訳し数値は塩摂取量に換算している。)

 

背景

 全住民の健康に及ぼす塩摂取量の影響は論争中である。低塩摂取量(6.7 g/d以下)、通常の塩摂取量(低めの塩摂取量:6.7 – 9.7 g/d、高めの塩摂取量:9.7 – 12.6 g/d)、高塩摂取量(12.6 g/d以上)の集団で全ての死因による死亡(ACM)と心血管疾患発症率(CVDE)を調査することが目的であった。

方法

 個別の塩摂取量測定値対ハザード比(HR)として測定されたコホート研究とランダム化比較試験(RTCs)の結果との関係をメタアナリシスでまとめた。

結果

 健康な集団試料のランダム化比較試験は確認されなかった。23件のコホート研究と2件の追跡ランダム化比較試験(n=274,683)からのデータは、ACMCVDEsの危険率は通常塩摂取量対低塩摂取量で低下し、高塩摂取量対通常の塩摂取量で増加した。多数の混乱因子について調整後の代表的な集団試料でACMについてのHRは通常の塩摂取量対低塩摂取量で一貫して低下したが、高塩摂取量対通常の塩摂取量では増加しなかった。通常の塩摂取量範囲内では、発症率は一定であった。

結論

 低塩摂取量と高塩摂取量の両方とも死亡率増加と関係しており、塩摂取量と健康結果との間のU字型関係は一貫している。

 

 

 心血管疾患(CVD)の負担を減らすための人口規模の機会は有益であろう。その目的のために、血圧を下げるために減塩は心臓発作や脳卒中を予防するだろうと言う仮説に基づいて勧められている。この目標に到達するために、2004年に医学研究所(IOM)5.8 g/dという許容される上限塩摂取量(UL)3.03.8 g/dという十分な摂取量(AI)を定めた。しかし、これらの設定値はAIという医学研究所自身の設定値と一致していなかった。AIは“明らかに健康な集団で見られる大体の摂取量”である。人口の平均塩摂取量は約6.9 – 12.4 g/dの範囲であるので、AIULの従来の推定値はこれらの値と同じようであった。塩摂取量(5.8 g/d)2004ULの脆弱性は塩摂取量と疾患率や死亡率とを直接関係付ける研究に基づいた2013年医学研究所報告書によって強調された。人口に基づく健康結果のエビデンスは塩摂取量についてのULを十分に決めていないと報告書は結論している。AIも決められていなかった。

 その上、減塩はいくつかの生理学的な影響を引き起こし、それらのある影響は健康結果に悪い影響を及ぼすかもしれない。このメタアナリシスの目的は欠乏と過剰の危険率を最小にする範囲を明らかにするという目標を持って塩摂取量と死亡率との関係を調べることであった。したがって、我々は前向きコホート研究と低、通常、高塩摂取量によるランダム化比較試験(RCTs)からの集団試料で塩摂取量と健康結果(全ての死因(ACM)と心血管疾患(CVD)発症率)との間の関係を調査しようと思った。Meta-analysis of Observational Studies in Epidemiology(MOOSE)グループによる報告書に従ってデータは報告されている。

 

方法  省略

 

結果  省略

 

考察

 我々が前に強調したように、RCTsの欠如があり、明らかにされたRCTsの追跡研究で評価できるのは2件だけであった。その結果、本メタアナリシスの結果は集団として観察研究に基づいた。主な結果は、世界中で通常の塩摂取量と比較して、多いまたは少ない塩摂取量の人々はACMCVDの両方とも高い危険率であった。さらに、通常の塩摂取量内のグループでは高い塩摂取量と低い塩摂取量の間の結果に差はなかった。これらの結果は塩摂取量と健康結果との間で前に仮定されたJ/U字型関係と一致しており、本メタアナリシスに含まれているコホート研究の2件でJ/U字型の結果を確認した。結局、J/U字型は低栄養摂取量で不足の危険率と高い栄養摂取量で悪い発症の危険率との間に一般的に受け入れられている関係と一致している。

 高塩摂取量と関係している有害な効果は低塩摂取量と関係している有害な効果よりも強かった。しかし、多数の混乱因子について調整した集団を代表する試料ではパターンは反対であった。さらに、サブアナリシスは低塩摂取量と高塩摂取量の区間における両方の結果を測定した研究で対称的なACMCVD結果を示した。

 NHANESⅠとNHANESⅢの再解析を含むメタアナリシスで、低塩摂取量とACMとの間には関係はなかったが、多数の混乱因子について調整した集団を代表する研究のサブアナリシスでACMと低塩摂取量との間に有意な関係はあったが、高塩摂取量との間にはなかった。一方、CVDについてのパターンは逆であった。その結果、NHANES研究の再解析を含めた選択的な結論は、低塩摂取量がCVDではなくACMと関係しているようで、一方、高塩摂取量はACMではなくCVDと関係しているようである。補足的なメタアナリシスで、低塩摂取量はACMまたはCVDに及ぼす有益な効果と関係していなかった。

 この解析の強さは実質的な参加者数(n=274,683)の力と含まれている研究のほとんどが多数の仮定されている混乱因子についての結果を調整している事実であった。血圧に関係している因子について調整する理由は表示の偏向を減らすことであろう。しかし、血圧は塩効果の指標であるので、その様な調整は総合的な効果を過少評価するかもしれない過剰調整に導くかもしれない。2件だけの研究がモデルで血圧の有無のデータを解析して、2件の解析間には統計的な差はないことを明らかにした。その結果、血圧に関係している因子を含めることは結果に何の影響も及ぼさなかったように思える。

 一般的に危険性のあるサブグループと多数の混乱因子について調整をしてない研究を除いた後では異質性は消えた。2,3の例外はあるが、結果に及ぼす人種の影響は弱かった。多分、全ての調査されたグループが塩摂取量に関して均質になるように分類されたからであろう。多数の混乱因子について調整された集団を代表する試料の補助解析と塩摂取量推定法について層別に分類した研究は総合的に解析結果を変えなかったので、解析は雑なように思えた。塩摂取量を通常の集団レベルの平均値(9.7 g/d)から通常レベルの低い方に近いれべる(5.8 g7.6)まで減らした2件のRCTs追跡研究の結果は通常の高い塩摂取量対通常の低い塩摂取量のコホート研究についてのメタアナリシスと一致していた。別のランダム化された研究で、チャンらもACMに及ぼす影響はないことをに気付いたが、高い塩摂取量の13.5 gから通常レベルの9.7 gに減らした時、彼等はCVD死亡率の低下を報告した。減塩グループで付随したカリウム摂取量増加はそのことの解釈を混乱させたので、我々は解析からこの試験を除外した。

 独立変数(塩摂取量)の不正確な測定(測定誤差)が限界となった。測定誤差が任意の分類を誤らせることになれば、結果をゼロの方向へ偏向(回帰希釈バイアス)させるからである。これは結果の効果を過少評価することになるだろう。測定誤差がいくつかのサブグループを規則的に間違って分類させれば、結果の効果は直接的に偏向させられる。二回目の24時間思い出し推定法によって回帰希釈について塩摂取量の推定値(一回の24時間思い出し推定法)を補正した一つの研究は参加者の7.4%の代表的な試料で得られた。この補正はCVDに関する結果を変えなかったが、ACMを有意に増加させ、したがって、仮説とした因果関係の経路と矛盾してCVD死亡率とACMとの間に直感的に逆説的な不一致を生じさせた。その結果、この補正は偏光を除く以上に偏向を生じさせたかもしれない。したがって、本質的に測定誤差のために、参加者が規則的に間違って分類されることはない。さらに、規則的な測定誤差は通常の塩摂取量範囲では問題にはならなかった。その結果、範囲では塩摂取量と結果との関係は検出されなかった。よりもっともらしい混乱因子は、食事アドバイスや食欲不振のために低い塩摂取量であったり、または高エネルギー摂取量(肥満、糖尿病者)のために高い塩摂取量であって病気の参加者が集まっているかもしれない場合であろう。低塩摂取量グループと高塩摂取量グループで死亡率増加が生じるからである(逆の因果関係)。しかし、ほとんどの研究は解析からCVDや癌患者を除き、あるいはCVD、糖尿病、エネルギー摂取量について調整することによってそのような混乱因子について調整する方法を取っていた。

 結局、研究は危険グループで行われたけれども、最も正確な反復24時間尿測定による偏向のないランダム化された研究は、減塩が通常の塩摂取量範囲内でACMを有意に減らさなかったことを確認した。

 ここでの結果は減塩についての科学的根拠に疑問を持ってきた人々に支えを与えている。結果は選ばれた介入試験と選ばれた介入試験のメタアナリシスで得られた仮定された血圧効果を主に根拠としている。しかし、血圧効果は基準血圧に比例している。これらの介入試験とメタアナリシスの基準血圧は正常血圧集団の平均血圧(116/69 mmHg)や全集団の平均血圧(122/71 mmHg)よりもずっと高い(130/85 mmHg)ので、塩摂取量と血圧との関係は過大評価されている。さらに、メタアナリシスは他の代わりとなる指標(ホルモン、脂質)を重要視しない。それらの指標は前には減塩中に増加することが示され、したがって、結果に悪い影響を及ぼす可能性を持っている。

 将来のCVDに及ぼす減塩のコンピュータシミュレーションによる投影効果によって血圧に及ぼす小さな効果を誇張させる研究で減塩は支持も明らかにしている。この方法はいくつかの理由で欠陥があるかもしれない:(i) 減塩と血圧との間の直線関係の仮定は間違っているかもしれない。その関係は高い基準血圧を持った前述の選ばれた研究に基づいているからである、(ii)血圧を低下させるが死亡率を低下させないベーター・ブロッカーによって例示されるように、介入による血圧低下は死亡率低下に自動的に結び付けられない、

そして(iii) 潜在的な害はモデルでは無視された。

 最近の集団研究のメタアナリシスは脳卒中危険率増加を明らかにしたが、高塩摂取量と関係しているACM増加では明らかでなかった。これらの研究は部分的に我々の研究と一致しているが、それらの研究は一般的に最高摂取量パーセンタイルと最低摂取量パーセンタイルを比較しており、中間の摂取量グループの情報を使っておらず、したがって、脳卒中危険率増加は通常の塩摂取量以上の塩摂取量の人々に限られると明記していなかった。過剰な塩摂取量の潜在的な害で血圧は上昇するかもしれず、一方、亢進したレニンーアルドステロン活性、交感神経活性、そしてまたは脂質異常のために低塩摂取量の潜在的な害があるかもしれない可能性を高、通常、低塩摂取量の融合は不明確にしているかもしれない。

 2013年のIOM報告書は、サブグループを一般的な集団と別にして取り扱うべきでないと結論を下した。疾患集団を含めた解析と含めない解析との間の結果の傾向に差はなかったという我々の結果は高濃度の結論を支持している。2013年の医学研究所報告書は次のようにも結論を下した。“5.8 g/d以下の減塩が全集団のCVD危険率減少または増加のいずれであるかどうかを確証するには科学は不十分で不適当であった。”

 塩摂取量の変化が死亡率の変化と関係していない塩摂取量の範囲内では最も好ましい健康結果と関係している特別な塩摂取量範囲(6.7 – 12.6 g/d)を明らかにすることによって我々の研究はIOM報告書の摂取量を拡大している。さらに、利用できるエビデンスに基づいたこの塩摂取量の最適範囲は世界の人口のほとんどの現在の塩摂取量と境界を共にしており、塩摂取量のAIULの定義についてのIOM規則と一致している。結局、死亡率の危険率増加はこの範囲を逸脱した摂取量と関係していることが分かった。主解析でも補助解析でも減塩がACMまたはCVDに及ぼす有益な効果と関係していることはなかった。したがって、これらのデータは、U字型が塩摂取量と健康結果との関係を一番良く述べているという仮説と一致している。