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論説

“アフリカ人遺伝子”理論:奴隷高血圧仮説を教え進めることを止めるとき

The “African Gene” Theory: It Is Time to Stop Teaching and Promoting the Slavery Hypertension Hypothesis

By Heidi l. Lujan and Stephen E. DiCarlo

Advances in Physiology Education 2018;42:412-416

 

非常に魅力的な事例が作成された。全ては黒人の間でより有力なナトリウム排泄の遺伝的な欠陥に基づいていた。ナトリウム保持が生存に重要となる暑く乾燥した気候の中で元々生活している黒人は多分、元々の環境で自身を守る生物学的機能を進化させてきたが、その機構により移住した彼等が摂取した過剰なナトリウムを処理することが難しくなる。

 20075月にオプラーが示している間に、メメ・オズ博士はオプラーに尋ねた、“どうしてアフリカ系アメリカ人が高血圧になるのか知っていますか?”奴隷貿易の中間航路を生き延びたアフリカ人は“体内により多くの塩を保持できた人々であった”とオプラーは直ぐに答えた。それに対してオズ博士は大声で“その通り”と叫んだ。オズ博士とオプラーによると、今日のアフリカ系アメリカ人は彼等の祖先によって伝えられている遺伝子のため白人よりも高率で高血圧で悩まされている。その遺伝子は塩を保持し易く、そのことにより高血圧を引き起こす。(図1:省略。説明文:奴隷貿易者は候補奴隷の塩含有量をテストするために捕まえたアフリカ人の顔をなめる。塩含有量の少ない奴隷は強制的な輸送中に死んでしまうと仮定された。したがって、高い塩含有量の奴隷だけが奴隷にされた。) オズ博士とオプラーは“奴隷高血圧仮説”に言及した。奴隷高血圧仮説は人気の報道で注目を集めてきて、しばしば引用されている。仮説は医学教科書でも強調され、多くの医学校で教えられた。しかし、その理論はデータによって支持されず、したがって、教えたり進めたりすべきでないと我々は断定した。

 

奴隷高血圧仮説

 例えば、塩に対する誇張された高血圧応答は黒人奴隷で選択的な効果に関連しているか?第一に塩をあまり使わない地域である中央からのアフリカ人の強制補充であった;その後、海を渡る厳しい航海中に熱ストレスと塩・水欠乏から選択的な死亡があった。急速なストレスに耐えられるよう最も適合した人々である生存者の中で、南東アメリカ人奴隷が生存できた高塩分の貧しい品質の食事を突然食べることとなった。低塩食環境に対して塩を倹約できる腎臓アドレナリン適応と選択はこの考え方によって新しい高塩食環境に当惑させられた。ナトリウムに対する過剰な抑制応答はこれらの選択過程の分類からだけでなく、奴隷間の社会的不和によるストレスからでもある。

 アフリカ系アメリカ人の間で高い高血圧発症を媒介する機構を理解しようとする関心は1960年代と1970年代に始まった。暑くて乾燥した環境でナトリウムを保持するように選ばれたアフリカの限られた塩供給のため、黒人はナトリウム利尿に影響を及ぼす遺伝子突然変異でより悩まされやすいことを初期の研究者達は断定した。しかし、ナトリウム保持についてのこの生来の能力は他の設定で不適応となるだろう。

 したがって、奴隷高血圧仮説は、暑くて乾燥した環境したアフリカの気候に住んでいる人々が限られた水と塩供給と脱水の発作にさらされていることを主張することによって始まった。結果として、塩保持についての遺伝的素因がアフリカ人血統の人々で進化した。高いナトリウム保持機構がこれらの極端な気象条件での生存を強化したが、同じ機構が高血圧を発症させる。しかし、アフリカの人々が塩を得にくいと言う考えは厳しい精査の下で生じた。したがって、仮説ができ、西アフリカから新しい世界へ大西洋を渡ったアフリカ人奴隷の強制的な移動中に、嘔吐、熱、下痢、脱水による高い死亡率が、水や塩を保持できた奴隷が生き残れたことを示唆している。アメリカのプランテーションに着いても、水不足、厳しい労働、激しい発汗と言う同様の厳しい条件により水と塩保持のために追加的な選択圧力となった。

 

奴隷高血圧仮説に関する関心

 ウィルソンとグリムは1991年に奴隷高血圧仮説に関する1件の査読付き科学論文だけを発表した。カウフマンとホールが述べているように、奴隷高血圧仮説に関して書かれた論文の大多数は会議報告書、レビューされない要約、書籍の章に限られている。フレイとダグラスが出版した教科書で、奴隷高血圧仮説に関する章には10件の引用があり、その中の4件は要約で、3件は書籍または書籍中の章である、とカウフマンとホールも述べた。

 限られたデータにもかかわらず、理論には人気があり、多くの高血圧教科書で考察されている。今日でも、アメリカ心臓協会のウェブサイトの記述によると、“研究者達は、アフリカ系アメリカ人を一層塩感受性にする遺伝子があるかもしれないことも明らかにした。”WebMDウェブサイトの記述も“アフリカ系アメリカ人の高い高血圧発症率はアフリカ人血統の人々に遺伝的素因を作ったかもしれない”と主張することにより生物学的区別として白人と黒人の考え方を支持している。さらに、疾患管理予防センター、慢性疾患予防国立センターと健康促進のファクト・シートによると、“アフリカ系アメリカ人を塩の効果に対してより感受性にさせる遺伝子があるかも知れず、それが高血圧を発症させる危険率を増加させる。”白人と黒人との間の健康格差についての同様の遺伝子に基づく説明は世界中のウェブサイトの尊敬されている権威者達によって促進されている。

 しかし、病態生理学的、歴史的、人類学的データは仮説を強く論争している。特に、塩誘因性高血圧の病態生理学に関して、ヒトと動物によるナトリウム収支研究の結果は、塩負荷に応答して正常な塩抵抗性者(塩の機能亢進効果に対して抵抗性の人々)は塩感受性者(塩に対して機能亢進応答を示す人々)と同じほど多いナトリウムを保持することを一貫して示す。塩感受性者と同じほど多くの塩を保持するにもかかわらず、塩抵抗性者は高血圧を発症しない。したがって、塩保持は、塩抵抗性者から塩感受性者を分ける病態生理学的応答を分類することではない。したがって、アフリカ系アメリカ人がより多くの塩を保持するためにたとえ遺伝的にプログラムされていても(ほとんどあり得ない)、この人々は血圧を上昇させない。さらに、アフリカ系アメリカ人と白色人種(ヨーロッパ系アメリカ人)との間の塩感受性の差は奴隷高血圧仮説が示唆していることよりもかなり小さいことを利用できるエビデンスは示唆している。事実、クリサントと同僚達は人種、年齢、性、または体重によって塩に対する血圧応答に差を見出せなかった。したがって、塩感受性は人種の問題ではないが、むしろヒトの問題で、黒人が塩感受性で白人は切り離されるべきではない一般化されたものである。ヒトの塩保持測定は重要な疑問となってきたことを述べることは重要である。特に、一回の測定では不正確であるので、24時間尿中塩排泄量測定は全身の塩を捕集するために非常に変化しやすい。

 先駆的人類学者で人口遺伝学に基づいて奴隷高血圧仮説にも挑戦しているファティマ・ジャクソンは、多くの感染性の原因によって負わされている遺伝的“ボトルネック”(変異性の制限)は実際に多様性を増加させるかもしれないことを述べている。特に著者は書いた:

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 疑いもなく、大西洋を横断する中間航路のストレスはアメリカに輸送された奴隷であるアフリカ人に関する厳しい選択的な拘束を象徴している。それにもかかわらず、ストレスの分子的、遺伝的、生化学的効果に関する新しいエビデンスは、この大きな拘束の存在が生存者の子孫に遺伝的多様性の集積をその後促進させてきたかもしれないことを示唆している。再組替え率の増加、変異、遺伝性の遺伝要素に加えて、この大西洋横断のホロコーストと彼等の子孫の生存者達はアメリカの環境で新しい生物的と非生物的な選択的圧力にその後さらされた。このことは非アフリカ人に遺伝子流動の好機となり、重要な遺伝的移動についてしばしば社会的条件(例えば、孤立)になる。これらの新しい生態学的要因は今日のアフリカ系アメリカ人の遺伝的変異をさらに拡大させるかもしれない。中間航路で大きな拘束があったけれども、ウィルソンとグリムによって提案された電解質維持ついての強力な選択的圧力はアフリカ系アメリカ人のより最近の中間航路後の環境の首尾一貫した特徴として主張されてきたことを示されてきたことはない。生存者がアメリカに一度住み着くと、彼等は様々な生態学的環境で新しい身体的生物学的挑戦の多様性に直面した。これらの様々な条件下で、これらのアフリカ人の子孫は生存してきただけでなく、進化し続けてきた。その結果は異質性の継続してきた妨害よりもむしろ中間航路後の彼等の集合的な遺伝変異性の変化の拡大となってきた。アフリカ系アメリカ人の高血圧研究に関して、彼等はしばしば厳しい多様性を妨げる事態にさらされてきたけれども、彼等は同時に現象を拡大する多様性にもさらされてきたことを彼等の歴史は示唆している。そのように、どのような単一の遺伝的出来事が高血圧や本態性高血圧に対して、このグループの現在の見かけ上で感受性の理由に中継されてきたことはない。むしろ、この社会学的構成を特徴付けている現象的で遺伝子型的多様性は、この高度に異質的なマクロ人種グループ内でその後の変異性拡大への前奏曲と中間航路がなったことを示唆している。

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 カウフマンと同僚達達も多くの歴史的歪曲、特に大西洋横断中に報告されている30%の死亡率に関する関心に関する仮説を疑問視してきた。

 

“人種的”差の遺伝的説明を受け入れる傾向

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 我々アメリカ人-心疾患、糖尿病、高血圧、低体重赤ん坊-は、黒人が非常に進化論的に不幸なので、彼等にどの疾患にもかかりやすくする全ての遺伝子を持っている、と信じているのではないか?

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 1932年まで溯り今日まで続いている研究は白人よりもアフリカ系アメリカ人の間で高血圧の高い発症率を一貫して報告してきた。オズ博士とオプラーが示唆したように、これらの報告書に関係のある関心は、生来の生物学または生理学の点で基本的に明らかなこととして白人と黒人の見解を多くの人々は支持していることである。

 このような関係で、人種自身は生物学的範疇ではないと述べることは重要である。むしろ人種は生来の生物学的特性よりもむしろ地域特性的な文化と歴史的な考え方によって定義される社会的構成である。したがって、我々は遺伝的に均質として人種グループを考えるべきではない。例えば、アフリカ人子孫の数多いグループは低い高血圧発症率である。さらに、南アメリカのアフリカ系グループは大幅な遺伝的移動を経験しており、アメリカ・インディアン遺伝子の大部分を受け入れた。対照的に、北アメリカのアフリカ系グループはヨーロッパ人遺伝子を大部分受け入れた。したがって、新世界のアフリカ系子孫の集団は、彼等自身の独特な進化論的軌跡のため遺伝的に変化している。したがって、ほとんどの遺伝的変化は人種グループ間ではなく、グループ内で明らかにされた。

 さらに、先祖伝来の対立遺伝子は疾患率や薬効に影響を及ぼすことは良く認識されているが、これらの対立遺伝子は人種的グループ分けで調整しない。特に混合と移住は幅広い変動を作り出したので、人種カテゴリーは遺伝的起源を取り替えられず、1つの多形性に見出される集団間の頻繁な遺伝子差異が他の人種と近似していないように、人種間を分ける明確な境界線はない。生物学としての現在の人種に対する傾向は、十分な調査または遺伝子の複雑な形成の理解なくして臨床的に意味のある差異として人種的な特徴を医者に採用させるかもしれないことが関心事である。

 アメリカ心臓協会と国立心臓・肺・血液研究所は高血圧の一般的な形態を発症させる“後生的な要因”の役割を明らかにすることに大変な努力と資金を提供しているが、環境要因(食品、全ての種類のストレス要因、呼吸している空気など)とごく最近、我々の受け継いでいるゲノムの表現を明らかに変更できるマイクロバイオームを考慮するために、健康の社会的決定子に関するよりもゲノム機構に関するより広大な研究があると言う事実は国家的論争に値する。

 

我々の学生に及ぼす影響

 どのような人種カテゴリー置かれても問題ないという明白な科学的エビデンスがあり、我々の複雑な生理学的、行動科学的表現型のそれぞれは、我々が受け継ぎ我々が置かれている環境の遺伝子/対立遺伝子の両方によって決定される。我々の環境はこれらの遺伝子の表現を変えるからである。我々の集団の莫大な遺伝的異質性のために他の集団から遺伝的または生理学的な区別として全人種グループを分類することは不可能であるからだ。これはアメリカ合衆国では特に真実で、生存している土着の人々はほとんどいないことを考えると、我々はどこからかの移住者の国民で、遺伝子と環境の両方によって出来上がった。

 これらの真実にもかかわらず、奴隷高血圧仮説は、遺伝的に変えられ形質転換されたグループとしてアフリカ系アメリカ人を取り扱うことについては理論的解釈を提供する。仮説は生来病理学的なアフリカ系アメリカ人の劣性について我々の種族偏見を支持している。これは我々の学生に深いネガティブな影響を与えている。しかし、この偏見に打ち勝ち、遺伝的に同質なグループとしてアフリカ系アメリカ人を取り扱うことを拒否することは我々国民の健康については危険である。少数民族は白人が受けるよりも少なく劣った品質の健康管理を受けているからだ。我々は幅広い社会的情況内で健康格差を考え、人種的区別のストレスを含めて社会的決定子を考えるべきである。これをするために、我々は遺伝的決定論と本質的な黒人異常性の前提を拒否し、生物学または生理学による基本的な区別として人種グループを考えるべきではない。