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塩課税と食品中の高塩分の効果と可能性:エビデンスの総合レビュー

Effectiveness and Feasibility of Taxing Salt and Foods High in Sodium: A Systematic Review of the Evidence

By Rebecca Dodd, Joseph Alvin Santos, Monique Tan, Norm R C Campbell, Cliona Ni Mhurchu, Laura Cobb, Michael F Jacobson, Feng J He, Kathy Trieu, Sutayut Osornprasop, Jacqui Webster

Advances in Nutrition  2020.06.20

 

要約

 高塩含有量の食事は世界的に死亡や疾患の主要な危険因子である。健康に悪い食品に課税することは、人々が食べることに影響を及ぼし、人々の健康を改善する効果的な手段である。砂糖含有量が高くより広く不健康な食品製品に課税することに関するエビデンスが増えているけれども、塩摂取量を減らすために財政的な施策を使う知識や経験は限られている。我々は査読済みデータベース(メッドライン、エンベイス、管理された試験のコクラン中央目録、そして総合レビューのコクラン・データベース)20001月から201910月までの間に発表された研究のための灰色文献を調べた。それらが塩摂取量に及ぼす影響に関して、塩への課税、高塩分食品への課税、高塩分食品を含んでいると定義される不健康な食品への課税の情報を提供しているかどうかを研究は含めた。不健康な食品の定義が高塩分を記載していなければ、研究は除外された。我々は18件の関連した研究を明らかにした。15研究はモデル化(8)、実際の評価(4)、助成研究設計(2)、あるいはコスト効果のレビュー(1)を通して塩税の効果を報告しており;6研究は国による塩税の実施に関連する情報を提供しており;そして2研究は塩税に対する利害関係者の認識を報告している。特にモデル化研究から塩税の潜在的な効果と費用効果に関するあるエビデンスがあるけれども、塩税の採用は実行で限定される。幾つかのモデル化研究は、食品課税が健康食品の消費を減らす、あるいは不健康で課税されない代替物の消費を増加させるような結果を意図してないことを示唆した。対照的に、不健康な食品のために補助金と課税を結び付けるモデル化研究は、利益が増加することを明らかにした。モデル化は、塩含有量に基づいて全ての食品に課税することは、食物連鎖の中で塩が浸透していることで特に高塩分製品に課税するよりもずっと重要であることを示唆している。しかし、我々が知っている限られた経験は、政策立案者が特定の製品への課税を支持していることを示唆している。

 

はじめに

 世界的に不健康な食事は早死の主要な危険因子であり、疾患についての二番目の主要な危険因子である。過剰な塩摂取量は食事危険因子の中で最も有害で、2017年で3百万人以上の死と疾患調整後の寿命で7百万人の損失となる。過剰な塩摂取量は高血圧の十分に確立された原因であり、循環器系疾患と腎疾患の危険率を増加させる。何人かの科学者達は、エビデンスベースと矛盾する逆説的な結果の研究を発表し、引用し続けているが、多くの独立したレビュー・プロセスは、ほとんどの国の塩摂取量は非常に高く、このことは重要な健康問題を引き起こす、と結論を下した。現在のWHO勧告は、塩摂取量は成人について5 g/d以下とすべきであるとしている。塩はナトリウムと塩化物から出来ており、健康に悪いのはナトリウムである。食品は重炭酸ナトリウムのようなナトリウムを含む他の化合物を含んでいるが、塩は人々が摂取するナトリウムの90%を占めている。したがって、本論文では我々は食品中のナトリウムを“塩”として記す。

 多くの人々は推奨されている塩摂取量に関して十分に知らされておらず、栄養表示を理解するために苦労している。したがって、彼等が介入範囲を達成し、包装表の警告、解釈的な表示(例えば、星印評価)、そして広告制限のような消費者の情報選択を支援する政策とともに、成分再構成や価格設定政策のような人口全体に向けての手段を含むとき、集団の塩摂取量を減らす努力は一層効果的になる。

 人口全体に向けての手段の中で、財政措置と価格管理で彼等に一層出費させることにより不健康な食品の需要を減らされ、このようにして消費者にあまり訴えなくてすむ。砂糖税、脂肪税、そして甘い飲料水税に関する総合レビューは、それらのことが健康的な購入に導く良いエビデンスであることを明らかにした。全てのWHOメンバー国によって承認されたWHO目標は、総合的な減塩戦略を通して2025年までに30%塩摂取量を減らすことである。財政措置が1つの重要な手段として認められ、WHOは塩摂取量を減らすために“適正な財政政策と規制”を勧め、医療専門家や学者からの反響があった。

 本研究は人口の健康を改善するための政策手段として塩課税の効果と可能性の両方を考察する。我々は利用できる研究の総合レビューに基づいて塩課税に関するエビデンスの物語風要約を提供し、今日までの塩税の“実際の”実行の外観を提供する。一方、他の総合レビューは我々の知識のために、砂糖、脂肪、そして幅広く“不健康な食品”税を考察したが、塩税の影響と実行に関するエビデンスをレビューした研究はなかった。

 

方法

検索戦略

基準の採用と除外

研究選択

データ抽出と解析

 以上省略

 

結果

検索結果と品質調査

国の実行のエビデンス

塩税の効果

 モデル化研究からの結果

 影響の実際評価からの結果

 実験研究からの結果

 高塩分食品の課税受容

 以上省略

 

考察

 我々の文献検索は塩税の潜在的な効果や費用効果に関するエビデンスで発見できたが、大部分のエビデンスはモデル研究からのもので、結果はモデル化のパラメーターに依存して大きく変わる。さらに、経験的または実際のエビデンスの大部分はグレイな文献から来ており;我々の調査はこれらの研究の総合的な品質を明らかにしたが、結果の精度については疑問を生じた。

 塩含有量に応じた税金(一種の“栄養特性”税)は主にその幅広い適用のために減塩に関して最強の結果をもたらす。そのような塩税は塩代替物用のオプションを減らした塩を含む全ての食品に適用され、塩含有量に対して調整され、塩含有量の一番高い製品を一番高価にしている。栄養特性税は総合的な栄養素プロフィールを考えるようにも設計されている。モデル化は、この方法が総合的な食事改善-一般的にカロリー摂取量測定された-に関して良い結果をもたらすことを示唆している。塩摂取量に関して報告されている影響は変わりやすい;これは、ほとんどのモデル化研究は再構成について説明してないと過少評価となっており、砂糖税の実施からのエビデンスが示唆していることは業界のもっともらしい反応である。結局、実際の研究とモデル化研究の両方は、課税は正と負の両方の製品代替物に繋がることを報告した。

 我々の結果は健康的な食事を奨励することで財政手段-課税と補助金-の効果に関する増え続ける文献に沿っている。しかし、我々は実際に塩税の限られた実行を明らかにした:我々が明らかにした塩税の実例は、ある域値以上の塩を含む全ての食品に課税するよりもむしろ塩辛いスナックのような特別な製品への課税を含んでいた。結局、塩または塩辛い食品の課税は、アメリカの幾つかの都市と共に35ヶ国以上で導入されてきた砂糖の高い製品の課税よりもずっと一般的ではない。

 我々は塩税を採用できなかった検索理由を見出した研究はなかったけれども、可能性のある理由は、塩税を実行する事は非常に難しいことであると我々は推測している。多くの砂糖税は狭い範囲で、砂糖で甘くした飲料水のような単一製品を目標にし、それらに課税する事は比較的簡単に出来た。ほとんどの諸国で、塩について自然で同じ様な物はなく-単一の塩辛いスナックはない-そして塩は食品供給を通して逆用される傾向がある。そのように、塩税は独立した主導よりもむしろ不健康な食品対策の幅広い製品の典型的な一部であり、これらの方法は技的、政策的にもっと挑戦している。

 同等に、実際のエビデンスがないことで、塩税導入の主張を難しくする“キャッチ-22”と言う何かが存在し、その結果でまたエビデンスが限定される。対照的に、特に砂糖で甘くした飲料水に関連して塩税についてのエビデンス・ベースは大きく成長しており、より幅広い適用のために弾みを付けるのに役立つ。

 政策立案者はまた国民の反発を恐れるかもしれない。塩税の不評に関して我々が気付いたエビデンスは他の研究と一致しており、減塩計画に賛同する人々が少ないことを示している。事実、フィリピンで塩税導入に失敗した最近の試みは、問題に政策的に挑戦することがどのようになるかを示している。逆に、提案された対策と比較して、既に実行されている対策については、公的支援がより大きくなる可能性があり、-再び、実行を妨げている実際にエビデンスの欠如というキャッチ22を指摘している。

 塩税を実験している事が判明した諸国は圧倒的に上-中-歳入国および/または小さな島嶼国である;何処とも加工食品の消費量が増加しており塩摂取量の主要源である。塩税は低歳入国にとってはあまり関心がないかもしれない。それらの諸国では、塩の主要給源は調理中に加えられた塩で、塩の基本価格が低いことは、高い税金でもわずかな値上げにしかつながらない。ニュージーランドで塩の消費税は塩摂取量を希望する量まで減らすために10年間20%の率で適用される必要があることをNghiemらは明らかにした。同様にフィジーでは、基本価格が低いため、MGS(味の素)1 Kg袋に32%の課税は影響なかった。標準塩(塩化ナトリウム)に課税する一方で、ナトリウム低下塩(ナトリウムの一部をカリウムで置き換えた物)に助成金を出すことは、これらの状況ではオプションになるかもしれない。

 我々の研究は、さらなる注意を必要とする可能性のあるエビデンス・ベースに多くのギャップを指摘している。第一に、実際の影響調査はほとんどない。第二に、影響調査が行われたとき、彼等は食事の全ての側面への影響を追跡する訳ではない(例えば、カロリー摂取量の変化を測定しても塩摂取量は測定しないかもしれない)。第三に、我々が見つけた最も実際の調査は同等のコントロールまたは無税で隠されてきた変化を説明するための反事実を使用しなかった。第四に、例えば、塩税に対する大衆の態度に関する定量的なエビデンスが限られており、政策的な状況や政策に影響を及ぼすかもしれない動機を調べた調査を見出せなかった。最後に、塩税の公正効果のさらなる探求が必要で、これまでに行われた幾つかの研究と矛盾するエビデンスをもたらすかもしれない。

 我々の研究の主な強みは、不明確な文献を含めて実際のエビデンスの幅広いレビューと一緒に発表されている文献の総合調査を行ったことで、塩税の効果と可能性の両方を我々は調査できた。我々の主な限界は、方法論、品質、課税モデル、そして影響指標の選択における変化のために、現存するデータのメタアナリシスを行えなかったことである。

 

結論

 本研究は財政政策が塩摂取量を減らし食事を改善させられるかの可能性に関するポジティブで理論的なエビデンスを明らかにしたが、これまでの使用に制限があるため、実行された塩税の影響に関して実際のエビデンスに限界があった。その様な税金が導入されたところでは、ある塩の域値を超えた全ての食品よりもむしろ特別な製品(例えば、即席うどん)に適用されやすい。砂糖税による経験も、製品に特化した方法は政策的に、技術的により可能性があることを示唆している。しかし、モデル化研究は、不健康な食品の幅広い範囲を目標とした総合的な方法がより大きな利益を得られ、代替物の機会を最小限に抑えられそうなことを示唆している。塩摂取量を減らすために財政的手段の使用に関してさらなる考察で塩摂取量を減らす必要のために強いエビデンスがある。