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何が人のナトリウム摂取量を決めるか:政策または生理?

What Determines Human Sodium Intake: Policy or Physiology?

By David A. McCarron

Advances in Nutrition 2014;5:578-584  2014.09.01

 

要約

 過去と現在のアメリカの塩と健康政策は人口レベルの減塩に焦点を置いた。基礎となるその政策は最近の科学的発表が挑戦した多くの仮定である。仮定には次のことが含まれている:1) 現在の摂取量は多すぎる;2) “健康的な範囲”は現在の摂取量以下でなければならない;3) 塩摂取量は公共政策によって次第に減らされる;4) 人の摂取量は供給食品の塩含有量によって決められる;そして5) 健康的な範囲がガウス分布によって定義される全ての他の必須栄養素と違って、低塩摂取量が常により良い。ほとんどの現在発表されているエビデンスを利用すると、本レビューはこれらの長年にわたる仮定のそれぞれに取り組む。24時間尿中ナトリウム測定によって塩摂取量を調べた世界中の調査に基づくと、45社会と50年間で人は再現性のある狭い範囲の塩摂取量:~6.6 – 12.2 g/dであることが今や明らかである。この範囲は供給食品には無関係で、ランダム化比較試験で証明でき、塩摂取量の生理学的制御と一致しており、公共政策介入によって修正できない。これらの結果は、人の塩摂取量が生理学的に管理され、公衆衛生政策によって修正されないことを示している。

 

背景

 過去100年の栄養勧告は“より少ない塩を食べる”よりも社会にあまり深く浸透していない。この概念の正確な起源を追跡することは本レビューの範囲を超えている。しかし、過去50年に、塩摂取量を単に注意するようにアドバイスすることから、全ての健康な人々は塩摂取量を一般的に摂取されている量の少なくとも1/3まで次第に減らすべきである今日の指示まで進めてきたことが政府の政策によって拍車をかけられたことは明らかである。50歳以上そしてまたは心血管疾患の危険がある人々については、摂取量は現在の摂取量の40%以下にすべきである。アメリカ心臓協会や公益科学センターのような政府機関や主張グループは人口の塩摂取量を修正するこの政策の失敗による一部欲求不満のためらしく、食品供給で劇的な変革を呼び掛けることで次第に積極的になってきた。

 この政策の“科学的根拠”は幾つかの実験研究や限られた数の人による実験に依存している。1930年代後期に、ゴールドブラッドは腎臓の大きさを5/6に減らした後で過剰の塩を食べさせたラットで塩誘因性高血圧を作り出した。1940年代半ばに、ケンプナーは腎不全患者と重症高血圧患者の小さなコホ-トに極端な減塩をすることによって、高塩摂取量が高血圧を発症させ、低塩摂取量が血圧を下げると言う早く臨床的な正当化を作り出して、減塩が高血圧を管理するために使われると言う考え方に焦点を置いた数十年間の研究が行われてきた。この仮説は、極端に高い塩摂取量(人摂取量の8 – 12)は血圧上昇を引き起こすと言うきちんと整理された科学的モデル第一に基づいていた。

 数十年後、高血圧者で減塩の最初のランダム化臨床試験が報告された。しかし、集団の血圧または高血圧発症率が塩摂取量で追跡されたかどうかと言う疑問の前にこれらの試験は始められた。終了したとき、インターソルト・スタディ(国際的な塩研究)は集団の実際の血圧または高血圧発症率のいずれかと塩摂取量の関係を示すことに失敗した。それにもかかわらず、167件のランダム化臨床試験がその後発表された。それらの中で、正常血圧者がわずかに含まれており、美食家が達成したことがなく、わずかな血圧低下も生じたことがない塩摂取量の範囲に全ての介入は参加者を実質的に動かすことを要求した。

 

低塩摂取保健政策の実行

 エビデンスを指示することに欠けているにもかかわらず、初期の減塩主張者は全人口の減塩という公衆衛生政策を呼び掛け始めた。彼等の最もやむにやまれぬ請願の1つは1982年にタイム誌のカバーストーリーに現れた。そのような政策を遂行する食品医薬品局がその年に行った決定は一連のイベントを始めた。今や心血管疾患を減らす目的で特別な食品品目の塩含有量を自主的なまたはできるだけ強制的な制限を当局は提案している。その目標は、控えめな血圧低下でも心血管疾患の罹患率や死亡率を実質的に減らせると言う考え方に単に基づいていた。小さな血圧低下を大きな心血管疾患低下に外挿するきちんと整理されたコンピューター・モデルを信頼して、何千人もの生命が救われ、保健医療費が劇的に低下すると主張者達は仮定している。これらコンピューター・モデルは、潜在的に本格的な可能性や健康結果に関するデータを隠すまたは無視する広範囲な仮定に基づいていた。これらコンピューター・モデルは、減塩に関連した逆の健康結果を記した発表データを一貫して排除した。さらに、摂取量が生理学的に変化するように設定されていることを支持する生理学的メカニズムを提供している正常な塩摂取量や神経科学データに関する発表されているデータを彼等は決まり切って無視した。

 

仮定

 食品医薬品局とアメリカ心臓協会や公益科学センターのような団体によって活発に広がっている低塩保健政策の発展や拡大は本レビューが取り組んでいる多くの支持されていない仮定に基づいている:1) 現在の摂取量は過剰である;2) “健康に良い範囲”は現在の摂取量以下でなければならない;3) 塩摂取量は社会政策によって次第に減らされる;4) 人の摂取量は供給食品の塩含有量によって指図される;そして5) 健康に良い範囲がガウス分布によって明らかにされている全ての他の必須栄養素と違って低塩摂取量は常に良い。

 

正常で健康に良い範囲はあるか?

 これらの仮説のそれぞれの妥当性を理解することは重要であるが、塩摂取量の正常で健康に良い範囲があるかどうかと言う簡単な問題が中心で、そうであれば、その限界はどこで、それはどのようにして決定されたか。これらの疑問に対する答えが我々の現在の政策と一致していなければ、人口レベルの減塩政策は達成できず潜在的に有害である。思っているほど同じように、最近までこの一連の問題は仮定されただけで、決して十分に取り扱われなかった。人の塩摂取量は生理学的に変動し、それが乱されれば意図しない結果をもたらすことを示す手がかりやデータがある。

 2009年に、1982年から2008年まで世界中から24時間尿中ナトリウム排泄量の政府スポンサーの大規模な調査に基づいて人の塩摂取量の範囲を報告した。24時間尿中ナトリウム排泄量は多分健康で自由生活者19,151人について集められた。これら個人の研究または調査からデータは報告されたが、2009年まで1つのデータベースに整理されなかった。我々が報告した範囲は平均値162.4±22.4 mmol/d(塩摂取量9.4 g/d)95%信頼区間115, 210 mmol/d(6.7 – 12.3 g/d) (1省略)であった。最も注目すべきことは、データは30年間にわたる多様な文化や彼等の特異な調理習慣からの収集を表していることであった。食品供給は人の摂取量を指図しないという考え方にその事実は強力に言及した。

1年後、アメリカ合衆国の26,271人から24時間尿中ナトリウム排泄量を集めた1957年から2003年までに発表された38研究の要約解析をバーンスタインとウィレットは報告した。彼等は、我々が報告した統計的に範囲内の3,526±75 mg/dまたは154 mmol/dの平均塩摂取量を報告した。平均値は調査した年、年齢、性、人種間で一定していた、と彼等は述べた。これらの結果は生物学的または生理学的に管理されている数値とも一致しており、アメリカ人食事中の塩含有量は社会の摂取量を決めると言う仮定に対して論じていた。

2013年に、我々は世界中の調査または24時間尿中ナトリウム排泄量を集めた調査の解析に広げた。集団の塩摂取量に関する医学研究所委員会の2013年の要求で元々展開されたこれらのデータは人の塩摂取量の平均値や範囲について我々が前に観察していた数値を模写した。新しいデータは50,060人を含む129調査を表した。これらのデータセットのそれぞれの平均値と範囲は我々の前の推定値の1 SD以内であり、それらを結合させた平均値と範囲は158.3±22.5 mmol/dで、我々の前の推定値と統計的に一致していた。2009年と2013年の結合させたデータセットはn=69,001で平均値159.4±22.3 mmol/dを得た。この拡大されたコホ-トで塩摂取量の範囲を我々が5分位数に分割したとき、古典的なベル型曲線で表した分布は実質的に全ての必須栄養素の正常範囲の比喩的な図と一致している(2省略)。この正常範囲の95%信頼区間に基づくと、健康に良い摂取量の下限は6.6 – 6.9 g/dで上限は12.2 – 12.4 g/dであった。

 

現在のアメリカの塩摂取量は“過剰”か?

 前述した塩摂取量の平均値と範囲はアメリカで過去の塩摂取量推定値と一致している。1988年から2010年までのNHANES試料からの推定された24時間尿中ナトリウム排泄量データの疾患予防管理センターによる最近の解析はアメリカの摂取量(8.1 g/d塩摂取量)について比較できる平均値を明らかにした。アメリカ合衆国の平均塩摂取量は“過剰”であるとしばしば言われている意見はデータと一致していない。バーンスタインとウィレットの発表と最近の疾患予防管理センターのデータによって明らかにされたように、アメリカ合衆国の塩摂取量は数十年間も変わらなかったし、世界中の45以上の他の社会からの摂取量の平均値と範囲と難なく一致している。アメリカ合衆国の食品供給の変化と世界中で社会の調理における劇的な変化を考えると、国の食品供給の塩含有量をどのようにして再現性のある範囲や平均値の塩摂取量に維持できるかを構想することは難しい。

 その結論は、数パーセントの成人が過剰な塩を摂取しており、24時間尿中ナトリウム排泄量データが確立した通常範囲(12.4 g/d塩摂取量)の上限以上の摂取量として定義された、と言うありそうな事を妨げてはいない。以下で考察するように、この過剰量の定義には注意書きがある。心不全や腎疾患のような特定された疾患状態で過剰量として過去に定義されたことは、レニンーアンジオテンシン系 やそのホルモン系の悪い血管作用を抑制するための適切な生理学的調整を反映しているかもしれない。

 

政策は塩摂取量を変えられない

 社会政策が塩摂取量を変えられるかどうかに関して一番簡単な答えはアメリカの経験である。1980年代半ばに、アメリカの塩と健康政策は特に心血管疾患の危険性がある人々で減塩に焦点を置いた。過去10年間に、努力は非常に広く、すなわち、全人口に対してであった。しかし、広範囲な広報努力、食品表示、数百件の低塩食品製品の再処方あるいは導入にもかかわらず、塩摂取量は変わらなかった。政策の失敗は食品産業界の責任であると減塩主張者達は日常的に積極的に主張した。よりありそうな説明は簡単で、塩摂取量は人の生理によって設定されているので、社会政策は塩摂取量を変えられない。

 いくつかのエビデンスがこの説明を支持している。最長最大のアメリカ国立衛生研究所試験は、日常的に利用できる食品産業界の寄付により強力な食事カウンセルとの連結で低塩食を構成する減塩食品を使って高血圧予防試験フェーズIIの低塩食の血圧利益をテストすることを意図した。プロトコールは~5.1 g/dの目標塩摂取量を要求した。最初の6ヶ月で最低で達成できた塩摂取量は6.4 – 6.7 g/dで、アメリカ合衆国や世界中の24時間尿中ナトリウム排泄量が明らかにした下限値と一致していた。この実験介入の注目すべき構造にもかかわらず、試験で次の30ヶ月間の参加者の塩摂取量は集団調査で明らかにされた平均摂取量8.1 – 8.5 g/dに後戻りした。したがって、数千人の動機付けられた参加者によるこの厳密に管理された介入でも、塩摂取量の低下は達成されなかったか、または通常範囲外に維持された。

 エビデンスの第二線はイギリスにおける最近の経験から来ている。2006年に、イギリス集団の塩摂取量を低下させる積極的な運動が始められた。運動は大規模で全国的な社会市場努力と多くの一般食品の塩含有量を劇的に減らすために食品製造者からの確約、そして小売人は店内でそれらを販売促進することを含んでいた。2009年に運動支持者達は、塩摂取量は一般的な集団の24時間尿中ナトリウム排泄量調査に基づいて12%低下したと主張した。しかし、我々とバーンスタインとウィレットが報告したように、運動は成功したというイギリス政府による主張は彼等自身のデータによって支持されなかった。過去20年間にわたるイギリス当局によって行われた24時間尿中ナトリウム排泄量調査を使用すると、12%の低下は約~9.4 g/dと言う平均塩摂取量の変動を単に表していることは明らかである。

 最近のイギリス報告の更新で、食品供給の塩含有量は食品部門に基づいて20 – 55%低下し、~35%の平均低下であったと主張者達は報告した。食品供給のその後の変化にもかかわらず、24時間尿中ナトリウム排泄量は155から140 mmol/dへとわずかに10%だけ低下した。これは成功のように見えるが、140 mmol/dは世界中のナトリウムまたは塩摂取量の通常分布の平均摂取量の1 SD以内に十分入っていた。同じように重要なことは食品供給の塩含有量低下35%と塩摂取量でわずか10%との間の不一致である。イギリスでは集団は2つの戦略の内の1つによって塩摂取量パターンを調整した:1) より多くの食品(カロリー);または2) より高い塩含有量食品の摂取。塩摂取量の低下に直面したとき、両方の説明は摂取量をコントロールする生理学的なメカニズムと一致している。

 

生理は最少で最適な摂取量を維持する

 多数センターで大学を母体とした研究は99人の軽症高血圧者で血圧と塩摂取量との関係を調査した。短期間実質的な減塩を達成させるために確立され批准されているCRCプロトコールを使って、各人は4週間4.7 g/dの塩摂取量を続けて摂取した。その後、彼等は錠剤で5.9 g/dの低塩摂取量か偽薬のいずれかを摂取するように割り当てられた。4週間後に塩摂取処理は交替させられた。表1(省略)に示すように、5.9 g/dの低塩投与で24時間尿中ナトリウム排泄量は10.3 g/d(塩として換算)に増加した。すなわち、食品による塩摂取量に変化はなかった。しかし、ランダムに偽薬に割り当てられた各人は食品からの塩摂取量を2.6 g/d増加させ、その結果、摂取量は7.1 g/dとなった。この二重盲検ランダム試験で達成された偽薬投与中の塩摂取量は7.0 g/d、低塩摂取量中は10.3 g/dは通常範囲の下限とほぼ同じの最少塩摂取量を維持し、世界中の24時間尿中ナトリウム排泄量調査で明らかにされた上限に近い人体と一致している。

 

塩欲求は中枢的に制御されている

 十数年の神経科学研究は塩摂取量を最適範囲内に維持するために末梢ホルモン信号で調整される神経回路を明らかにした。基礎研究は脊椎動物の適正塩摂取量の維持に関連した生理学的機構を明らかにした。大脳への末梢入力の基本はアンジオテンシンⅡとアルドステロンの循環量で、それらの物質は塩欲求を活性化する神経回路への重要な刺激である(3省略)

 塩摂取量が減らされ腎糸球体への供給が低下するにつれて、腎臓による血漿レニン分泌は増加する。平行してアンジオテンシンⅡ産生は上昇し、アルドステロン分泌は増加する。アンジオテンシンⅡとアルドステロンの増加は神経回路に反映され、塩欲求の活性化を刺激する。1972年に発表された人のデータは24時間尿中ナトリウム排泄量と血漿レニン分泌の放物線的関係を明らかにした(4省略)。最近再解析され、これらのデータは人の最適塩摂取量を予報した(5省略)。関係の漸近線が低い95%信頼区間を横切る血漿レニン分泌/24時間尿中ナトリウム排泄量曲線上のポイントは集団の平均塩摂取量と関係している塩摂取量(24時間尿中ナトリウム排泄量)である。この再解析は9.0 g/dと言う近似的平均塩摂取量を生じた。値は世界中の集団の24時間尿中ナトリウム排泄量調査が明らかにした平均摂取量と全く一致している。

 

最適塩摂取量を維持する臨床的意義

 臨床上のエビデンスは糖尿病を含め鬱血性心不全や腎疾患のような腎灌流が障害されている患者について潜在的に重要な問題を浮き上がらせる。これらの疾患状態で典型的に遭遇する上昇した血漿レニン分泌/アンジオテンシンⅡは腎灌流を増加させ、血漿レニン分泌を抑制する試みで神経駆動による塩摂取量増加を指図するらしく、その後のアンジオテンシンⅡの生成と心臓や脈管構造に病的影響を及ぼす。この一連の事象は、塩摂取量がこれらの疾患状態でしばしば増加する観察を説明する。しばしば仮定するように、原因となるこれらの塩摂取量よりもむしろそれらの事象は一層第二次補償応答機構のようである。その解釈は鬱血性心不全や腎疾患患者による幾つか最近の研究と一致している。減塩による補償応答は実際には根源的な疾患の進行を強化することを妨げると予測されている。減塩に関連した悪い健康結果データはその可能性を支持している:低塩摂取量は全ての死因や心血管疾患死亡率の増加と関係している。

 

要約

 ここで述べたように、アメリカの減塩保健政策の起源の基礎となる多くの仮定は基礎科学、臨床介入、24時間尿中ナトリウム排泄量調査、そして一番重要な健康結果の判定からのデータによって支持されていない。疾患予防管理センターや食品医薬品局のような政府当局による科学的データのこの合成に対する激しい反対を脇に置いても、アメリカ心臓協会や公益科学センターのような主要な主張グループと同様、我々国民の塩と保健政策はもはや数十年も古い仮定やそれらに基づくコンピューター・モデルに基づくべきではなく、むしろ集団の塩摂取量に関する2013年の医学研究所報告で発表され数多くの発表で最近確認された証明済の最近の科学に基づくべきである。一番最近の出版で掲載された論説で述べたように、“…結果は孤立した公衆衛生勧告のような減塩に反対している。”