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塩摂取量政策が基礎としている科学

The Science upon Which to Base Dietary Sodium Policy

By Michael H. Alderman

アルバート・アインシュタイン医科大学疫学集団保健部

Advances in Nutrition 5:764-769, 2014

Review from ASN EB 2014 Symposia

 

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要約

 栄養摂取量勧告は激しい科学的論争事項となっており、塩摂取量もその一つである。塩摂取量と健康結果に焦点を置いた十分な臨床試験がない中で、血圧の代わりとなる指標を使った研究は極端な減塩を支持するために使われてきた。厳密に管理された条件下で、最高に達成できる減塩は収縮期血圧で1 – 6 mmHgの低下をもたらし、これは多分、心血管疾患罹患率や死亡率をもたらす。しかし、血圧ではなく結果としての実際の健康結果を使用した観察コホート研究で6.4 g/d以下の塩摂取量間の仮定された関係は観察されなかった。したがって、減塩の血圧効果は塩摂取量と関連した健康結果の代わりとしてもはや受け入れられない。6.4 g/d以下の減塩が健康を改善すると言う証拠は、食事を修正するために続けている努力を正当化することを必要としている。

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はじめに

 塩摂取量についての論争がどうしてそんなに激しいのか?多分、それは利害が非常に高いためである。多くの権威ある団体は、世界人口の90%は現在の塩摂取量を1/3以上減らすことを勧めている。この危険な食事は加工食品の成分を変えることによってのみ改められると多くの人々も信じている。我々が摂取している塩の多くは加工食品からであるからだ。食品製造者は彼等の消費者の命を短くするように設計された製品を促進していると非難される。結果は全てのことで劇的な行動変化を要求してきたが、世界中で60億人の最も控えめで5 – 10%が加工食品の修正をコスト的にもテストしていなかった。そしてもし達成されれば、収縮期血圧はどこでも1 – 6 mmHg低下し、したがって、毎年アメリカ合衆国で60人と90,000人の死亡者の間でどこかで予防している。その減塩は野心的であるが、正当化され、あるいは可能であろうか?

 過去20年間にわたって塩摂取量と実際の健康結果とを関係させる研究は、現在ほぼ30万人の参加者が関係した24件以上ある。しかし、実際に誰もが塩摂取の習慣を抑制すべきであると言う考えを支持する代わりに、証拠は実際に非常に異なる画像を明らかにしてきた。現在、大規模で幅広いデータによって支えられている一つの結論は、塩摂取量と健康との関係はUまたはJ字型と一番合っている。したがって、通常より高い範囲と低い範囲を超えた摂取量と関係して潜在的な害によって取り囲まれた最適摂取量の幅広い範囲がある。これは全ての他の必須栄養素のパターンである。

 本レビューの目的は論争の発展を簡単に述べ、6.4 – 12.7 g/dの塩摂取量が最も好ましい健康結果と関係していると言う“J/U”字型仮説についての事例を提供することである。

 

方法

 省略

 

結果

早い年代:1985年以前1970年代まで、近代の工業社会の住民の血圧よりも原始的遊動民は低血圧で、加齢に伴う血圧上昇はないことを示した実質的なデータがあった。塩摂取量の差はこの有益な効果を説明していると信じられた。

 1977年に、著名な公衆保健権威者であるジェレミアー・スタムラー教授は上院で証言中に次のように言った、“アメリカ人の高い塩摂取量を継続することに焦点を置くことは最も重要である。正確なデータはなく…関心は拡大中で…どういう訳か…塩摂取量はお膳立てする…調節装置として作用し…まるで…高血圧発症のために。”これは既にありきたりの知恵となっており、脳卒中や心臓発作の予防になるとされている。

 事実、100件以上のランダム化された臨床試験は、塩摂取量の大きな差(3.6 g)は平均的な収縮期血圧で1 – 6 mmHgの低下を起こさせた。しかし、正常な腎臓は血圧に影響なく幅広い塩摂取量の変動に適応できる。したがって、減塩はほとんどの人々で血圧にほとんど、または全く変化を生じさせない。ある場合には、実際に減塩応答で血圧は上昇する。

 1980年に、アメリカン食事ガイドラインは焦点を欠乏から過剰摂取量に広げた。1980年に、過剰な塩摂取量についての関心はアメリカ人の食事ガイドライン(DGA)で表面化したが、2005年のDGAまで、特別なコメントはなかった。それにもかかわらず、医者“特に何人かの大学人といくつかの保健当局”は既に減塩を勧めた。例えば、高血圧患者(成人人口の~25)の間では、減塩は標準的な公衆保健と医者処方となった。

 中間期:1985 - 2010。上手く設計され実行されたハワイへの日本人移民の研究で、食事思出法で推定された塩摂取量は、他の栄養素と対比して脳卒中と関係していないことを明らかにした。塩摂取量は他のアメリカ人の摂取量と同様であった。

 7年後、8,600人の台湾人の住人による二回目の展望的研究は塩摂取量と心血管疾患との直接的な関係を明らかにした。塩摂取量は、どれ位頻繁に“塩辛い”食品を食べるかに従ってクラス分けされた。定量的な塩摂取量の測定はなかった。台湾の平均塩摂取量は日本の平均摂取量を反映していた。

 そのような研究の三回目は1995年に発表された。組織的な高血圧治療計画で3,000人の参加者によるこの展望的研究は、24時間尿中ナトリウム排泄量と心血管疾患との特別で重要な独立した逆相関を明らかにした。塩摂取量の最低四分位数(5.1 g/d以下)の人々は最高四分位数(9.1 g/d)の人々と同じような心血管疾患を経験して人々の2倍であった(図1、省略)

 その後、2005年版アメリカ人の食事ガイドラインは初めて全てのアメリカ人に5.8 g/d以下の摂取量を勧告した。さらに、全ての黒人、中年以上の成人、全ての高血圧者(アメリカ人のほぼ半数)について、摂取量勧告値3.8 g/dを設定した。これらの摂取量で実際の健康結果(血圧以外)を支持する証拠は提示されなかった。しかし、コクラン共同研究は低塩摂取量によるいくつかの他の生理学的結果を早くも明らかにしていた。

 2007年に、当時新しいと考えられていた発表から用意されたレビューは14件の塩摂取量研究を含んでおり、そこでは8件は関係なく、4件はポジティブな関係が示され、5件は逆相関を示していることが分かった。研究は直接的な関係があることから疾患率や死亡率との逆相関やいくつかの無関係なことまで全領域に広がっていた。5.8 g/d以下の実質的な多くの被験者を含む研究は一般的に逆相関であった。他方、塩摂取量が12.7 g/d以上の多くの人々を含む研究では、塩摂取量は通常、健康結果と逆相関していた。したがって、塩摂取量と健康結果との間にはJ字型関係があり、最適ゾーンは~6.4 12.7 g/dであると著者らは仮定した。

 対照的に、ストラズロらは2009年に同様の研究の多くを含むメタアナリシスを発表した。Cox回帰分析で、直線関係を仮定すると、彼等は塩摂取量と罹患率および死亡率のポジティブな関係を検出した。ポジティブな結果は11.4 g/d以上の平均塩摂取量で13件の研究の中で4件について説明されており、塩摂取量5.8 g/d以下の被験者がいるとしても、非常に少なかった。Cox解析は直線関係を仮定しているので、勾配は高塩摂取量の参加者によって本質的に決定された。そのことは低塩摂取量グループまで同様に拡大され適応された。さらに、解析から研究(高血圧患者)1件だけを除いた時だけ関係は有意となった。

ごく最近の期間:2010年から現在まで。この号(20145) 4件の追加研究が報告された。これらの中で、2件は逆相関であり;もっと多様な集団のより大規模な1件はJ字型関係を明らかにし;もう1件では塩摂取量と健康結果との間に直接的な関係があった。J字型研究は塩摂取量の尿測定に基づいた大規模で潜在的な混乱因子について説説明してきたことで顕著であった。

 同時に、これらの研究について秘密があった。例えば、北部ヨーロッパ人研究は結果の正当性に挑戦した尊敬されている権威者からの多くの手紙を受けた。さらに解析すると、結果は最初に発表した結論と一致していたことを何通かの手紙は示唆していた。

 さらに、他の解析は別の結論を導き出した。例えば、14件の観察研究と5件のランダム化された試験をレビューした2013年のコクラン・レビューは、低血圧者の減塩と脳卒中の減少との間に有意な関係を明らかにした。全ての死因または全ての心血管死亡率との間には関係がなかった。交感神経活性または脂質に及ぼす有意な効果は観察されなかった。血漿レニン活性は報告されなかった。

 低い塩摂取量に害を発見できなかった1つの研究はニューヨーク市の北部マンハッタンのアフリカ系アメリカ人とヒスパニック住民2,657人で大規模に行われた。塩摂取量は食事頻度の自己申告で調査された。驚いたことに、平均と摂取量中央値(それぞれ7.7 g/d7.1 g/d)は国の結果よりはるかに低く、塩摂取量の信頼性に疑問を呼び起こした。約320人の参加者は3.8 g/d以下で、558人は10.2 g/d以上であった。3.8 g/d以下を摂取した人々は6.4 g/d以上を摂取した人々よりも長く生きた。

 2013年のIOMレビューは、アメリカ人の食事ガイドライン2010年版の勧告値に挑戦したいくつかの結論に達した。最初に、血圧変化は塩摂取量と関係した実際の健康結果についての適正な代理であるとした記述を否認した。減塩はいくつかの生理学的な結果をもたらし、いくつかは有益であり(血圧)、他はそうではなかった(血漿レニン活性、インシュリン抵抗、交感神経活性の増加、同様にアルドステロンやトリグリセライドの上昇)。要するに、低塩摂取量に関係した単一の生理学変化は将来の心血管罹患率や死亡率を予測できなかった。

 それにもかかわらず、2013年のIOM報告書は“過剰な”(明らかでない)塩摂取量は有害であると結論を下した。5.8 g/d以下の摂取量が“有益か有害か”のどちらであるかを決定するには証拠が不十分であると彼等は明らかにした。しかし、3.8 g/d以下の摂取量は有害であるかもしれないと関係は表現された。

 2014年にグラウダルらは274,683人の参加者による25件の研究のメタアナリシスを発表し、低塩摂取量と高塩摂取量の両方とも死亡率の増加と関係しており、塩摂取量と健康結果とのU字型関係と一致していると結論を下した。JまたはU字型が塩摂取量と健康結果との関係を述べているかどうかを決定するために、通常の範囲内、以下、以上について死亡率が決定された。その後、通常範囲グループで他の関連した危険因子について調整して、以上と以下の両方のグループが比較された。さらに、通常範囲内の中間点で層別化された2つのサブグループは比較された。6.5 – 12.6 g/dの範囲内で死亡率は差はなかった。対照的に、その範囲の以上と以下の両方の人々は通常の摂取量の人々よりも有意に大きい死亡率であった。危険効果は高い摂取量の人々よりも低い摂取量の人々でより高かった(2 – 4、省略)。これは非線形の危険曲線があることを示唆した初期レビューの結論を支持していた(5、省略)

 新しい証拠にもかかわらず、疾患管理予防センターの代表者達はあまり変更しないで彼等が長い間支持してきた勧告値を再考する理由を見つけなかった。アメリカ心臓協会の専門委員会は塩摂取量と健康結果とを関係付けた観察研究の批判を発表し、塩摂取量と血圧とを関係付けた多数のデータは塩摂取量を決定するための基礎とすべきであると説明した。このアメリカ心臓協会の報告書は、“5.8 g/dと言う現在のアメリカ人の食事ガイドラインの勧告値についての証拠はやむを得なかった”と結論を下したIOM報告書を間違って引用した。IOMは実際に反対の結論に達した:“直接的な健康結果に関する研究からの証拠は不十分で、5.8 g/d以下の塩摂取量と心血管疾患、脳卒中、心血管死亡率についての危険率または全アメリカ合衆国人口で全ての死因との関係について一致していなかった。”

 

考察

 塩摂取量と健康結果を関係付けた最初の報告から30年後の現在、IOM報告書とグラウダルらのメタアナリシスは、塩摂取量が健康とどのように関係しているかと言う首尾一貫した知識を提供している。正味の健康効果はどのような単一の生理学的変数の結果によっては予測されない。低塩食と関係している血圧と死亡率結果は逸脱している事実はIOMの結論を確認している(6、省略)。減塩の血圧効果は塩摂取量と関係した健康結果の代理としてもはや受け入れられない。

 さらに、研究結果間の異質性は周囲の血圧または最初の血圧と関係していることをIOMは認めた。それにもかかわらず、“過剰な塩摂取量は心血管危険率と関係している、”と彼等は結論を下した。しかし、“過剰”の程度は定義されなかった。IOM3.8 g/d以下の塩摂取量について関心を示し、5.8 g/d以下の摂取量が有害か有益かのどちらかを決定するために利用できる十分なデータはないことも述べた。それとなくIOMが認めていることは、他の全ての栄養素のように、塩摂取量の最適または安全領域があり、それ以上と以下では危険率が増加する。IOMは安全領域の範囲を特定しなかった。

 IOM報告書を発表後、いくつかのニュースが、塩摂取量の目標値について保健当局の間の不一致に焦点を当て、血圧の重要性について専門家達は一致していないと報告した。さらに、いくつかのIOM委員会のメンバーは、もっと限られた報告書の解釈を示唆したコメントを発表した。“アメリカ合衆国人口の10%以下(すなわち、塩摂取量5.8 g/d以下対3.8 g/d以下)に現在影響を及ぼしている特別な目標値についての不一致に焦点を置くよりもむしろIOM、アメリカ心臓協会、WHO、アメリカ人の食事ガイドラインは、過剰な塩摂取量を減らすべきであるとの示唆に一致しており、これは重要な公衆保健効果を持っているようだ”。

 2014年に、二番目の批判的な出版は安全領域の特別な範囲を明らかにした。25件の研究のメタアナリシスは6.4 – 12.7 g/dと言う最適な中央範囲の塩摂取量のU字型関係を適切に明らかにした。その範囲外の以上でも以下でも死亡率は増加した。

 証拠は信頼できると私は思っているが、この分野の非常に尊敬されている権威者達は利用できる証拠のこの解釈に挑戦している。疾患管理予防センターとアメリカ心臓協会は、矛盾する証拠がないにも関わらず、これらのパラダイム・シフトの結果をまだ受け入れていない。要するに、観察研究の方法論的な限界が保健政策を決定するためにそのようなデータを使うこと除外していると彼等は主張している。近い将来に問題を取り扱うように将来的に設計されている研究でも、全ての観察研究には限界がある。心血管疾患の危険因子として血圧、コレステロール、タバコ、グルコースを設定した研究からのこの膨大なデータが無視されることを示唆すると、血圧からの推定が現在のガイドラインを正当化していると彼等は主張している。

 証拠を無視することは政策立案の危険な道筋である。多くの矛盾した変数の一つにおける変化は劇的な健康結果をもたらすとの確信は予測できないビジネスでもある。脂肪摂取量の勧告経験は有益である。1980年に、全てのアメリカ人は脂肪摂取量を減らすようにアメリカ人の食事ガイドラインは勧めた。20年後、その方向性は廃止された。前の勧告は予期しない悪い結果、特に肥満と糖尿病の増加をもたらしたらしいともアメリカ人の食事ガイドラインは述べた。

 一つの栄養素の摂取量を修正するために世界人口の90%食事を変える如何なる試みも実質的で明々白々な証拠に基づくべきであることを理由が示している。6.3 g/d以下の塩摂取量が6.3 – 12.7 g/dの間の摂取量よりも良い健康結果を提供すると言う科学的な証拠はない。

 要するに、利用できる証拠は塩摂取量と健康結果とのU字型関係を支持している。これが正しければ、現在6.3 – 12.7 g/dの塩を摂取している世界人口の90%については塩摂取量を変える必要はない。多くの当局が、通常の塩摂取量の低い値以下にすることに健康に対して有害か有益かを決定するためにさらにランダム化された試験を現在、要求している。これらの研究結果を検討しないで、現在の塩政策は存在する科学的証拠に合わせるために調整されるべきである。