この塩電池は川と海が出会う場所で浸透圧エネルギーを採取する
This Salt Battery Harvests Osmotic Energy Where the River Meets the Sea
ACS Energy Letters 2020;5,11:3544 – 3547 2024.04.24
淡水の川が塩辛い海と出会う河口は、バードウォチイングやカヤックの最適な場所である。これらの地域では、異なる塩分濃度の水が混ざり合い持続可能な「青い」浸透圧エネルギーの源となる可能性がある。ACS Energy Lettersの研究者達は、塩分勾配から浸透圧エネルギーを収集して電気に変換する半透膜を作成したことを報告している。新しい設計は、実験室での実証で市販の膜よりも2倍以上の出力電力密度を示した。
浸透圧エネルギーは塩分勾配がある場所ならどこでも生成できるが、この再生可能エネルギーを補足する利用可能な技術には改善の余地がある。1つの方法は、逆電気透析膜の配列を利用する。これは一種の「塩電池」として機能し、塩分勾配によって生じる圧力差から電気を生成する。その勾配を均一にするために、海水からのナトリウムなどの正に帯電したイオンがシステムを通って淡水に流れ、膜にかかる圧力を高める。さらに集電力を高めるには、電子がイオンと反対方向に容易に流れるようにすることで、膜の必要もある。以前の研究では、逆電気透析膜を横切るイオンの流れと電子輸送の効率の両方を改善することで、浸透圧エネルギーから補足される電気量が増える可能性が高いことが示唆されている。そこで、Dongdong Ye、Xingzhen Qinらは、理論的には内部抵抗を最小限に抑え、出力を最大化する半透膜を設計した。
研究者達の逆電気透析膜のプロトタイプには、イオン輸送と電子輸送のための別々の(つまり分離された)チャネルが含まれていた。彼等は、負に帯電したセルロース・ハイドロゲル(イオン輸送用)を、ポリアニリンと呼ばれる有機伝導性ポリマー(電気輸送用)の層の間に挟むことでこれを作成した。最初のテストでは、分離された輸送チャネルによって、同じ材料で作られた均質な膜と比較して、イオン伝導性が高く、抵抗率が低くなると言う理論が確認された。河口環境をシミュレートした水槽で、プロトタイプは市販の逆電気透析膜の2.34倍の出力電力密度を達成し、16日間のノンストップ動作中も性能を維持し、水中での長期にわたる安定した性能を実証した。最終テストでは、チームは20個の逆電気透析膜から塩電池アレイを作成し、電卓、LEDライト、ストップウォッチに個別に電力を供給するのに十分な電力を生成した。
Ye、Qin、およびチーム・メンバーは、彼等の研究結果により、逆電気透析膜の製造に使用できるエコロジカル・マテリアルの範囲が広がり、浸透圧エネルギー収集能力が向上し、これらのシステムが現実世界になったと述べている。
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