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どうしてピンクソルトは千年も台所を支配したか

How Pink Salt Took Over Millennial Kitchens

それは健康に良いわけではない。技術的にはヒマラヤ産ではない。それでもピンクソルトの魅力は爆発してきた。

By Amanda Mull

The Atlantic  December 5, 2018

 

 何十年間も塩は白いという印象を私は持ってきた。食卓塩、海塩、コッシャー・ソルト、どんな塩でも白い-空は青い、それだけであった。その後、約30年前、その時私には明らかでない理由で私が出会った塩の多くは突然ピンク色になった。私はピンクソルトを買ったが、どうしてか知らなかった。そうすることが正しいことのように思えた。

 特に、ほとんど全ての塩はヒマラヤンのブランドである。それのほとんどは有名なKhewra塩鉱山から来ており、パキスタン実際のヒマラヤの少し南パンジャブ州のイスラマバードとラホールとの間にある。古代の海底が内陸に押し上げられた時に出来たそれらの塩鉱脈は1億年も古く、伝説では鉱山の場所は元々アレクサンダー大王によって発見されたとされている。今やピンクソルトは多くの食品、美容、ホーム-デコレーションのブランドから入手できる。インスタグラムによる健康状態写真は、ピンクソルトが血糖や睡眠サイクルを制御するのに役立つと主張している。ウィリアムズ・ソノマでバラ色のヒマラヤン・ソルトで彫られたショット・グラスのセットを約30ドルで買える。

 ピンクソルトは意図した料理目的に完全に機能するが-食べ物に塩味を付ける-、その品質については特に賞賛し、有り難がれることはなかった。そのことはヒマラヤン・ソルトを食品世界の落伍者から近代的な生活様式トーテムへ全てを急速に上昇させることはありそうにない。それが起こるために、食品、メディア、そして健康における一見分離している多くのダイナミクスは衝突するに違いない。

 高級グルメ志向が足りなくても、食べ物に関心があれば、多分、2009年以来定期的にピンク・ヒマラヤ・ソルトを見てきている。食品店チェーンを代表するエリン・ベイカーによると、当時、貿易商ジョーは粉砕器内にそれを入れて運び始めた。ベイカーは売り上げを開示しなかったが、貿易商ジョーの店は、伝統的な食品雑貨店が早く売れない商品を棚から外すよりもわずかな商品しか並べなかったと述べた。“9年間の販売で消費者の関心を暗示している、”と彼女はeメールで私に語った。

 貿易商ジョーの商品は数年前に最初に買った物で、その後、友達のディナー・パーティーでテーブルの上にそれがあるのに気付き、その後私が訪れたどこの家にもあった。粉砕器の費用は2,3ドルで、粉砕器の最初の硬い大人の胃を集める若者の家庭料理の社会的サークルで粉砕器は大口を開けて捕まえるように思える。

 その印象的な外観は製品に利点をもたらす。利点がなければ、販売担当者が塩のような平凡な物に独特のブランドを割り当てることは難しい。“私の意味は、本当に美しいって本当?”とアメリカの最大塩輸入者ソルトワークスの事業マネージャーであるミーガン・オキーフは言う。“ピンク色と自然の外観が粉砕器に一杯詰まっているように見せ、それが消費者にとって魅力的である。”

 シェフで食品科学者アリ・ボザリが店で初めてピンク色のヒマラヤン・ソルトを見たときはデンバーのスパイス専門店であった。“どれが良いか店員の1人に尋ねると、彼女は私を見て無表情に‘ピンク色の物’”と彼は私に言った。塩の色は家庭料理を美的に楽しむインスタグラムの絵として確かに成功の鍵となっている;ハシュッタグピンクソルトで70,000件以上の絵がある。しかし、それはまた明白でない別のレベルでも機能している。美しい塩に関する何冊かの著者であるマーク・ビッターマンによると、ヒマラヤン・ソルトの美的な違いにより、消費者は他の違いを読み取れる。“塩を食べることを想定しないが必要とし、生物学的に強制され、その塩がないと美味しくないと我々は言われてきた。したがって、塩を摂取することの実際の恐怖と塩を必要とする生理学的現実の間のこの緊張を理解する何らかの方法を見出さなければならない。我々がしたことは‘ウーン、自然塩、ピンクソルト、何でもそれは安全だ’、”と彼は言っている。

 ボウザリは彼の食品コンサルタント会社の顧客の間で同じ様な現象を見てきた。“ピンクソルトは‘良い塩’である。我々の顧客の何人かは本当に次のように言っている:彼等の古豚の皮か、あるいは何が良い塩かだけを確認したい、”と彼は言っている。ピンクソルトは綺麗であるかもしれないが、最新流行の健康概念から大きな後押しがなければ現在の人気には達しなかったであろう。多くの場合、これは単一食品または成分が準医薬品としての漠然とした評判に終わることを意味しており、多くの場合、それらの純粋性または自然性の概念に基づいている。

 多くの追従者やわずかな信用できる人々によるインスタグラムに特別な健康主張が書かれているため、多くの事が一時的になっているが、ヒマラヤン・ソルトはちょっと違った事例のように見える:人々はその塩を見て好きになり、彼等の多くは塩の欲求に対する正当化を逆工作した。そのことはしばしば塩の中の痕跡ミネラルの多さ次第である。そのミネラルは特徴的な外観からあると思われている。それらのミネラルは実際にあるけれども、ブザリによると、記載されている健康主張はフィクションである。“構成成分的に、この塩を差別化できるほどに十分な亜鉛やマグネシウムがあることをチェックできない、”と彼は私に言った。塩はより完全な食品の化学的根拠はなく、分子レベルで身体が効果的に栄養素を吸収するのに役立つ他の元素を含んでいるが、その塩が身体内でそれらの栄養素を吸収するために良い方法であるとは疑わしい。

 それでも、食品の作り話の元は多くの人々に権威の化粧板となる主張を与えるに十分である。ヒマラヤン・ソルトのアメリカ商品は健康に良いので、アメリカ以外で長く使われてきた成分としてのウコンや抹茶のような物になっているが、神秘的な異質性と魔法に近い薬効があると盲信-そしてしばしば感謝-されてきた。“ピンクソルトは神聖な文化の試金石であるか知らないが、それをパキスタン製と言えるか、人々が本当に好きであるかどうかについて私は疑っている、”とブザリは言う。

 ビターマンにとって、アメリカとヨーロッパの伝統における部外者としてのヒマラヤン・ソルトの地位はその後成功の鍵と思われる。“ピンクソルトがアメリカの市場にデビューした丁度その頃、フランスの灰色海塩とfleur de selがデビューした。それらは珍しい塩であった。そして人々は、健康的になれないと思っているように見えた、”と彼は言う。

 塩の人気は多分、工業生産的な食品システムについての関心の高まりがなくては不可能であったろう。80年代と90年代の加工食品に関心を高めていたアメリカのミレニアル世代は何を食べているかを知りたがった。“ほとんど農場から食卓までの工程である。山脈から出てきて古代海底から採鉱されたピンクソルトの物語はロマンティックである、”とオキーフは言っている。

 そして食品だけではない。人々はその塩を非常に好きなので、浴用垢落や塩ランプのような美容製品や装飾品にも現れ始めた。食品文化のウェブサイトEaterのレストラン編集者であるヒラリー・ディクスラー・カナバンはそれを健康におけるより大きな体つきの部分として見ている。“Gwyneth PaltrowGoopの美顔用化粧クリームにフレンチフライを一度浸して、それが有機製品であるころを示すために食べた。本当に自然物と有機肥料産物の考え方を評価する関係者として美容用品は食品でなければならず、食品は美しくあるべきである、”と彼女は言っている。

 ディクスラー・カナバンは、食品以外のピンクソルトの使用がその品質を証明しているかどうかについて少し懐疑的である。“高級レストランの厨房ではあまり広く使われていないことをはっきり伝えている。ピンクソルトは美しい。それはDiptyqueロウソクの1つを持っている事と同じである。それは別のアメリカ人口の標識で、味覚がそうであるはずと思っていることのこだわりである、”と彼女は言っている。

 ピンクソルトはあまり写真写りの良くない対象品よりもずっと高価である:SaltWorkからの粗粒ピンクヒマラヤン・ソルトの5ポンド袋は、同じ品質と粗さの地中海塩の11.40ドルと比較して19ドルである。成分としては必ずしも8ドル以上に機能的ではないので、ある人々にとっては価値がない。しかし、他の人々については、ブザリはその衝動を理解している。“それは劇場であり、演義である。素敵に焦げたビートの上のユニコーン・コカインの小さな斑点?それは美的に魅力的であり、間接的に味に影響を及ぼす…機能的に塩が良い全ての物に適している、以上、”と彼は言う。