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塩を摂るな:塩摂取量を抑制する試みは間違い

Don’t Hold the Salt: Attempts to Curb Sodium Intake Are Misguided

By Michael S. Fenster

The Atlantic 2012.1.4

 

食品医薬品局はレストランで使われたり、出されたりする塩の量を制限しようとしているが、それは我々に役立たないで、実際には害になるかもしれない。

 

 政府、特に食品医薬品局は2010年に医学研究所が勧めたことに従って、レストランで使われたり、出されたりする塩の量を規制する法律に関して熟考してきた。今や医者になることや減塩反対者になることは動物愛護団体のメンバーになることやネーサンのホットドッグ食べ競争に参加して勝者になるようなものだ。それは一般的に眉をひそめられている。

 この規制介入を続けることに加えて、いくつかの医学専門団体と一緒に政府は最近、Million Hearts initiative(保健福祉省による2017年までに百万人の心臓発作や脳卒中を予防する運動)を発表した。この計画はアメリカで百万人の心臓発作を減らすことを目標にしている。しかし、たとえいかに崇高で良い意図を持っていようとも、嘘も方便である。計画の主目標は20%の減塩である。

 現在の塩摂取量と疾患率や死亡率の増加との間のエビデンスが明々白々であれば、この運動は議論の余地があっただろう。議論の余地はない。今でも結論に達していない。理論は、塩摂取量の増加が血圧上昇に関係しているという観察に基づいている。それはささやかなやり方である。高血圧は心臓血管疾患、腎臓疾患、脳卒中の危険率増加と関係していることは幅広く言われている。これは本当である。したがって、減塩によって血圧を下げることができ、かくてこれらの厄介な疾患を減らせると言う仮説が立てられた。これは明白に、または決定的に示されていないが、それは大きなスローガンには役立ち、根拠のないアドバイスや勧告を遠ざける。それはつまらないが公的に指示された政策をも助長する。

 この提案がレストランの調理室にふさわしい芸術形式を規定するようになる時、それが特に苛酷になるので、働いているシェフとして私はここでコメントしておく。私はあらかじめ包装され、飾り付けられた食品のような製品について語っているのではない。本当の材料から本当の食品を作るシェフについて私は言っている。いくつかのデータを調べてみよう:

  毎日のナトリウム摂取量の70%以上は加工食品、包装食品、調理食品から来る。

  毎日のナトリウム摂取量の約5%だけが新しく調理された食品を適当に味付けするために加えられる。

  食卓で塩を加えるとしても、1日当たり摂取量の約6%にしかならない。

  別の (大体) 10%は食品自身に元々含まれている。

  過剰なナトリウム摂取量の高血圧効果は1日当たり約6 g以上で明白になることを政府の勧告書は述べている。

  以前の連邦が勧めていた1日当たりのナトリウム摂取量はおよそ茶さじ1杯、約2.3 g であった。現在の勧告値は1日当たり1.5 gである。

  平均的なアメリカ人は現在、1日当たり約3.4 gのナトリウムを摂取している。

 

政府の勧告値は“ナトリウムについての味覚は獲得されるもので、修正される”と言う仮説に基づいて書かれている。ナトリウムと塩化物(塩の成分)が必須ミネラルとして分類されている理由は、我々が生きるためにそれらを必要としていることだ。我々はセレンゲティのガゼルのように生理学的に塩を探して摂取するようにプログラムされており、食事からは十分な量を摂取できない。キャビアまたはカントリー・ミュージックのような獲得した味ではない。

さらに、“減塩は有害ではないので、健常人が塩摂取量を減らすことを連邦政府が勧めている理由が分かる。”と政府は主張している。ここで唯一の問題は、政府自身の考え方を示す書類にも容認されている研究を含めて多くの研究が厳しすぎる減塩の安全性…または如何なる減塩の安全性にも疑問を持ってきたことである。2010年と2011年に発表されたいくつかの論文は、政府が公的に指示された政策を徐々に進めようとしている時でさえも、この疑問を唱え続けた。

ジャン・ステッセン博士が2011年に発表した研究は約3,700人の患者を8年間追跡し、彼等を低い、中間、高いナトリウム摂取量の3分割に分類した。最高の死亡率は最低のナトリウム摂取量グループで;最低の死亡率は最高のナトリウム摂取量グループであった。比較的大規模な研究がサリム・ユセフ博士とカナダのマックマスタ―大学外の彼のグループによって行われ、2011年のアメリカ医学協会誌に発表された。30,000人以上が約4年間研究された。彼等は低ナトリウム摂取量(2.3 g以下)、中間ナトリウム摂取量(2.3 – 7 g)、高ナトリウム摂取量(7 g以上)について調べ、極端に高いナトリウム摂取量では心臓血管疾患の危険率が増加することが分かった。しかし、低ナトリウム摂取量では心臓血管疾患による死亡の危険率増加と心不全による入院の危険率増加があることも彼等は知った。低ナトリウム摂取量グループではコレステロールに2.5%の増加とトリグリセライド量に7%の増加もあった。中間のナトリウム摂取量グループ(1日当たり2.3 – 7 gのナトリウム摂取量で、平均的なアメリカ人の1日当たり摂取量内である)では、心臓血管疾患の罹患率と死亡率の危険率は最低であった。

それではどうして塩に舌鼓を打つのだろう?我々は悪者を愛している。誰もが一般的な敵や十字軍を回避できれば、運動は簡単である。しかし、良い科学は先入見を持って推進するものではない。科学は理由を問うものであり、真実を探求するものであるが、不自由なこともあり、そこへ到達する道は曲がりくねっている。公衆保健政策は確定的な科学的根拠と明らかな利益に基づく必要があり、人受けのする宣伝ではいけない。政府はシェフにレシピーや料理書を配る必要がある。そして私のpommes fritesに塩を残してほしい。