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ナトリウム・イオンがアメリカの電池市場の成長に影響を与える

Sodium Ion Set to Impact Thriving US Battery Market

By Julianna Ennes

Reuters 2024.10.03

2枚は省略した。

 

要約

  開発者が世界的なサプライチェーンのリスクを軽減しようとしている中、新しい工場は、ナトリウム・イオンがアメリカのエネルギー貯蔵市場電池の動作温度を広げるのようにシェアを拡大していくかを示している。

 

 ナトロン・エナジーは8月、ノースカロライナ州に24 GWのナトリウム・イオン電池工場を建設する計画を発表し、生産能力を40倍に拡大した。同社によると、14億ドルのこの施設はノースカロライナ州の雇用開発助成金で支援される予定である。

 この発表は、バイデン政権の2022年インフレ抑制法による税制優遇措置に後押しされ、アメリカの太陽光発電およびエネルギー貯蔵施設が急増し、新たな局面を迎える中で行なわれた。

 現在、エネルギー貯蔵設備ではリチウム・イオン電池が主流であるが、リチウムやその他の重要な鉱物の世界的な価格変動により、ナトリウム・イオンの優位性が高まっている。

 ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオンと同様の構造と製造技術を採用しているが、主要材料は国内で調達できる。ナトロンが計画している工場ではリチウム、コバルト、ニッケルは使用せず、代わりにアルミニウムやナトリウムなどの一般的な材料を使用する。

 国際エネルギー機関は、ナトリウム・イオン電池が2030年までに世界の年間エネルギー貯蔵量増加の約10%を占め、その後もさらに増加すると予測している。

 リチウム価格の変動によりナトリウム・イオンは競争力を持つようになる可能性があると、国際エネルギー機関のエネルギー・モデル作成者Teo Lombardoはロイター通信に語った。「技術は十分に整っているので、それが[役割を果たす]と我々は信じている。」とLombardoは語った。ナトロン・エナジーは産業用途に注力しており、急速充電速度などの機能を優先している。

 同社によると、初期段階の主な顧客には「データ・センター、モビリティ、電気自動車の急速充電、マイクログリッド、通信会社」が含まれる。サプライチェーンはまだ初期段階にあり、パイロット規模のプロジェクトが進行中である一方で、ナトリウム・イオンがエネルギー貯蔵市場に真に影響を与えるにはコスト削減が必要になる。

 サプライチェーンが拡大すれば、一部のタイプのナトリウム・イオン電池は、公益事業規模の顧客にとってコスト競争力を持つ可能性があると、ナトロン・エナジーの共同CEO,

Colin WessellsReuters Eventsに語った。

 

貯蔵の急増

 アメリカの太陽光発電設備は急増しており、ほとんどの開発者はプロジェクトにエネルギー貯蔵を組み込むことを検討している。太陽光と風力の容量の増加によりエネルギー貯蔵の価値が高まり、インフレ法には初めてスタンドアロンのエネルギー貯蔵プロジェクトに対する税額控除が盛り込まれた。

 開発者は、労働、国内コンテンツ、または環境正義の要件を満たすことで、30%の投資税額控除に加えて追加のボーナス・クレジットを獲得できる。

 ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池よりもエネルギー密度が低いため、ほとんどの電気自動車用途よりも据置型蓄電に適している。

 2021年と2022年にリチウム価格が急騰した後、特に中国でナトリウム・イオン電池製造への投資が増加した。リチウム価格の高騰により、世界の採掘能力が増加し、2023年には供給が需要を上回り、重要な鉱物価格が急落した。国際エネルギー機関によると、リチウムは75%、コバルト、ニッケル、グラファイトは30%から45%下落した。

 国際エネルギー機関は、ネットゼロ経済シナリオにおいて、電池の化学と製造におけるさらなる革新により、2023年から20230年の間に世界平均のリチウム・イオン電池コストが40%削減され、ナトリウム・イオン電池が市場に投入されると予測している。

 国際エネルギー機関は、ナトリウム・イオン電池は安価な材料を使用し、リチウムを使わないため、生産コストがリン酸鉄リチウム電池より30%も低くなる可能性があり、エネルギー貯蔵市場でのシェアが拡大すると予測している。今後、「ナトリウム・イオン電池などの斬新な設計や化学反応を拡大するには、技術革新が引き続き重要になるであろう。」と国際エネルギー機関は述べている。

 アメリカのPeak Energy社は、大規模なナトリウム・イオン貯蔵システムを開発しており、2025年に最初のパイロット・システムをアメリカの顧客6社に納入する予定である。この顧客には、独立系発電事業者上位5社のうち3社が含まれる。同社は翌年に生産を拡大し、2027年に本格稼動させる計画である。

 クリーン電力開発企業、Lightsource BPの事業開発担当上級副社長Helen Braunerはロイター・イベントに対し、商業用ナトリウム・イオン・プロジェクトの融資可能性を高めるには、パイロット・プロジェクトの成功が必要であると語った。

 多くの開発者は、電気化学に関しては「技術にとらわれない」が、技術が安全で信頼性が高く、融資可能であることを知りたいとBraunerは述べた。

 

中国がリード

 各国政府がエネルギー安全保障を強化し、国内産業を拡大しようとしている中、国内で部品を調達できることはナトリウム・イオン技術の重要な利点である。世界のリチウム処理の大部分は中国で行なわれており、アメリカとヨーロッパは国内リチウム・サプライチェーンの構築に力を入れているが、電気輸送の需要増加は今後数年間で世界の処理能力に圧力をかけることになるであろう。「したがって、我々のような代替技術がなければならない。」とナトロン・エナジーの共同CEOWendell Brooksは語った。

 国際エネルギー機関によると、中国はリチウム・イオン電池市場を独占しているだけではなく、ナトリウム・イオン電池の開発でも主導的立場にあり、発表された製造能力の90%以上を占めている。

 Peak Energyの共同創設者Cameron Dalesは、中国が製造能力を増強するにつれ、ナトリウム・イオン電池はすぐに普及するであろうと語った。「中国ではナトリウム・イオンが大規模に普及し始めている。」とDalesは語った。「

この技術は主流になる転換点に達したと考えている。」