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最低塩摂取量は危険かもしれないと論争中の研究は言う

Controversial Studies Say Lowest Sodium Intake May Pose Risks

By Gene Emery

Reuters  Wed Aug 13, 2014

(訳者注:2014.8.14発行のNew England Journalof Medicineに3件の論文が発表された。1件は高い塩摂取量が高血圧と関係しているが、この関係はナトリウム摂取量またはカリウム摂取量にしたがって、そして異なった集団で変わるかどうかは分からない、という背景の下にMenteらが「血圧と尿中ナトリウムとカリウム排泄量の関係」と題した論文、もう1件は心臓血管疾患の保健に関してナトリウム摂取量の最適範囲は論争中、という背景の下にO'Donnellらが「尿中ナトリウムとカリウム排泄量、死亡率、心臓血管疾患」と題した論文、最後の1件は高い塩摂取量は血圧、心臓血管疾患の危険因子を増加させるが、世界的な心臓血管疾患死亡率に及ぼすナトリウム摂取量の影響は不明確である、と言う背景の下にMozaffarianらが「世界の塩摂取量と心臓血管疾患による死亡」と題した論文を発表した。この情報を流した新聞記事である。)

 新しく発表された2つの研究は、できるだけ塩摂取量を少なくすべきであるという従来の知識に対して一石を投じたが、何人かの専門家の口には嫌な味を残した結果である。

 死亡と心疾患で調べた一つの研究では、極端な低塩食は多くの専門家が信じているような利益があるものではなく、危険でさえあるかもしれないことを研究者達は知った。

 血圧への影響に焦点をおいたもう一つの研究では、中程度の塩摂取量の人々は高い塩摂取量グループの人々のように多くの摂取量を減らしても利益がないことが分かった。

 “以前には、摂取量が低ければ低いほどそれだけ良いと信じられていた。これらの研究が一致して示していることは、最適値があることで、低くければ低いほど必ずしもそれだけ良いことではない。”とオンタリオ州ハミルトンにあるマクマスター大学の主任血圧研究者であるAndrew Mente博士は電話でロイターの保健担当者に語った。

 他方、国際的な研究の三分の一は、少ない塩摂取量と良い健康との間には直接的な関係があるという従来の知識を支持しており、極端な低塩食は危険であるという証拠を見い出せなかった。

 三件の論文は全てニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの814日号で発表された。

 全ての研究が確認した一つのことは、塩の食べ過ぎは悪いことである。多い摂取量は高血圧、脳卒中、心臓発作、腎臓問題、心不全に寄与する。

 その第三の研究は、高い塩摂取量が2010年に世界中で165万人の心疾患による死亡の原因であった、と結論を下した。それはコンピューター・モデル、66ヶ国の塩使用量調査、107件の公表されている研究に基づいていた。

 “実際にそのことを考えると、これらは驚異的な数字である”とアメリカ心臓協会の会長であるElliott Antman博士はロイターの保健担当者に語った。

 世界中で1日当たりのナトリウム摂取量は通常3 – 6 gで、塩に換算すると7.5 – 15.0 gである。その値はWHO、アメリカ心臓協会、他の機関が勧めている1日当たりナトリウム1.5 – 2.4 gの限界値を十分に超えている。

 “1日当たり4 gでさえも年間50万人の死亡になることを知った”とタフツ大学の栄養科学と政策のフリードマン校の校長であり筆頭者であるDariush Mozaffarian博士はロイターの保健担当者に語った。

 Mozaffarianは、彼の解析で低い摂取量には危険性はないことを明らかにしたと言っており、Menteの血圧研究でも低摂取量で危険性を示さなかったと彼は主張した。

 しかし、Menteは、その関係は前に考えていたよりもずっと複雑で、減塩の健康利益は誰にでも同じようにあるわけではないように思えると言った。

 “非常に高い摂取量の人が減らせば、血圧に大きな低下をもたらす。しかし、中程度の塩摂取量(ほとんどの北アメリカ人の摂取量)の人がもっと低い摂取量に下げても、血圧低下に関する限りそれほどには下がらない。”と彼は言った。

 もっとも劇的なエビデンスは、塩摂取量を推定するために尿試料を使って塩摂取量と死亡、心臓発作、脳卒中との間の関係を調べた研究であった。

 マクマスター大学でMenteの同僚であるMartin O’Donnell博士による研究では、1日当たり3 g以下のナトリウム摂取量は4 – 6 gの摂取量の人々と比べて死亡の危険率または重大な心臓血管疾患を27%増加させることが分かった。

 最適のナトリウム摂取量は1日当たり3 – 6 gであった。“推定ナトリウム排泄量が高くても低くても両方とも危険性の増加と関係していた。”とO’Donnellチームは結論を下した。

 その研究は“減塩には故意ではない結果がある。”ことを示している、と電話のインタビューでMenteは言った。

 現在、世界中の人々のわずか1%だけが1日当たり2 g以下を摂取している、と彼は言った。“現在、我々が勧めている正しい摂取量は、2,3の狩猟社会を除いて、ほとんど誰も達成していない。我々は人が経験したこともない勧告値を設定している。これらの結果は現在の勧告値に強い疑問を抱かせる。”

 それでもMozaffarianは違うと主張した。O’donnellMenteの研究は両方ともPURE研究として知られている同じ研究プロジェクトからの結果を引き出した。

 “PURE研究のような唯一の研究しかないとき、多くの状況でそれが一つの研究である。”とMozaffarian博士は言った。非常な低塩食の危険性を示唆する研究もあれば、そうではない研究もある。

 エビデンスの重さは、積極的な減塩に危険性がないことを示唆しているだけではない、とMozaffarianは言った。“減塩の危険性で改善が図られる理由を説明できるもっともらしい生物学はない。”

 懐疑論には別の理由がある。PURE研究は毎朝集めた一つの尿試料に基づいて塩摂取量を調査した。Antmanは塩摂取量の測定でこれを非常に信頼できない方法と呼んだ。

 “一番良い方法は24時間尿収集で、彼らはそれを使わなかった。したがって、塩摂取量は日々かなり変動しているかもしれない。”と彼はロイターの保健担当者に語った。

 “それが最低線であり、アメリカ心臓協会の見解はPURE論文に対する応答で変わらなかった。”とボストンのブリンガム婦人病院の心臓血管疾患専門家であるAntmanは言った。協会は1日当たり1.5 g以下のナトリウムを勧めている。

 それにもかかわらず、バーミンガムにあるアラバマ大学のSuzanne Oparil博士はジャーナルの巻頭言で次のように主張した、“塩摂取量が高くても低くても両方とも死亡や心臓血管疾患症の危険率増加と関係しているかもしれない、そして(テストは次のことを示唆している)カリウム摂取量の増加は高いナトリウム摂取量の悪い効果を相殺する。”

 この考え方は大規模な研究で確認されるべきであるが、そのような試験はないので、孤立した公衆保健勧告のように減塩に対して結果は対立している。と博士は言った。

 “重要な事態は高塩食は悪く、減塩すべきで、どれくらい減塩すべきかについては論争中。”とMozaffarianは言い、医者や患者は加工食品のナトリウム含有量を減らすように強力な国家政策を後押しすべきであると付け加えた。

 “1日当たり2g、1.5 g2.5 gにすべきかどうか、それは全て仮説だ。まさに現在、1日当たり4.0 gに近い。まず3g以下に減らそう、そうなったとき我々はどこまで下げるかを議論しよう。しかし、現在は明らかに高すぎる。”と彼は言った。