戻る

塩についてのアドバイスにはエビデンスが乏しい

                                   Scant Evidence behind the Advice about Salt      

 

The New York Times Dec. 17, 2018

 

様々な病気を持っている人々に減塩食が幅広く勧められているが、心臓病の人々に役立つ証拠は少ない。

 

By Aaron E. Carroll

 

 近年の非常な低塩食の有用性に疑問を呈する多くの研究があるにもかかわらず、ほとんどの主要な医療機関は低塩食を勧め続けている。我々はエビデンスの強い根拠からそれらの機関はそうしていると思っていた。しかし、心臓病の観点でエビデンスは非常に少ない。

 心臓が全身に十分な血液を送れないとき、心不全が起こる。アメリカ合衆国で約570万人が心不全で悩んでいる。慢性高血圧は長い間にわたって心臓を強く働かせ続け、心臓を弱らせ、心不全に至る。通常、治療は薬によって心筋の収縮を強化しようとするか、他の(利尿剤のような)薬で血液量を減らすか、塩摂取量を減らすかである。

 最近、研究者達は、心不全を治療するために減塩を評価したランダム化比較試験を調査した。全ての文献の中で、479人の患者を含む9件の研究を発見した。それらの中の1つは要約だけで発表された。9件は100人以上の患者を含んでいた。結局、9件はバイアスの危険性が低いと考えられた。

 減塩が死亡率や心臓病を減らす;入院させるか、入院した時どれくらい長く入院しなければならないかどうかに影響を及ぼすことを示したデータはなかった。4件の外来患者研究のなかで、2件が心臓機能に改善を示さず、2件は示した。

 強い勧告の基礎となるデータは極めて乏しい。ノースウエスタン医学校の心臓学教授Clyde Yancyが書いた付随するエディトリアルは、減塩と心不全を扱った研究のわずか0.3%がこの総合レビューに含まれる十分な品質であった。

 我々はもっと良い研究を必要としている。研究のいくつかは1方向でしかないようである。心不全で外来老人のランダム化された食事試験は、退院後に彼らがどれくらい良く低塩食を守っているかを調査するために66人の患者を指名した。その結果は出ていない。

 継続中である別の調査は心不全に関連した結果を見るために通常のケアーまたはアメリカ心臓協会がほとんどの成人に勧めている非常に低い塩摂取量の3.8 g/d1,000人をランダムに割り当てた。

 それまでにこれらの勧告値からの害はほとんどないと主張しているのに、どうして続けないのか?勧告値を止める一つの理由は、我々が何が一番良いかを本当に知らない時、他の食事法(もっと有用であるかもしれない)を犠牲にして塩回避を強調する危険性があることである。

 例えば、医療品質研究センターは健康に及ぼすナトリウムとカリウムの両方の影響を調べた。減塩は血圧を“最も適当に下げる”と今年報告した。しかし、カリウム摂取量の増加は同様の効果を最も発揮することも報告した。カリウム摂取量の増加は尿中のナトリウム排泄量を増加させるからである。(もちろん、過剰のカリウムはそれ自身危険である-大きな食事変化は医者と相談すべきである。)

 他の総合レビューは、食物繊維の摂取量増加が心疾患の危険率を下げることと関係していることを明らかにしている。

 カリウムや食物繊維が関係しているランダム化比較試験からの強いエビデンスの基礎がないことを述べることも重要である。しかし、それらの食事変化についての勧告値は減塩推進としてほとんど騒がしい、またはあくどいように見えない。

 これらの全てが強いエビデンスを持っていなければ、我々はそれを認め、アドバイスをするほどの確信がないとすべきことも重要な点である。

 多くの塩を摂取している人々は減塩により利益を得られるかもしれないことを知っているので、あるいは我々は全員により健康的で全体的な生活様式への変化を推し進められる。日常的に運動するように(数多くのエビデンスがある)、そして総合的により健康的に食べることを人々にアドバイスできる。DASH食と地中海食は両方とも心不全の危険率を下げることと関係している。そのような食事は塩以上に影響を及ぼすかもしれないが、それらの食事はより管理された試験でその価値を証明されており、確かに利益がある。

 Yancy博士は彼のエディトリアルで、減塩についてのエビデンスは“乏しく、深みがなく、いくつかの場合では完全性を欠いている”とぶしつけに書いている。さらに次のように付け加えている。“最初のステップはもっと試験を呼び掛けることではないが、心不全の兆候のある人々に厳しい減塩に関して抑制のない潜在的に有害な主張から後退することである。”

 あいにくこの勧告はこのまさにこの1事例以上に適用できる。勧告が我々の脂肪、あるいは肉、あるいは砂糖、あるいは塩でもそれらの摂取量かどうか、それは、我々が話している保証が我々の勧告値を裏付けるエビデンスの品質に合っているように思える。