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電池の中の塩分:シフトは新たな激変を招くかもしれない

Salt in Batteries: Shift May Herald Another Shakeup

By Eddie Spence and Annie Lee

The Japan Times  2021.12.07   https://www.japantimes.co.jpより

 

 電池大手はナトリウム・ベースの新たな技術に資金を投入し始めており、エネルギー転換にとって極めて重要な業界の新たな激変が起こる可能性があることを示している。

 世界中の岩塩や塩水に含まれるナトリウムは、現在、電池の主流となっているリチウムよりも安価ではるかに豊富であるため、エネルギー貯蔵や電気自動車に浸透する可能性がある。しかし、ナトリウムは化学的および構造的に類似しているものの、同じサイズのリチウム電池の方が航続距離と性能が優れていることもあり、まだ大規模には使用されていない。

 それはこれから変わるかもしれない。先週、スエーデンのノースボルトはこの技術で画期的な進歩を遂げたと発表し、中国の電気自動車メーカーBYD14億ドルのナトリウム・イオン電池工場を建設する契約に署名した。中国のCATLはすでに4月に、同社のナトリウム・ベースの電池が今年から一部の車両に使用されると発表した。

 ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスのシニア・リサーチ・アナリストであるロリー・マクナルティは「これは真剣な投資だ。我々がこの技術を商品化するために生産能力の拡大を続けると言うことで、自信が高まっている」と述べた。

 ナトリウム製品が成功すれば、リチウムの消費を抑制できる可能性がある。これは、企業がより安価でより効率的なセルを求める中、絶えず進歩する業界で金属の使用量を予測しようとする危険性を思い出させるものでもある。

 ナトリウム・イオン電池はエネルギー密度が低いため、大型の電気自動車には適さないが、リチウムの代わりにローエンドの短距離車両や、サイズがそれほど問題にならない電力網のエネルギー貯蔵に使用できる可能性が高まる可能性がある。

 ブルームバーグNEFは、ナトリウムにより2035年までに約272000トンのリチウム需要が削減され、リチウムの供給が使用量に見合わない場合は100万トン以上削減されるはずであると述べた。

 電池に含まれる金属の配合の変化により、需要と供給の見通しがひっくり返り、価格が変動した。コバルトとニッケルは、ほんの数年前まで長期的な不足に直面していると見られていたが、それらを使用しない電池の出現により需要予測が修正された。

 そして大きな価格変動の可能性は特にリチウムで顕著である。

 昨年は買い占めの熱により価格が急騰し、電池会社はより安価な代替品としてナトリウムに注目するようになったが、その後、電気自動車の需要が失望し、供給見通しが改善したことで価格は急落した。

 コンサルティング会社CRUグループの電池材料責任者サム・アドハムは「ナトリウム・イオンはリチウムの需給バランス改善に一役を買うであろう。リチウム価格の非常に厳しい変動を和らげることになるであろう。」と述べた。

 最近のリチウム価格の低迷にもかかわらず、ナトリウムは依然として安価な選択肢である。もし市場が成長すれば、コストが低いため高性能製品よりも好まれてきたリン酸リチウム・イオン電池の台頭と同じになる可能性がある。

 その潜在的な利点の中で最も明白なのは、送電網用に余剰電力を蓄えることであり、世界が化石燃料から移行するにつれて操業能力重要性が高まっている。そこでは、電池の性能よりも低コストが重要である。

 ナトリウムの成功は、電池のサイクル寿命、つまり交換が必要となるまでに何回充放電できるかにもかかっている。現在、ナトリウム電池の平均サイクル数は5,000回であるが、最も費用対効果の高いリチウム製品の平均サイクル数は約7,500回である。

 それができるかどうかは大きな問題である。そうであれば、エネルギー貯蔵セクターからの需要がさらに増える可能性があるとライスタッド・エナジーのアナリスト、デュオ・フーは述べた。

 今のところ、発展途上にあるナトリウム・ベースの電池部門は、中国の生産者が独占することになりそうであるが、彼等はコストを抑えるため事業規模が大きいため、リチウム電池生産の大部分をコントロールしている。それは彼等にヨーロッパやアメリカのライバルよりも有利になるはずである。

 CRUのアドハムは、ヨーロッパとアメリカのメーカーは「ナトリウム電池やリチウム電池を大量生産する経験がはるかに少ない」とし、「実際には規模の経済によってコスト競争力を発揮できる」と述べた。