塩辛い物が食べたくなる?それは緊急治療を必要とする
致命的な病気の兆候かもしれない
Craving Salty Foods? It Could Be a Sign of a Deadly Condition
That Requires Urgent Treatment
By Cassidy Morrison
MailOnline 2024.06.19
医師達はピクルスからポテト・チップスまで、塩辛い物への極度の欲求は、まれで致命的な健康障害の兆候である可能性があると警告している。
トロント在住の15歳の少女は、激しいめまい、倦怠感、脱水症状、そして塩辛いスナックへの飽くなき欲求など、説明のつかない症状に数ヶ月間苦しみ、入院した。少女の異常な日焼けした肌と舌の下の黒い斑点に医師が気付いてい始めて、副腎の機能が停止していることが明らかになった。これは命に関わる健康危機であった。
彼女は最終的にアジソン病と診断された。これは10万人に1人の割合で発症する病気で、副腎が体内の重要なミネラルやホルモンを調節するのに十分なホルモンを産生できないため、吐き気、腹痛、体重減少、塩への渇望、そして皮膚の黒い斑点(色素沈着)が現われる。
この病気はホルモン補充療法で管理できるが、治療せずに放置すると死に至る可能性がある。アジソン病は体内のホルモン・バランスだけでなく、血圧、筋肉と腎機能、そして細胞に必要な栄養素を調節する重要なミネラルであるナトリウムとカリウムのバランスも崩す。
到着時、このカナダ人患者のナトリウム値は、一度に瓶詰めのピクルスを何瓶も食べ、チップスを山盛りにし、食事に塩をたっぷりかけていたにもかかわらず、約130 mmol/Lであった。正常なナトリウム値は136~145 mmol/Lで、細胞内外の水分量を調節し、神経間で電気信号を発生させ、脳と体の他の部分との間の情報伝達を可能にするために不可欠である。
アジソン病患者の約80%は、尿を通して過剰なナトリウムを排出するために、塩への渇望を経験していると推定されている。
カリウムの正常値は1リットル当り3.5~5.2 mmol/Lであるが、この患者の値は5 mmol/Lと、範囲の上限に達していた。血液中のカリウム濃度が過剰になると、心拍を調節する重要な電気刺激が阻害される。その結果、心臓は異常な電気活動を起こしやすくなり、生命を脅かす不整脈のリスクが高まる。
同時に、彼女は毎日3リットルの水を飲んでいたにもかかわらず、喉の渇きが止まらなかった。喉の渇きが強くなることは、アジソン病の初期症状である可能性がある。この病気は体内の水分量調節に影響を及ぼすからである。
この少女を診ていた内科専門医は、秋にもかかわらず日焼けしているコールド・トラッピングに気付き、より詳細な身体検査を行なった。そこで医師は、アジソン病の特徴的な症状である舌の裏側の色素沈着に気付いた。患者はまた、食欲不振、血圧低下、立ちくらみ、原因不明の体重減少、筋肉痛、吐き気などの症状も経験する。
アジソン病は、副腎が正常に機能しないことで発症する。これらの多層構造の副腎は腎臓の上部に位置し、各層がそれぞれ異なる重要なホルモンを産生する。最上部はアルドステロンを産生する。アルドステロンは腎臓にナトリウムを保持するよう指示すると同時に、カリウムを尿として排出するよう指示するホルモンである。
副腎が十分なアルドステロンを産生しないと、塩辛いスナック菓子などから体内に取り込まれたナトリウムが尿としてすぐに排出され、脱水症状、激しいめまい、喉の渇き、そしてさらなるナトリウムの渇望を引き起こす。
第二層は、ストレス・ホルモンとして知られるコルチゾールを産生する。コルチゾールは血糖値と血圧を調節し、体がストレスに対応するのを助ける。不足すると、吐き気、腹痛、体重減少、色素沈着を引き起こす可能性がある。
アジソン病は、通常、DHEAとアンドロゲンステロイドを生成する第三層にも影響を与える。これらのホルモンは、卵巣で女性ホルモンに、精巣で男性ホルモンに変換される前駆ホルモンである。
アジソン病は、発見されず治療もされないまま放置されると致命的となる可能性があるが、ホルモン補充療法によってアルドステロンとコルチゾールの値を正常化することで管理可能である。
治療せずに放置すると、症状は進行して危険な電解質異常を引き起こし、カリウム値の急上昇や最終的には臓器不全に至る可能性がある。この病気は通常、自己免疫疾患が原因で発生する。自己免疫疾患とは、体が自身の免疫系を攻撃してしまうことである。特にアジソン病では、体が自身の副腎の外側部分を攻撃する。
先進国では、アジソン病の10例中8~9例は自己免疫疾患が原因である。結核は世界中でアジソン病の最も一般的な原因であるが、アメリカでは結核は全体的に希である。
アジソン病の他の余り一般的ではない原因としては、感染症(特にHIVや真菌感染症)の既往、副腎からの重度の出血、体の他の部分から副腎へのガン細胞の浸入、副腎の外科的切除、特定の遺伝子変異などが挙げられる。
この病気はまれで、アメリカでは約10万人に1人の割合で発症し、中年女性に最も多く診られる。
自己免疫疾患は一般的に女性に多く見られる。