たばこ塩産業 塩事業版 2006.5.25
塩・話・解・題 14
様々な塩の規格
食用塩の規格は旧専売塩を引き継いだ塩事業センターのセンター塩があり、それを生産している一部業界の品質規格と安全衛生ガイドラインがある。しかし、種々雑多な特殊製法塩については規格がない。また、塩は食用だけでなく医薬、試薬や工業原料にも使用される。これらについて解説する。
塩試験法による分析:センター塩
センター塩には表1に示すように製法的に3種類の塩製品がある。海水をイオン交換膜電気透析法で濃縮して真空蒸発缶で煮詰めて製品とした物。輸入天日塩を溶解して不純物を取り除き、真空蒸発缶で煮詰めて製品とした物。輸入天日塩を粉砕して製品とした物である。
表1 センター塩の品質規格 |
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生産方法 |
製品 |
品 質 規 格 |
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純度、粒度、添加物 |
Ca |
Mg |
K |
SO4 |
重金属 イオン |
Hg mg/kg 以下 |
As mg/kg 以下 |
Cd mg/kg 以下 |
Pb mg/kg 以下 |
Cu mg/kg 以下 |
海水濃縮(イオン交換膜)法によるかん水を煮詰めたもの |
新家庭塩 |
NaCl90%以上、粒度600〜150μm80%以上 |
基準0.1% |
基準0.2% |
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10mg/kg以下 |
0.1 |
0.5 |
0.5 |
2 |
2 |
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食塩 |
NaCl99%以上、粒度600〜150μm80%以上 |
基準0.02% |
基準0.02% |
0.25%以下 |
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10mg/kg以下 |
0.1 |
0.5 |
0.5 |
2 |
2 |
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並塩 |
NaCl95%以上、粒度600〜150μm80%以上 |
基準0.06% |
基準0.08% |
0.25%以下 |
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10mg/kg以下 |
0.1 |
0.5 |
0.5 |
2 |
2 |
原塩を溶解し再製加工したもの |
食卓塩、ニュークッキングソルト、キッチンソルト |
NaCl99%以上、塩基性炭酸マグネシウム基準0.4%,粒度500〜300μm85%以上 |
30mg/kg以下 |
0.13%以下 |
35mg/kg以下 |
70mg/kg以下 |
10mg/kg以下 |
0.1 |
0.5 |
0.5 |
2 |
2 |
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クッキングソルト |
NaCl99%以上、塩基性炭酸マグネシウム基準0.4%,粒度500〜180μm85%以上 |
30mg/kg以下 |
0.13%以下 |
35mg/kg以下 |
70mg/kg以下 |
10mg/kg以下 |
0.1 |
0.5 |
0.5 |
2 |
2 |
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精製塩 1kg |
NaCl99.5%以上、塩基性炭酸マグネシウム基準0.3%,粒度500〜180μm85%以上 |
27mg/kg以下 |
0.11%以下 |
35mg/kg以下 |
70mg/kg以下 |
10mg/kg以下 |
0.1 |
0.5 |
0.5 |
2 |
2 |
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精製塩 25kg |
NaCl99.5%以上、粒度500〜180μm85%以上 |
10mg/kg以下 |
1.0mg/kg以下 |
35mg/kg以下 |
70mg/kg以下 |
10mg/kg以下 |
0.1 |
0.5 |
0.5 |
2 |
2 |
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特級精製塩 |
NaCl99.8%以上、粒度500〜180μm85%以上 |
10mg/kg以下 |
1.0mg/kg以下 |
30mg/kg以下 |
50mg/kg以下 |
10mg/kg以下 |
0.1 |
0.5 |
0.5 |
2 |
2 |
洗浄した粉砕塩に添加物を加えたもの |
つけもの塩 |
NaCl95%以上、リンゴ酸基準0.05%,クエン酸基準0.05%,塩化マグネシウム基準0.1%,塩化カルシウム規準0.1%, |
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15mg/kg以下 |
0.1 |
0.5 |
0.5 |
2 |
2 |
外国から輸入した天日塩 |
原塩、粉砕塩 |
NaCl95%以上 |
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15mg/kg以下 |
0.1 |
0.5 |
0.5 |
2 |
2 |
有機物を含む塩の
塩試験法=塩に有機物なしと措定
分析には対応せず
これらの製品は塩試験方法に基づいて分析されており、前回解説した炭水化物やエネルギーの表示はない。塩試験方法は基本的に塩には有機物はないものとして定められている。
例外的につけもの塩の添加物であるクエン酸とリンゴ酸の分析法が高速液体クロマトグラフ法で定められている。しかし塩胡椒のような商品は別として、最近では藻塩のような有機物を含んだ塩が多種類販売されており、これらの塩の分析には対応していないという問題点がある。
◇ ◇
日本塩工業会による「安全衛生基準」
日本塩工業会傘下の製塩会社はイオン交換膜製塩法で製塩している。
各会社は塩事業センターのセンター塩を生産しているが、他の塩種も製造しており、有害汚染物については各塩種に対して表2に示すようにCODEX(表3参照)の食用塩規格よりも厳しい自主規格と安全衛生基準を定めている。
表2 日本塩工業会取扱い塩の品質規格 |
名 称 |
品 質 |
平均粒径 |
精選特級塩 |
NaCl 99.7%以上 |
- |
特級塩 |
NaCl 99.5%以上 |
- |
微粒塩 |
NaCl 99.7%以上 |
50〜200 μm |
食塩 |
NaCl 99%以上 |
400 μm |
並塩 |
NaCl 95%以上 |
400 μm |
白塩 |
NaCl 93%以上 |
500〜1,200 μm |
造粒 |
- |
- |
安全衛生規準 |
不溶解分 0.01%未満 |
重金属 10 mg/kg以下 |
水銀 0.05 mg/kg以下 |
ヒ素、カドミウム いずれも0.2 mg/kg以下 |
鉛、銅 いずれも1 mg/kg以下 |
フェロシアン化合物 検出せず |
一般生菌数 300ヶ/g以下 |
大腸菌群数 陰性 |
表3 塩の規格 |
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試薬特級 塩化ナトリウム |
ISO 塩化ナトリウム |
局方塩 |
食塩 |
精製塩 |
白塩 |
CODEX食用塩 |
純度 |
99.5%以上 |
99.5%以上 |
99.5%以上 |
99%以上 |
99.5%以上 |
95%以上 |
添加物を除き97%以上 |
水溶状 |
試験適合、2g+水20ml澄明 |
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1.0 g+水5ml 無色透明 |
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無色透明 |
pH(50 g/l,25℃) |
5.0〜8.0 |
5〜8 |
4.5〜7.0:1g +水10ml |
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臭化物及びヨウ化物 |
試験適合,Br:約0.01%以下,I:約0.002%以下 |
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臭化物(Br) |
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0.01%以下 |
試験適合 |
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ヨウ化物(I) |
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0.002%以下 |
試験適合 |
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リン酸塩(PO4) |
5 ppm以下 |
5 ppm以下 |
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硫酸塩(SO4) |
0.002%以下 |
0.002%以下 |
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窒素化合物(Nとして) |
0.001%以下 |
0.002%以下 |
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重金属(Pbとして) |
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5 ppm以下 |
3 ppm以下 |
10mg/kg以下 |
10mg/kg以下 |
10mg/kg以下 |
カリウム(K) |
0.005%以下 |
0.01%以下 |
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0.25%以下 |
35mg/kg以下 |
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銅(Cu) |
2 ppm以下 |
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2mg/kg以下 |
2mg/kg以下 |
1mg/kg以下 |
2 ppm以下 |
マグネシウム(Mg) |
0.002%以下 |
0.002%以下 |
試験適合 |
基準0.02% |
0.11%以下 |
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カルシウム(Ca) |
0.002%以下 |
0.002%以下 |
試験適合 |
基準0.02% |
27mg/kg以下 |
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バリウム(Ba) |
0.001%以下 |
0.001%以下 |
試験適合 |
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鉛(Pb) |
2 ppm以下 |
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2mg/kg以下 |
2mg/kg以下 |
1mg/kg以下 |
2 ppm以下 |
鉄(Fe) |
2 ppm以下 |
2 ppm以下 |
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ヘキサシアノ鉄(U) 酸塩[Fe(CN)6] |
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1 ppm以下 |
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検出せず |
20 ppm以下 |
ヒ素 |
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2 ppm以下 |
0.5mg/kg以下 |
0.5mg/kg以下 |
0.2mg/kg以下 |
0.5 ppm以下 |
カドミウム |
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0.5mg/kg以下 |
0.5mg/kg以下 |
0.2mg/kg以下 |
0.5 ppm以下 |
水銀 |
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0.1mg/kg以下 |
0.1mg/kg以下 |
0.05mg/kg以下 |
0.1 ppm以下 |
乾燥減量 |
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0.5%以下:1g, 130℃,2時間 |
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一般生菌数 |
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300ヶ/g以下 |
大腸菌群数 |
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陰性 |
備考 |
JIS規格:K 8150 |
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CODEX STAN 150 |
注:1 mg/kgは1 ppmまたは0.0001%に相当する。 |
試薬用・局方・工業用塩の規格
食用以外の塩としては試薬用塩、局方塩、工業用塩等がある。それらの規格と食用塩の規格を一括して表3に示した。
試薬用塩は分析試薬として使用される塩である。ISO塩化ナトリウムは国際標準で定められている工業用塩の規格である。局方塩は、例えば腎臓透析用の透析液に使用される塩の規格である。
これには規格値がなく、定められている試験法に適合することになっている項目がいくつかある。いずれも食用塩よりは厳しい規格値が設定されている。
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