たばこ塩産業 塩事業版 2000.08.25
塩なんでもQ&A
(財)ソルト・サイエンス研究財団専務理事
橋本壽夫
さまざまな特殊用塩・特殊製法塩
先月号〈新聞「たばこ塩産業」(塩事業版)平成12年7月25日付〉に「平成11年度塩需給実績」の記事が載っていましたが、大蔵省のホームページにもその概略が載っていると聞いて、早速ネットで見てみました。大蔵省のホームページには、塩需給の他、参考として「平成11年度特殊用塩販売等実績」と「平成11年度特殊製法塩販売等実績」が載っていました。「特殊用塩」の項目には4つの「〜に該当する塩」が説明されており、その製造数量等も載っておりました。(注)書きがあって、各々の塩についての説明があるのですが、よく分からないものがあります(特殊製法塩に関しては「 ○ ○の塩」「××の塩」を指すんだな、ぐらいは分かりますが)。これらの塩はどんなもので、どのようにして作られ、また何に使用されているのでしょうか。解説のほどお願いいたします。
(福岡県・塩販売店)
大蔵省のホームページには表に示すように参考1として「平成11年度特殊用塩販売等実績」が、参考2として「平成11年度特殊製法塩販売等実績」が掲載され、前者では(注)書きが1から8まで、後者では1から5まであり、それぞれ簡単に説明されております。しかし、これだけではよく分からないものもあるとのことですから、質問の主旨に沿うように答えましょう。
参考1 平成11年度特殊用塩販売等実績 |
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(単位:t) |
種 類 |
製造数量 |
輸入数量 |
販売等数量 |
塩事業法施行規則第4条第1号に該当する塩 |
32,856 |
337 |
33,385 |
塩事業法施行規則第4条第2号に該当する塩 |
1,409 |
0.4 |
1,417 |
塩事業法施行規則第4条第3号に該当する塩 |
2 |
229 |
231 |
塩事業法施行規則第4条第4号に該当する塩 |
460 |
999 |
1,481 |
塩事業法施行規則第4条第5号に該当する塩 |
1,295 |
3,707 |
4,044 |
塩事業法施行規則第4条第6号に該当する塩 |
3,315 |
47,104 |
46,618 |
塩事業法施行規則第4条第7号に該当する塩 |
60 |
21,278 |
19,712 |
合 計 |
39,396 |
73,656 |
106,887 |
(注) |
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1.塩事業法施行規則4条第1号に該当する塩とは、薬事法第2条に規定する医薬品、医薬部外品又は化粧品に該当する塩をいう。 2.塩事業法施行規則4条第2号に該当する塩とは、試薬塩化ナトリウムをいう。 3.塩事業法施行規則4条第3号に該当する塩とは、細菌等の試験研究用の培地として使用される塩その他専ら学術研究又は教育の用に供される塩をいう。 4.塩事業法施行規則4条第4号に該当する塩とは、銅のメッキ処理過程等において専ら触媒の用に供される塩をいう。 5.塩事業法施行規則4条第5号に該当する塩とは、亜鉛、鉄その他の金属成分を含有する塩で、直方体又は球形等の塊状に成形されたものをいう。 6.塩事業法施行規則4条第6号に該当する塩とは塩化ナトリウムの含有量が100分の60以下の塩で、塩化ナトリウムとそれ以外の成分が容易に分離し難いものをいう。 7.塩事業法施行規則4条第7号に該当する塩とは、販売先を限定して試験的に1年間の販売数量が100t以内のものをいう。 8.単位未満四捨五入のため不突合を生じる場合がある。 |
参考2 平成11年度特殊製法塩販売等実績 |
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(単位:t) |
種 類 |
製造数量 |
販売等数量 |
塩事業法施行規則5条第1号に該当する塩 |
19,013 |
17,876 |
塩事業法施行規則5条第2号に該当する塩 |
29,854 |
29,127 |
塩事業法施行規則5条第3号に該当する塩 |
87,165 |
85,176 |
塩事業法施行規則5条第4号に該当する塩 |
14,647 |
14,200 |
合 計 |
150,678 |
146,379 |
(注) |
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1.塩事業法施行規則第5条第1号に該当する塩とは、塩以外の物を製造する過程又は廃棄物を処理する過程において副産物として得られた塩(食用に供されるものを除く。)をいう。 2.塩事業法施行規則第5条第2号に該当する塩とは、平釜式、蒸気利用式、温泉熱利用式その他の真空式以外の方法により製造(加工を除く。)した塩で同規則第5条第1号に該当するものを除いたものをいう。 3.塩事業法施行規則第5条第3号に該当する塩とは、他の者から譲り受けた塩又は引渡しを受けた塩を原料として製造した塩であって、香辛料、にがり、化学的合成品(食品衛生法施行規則別表第2に掲げるものをいう。)又はごま、こんぶその他の食品が混和されたものをいう。 4.塩事業法施行規則第5条第4号に該当する塩とは、他の者から譲り受けた塩又は引渡しを受けた塩を原料として製造した塩であって、乾燥剤、固結防止剤又は還元剤が混和されたもの(食用に供されるものを除く。)をいう。 5.単位未満四捨五入のため不突合を生じる場合がある。 |
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複雑な言い回しは何故?
法律の仕組み
塩事業は塩事業法という法律で定められた条項に基づき運営されています。法律を施行する上で必要な細かいことは政令、省令で定められております。政令に当たるのが施行令であり、省令に当たるのが施行規則です。塩事業法の省令は大蔵省令です。
施行規則の第四条は、塩事業法の第五条第一項に規定する用途または性状が特殊な塩であって大蔵省令で定めるものは、次に掲げるものとする。ということで、省令の具体的な内容は参考1表の(注)に書かれています。また、第五条は塩事業法の第五条第一項に規定する製造の方法が特殊な塩であって大蔵省令で定めるものは、次に掲げるものとする。ということで参考2表の(注)に書かれています。
条例の考え方
塩事業法に関連する政省令は基本的に塩専売法の考え方を踏襲しております。
法律は立法する時点で引き続き既に世の中にあるもの、ことを生かす必要があれば、そのようにいろいろと検討して作られます。
したがいまして、立法時点で状況が変わっていたり、新しく変わることになれば、旧来のことが新しい法律の中で生かされるように作られますので、その時に複雑な言い方となって分かり難いことも出てくるわけです。
法律用語で言う塩の解釈
塩にはいろいろな製造法、種類、用途があります。この要素を考慮していろいろな塩に分類されて省令が作られています。この場合、日本では、いわゆるイオン交換膜製塩法で作られた食用塩が一番多く作られ普及していますので、これを基準(あるいは標準)とした考え方で他の塩が表現されています。 基準(標準)となる塩の作り方は、イオン交換膜電気透析法で海水を濃縮し、得られたかん水(濃い塩水)を真空式濃縮装置で炊き詰め、塩の結晶を析出させます。結晶を遠心分離機して製品した塩(並塩)と、さらに乾燥した塩(食塩)があります。添加物はありません。このような作り方(標準)以外の作り方で作った塩が特殊製法塩となります。すなわち、施行規則第五条に該当する塩です。
例えば、ごみ消却場の排煙処理(中和)で作るとか[第一号](例:以前は副産塩と言われ、皮なめしなどに使用)、真空式以外の煮詰め法で作るとか[第二号](例:平釜で作られた塩)、(食用の)添加物を混ぜるとか[第三号](例:ごまや調味料を入れた塩)、食用以外の添加物を混ぜるとか[第四号](例:お清め用の塩とか道路の融氷雪用塩)して作られた塩です。別の言い方をすれば、化学反応、真空式以外の蒸発、粉砕、篩別、混合、圧縮成型、溶融冷却などの工程を利用して作られた塩です。
塩最大の用途であるソーダ工業用以外の塩の用途は大半が食用ですが、塩には食用以外にいろいろと特殊な用途があります。また塩にいろいろな機能を持たせて特殊な性状にした塩があります。このように特殊な用途とか性状を持った塩が特殊用塩です。すなわち、施行規則第四条に該当する塩です。
例えば、医薬品・医薬部外品[第一号](例:局方塩)、試薬[第二号](例:試薬特級の塩)、学術研究用[第三号](例:培地用の塩)、触媒[第四号](例:メッキ処理用の塩)、金属成分を含んだ成型塩[第五号](例:家畜用のブロック塩)、塩化ナトリウム含有量が60%以下の塩[第六号](塩専売法時代に塩特殊用塩類似物と称し輸入対象であった塩。例:塩化マグネシウムなどを混ぜた融氷雪用塩)、販売先限定の試験販売で販売数量が年間100トン以下の塩[第七号](例:輸入された小物商品)です。
特殊製法塩、特殊用塩のつくり方と用途
特殊製法塩の作り方についてはあらかた上に述べましたが、改めて整理してみましょう。
@
化学反応を利用する。ごみ消却場排煙中の塩化水素をカ性ソーダで中和。ヒドラジンや石鹸製造工程などの副産物。
A
塩水溶液を濃縮する。真空式以外の濃縮法で、加圧式、開放釜式、徐冷式、表面晶析式、噴霧式、冷凍式、溶媒添加式などの装置で濃縮して得た塩。
B
物理的工程を利用する。粉砕、篩分け、混合、付着、圧縮成型、溶融冷却などの工程で得た塩。
塩の用途は様々で簡単に述べることはできませんが、例えば溶融冷却で作られた塩はレンズや光学機器の部品として使われますし、圧縮成型した塩は家畜に舐めさせるのに使われます。それ以外の例として「ソーダ工業ってどんな工業」を参照してください。
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