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減塩論争白熱:現在の勧告値に研究は疑問を投げかけ

The Low Sodium Debate Heats Up:
Study Casts Doubt on Current Recommendations

By Larry Husten

Forbes 2014.08.13

 

  ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)3件の論文と論説は塩摂取量勧告を巡って進行中の激しい論争に新しい燃料を確実に注いでいる。人々は1日当たり3.8 – 6.1 gの塩摂取量に制限すべきであることを勧めているが、これらの勧告値は予測に基づいており、臨床試験や他の大規模な研究でテストされていない。

 進行中の都市と農村の前向き疫学(PURE)研究からの2件の論文は減塩勧告に反対する新しいエビデンスを提示している。PURE研究者達は18ヶ国から100,000人以上の成人で一回の空腹時早朝尿試料に基づいてナトリウムとカリウムの摂取量を推定した。その後、彼等は3.7年間にわたって参加者を追跡した。2件の別々の論文で、血圧値と死亡や心血管疾患に関して推定されたナトリウム量とカリウム量との間の関係を彼等は報告した。

 最初のPURE論文で、予測されたように血圧はナトリウム排泄量に伴って増加した。2.5 g/dの塩摂取量増加毎に収縮期血圧と拡張期血圧はそれぞれ2.11 mmHg0.78 mmHg増加した。しかし、関係は高いナトリウム排泄量で最も顕著であった。すなわち、12.7 g/d以上の塩摂取量の人々について2.5 g/d当たり収縮期血圧上昇2.58 mmHg7.6 g/d以下の塩摂取量の人々について0.74 mmHgであった。塩摂取量は正常血圧者よりも高血圧者で、若者と比較して老人で血圧に大きな影響を及ぼした。カリウムでは同様であるが逆のパターンが現れた。

 二番目のPURE論文は3.7年追跡後のPURE参加者の心血管疾患発症件数を報告した。最高塩摂取量(17.8 g/d以上)の人々は死亡または主要な心血管疾患発症の危険率で15%増加した。特記では、7.6 g/d以下の塩摂取量の人々で危険率は27%増加した。高塩摂取量グループの危険率増加は血圧上昇と密接に関係していた。対照的に、低塩摂取量グループの危険率上昇は血圧とは関係なかった。再び、カリウムについては逆のパターンが観察された。

 三番目のNEJM論文で、ダリウシュ・モザファリアンが率いるGlobal Burden of Diseases Nutrition and Chronic Diseases Expert (NUTRICODE)グループの研究者達は公表された研究の系統的な解析を行い、世界の塩摂取量を推定するためにデータを結び付けた。彼等は世界の塩摂取量平均値を10.0 g/dと計算した。その後、血圧に及ぼす塩摂取量の効果を計算し、5.1 g/d以上の塩摂取量による血圧上昇は年間165万人の心血管疾患死亡をもたらし、それは心血管疾患が引き起こす全ての死亡の9.5%に当たると推定した。

 減塩ガイドラインの強力な提案者であったアメリカ心臓協会は、「塩摂取量とそれに伴う心血管疾患とを関係付けようと試みる観察研究」としてPURE研究の結果を割引した声明を出した。“この種の研究結果を解釈することは特に挑戦的であった。集められた(集められなかった)データと行われた解析のタイプに結果が高度に依存しているからである、”とアメリカ心臓協会会長のエリオット・アントマンは言った。

 対照的に、NUTRICODEの結果はブレているとアントマンは言った。すなわち、“10件の心血管疾患死亡のうち1件は1日当たり5.1 g以上の塩摂取量によるものと推定された。これは平均して世界の成人の99.2%を超える量である。アメリカ合衆国だけで、年間ほぼ57,600件の心血管疾患死亡がこの量の塩摂取量によるものである。

 アメリカ心臓協会の路線はNEJMの論説を書いたスザンヌ・オパリルとは異なっている。彼女はアメリカ心臓協会の前会長であり、同じくアメリカ高血圧協会の会長でもあった。彼女の論説は減塩勧告をしぶしぶ是認していることで注目に値する。現在勧められている減塩が心血管疾患との関係で良いのか悪いのかと言うエビデンスは不明確であると最近の医学研究所報告は結論を下しているとオパリルは述べている。

 彼女の2件の研究評価はアメリカ心臓協会の立場とはかなり異なっている。彼女はPUREの限界を述べており、減塩効果をテストするランダム化比較試験を求めているが、“そのような試験がない中で、結果は孤立した公衆保健勧告として減塩に反する主張を書いている。”

 同様に、“過剰な塩摂取量の潜在的な害に関する大量のデータを総合的に扱うことで大変な努力”についてNutriCodeの研究者達を称賛しているが、“品質の高いデータがないことによって必要とされる数多くの仮定を置いて、研究の結果を解釈することに注意すべきである”ことを書いている。

 アメリカ心臓協会の声明に応じて、PURE論文の最初の二人の著者、アンドリュー・メンテとマーチン・オドンネルはアメリカ心臓協会との同意点を強調しようとした。PUREは“塩摂取量と血圧との関係を確認し”そして“過剰な塩摂取量と健康リスクとの関係”にも疑問を持たない、と彼等は言った。しかし、“中程度と低い塩摂取量が最適かどうか”に関して彼等はアメリカ心臓協会と意見が異なっている。

   “研究者達の社会として、臨床結果を評価する大規模な臨床試験からの強い

   エビデンスに基づいたガイドラインのために我々は努力すべきである。この

ことは不確実な分野では基本的なことである。現在では、低塩摂取量の心血管

疾患健康効果について正に多くの不確実性がある。低塩摂取量が医薬品であれ

ば、決定的な臨床試験についての必要性に関して広く行き渡ったコンセンサス

がある。第一段階は不確実性を認識することであり、それから決定的なランダ

ム化比較試験を完了させる。そうすれば我々は自信を持って患者や一般社会に

対して勧告を行える。”