塩摂取量と健康危険性に関する研究に対する専門家の反応
Expert Reaction to Study Looking at Salt Consumption and Health Risks
https://www.sciencemediacentre/org/より August 9, 2018
2018年8月9日のランセットに発表されたAndrew Menteらによる「尿中ナトリウム排泄量、血圧、心血管疾患そして死亡:社会レベルの前向き疫学コホ-ト研究」
上記のThe Lancetに発表した論文に関して科学者達は塩摂取量と健康危険性との関係を調べる。
Tom Sanders教授、ロンドン王立大学栄養食事療法学名誉教授は辻のように述べた:
“これは、心血管疾患発症率が比較的低い平均年齢50歳の男女による大規模な観察研究である。塩摂取量は食事記録から測定することは難しく、この研究は24時間量を推定するために早朝尿中の塩量を使った。これには限界があり、特に非常に暑い気候では多くの塩が汗の中に排泄される。さらに、一回の早朝尿試料は前日の摂取量を反映していると仮定しているので、幾つかの限界がある。通常、塩摂取量を測定するために、24時間尿試料と尿採取の完全性という何らかの基準が要求され、そのことは現在の研究では欠落している。尿中のナトリウム濃度もどれだけ多くの水を飲んだかで変わる。調査された諸国は著しく気候の変動があり、血圧(比較的高い環境温度は低血圧と関係している)と共に塩摂取量や水摂取量に影響を及ぼす。”
“本研究は塩摂取量の増加が血圧上昇と関係しており、高塩摂取量(約12.7 g/d)は心血管疾患、特に脳卒中の危険率増加と関係しており、低塩摂取量ではなかった。本論文で論争点となることは、高塩摂取量が有害であるかもしれないが、WHOのガイドラインによって勧められている低いところまで摂取量を減らす価値はないと示唆していることである。最低塩排泄量の人々で観察された心疾患の危険率増加は、この観察を説明できるメカニズムは分っていないとして因果関係にないように見える。”
“減塩の利益は高血圧者と50歳以上の人々で最大であることを前の研究は示してきた。イギリスとほとんどの先進経済社会では、50歳以上のほとんどの成人は血圧を上昇させた。イギリスの塩摂取量は12 g/d以上から7 – 8 g/dへ過去30年で低下させてきて、これは人口の平均血圧低下によって達成されてきた。日本は非常に高い高血圧発症率と高い脳卒中率であり、1970年代に減塩する行動を起こし、今では非常に減ってきた。まだ塩摂取量の高い中国では、脳卒中は主要な死因である。多くの漬物摂取量と共に一般的に約20%もの塩を含む醤油を多く使っているからである。イギリスとヨーロッパの塩摂取量についての現在のガイドラインはWHOで勧められている5 g/dよりもわずかに高い6 g/d以下を摂取している。”
“ナトリウムは必須栄養素であるが、必要量は約0.5 g/dと非常に低い-大量の発汗でミネラル損失を起こすかもしれない非常に暑い条件を除く。”
“イギリスのような高齢社会では、食品に塩を加えることを制限するように人々に勧めることが賢いことである。”
Gunter Kuhnle博士、レディング大学栄養保健准教授は次のように述べた:
“この大規模な観察研究は高塩摂取量について既に知られていることを確認している:高塩摂取量は血圧を上昇させ、心血管疾患の危険率を増加させる結果となる。非常に低い塩摂取量も健康を害する-ほとんどの栄養素についての事例でもある-ことを確認している。”
研究の主な限界はどのようにして塩摂取量を測定するかである:研究で使われた方法は実際の塩摂取量を信頼性よく推定するには適してない。したがって、提案されたデータに基づいて最適範囲を明らかにすること、または現在の5 g/dと言うWHO勧告値が十分であるかどうかを調査することは不可能である。
“自由に生活している集団の塩摂取量の正確な調査は、多くの食事源があるのでよく知られているように難しい。したがって、便利でより信頼性のある代替法は尿中の塩排泄量を測定することである。しかし、塩排泄量は日中で著しく変化するので、24時間尿試料が正確な推定用に要求される。本研究で使われた方法のように、朝の尿またはスポットの尿試料から24時間塩排泄量を推定する方法があるが、信頼性がないことで知られている。研究で得られたデータは彼等の塩摂取量に従って参加者を分類するには十分であるが、実際の摂取量を信頼性よく推定することはできない。”
Francessco Cappuccio教授、ウォリック大学心血管医学と疫学部長は次のように述べた:
“PURE研究(都市と農村における前向き疫学調査)からランセットに最近発表されたことは心血管結果に関する塩の影響の知識を何ら付け加えず、さらに重要なことに、中程度に減塩した集団は害を引き起こすと言う何のエビデンスも提供していない。”
“国際雑誌に最近の数年で強調された数多くの欠陥のために、PURE研究は塩摂取量と心血管結果に関する何の問題にも対処にふさわしくない。”
“スポット尿収集と川崎式の使用による摂取量調査には欠陥があり、偏向のある推定値をもたらし、中国データのPURE研究変動でも示されている。川崎式は系統的な偏向をもたらす-この偏向は低い摂取量で心血管疾患危険率の過大評価をもたらす。この偏向の影響は塩摂取量と心血管結果との間にJ字型曲線を作り出す。これは最近高血圧予防試験(TOHP)ⅠやⅡからのデータ使って示された-TOHP試験データは現在の研究では考察されなかった。塩摂取量推定する幾つかの反復24時間尿収集は直線を示し、必ずしもJ字型関係ではなく塩摂取量と心血管疾患危険率との間に等級付けされた関係を示している。”
“平均摂取量と平均的な結果とを関係付ける‘生態学的な’関係の使用は、重要な混乱因子について許容しないので、著者らと編集者によって提出された解釈に対して取るに足らないことである。”
“WHOが主導し、多くの国際保健機関によって承認されている世界的に係わっている活動は人口の塩摂取量を減らし続けるべきである。”
Rod Taylor教授、エクセター大学医学部のヘルスサービスリサーチの議長でエクセター臨床試験科の科長とNIHRの主任研究者は次のように述べた:
“多くの諸国で行われた興味深いこの観察研究は使われた方法に関して上手く行われたように思える。著者らは年齢、性別、体格指数、教育、アルコール摂取量、そして喫煙状態のような結果をゆがめる要因について自分達の分析を調整し、集団よりもむしろ個人を解析した。脳卒中に及ぼすナトリウム摂取量-我々の食事で塩の主成分-の有害な影響は12.7 g/d以上の塩摂取量の人々に限られていることを結果は示唆している。この値は5.1 g/dに減らす現在の公衆衛生ガイドラインを大きく上回っている。このグループは主にアジアにいた。そのような現在のガイドラインは典型的に減塩する他の設定で公衆衛生利益に限られていることを結果は暗示している。24時間にわたる参加者の尿を反復テストすることができれば、この研究の結果は多分、もっと説得力のあるものになっただろう。”
“私は、私がこの研究の適正な解釈を信じていることをこの論説は上手くまとめていると思う。これらは観察結果であったので、原因と効果を主張できないし、結果はほとんどアジア集団に限られていたので、それらをどれほど広く適用できるか分らない。この研究の塩摂取量は一晩の空腹時尿の一回測定で推定された。したがって、我々は、塩摂取量介入の変化が有益であるかどうかをこの研究だけからでは分らない”
“食事介入ランダム化比較試験のコクラン・レビュー(最近では2013年に更新された)は全体としての存在するエビデンスは、食事勧告または心血管死亡率に関する塩代替物の臨床的に重要な影響を確認出来るほど十分高い力はなかったことを示唆した。この新しい研究と前のコクラン・レビューは両方ともこの領域で最も信頼できるランダム化比較試験を行うことを支持している。しかし、この分野のランダム化比較試験は倫理的にそして特に設計・実行することが非常に難しいままである。”
Graham MacGregor教授、ロンドン、クイーン・メリー大学心血管医学教授次のように述べた:
“この発表は、わずかに修正された研究集団と分析を使った2016年に著者らによって発表された研究の単なる繰り返しであるが、著者らはこの次の発表で彼等の2016年研究の幅広い科学界から真剣な批判を何も受けなかった。これらの批判には研究で病人参加者がおり、逆の因果関係をもたらし(すなわち、心疾患患者は多くの食事をしないので、その結果、塩をあまり摂取しないが、低塩摂取量よりもむしろ死に至る病気になる)、そしてスポット尿測定値の使用は不正確な測定値であり、塩摂取量と健康との関係について不正確な結果をもたらす。エビデンスの全体性は、低い塩摂取量が心血管疾患発症、世界中で最も一般的な死因と疾病の低下をもたらすことを示している。我々の意見では、品質の悪い科学的品質の論文はエビデンスに基づいた結果として考察すべきでない。”
Peter Sever教授、インペリアル・カレッジ・ロンドンの臨床薬理学と治療学教授は次のように言った:
“研究設計で重要な方法論的欠陥がある。早朝尿またはスポット尿は個人の塩摂取量の信頼性のある測定値として使えない。ほとんどの集団で塩摂取量の個人間の著しい変動(多分、毎日の摂取量が何時も高い中国を除いて)はスポット尿使用で個人の平均塩摂取量を信頼できない測定値とする。”
“混乱因子が罹患率や死亡率との関係に影響を及ぼす観察研究に伴う通常の問題を研究は持っている。古典的な事例は貧しい食生活に影響を及ぼす病気である(したがって、病人はコレステロールが低く、栄養摂取量が低い)。疾患を引き起こすのは食事ではない!これは逆因果関係の事例である。”