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心不全における塩制限について論文は多くの疑問を提出

Paper Raises More Questions about Salt Restriction in Heart Failure

By Larry Husten

http://www.cardiobrief.org/より  2015.12.28

 

 ナトリウム制限(塩制限)は心不全管理の第一歩であるが、多くの人々が実行について正しく支持しているエビデンスがないことを学んで驚くだろう。2009年の心不全ガイドラインで、心不全における塩制限はクラス1の推奨値を受けたが、これは専門家のコンセンサス(CのエビデンスがCレベル)だけに基づいていた。もっと最近の2013年ガイドラインは同じレベルのエビデンスに基づいてクラスIIaの推奨値に格下げされた(妥当である)。今や新しい観察研究が心不全における塩制限についてさらなる疑問を投げかけている。

 JACC:Heart Failure (アメリカ心臓協会誌:心不全) に発表された論文で、ラッシュ大学メディカルセンターの研究者達は心不全の厳守と維持試験(HART)に参加した833人の心不全患者の結果に基づいて塩制限の影響を調査した。塩制限は一連の食品頻度アンケートによって追跡された。塩制限を支持するエビデンスはなかった;事実、塩制限は死亡または心不全入院でかなりの危険率増加と関係していた。しかし、研究が後ろ向きで観察的な性質のためにいかなる確定的な説明も不可能である。

 “クラスIIb (効力があまり確立されていない、論争中のエビデンス) の慢性心不全疾患にACCF/AHA (アメリカ心臓病学会財団/アメリカ心臓協会) 塩制限推奨のさらなる降格を彼等の結果は支持しており、心不全管理に塩制限の役割を明確に伝えるために多くのセンターでランダム化された試験の必要性を強調する”ことを著者らは書いている。

 

心不全専門家達はエビデンスの欠如を非難

 付随する編集コメントで、スコット・ハメルとマッソー・コナーマン(ミシガン大学) は研究の限界を認識しているが、現在のガイドラインは“割引して従うべきである”ことを勧めている。“この制限が患者にもたらす課題を考えると、塩制限が全く有益であるかどうかを明らかにすることがさらに重要である、”と彼等は書いている。

 二回目の編集コメントで、クライデ・ヤンシ(ノースウエスタン大学)は、塩制限を支持する“伝統的な論理は非常に明らかであるので、照明を要求することは異端であるように思えた。それでも、利用できる文献の徹底的な調査はエビデンスを提供していない”ことを指摘している。“現在の研究は疑問を呼び起こす勢いを増しているが、答えを提供していない、”と彼は続けている。

 論文に関するコメントに答えて、何人かの特別な専門家達は現在の状況を非難し、もっとデータを要求した。ミルトン・パッカー(ダラスのベイラー大学)は次の声明を送った。

    我々がこれらのデータをどう処理することになっているか私は分らない。報告されている(確認されていない)塩摂取

量と様々な結果との関係の後ろ向き解析は特にエビデンスの有用な断片ではない。我々は結果を全く放棄すべきか?

塩制限に関する我々の中心となる推奨値に疑問をもたらすように結果は我々に導くべきか?どうやって知っていると

思うか?これらのデータは状況を明らかにするには全く役立たない。過去50年間に塩制限に関する我々の推奨値のど

れについても我々は根拠を持っていないが、これらの推奨値は大幅に変更されてきた(良い理由がないのに)。本報告の

後、塩制限に関する我々の推奨のどれについても我々は根拠をまだ持っていない。我々は前のように無知である;我々

は今でも何ら賢くない。心不全患者の塩摂取量に関する我々の推奨値についてのエビデンスを我々は持っていないこと

を我々に語るために、我々は本報告を本当に必要としていたか?

 サリム・ユスフ (マックマスタ―大学) は著者らとコメンテイターに完全に同意して、“塩摂取量を極端に下げることが有益か、安全か、あるいは無益かどうかと言う決定的なランダム化試験を我々は必要としている、”と言った。彼は次のように続けた:

    その後の研究からの増加している一連のエビデンスは、幾つかの異なる集団で10.2 g/d以下の低い塩摂取量で何らか

の臨床的利益を示さないことで一貫している。

 確かにガイドラインは、非常に低い塩摂取量は悪い結果と関係していると言うエビデンスの総重量を無視し続ける

ことはできない。もちろん、疫学的研究は、低塩摂取量による過剰な症状が原因であるかどうかを必ずしも示せない。

低塩摂取量が勧められている幾つかの異なった集団で極端な低塩摂取量の影響を調べるために一連のランダム化比較

試験を行うことが唯一の進歩的な方法である。

 そのような試験を行いながら、害を排除できなく利益のエビデンスもないので、極端な低塩摂取量 (5.5 g/d以下)

を勧めることを止めさせることは賢明であろう。

 問題はもはや誰が正しいのかではなく、何が正しいのかである。