様々な国の市販塩中にマイクロプラスチックが存在

The Presence of Microplastics in Commercial Salts from Different Countries

By Ali Karami, Abolfazl Golieskardi, Cheng Keong Choo, Vincent Larat, Tamara S. Galloway & Babak Salamatinia

scientific reports 2017.04.06

 

要約

 海水中にマイクロプラスチックがあることは比較的良く研究されているが、世界中の人々が幅広く摂取している市販食用塩のほとんどにそれらがあることについては何も知られていない。ここで我々は8ヶ国からの17銘柄から149μm以上の大きなマイクロプラスチック様粒子を抽出し、続いてマイクロ・ラマン分光計を使ってポリマー組成を同定した。マイクロプラスチックは1銘柄にはなかったが、他の銘柄には塩1 kg当たり1 – 10個のマイクロプラスチックがあった。抽出された72個の粒子のうち、41.6%はプラスチック・ポリマー、23.6%は顔料、5.50%は無定形炭素で、29.1%は不明のままであった。粒子の大きさ(平均値±SD)515±171μmであった。ほとんどの一般的なプラスチック・ポリマーはポリプロピレン(40.0)とポリエチレン(33.3)であった。破片は繊維(25.6)とフィルム(10.6)に続いて主にマイクロプラスチックの形(63.8)であった。我々の結果によると、塩からの少ない人工粒子摂取量(個人当たり年間最大37個の粒子)は健康への影響がないことを保証する。しかし、塩摂取量と関連した健康リスクをより良く理解するためには、149μm以下の人工粒子を分離するためにさらなる抽出法の開発が必要である。

 

はじめに

 1950年代のプラスチック大量生産以来、世界のプラスチック生産量は増加し続け、2015年に3.22億トンを超えた。誤って管理されたプラスチック廃棄物は海洋への行く可能性がある。一方、大きなプラスチック対象物の連続的な破片化はマイクロプラスチック(1 - 1000μmのサイズ)と呼ばれるより小さな粒子の蓄積をもたらした。また、マイクロプラスチックは一次給源(例えば、合成サンドブラスト材、化粧品配合剤、繊維)を通して水生環境に直接的に導入されるかもしれない。水生生物におけるマイクロプラスチックの広範な分布は、例えば、ケルト海、ローレンシア五大湖、ペルシャ湾そして亜熱帯還流で良く記録されている。したがって、汚染された水域からの産物もマイクロプラスチックで汚染されていると思われる。

 幾つかの研究は貝や魚のような海産物にマイクロプラスチックがあることを示してきた。したがって、海産物の消費は人のマイクロプラスチック被爆の重要な暴露源である。例えば、ヨーロッパで一番の貝消費者は年間最大11,000個のプラスチック粒子を摂取していると思われる。それらは有害な化学品や微生物を持っていることを示されて以来、マイクロプラスチックは健康上の懸念となるかもしれない。

 海産物にマイクロプラスチックがあることが比較的良く記録されているにもかかわらず、非生物的塩水製品のマイクロプラスチック負荷についてはほとんど知られていない。それらの物質には水からの汚染物質が含まれることは避けられないと思われる。ナトリウムはホメオスタシスを維持するために人体で必須栄養素であり、主に一般的な塩として消費される。市販海塩や湖塩は海水蒸発の結果または太陽光熱と風の組み合わせ効果で自然に生じるかん水を通した結晶工程を通して主に生産される。結晶化および濃縮工程後の水質汚染物が海塩へ潜在的に移行する懸念がある。非生物的製品に関する勇何時の利用可能な研究で、Yang らは、中国で生産された塩1 kg当たりに最高681個のマイクロプラスチックがあることを示した。しかし、それぞれのマイクロプラスチック粒子の化学組成は形態的な特徴に従って粒子をグループ化し、およびフーリエ変換赤外分光法を通して代表的な試料を分析する代わりに基づいたマイクロプラスチック同定で明らかにされなかった。それにもかかわらず、これは人工物質の濃度を大幅に過大評価する可能性があるので、視覚的な並べ替えはマイクロプラスチックを識別するための最も信頼できる方法ではない。しかし、定期的に塩を摂取する必要がある牛などの他の何十億もの生物を除いて、約60億人によって潜在的に消費されている世界の他の地域からの塩試料のマイクロプラスチック存在に関して利用できる報告はない。本研究で、4大陸の8ヶ国から製造された塩の17銘柄から粒子を抽出してマイクロプラスチックの存在をさらに調査した。マイクロプラスチック様の粒子を最初に分離するために密度分離と視覚的識別が採用された。最後に、全ての粒子は化学組成をマイクロ・ラマン分光計によって分析された。

 

結果

 マレーシア湖塩中の大量の白い沈降物の存在は149μmサイズの膜フィルターで沮止できる(1)。これらの粒子はラマン分光計を使って炭酸カルシウム(CaCO3)であると同定された。したがって、この試料はマイクロプラスチック分析から自害された。全部で72個のマイクロプラスチック様粒子が16塩銘柄から分離された。平均粒子サイズ(平均±SD)515±171μmであった。最小粒子のサイズは160μmで、最大サイズは980μmであった。図1はサイズ別に並べた粒子数のヒストグラムを表す。図2aで示すように、30粒子(41.6)はプラスチック・ポリマーと確認され、17粒子(23.6)は顔料、21粒子(29.1)は不明であり、4粒子(5.50)はプラスチック性物質ではなかった(例えば、無定形炭素)。主なプラスチック・ポリマーは全プラスチック・ポリマーの40.4%のポリプロピレンで、次いでポリエチレン(333%)、ポリエチレン・テレフタレイト(PET;6.66)、ポリイソプレン/ポリスチレン(6.66)、ポリアクリロニトリル(10.0)、そしてポリアミド-6(ナイロン-6NY;3.33)(2b)であった。顔料として同定された粒子はフタロシアニン(82.3)、クロム・イエロー(5.88)、ホスタソル・グリーン(5.88)、そしてホスタペルム・ブルー(588%)(2c)である。塩試料当たりマイクロプラスチックの数は塩試料#フランス-F(例えば、フランス産の銘柄F)0/kgから塩試料#ポルトガル-N10まで範囲であった。図3abはそれぞれの海塩銘柄から分離されたプラスチック・ポリマーと顔料粒子の数の積み上げ棒グラフである。

 

表1 本研究で分析された塩試料に関する詳細な情報

発生国

銘柄

包装材

塩の種類

オーストラリア

A

PE1 + PET2

海塩

フランス

B

PE

海塩

C

PP3

海塩

D

PP

海塩

E

PET

海塩

F

ガラス

海塩

G

PE + PP

海塩

H

PET

海塩

イラン

I

PP + ホスタソル・グリーン

海塩

日本

J

PE + PET

海塩

マレーシア

K

PP

海塩

L

PP

海塩

ニュージーランド

M

PE

不明

ポルトガル

N

PET

海塩

O

PP

海塩

P

ガラス

海塩

南アフリカ

Q

PET

海塩

 ポリプロピレン

 ポリエチレン・テレフタレイト

 ポリプロピレン

 

(a)   塩試料殻分離された粒子の化学組成の円グラフと対応する様々な塩の比率 (b) プラスチック・ポリマー (c) 色素

 

(a)   プラスチック・ポリマーと(b) 様々な塩の銘柄殻分離された色素粒子の数の積み上げ棒グラフ

 

 粒子の形態に関して、支配的な種類は破片(63.8)で、次いで繊維(25.6)とフィルム(10.6)である(4)。塩試料からは球状形は分離されなかった。図5は分離された粒子の幾つかの顕微鏡画像を示している。補足情報の図1a-eは幾つかの分離されたマイクロプラスチックからの顕微鏡画像とスペクトルを、参照資料のスペクトルと共に提示している。

 

 

考察

 本研究で我々は塩試料からマイクロプラスチックを分離する簡単でコスト効果のある方法を開発した。不溶解性粒子の存在は孔径2.7, 8 および22μmの濾紙で素早く捕まえられた。最初に我々は、有機物があるために目詰まりすると仮定した。しかし、KOH分解後のろ過に変化がないことは、分解できない有機または無機物質の存在を示した。したがって、大孔径(149μm)の膜を通したろ過後に脱イオン水による希釈は、塩試料からマイクロプラスチックを分離する最も簡単で素早い方法であった。我々の最近の研究では、二枚貝や砂粒の殻の破片などの高密度粒子からのプラスチック・ポリマーを分離するための4.4 MNal溶液の高い効率が実証された(回収率95%以上)Nalc抽出に加えて、塩試料中のマイクロプラスチック量を過剰推定または過少推定する機会を最少にするために、我々は顕微鏡による調査とラマン分光計を実行した。Nal抽出と視覚的識別で試料を処理したにもかかわらず、粒子の5.50%は無定形炭素(補足情報図1e)で、そのことは分離された粒子の化学組成を明らかにする視覚的技術を使う必要性を過少評価している。マイクロ・ラマン分光計は生物的試料、ミネラルまたはポリマー試料の組成を明らかにするために使われた非常に特別な技術である。それは試料に対して非侵襲的でありながら、微細な粒子の分析で多くの利点を提供する。さらに、ラマン測定は粒子を通過する光の透過に依存しない。そのことは結果的に厚いまたは顔料粒子の正確な分析を可能にする。初期の研究の幾つかは環境試料中のマイクロプラスチックを同定するために形や色のようなマイクロプラスチックの形態的特徴だけに依存していた。一方、他の方法は分離された粒子のランダム選択を通して粒子組成を部分的に確認した。観察はポリマー同定の不可欠な部分であるが、形態学的特徴からポリマーの種類を特定するだけでは不十分である可能性が高いため、粒子の特性評価のためのスタンドアロン技術として使用できない。

 本研究の結果と一致して、破片や繊維はマイクロプラスチックの主要な形態として報告されてきた。塩試料中にマイクロプラスチックがないことは水生環境での存在が少ないこと示しているかもしれない。ポリプロピレンやポリエチレンは塩試料中で最も多いプラスチック・ポリマー(それぞれ40.0%と33.3)で、海洋環境で幅広く分布していると言う報告と一致している。塩試料中のこれらポリマーの存在はポリプロピレン(0.90 – 0.91 g/cm3)とポリエチレン(0.91 – 0.96 g/cm3)の低い密度のためで、これにより水面に浮かんで、容易に製塩装置に入る。さらに、低い密度のため空中に浮遊して広がりを促進させるかもしれない。

 ポリイソプレン/ポリスチレンは塩試料中に検出された他の合成ポリマーであった。これらのポリマーは接着剤や封水材のような弾力性と簡単な処理が必要な時に使われる。塩試料から分離された2,3の粒子は包装材の組成と同様であった。これは塩製品の汚染に導く包装材の分解を示しているのかも知れない。それにもかかわらず、全ての破片やフィルムが非常に腐食していたので、この仮説は排除されたが、環境に長期間存在していることを示している。

 分離された粒子のほぼ1/4が顔料(フタロシアニン、クロメイト・イエロー、ホスタペルム・ブルー)として同定された。これらの顔料の強いラマン信号がプラスチック・ポリマーの識別を妨げたからである。フタロシアニンは合成色素で、プラスチック産業で広範囲に使われており、塩試料から分離された主要な色素であった(2c)。ホスタペルム・ブルーは銅フタロシアニン・ケミカル・クラスに分類され、プラスチック産業で主に使われている工業用染料である。ヴィクトリア・ブルーは一時的にポリアクリル繊維の着色剤(補足情報図1a)として使われ、主に下水処理場を通過した後の衣類の洗濯を通して海洋環境に導入される。一方、クロム酸鉛(黄色)色素は毒性化合物で、その優れた耐光性と低コストのために塗料やプラスチック産業で広範囲に使われてきた。初期の研究では、人の気管支癌、脳血管疾患、腎炎の発症にクロム酸鉛色素への暴露が原因であるとされてきた。しかし、塩1 kg当たりクロム酸鉛色素の粒子が1つだけで発生する#南アフリカ-Qは消費者の健康への脅威は無視できるほどである。

 最初、色素粒子はペイント粒子であるかもしれないと我々は仮定した。しかし、抽出された粒子のいずれも脆性のようなペイント粒子と同様の機械的特性を共有していなかったために、我々は塩試料にペイント粒子はないと示唆した。プラスチックよりも他の色素は繊維、ゴム、ファイバーグラスのような他の材料で幅広く使われている。Van Cauwenbergheらは、プラスチック材料となる二枚貝中の銅フタロシアニンやヘマタイトと共に、粒子は銅フタロシアニン、ポリクロロ銅フタロシアニン、そして深海堆積物中の永久赤色として同定されたと推測した。同様に、本研究で我々は、色素粒子は人為的な起源であったが、それらがマイクロプラスチックであることを保証できなかった、と確認できた。

 本研究で粒子のかなりの部分(29.1)はラマン分光計で同定されなかった。光分解や風化はポリ塩化ビニルのようなポリマーの分光スペクトル変化の原因として示唆された2つの大きな要因である。さらに、添加物の存在はポリマーのスペクトルを変え参考資料との比較を妨げる。同定できなかった試料についての別の理由は混合試料を同定するための総合的なスペクトル資料がないことである。

 マレーシアの湖塩はマイクロプラスチック分析から排除された。これには後にCaCO3として同定された物が大量の堆積物が含まれていたからである。石灰質の堆積は二酸化炭素とカルサイトの溶解度に及ぼす光合成植物そして/または季節的な気温の影響によって二酸化炭素の同化のために主に湖で起こる一般的な工程である。他の湖塩(#イラン-1)は、様々な湖塩銘柄の中でカルシウム含有量に変化を示す石灰質の堆積物を含んでいないことは注意すべきことである。

 2010年の世界の1日当たりナトリウム消費量は3.95 g/dで、年間3.6 – 3.7 kgの塩に相当する。塩試料で検出された人工粒子(マイクロプラスチックと色素)の数は0(試料#フランス-F)から10(試料#ポルトガル-N)までの範囲であった。湖のデータに基づくと、人は年間最高37個のプラスチック粒子を摂取することになる。この最高値は、海塩がナトリウム摂取量の唯一の摂取源であるとの仮定に基づいていることを考慮に入れる必要がある。他のナトリウム給源源はグルタミン酸ナトリウムや防腐剤のような食品添加物である。したがって、実際のシナリオで最高マイクロプラスチック摂取量は多分、37粒子以下である。

 マイクロプラスチックは微小損傷を引き起こす(主に破片の場合)こと、または水中で長期間増殖中に吸収された汚染物質の放出で器官に悪い影響を及ぼすかもしれない。後者の場合、マイクロプラスチックは残留性有機汚染物質(POPs)を吸着し、その後、疑似消化管条件下でそれらを脱着する能力 を示した。しかし、最近の研究では、食物や水のような他の経路と比較して、水性生物相へのPOPsの移動の媒体としてのマイクロプラスチックの重要性が低いと主張している。潜在的にPOPsの高い濃度やマイクロプラスチックの他の汚染にもかかわらず、それらの小さな粒子サイズと低い汚染率との組み合わせは、水や食品のような他の給源と比較して、海塩摂取量が人体への汚染物移動の主要経路とは思えないことを示している。しかし、技術的な限界のために、我々は149μ以上の大きな粒子を定量できるだけである。小さなサイズほど他の器官への移動が容易になる可能性があり、したがって、高度の毒性を引き起こす。例えば、Luらによる研究で、20μmのポリスチレンのマイクロスフェアはゼブラフィッシュのエラと消化管に集まり、一方、5μmのマイクロビーズはエラや消化管と共に肝臓にも入った。海塩摂取の健康影響に及ぼすより正確に正当化する前に、より小さなマイクロプラスチック粒子を定量するために、分離技術のさらなる進歩が必要である。しかし、マイクロプラスチックを含んでいることを示した食物が塩だけではないことを考慮に入れる必要がある。これらはアサリ、ムール貝、魚、そしてビールだけでなく蜂蜜からも予想外に前に検出された。したがって、マイクロプラスチックを含む様々な製品を長期間摂取することが関心事になるかもしれない。

 プラスチックが低密度で遅い分解速度であるため、プラスチックはしばしば発生源から遠く離れて移動する主要な国境を越えた汚染物質になる。したがって、1つの国の塩試料で発見されたマイクロプラスチックは何千マイルも離れた他の国で生産された可能性があった。この世界的なジレンマに対する潜在的に解決するには、全ての国がプラスチック廃棄とリサイクルで大幅な改善するという強い約束が必要である。

 

結論

 本研究の結果は8ヶ国からの塩に149μm以上の大きなマイクロプラスチックの有意な負荷は示されなかった、したがって、塩摂取に関連した健康リスクは無視できる。しかし、プラスチック使用と廃棄の増加傾向は海洋や湖、したがって水生環境からの製品でマイクロプラスチックの段階的な蓄積をもたらすかもしれない。これは様々な海産物中のマイクロプラスチックの定期的な定量化と特性評価を必要としている。