ナトリウム・イオン電池は有望か?
Are Sodium-Ion Batteries Worth Their Salt?
Power Technology Analysis 2018.05.21
リチウム・イオン電池は環境に優しいエネルギー革命と同義語であるが、リチウムの連続的変動コストは高効率、低コスト代替物への研究に推し進めている。ジュリアン・ターナーは彼女のナトリウム・イオン電池代替物に関する研究についてスタンフォード大学のポスドク研究者のMin Ah Leeに語っている。
2015年からリチウム価格はわずか10ヶ月でトン当たり20,000ドル以上とほぼ3倍になった。金属はリチウム・イオン電池の中心となる成分で、ラップトップやスマートフォンから電気自動車まであらゆる物に欠くことができなくなっており、今や西欧社会ではもちろん実用新案の大多数を取るために使われている。
金属の需要は非常に大きい。電気自動車生産は2030年までに30倍以上に増加すると、とブルームバーグは報告しており、現在至る所にあるリチウム・イオン電池に対して高効率で低コスト代替品を開発するためにカリフォルニアからニューサウスウェルズまでの研究所で競争が行われている。それらの電池はカドミウムや水銀のような重金属を含んでいる電池よりも環境的に損害が少ない。
周期表でリチウムの隣にあるナトリウムは答えを提供できるか?アメリカでスタンフォード大学のポスドクの研究者であるMin Ah Leeと彼女の研究仲間はそう考えている。“リチウムよりもよりコスト効果のある電池の開発で大きな挑戦項目は高効率電極材料がないことである、”とLeeは説明する。遷移金属酸化物とポリアニオンを層状成形に使っているナトリウム・イオン電池の実演がある。それはリチウム・イオン電池電極として使われる化合物のナトリウム版である。
“しかし、層状の金属酸化物は限られた充放電安定性と空気感受性を示し、ポリアニオンだけは主にリチウム陽イオンと比較してナトリウム陽イオンの大きさが大きいため、中程度のエネルギー密度を持たせた。さらなる研究は高エネルギーでより良い安定性を持ったより良いナトリウム・ホスト材を得ることが要求されている”
ナトリウム・イオン電池は明白にした
スタンフォード大学チームによって開発されたプロトタイプはナトリウムをベースにした陽極を持っており、電子を蓄積する電池の極板である。電池内部の化学はこれらの電子をこの事例ではリンで作られた陰極に向けて動かす。このプロセスが効率的であればあるほど、電池はより良く作動する。
チームは、ナトリウムとミオイノシトールが電子の流れを改善するために、特に電池の性能を大きく強化するためにどのように使うかに焦点を置いた。ミオイノシトールは赤ちゃんの調合乳で幅広く利用されている有機化合物で、米ぬかまたはトウモロコシを粉砕するために使われる工程の液体副産物から得られる。
“最少エネルギー消費量で自然バイオマスから得られる有機化合物は魅力的な低コストで電池電極材用の継続的な選択で、高エネルギー密度を提供し、長期充放電安定性が得られる、”とLeeは言っている。“炭素、酸素そしてナトリウムから成る我々の新しい陽極は通常のリチウム陽極エネルギー密度と比較できるエネルギー密度を示し、グリッド-スケール・アプリケーション用のコスト効果のあるナトリウム・イオン電池を作り出す方法を提供する。”
ミオイノシトールはリチウムを採鉱し精製するための15,000ドルに比較してトン当たり150ドルの費用であり、80%安く同じ貯蔵能力でナトリウム・イオン電池を作り出せる可能性がある。
“我々はグラファイト-リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物(NMC)リチウム・イオン電池用と我々のリン・ナトリウム・ロジゾン酸ナトリウム・イオン電池用の同じ燃料電池充電エネルギー密度を示すための陽極コストを比較できる、”とLeeは言っている。
“材料費はNMCについて30ドル/kgと我々のナトリウム塩について10ドル/kgである。したがって、リチウム電池のNMCについてのkW/h当たりのコストは約48ドル/kWhで、ナトリウム電池の我々の材料費は35ドル/kWhである。将来、低い作動電圧を持つより良い陰極がさらに開発されると、燃料電池エネルギー密度の増加と共にコストは20ドル/kWh低下する。例えば、トウモロコシ液のような豊富にあるバイオマスから陽極材が得られると、卸売り価格または我々の陽極材の大量生産で価格は10ドル/kgよりも安くなると我々は期待している。”
ナトリウム・イオン電池を商業的に可能にする
ナトリウム・イオン電池を研究している研究者達は一貫して同じ問題:高容量陰極がないことに遭遇している。リチウム・イオン電池はグラファイトを使っているが、これはナトリウム・イオン用には働かない。
“Li電池からナトリウム電池に完全に移ることは陰極の性能によってまだ制限されている、”とLeeは確認している。現在、我々の燃料電池エネルギー密度は比較的高い作動電圧の陰極によって制限され、変換率を制限されている。
“我々は近い将来に比較できる燃料電池エネルギー密度を本当に持てるように理想的な燃料電池システム-それは市場用の現実的な製品である-を我々は創るためにより良いナトリウム陰極の開発中である。ナトリウム電池の安全性もこの技術を実行可能に制限する別の懸念事項であるため、その点でも同様に研究努力をする必要がある。”
より安い代替品が実行可能になり、広く市場で入手できるようになるまでにどれくらい時間がかかるか?
“我々の陽極材と物質ミオイノシトールの大量生産は既に可能である、”とLeeは言っている。ミオイノシトールはヒトの身体に自然に存在している細胞膜の成分で、多くの食品、特にトウモロコシ、ナッツ、果物の中にある。イノシトールは幼児の調合乳で栄養補助剤として使われ、市販の栄養補助剤として入手できる。“ミオイノシトールからロジゾン酸ナトリウムへの合成は室温の水溶液中における酸化で、概算できる。”チームは例えば、屋上のソーラーアレイから電気を効率的に蓄電・放電できるようにする電池の充放電サイクルも最適化し、それで夜間に家の照明に使える。
充電:ナトリウム・イオン溶液の代替
ナトリウム・イオン電池問題の解決は世界中で勢いを増し続けている。フランスでは、国立科学研究センター(CNRS)は2020年までにナトリウム充電可能電池を開発し市場に出す目的でTiamatと言う会社を設立した。
アメリカでは、新進のAquionがエネルギー貯蔵用の高容量塩水電池の開発を続けており、ワシントン州立大学の研究者達はグラフェンベースのナトリウム・イオン電池について研究を続けており、一方、オーストラリアのウォロンゴン大学の科学者達はナトリウム・イオン技術に基づく電池を開発してきた。
しかし、ナトリウム・イオン問題の解決はリチウム・イオン電池に対する唯一の潜在的なライバルではない。3月にEPFLとGRTグループの科学者達は、コスト効率が良く持続的な燃料電池を使ってギ酸から電気を作り出せる世界で最初の集積電力供給を作った、と発表した。
発電のために水素を使うことは炭素や微粒子の発生を伴わない;しかし、それは容量当たり低いエネルギー含有量しか持っておらず、そのことが貯蔵や天然ガスの形での輸送を難しくしている。
代替の解決策は1リットル当たり水素590リットルを運べるギ酸のような水素運搬体を使うことで、それは新しい集積ギ酸-水素燃料電池の基礎となっている。
他の可能な解決策はリチウムを使うが、この度はLeeが説明するように硫黄と結合させる。安い材料費でリチウム電池システムを進化させる我々の約束はLi-S電池である、”と彼女は言っている。“しかし、それを作動させるためには複雑なナノ構造にする工程を必要とし、そのことは大きな製造コストがかかる。”
採鉱と精製で高価なリチウムを使っているので、将来に高効率で低コストの電池に使用するためにナトリウムのような代替品を探す競争がさらに競争力を高めるように思える。