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塩の科学:世界の塩摂取量推定値に関するエビデンスの更新

The Science of Salt: Updating the Evidence on Global Estimates of Salt Intake

By Sudhir Raj Thout, Joseph Alvin Santos, Briar McKenzie, Kathy Trieu, Claire Johnson, Rachael McLean,

JoAnne Arcand, Norman R.C. Campbell, Jacqui Webster

Journal of Clinical Hypertension 2019;21:710-721   2019.04.29

 

要約

 世界的な疾病負担(GBD)2010年調査は2010年までに入手できるデータに基づいて187ヶ国の国民塩摂取量を推定した。このレビューの目的は2010年以来24時間尿収集法を使って国家的に代表する人口の塩摂取量を測定してきた調査を、世界的に人口の塩摂取量に関するエビデンスを更新する観点で明らかにすることであった。20111月から20189月までに発表された調査は関連する用語を使ってMEDLINEScopus、およびEmbasesデータベースから検索された。24時間尿収集に基づいて健康な成人人口の国を代表する推定値を提供した調査が含められた。測定された塩摂取量が抽出され、GBD推定値と比較された。適格性について評価された115件の特定された調査の中で、13調査が含まれた:4調査はヨーロッパからで、アメリカ、カナダ、ベニン、インド、サモア、フィジー、バルバドス、オーストラリア、およびニュージーランドから1件ずつであった。1日当たりの平均塩摂取量はバルバドスの6.75 g/dからポルトガルの10.66 g/dの範囲であった。GBD2010年推定値と比較した最近の調査で、イタリア、イギリス、カナダおよびバルバドスでは測定された平均人口摂取量は低く、フィジー、サモア、およびベニンでは高かった。人口の塩摂取量を減らす世界的な目標値にもかかわらずGBD2010年調査以来、13ヶ国だけが国を代表する塩摂取量を発表してきた。全ての国で、塩摂取量はWHOの勧告値よりも高いままで、さらなる世界的な減塩努力の必要性と減塩戦略のモニターを強調している。

 

1 はじめに

 高塩摂取量は心血管疾患(CVD)の主要な危険因子である血圧上昇と関係しており、幾つかの調査は、低い塩摂取量は血圧とCVD発症の両方を減らすことを示してきた。世界的に毎年CVDによる165万人の死亡は5 g以下と言うWHOの勧告値以上の塩摂取量によるもので、ほとんどの国で現在の1日当たり人口の平均塩摂取量はこの勧告値をはるかに超えている。ごく最近の世界的な疾病負担調査は、2017年に世界で320万人が死亡した死亡の主要な食事危険因子は高塩摂取量であった、と報告した。

 2010年の世界的な疾病負担、傷害、および危険要因調査(以後、GBD2010年と呼ぶ)1990年と2010年の187ヶ国についての世界的、地域的および国固有の塩摂取推定値を定量化した。これは24時間尿収集法(n=142)、食事思出法を含む食事報告法(n=103)、食事記録、食品摂取頻度アンケート、および家庭の入手可能性/予算調査を使った66ヶ国の調査に基づいていた。ベイズ階層モデリングは187ヶ国について年齢、性別、時間ごとに塩摂取量を推定するために全ての利用できるデータを使った。調査は、2010年の世界の平均塩摂取量は10.06 g/dであることを明らかにした。187ヶ国に中で181ヶ国の平均塩摂取量推定値はWHOの勧告値を超えていた。約119ヶ国は少なくとも2.5 g/d勧告値を上回っており、51ヶ国は勧告値の2倍以上を摂取していると推定された。

 多くの異なった方法が塩摂取量を調査するために使えるが、厳密に行われた24時間尿収集法は個人のあるいは集団の塩摂取量を推定するための世界的な標準法として考えられている。24時間尿収集は平均ナトリウム摂取量を調査するために勧められている。ナトリウムの平均93%は腎臓から排泄され、全ての給源から全ナトリウム量の推定値を提供しているからである。個別のレベルで、24時間食事思出法あるいは食品摂取頻度アンケートのような食事報告法は塩摂取量を過少または過大に推定するかもしれない。一定時間感覚のスポット尿試料は代替法として何人かの研究者達によって提案されてきたが、この方法が時間経過に伴う変化を測定するために必要な精度レベルであるかどうかは現在分っていない。事実、集団平均ナトリウム推定量は低い24時間尿中ナトリウム摂取量では過大評価となり、高いナトリウム摂取量では過少評価となり、対になっていない食事中のナトリウムの変化を追跡するには、スポット尿法は不適切であるかもしれないと言う懸念が生じている。したがって、24時間尿収集は最適法と考えられている。

 WHOメンバー国は2025年までに平均人口塩摂取量で30%の暫定的な低下に同意し、2014年レビューは75ヶ国で国の減塩戦略を明らかにした。しかし、これらの国と戦略のない多くの他の国は将来の変化を測定するために人口塩摂取量のしっかりした調査をしてこなかった。GBD2010年は各国の平均人口塩摂取量についての基準推定値を提供した。したがって、本レビューの目的は20111月と20189月との間の24時間尿収集に基づいて成人人口の塩摂取量を調査してきた国家的な代表調査を明らかにした。これはGBD2010年推定値と比較して、既存の人口塩摂取量の推定値を世界的に更新することを目的とした。

 

2 方法

3 結果

3.1 調査の詳細

3.1.1 最近の塩摂取量

3.1.2 GBD2010年の推定値と比較

  以上の項目は省略。

 

4 考察

 本レビューはGBD2010以来黄金基準法である24時間尿収集法を使用して塩摂取量推定値を調査してきた13ヶ国からの国際的に代表する13調査を明らかにした。全ての国の塩摂取量は、継続されている減塩プログラムの必要性を強調しているWHOが勧めている5 g/dを超えていた。

 本レビューでイタリア、イギリス、カナダ、およびバルバドスは最近の調査で、前のGBD2010推定値よりも低い摂取量であった。これらの結果が減塩プログラムの結果として本当に塩摂取量低下を反映しているかどうか、あるいは多くのGBD推定値が様々な情報源の入力に基づいているので、結果が異なった試料採取法または塩測定法によるためであるかどうかを知ることは出来ない、しかし、これらの4ヶ国は減塩戦略を実行してきたことを注意すべきである。イタリアはパンの塩含有量を制限する規制を含めて食品産業界と共同で計画を実施してきた。イギリスは2006年以来、総合的な政府主導で、塩目標値を定めた減塩介入や食品を再構成するために業界との共同作業を実行してきた。カナダもカナダ人の食事でほとんどの塩摂取量に寄与している包装食品のために目標値を設定してきた。同様に、バルバドスは食品中の塩含有量を減らすための目標値を設定し、食品産業界と一連の会合を持ってきた。したがって、我々の結果はGBD2010以来生じてきたであろう集団の塩摂取量低下と一致している。

 フィジー、ベニン、サモアはGBD2010を通して報告されている塩摂取量と比較して最近の調査で高い集団塩摂取量であった。再び、これは塩摂取量の本当の増加を反映している、あるいは測定法の異なった方法による結果であるかもしれない。GBD2010で、全ての国の期間のナトリウム排泄量推定値は親モデルとして使用している年齢を統合するベイズ階層モデルを指定して考察され、調査固有および国レベルの共変量、およびGBD特別地域、地域、国についてのランダムな効果のために、DisMod-MRモデルが確立された効果を推定するために使用された。フィジー、ベニン、サモアを含めて多くの低・中所得国(LMICs))は栄養の移行を経験し、伝統的な食品から加工食品や包装食品へ摂取パターンを変えてきた。これらのことが過去数年間で塩摂取量増加に潜在的に寄与しているかもしれない。

 集団減塩戦略の採用はLMICsで遅く挑戦を残している。これらの国は伝染病と非伝染病の二重の負担を経験しており、健康の優先順位と健康のために限られた資源が競合しているからである。しかし、食品再構成、消費者教育、包装表示および公的機関の介入を含む集団減塩提案は幾つかの国で実行されている。さらに、減塩戦略は塩摂取量をモニターする国家レベルの機構の設立と併せて政府部門間の高レベル関係が必要である。

 24時間尿収集の測定法は、ほとんどの検体は尿量とクレアチニンを使用し、一部はPABAを使用して完了する標準的な基準で塩摂取量を推定するための「黄金評価研究」と考えられている。したがって、本レビューのために我々は24時間尿試料を使用して塩摂取量を調査してきた調査だけを含めることに決定した。幾つかの大規模な集団調査は多くの国で24時間尿収集によって塩摂取量を調査してきた。インターソルト(198587)32ヶ国の52ヶ所の集団試料から24時間尿収集試料を得た。INTERMAP4ヶ国の17集団からの24時間食事思出法と24時間尿試料2回を含んでいた。大規模な疫学調査で24時間尿収集の国民的に代表的な試料を集めることは可能であることをこれらの両調査は示している。しかし、他の研究は24時間尿試料を集めることは参加者には煩わしいことを強調して、集団の塩摂取量推定用に便利で実行可能な代替法としてスポット尿収集が次第に使われるようになってきた。しかし、スポット尿試料は集団レベルの塩摂取量の合理的な推定値を提供できることを幾つかの調査が示してきた一方で、これが全ての集団グループに適用できるかどうかを示す十分なエビデンスはない。したがって、スポット尿収集を使うことに反対してきた。そのことが、我々がこのレビューで24時間尿試料を使った調査に限定した理由である。

 本レビューは最近の塩摂取量測定値を2010年のGBD調査の推定値から導き出された測定値と比較した最初のものである。主たる強みは、試料の枠組みが3つのデータベースから全国的に代表された集団の塩摂取量に関する査読された論文の包括的で体系的な検索を含んでいることである。レビューの事前に定義された包括および除外基準に従って我々はデータを体系的に識別および抽出した。将来への強調は、24時間尿収集法を使用した調査だけを採用することで、したがって、現在の黄金基準からの塩摂取量推定値だけが使われた。幾つかの方法は含まれている調査の24時間尿収集の完全性を調査するために使われた。2つの調査だけがPABA(一般的に黄金基準として考えられている)を使い、残りは24時間尿収集の完全性に関するクレアチニン/容量基準(そしてこれらの基準の使用は研究間で異なっていた)を使った。レビューの限界は、発表された文献だけに依存していることで、したがって、塩摂取量を測定した国々は入っておらず、結果を査読された文献に発表していない。我々も健常な集団の幅広く代表した試料を含んでいる調査だけを採用し、特別な集団グループの調査は採用しなかった。しかし、これはGBD2010と比較できるようにするためには重要であった。GBD2010の塩摂取量推定値はベイズ階層モデリングに基づいた。それは187ヶ国について年齢、性別に平均ナトリウム摂取量を推定するために調査データと彼等の特性値を使っていた。したがって、幾つかの新しい推定値が違っているかどうかを知ることは出来ない。集団の塩摂取量が変化し、あるいは使われた方法のために差が出てくるからである。

 

4 結論

 結論として、13ヶ国だけが2010年以来24時間尿収集法を使った国家的に代表された塩摂取量データを発表していた。新しい研究とGBD推定値との間の塩摂取量の差が塩摂取量の変化を反映しているかどうか、あるいは方法論的な差によるためかどうかは明確にできないが、全ての国の塩摂取量レベルはWHO勧告値よりも高いままである。したがって、塩摂取量を下げ、塩戦略をモニターするための追加的な国際的努力を含む減塩に焦点を置いた国の公衆衛生政策のために緊急の必要性がある。