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Contemporary Review

血圧の塩感受性テスト用に最近勧められた方法の評価

An Appraisal of Methods Recently Recommended for Testing Salt Sensitivity of Blood Pressure

By Theodore W. Kurtz, Stephen E. DiCarlo, Michal Pravenec, and R. Curtis Morris, Jr

Journal of the American Heart Association 2017;6:e005653   2017.04.01

 

はじめに

 アメリカ心臓協会(AHA)の最近の科学声明によると、血圧の塩感受性は、“血圧変化が塩摂取量の変化と同様に変化する”特性である。塩感受性は“血圧と同様に強力で独立した心血管疾患罹患率と死亡率についての危険因子”であると言われている。塩感受性を確認する基準は標準化されていないが、高血圧者の30 - 50%が塩感受性であり、正常血圧者の約25%が塩感受性であると推定されてきた。AHA学声明によると、血圧の塩感受性は“その表現型が伝統的な心血管危険因子の関係と同様に強力な前兆関係となる可能性があるので、臨床的に重要な問題”となってきた。塩感受性をテストする様々な方法は研究設定に適用されてきた;しかし、日常業務の臨床テストで有用な塩感受性テストはまだ確定されていない。

 塩感受性の機構と臨床的な重要性理解の進歩は塩感受性を調査するために使われる標準的な方法がないために長い間妨げられてきた。本解析で我々は塩感受性をテストするための主要な研究法を考察し、最近AHA科学声明で述べられなかった多くの意見を含めてこの複雑な表現型を如何にして最高に調査するに関する現在の意見を示す。科学的考察を広げるために、塩感受性が血圧と同様に強力で独立した心血管疾患の死亡率の危険因子であるとの主張に関して我々は代替となる展望も述べる。

 

科学的に優れた塩感受性テスト法はあるか?AHA概要の考察

 短期間プロトコールで2種類による塩感受性調査の方法に関してAHAはいくつかの短い勧告を提供している:(1) 塩摂取量の変化に対して合計2週間程度、直接に血圧応答を測定することを要求する“外来患者食事プロトコール”、そして(2) 塩感受性の間接的なテストとして見なされる“入院患者による急性プロトコール”で、それはわずか3日間に静脈と経口によりあらかじめ塩を投与された被験者にフロセマイドと同時に減塩に対する血圧応答の測定ですむ。

 外来患者の食事プロトコールまたはフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールのいずれかで行った発表されている研究で、プロトコールが研究者達によって選ばれた任意の区分値以上の平均動脈血圧を引き起こせば、被験者は塩感受性と分類される。AHA科学声明は、“塩感受性として被験者を分類する手間に使われる血圧変化の程度について任意の区分値を選ぶ必要性を具現する”データを提供している。残念なことに、de LeeuwKroonが述べているように、“どれくらいの血圧以上で塩感受性と考えられる応答の程度は研究間で大きく変わっている。”塩感受性のような連続的な特性を調査するための任意で幅広い範囲の区分値を使うと言う限界は良く知られているが、塩感受性者の生物学的、人口統計学的特性値を議論するとき、研究者達はそのような区分値に依存している。特別な区分値とどちらの特別なプロトコールが塩感受性の高血圧者または正常血圧者を明らかに出来る最高で現在のアプローチを提供できるかに関する勧告値をAHA科学声明は含んでいない。

 AHA科学声明によると、“ヒトの血圧で塩感受性の測定に関して最高の研究法を決めるエビデンス根拠はない。”したがって、塩感受性について特別なテスト・プロトコールが科学的に好まれるかどうかのガイダンスをAHAは提供していないし、塩感受性の血圧調査で精度と再現性に関して、勧められる外来患者食事プロトコールとフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールとの間を本当に区別できない。したがって、方法の一つはAHA勧告値で議論し、あるいは他の方法は塩感受性を調査する現在の参考法として考えられていることを科学声明は提案または示していない。

 

塩感受性をテストする科学的に優れた方法はあるか?代替意見の考察

 多くの研究者達の見解によると、血圧の塩感受性を調査するためにフロセマイドをベースにした方法、入院患者急性プロトコールを含めた他のプロトコールよりも注意深く行われた食事プロトコールは科学的に優れていることをエビデンス根拠は示している。特に、低塩摂取量で1週間そして高塩摂取量で1週間の注意深く管理された食事プロトコール(利尿剤治療はない)は塩感受性を調査する黄金基準の方法であることが多くの研究者達の立場である。他の研究者達は黄金基準と言う言葉を使わないかもしれないが、彼等が述べていることは、“塩感受性を調査する最も信頼できる方法は塩摂取量の変化に対する血圧応答であり”そして“基準となる参考法”としてそのような食事テストを参考にする。ここで我々は黄金基準法という言葉よりも“参考法”または“好ましい方法”と言う言葉を使う。

 塩感受性調査のための好ましい方法として多くの研究者達が参考にしている食事プロトコールの主な特徴を表に挙げる。様々な研究者達の研究結果を以下で議論し見解を考察して、塩感受性をテストする現在の参考法はこれらの特徴を持った食事プロトコールに基づいていることを我々は勧める。食事プロトコールは入院患者または外来患者を基準にして行われる。注意深く行われた入院患者食事プロトコール(フロセマイドを使用しない)は注意深く行われた外来患者食事プロトコールと比較して高い再現性のある結果をもたらしている、と我々は信じている。しかし、再現性の研究と心血管疾患危険性の予測に関して大きなエビデンス根拠を持っているので、我々は外来患者の食事プロトコールにより重点を置いている。

 

1 塩感受性テストの参考法候補  John Wiley & Sons, Ltd

次のような特徴を持つ食事プロトコール:

2.9 g NaCl/d以下の低塩摂取量で1週間

14.6 g NaCl/dの高塩摂取量で1週間 a

研究目的によって異なった食事順序を変える

全研究を通して十分に特徴付けられた食事の処方とモニター b

NaCl摂取量確認のため24時間尿中Na+排泄量の複数測定

高度に再現性のある塩感受性テストに基づいた血圧測定 c

塩感受性として正常血圧者を分類する区分値:平均動脈血圧変化 3 - 5 mmHg d

塩感受性として高血圧者を分類する区分値:平均動脈血圧変化 8 - 10 mmHg d

a 二重盲検試験、塩摂取量変化の血圧効果の偽薬を含めたテストのために、高塩摂取量と偽薬を無印のカプセルに入れて与える。

b カリウム、硝酸塩、その他食事要因は血圧に影響を及ぼすので、食事の内容は各研究段階で注意深く述べられるべきで、研究目的の部分として要求されなければ、変えるべきではない。塩感受性として被験者を分類するために高い再現性を示すプロトコールの研究で使われた食事に基づいて、60 - 80 mmol/dの範囲のカリウム摂取量が勧められる。

c 血圧測定技術の詳細と高度に再現性があると報告されているテスト・プロトコールで使われる血圧区分値は補助表とシャーマら、オーバーラックら、ドレイジャーらによる発表論文にある。

d これらの範囲の特別な区分値は予め特定されるべきである。高塩摂取量が14.6 g/dの目標塩摂取量よりもたまたま幾分低ければ、区分値は勧められている区別範囲の低い値に基づいているかもしれない。与えられた塩量が14.6 g/dと言う目標塩摂取量に非常に近い、または幾分高ければ、区分値は勧められている区別範囲の高い値に基づいているかもしれない。

 

 塩摂取量の特別な値を含めて表に述べられている食事テスト・プロトコールの特徴の幾つかは外来患者食事プロトコールについてのAHA勧告値に述べられた。しかし、AHA勧告値と対照的に、表の勧告値は:(1)参考法候補を示している;(2)塩感受性を明らかにすることで使われる血圧区分値を特定している;そして(3)テスト・プロトコールで高塩摂取量期間は低塩摂取量期間の前に行う必要はない。我々は次にこれらの問題をさらに詳細に論じ、塩感受性として被験者を分類するための他のプロトコールと比較して好ましい食事プロトコールの優れた再現性を示す情報を提供する。さらに、好ましい食事プロトコールで塩感受性が診断されるが、フロセマイドを使った入院患者による急性プロトコールでは塩感受性は診断されないことをエビデンス根拠は如何に示しているかを我々は議論し、塩感受性は心血管疾患になるまでの独立した危険因子である。

 

提案された参考法で塩感受性として被験者を分類する区分値

 提案された参考プロトコールと表で述べられている生理学的塩摂取量で正常血圧者をテストするとき、塩感受性の誰かを分類するための区分値は塩摂取量の変化に対する応答で少なくとも3 – 5 mmHgの平均動脈血圧変化であると考えられ;高血圧者をテストするとき分類区分値は少なくとも8 -10 mmHgの平均動脈血圧変化であると一般的に考えられている。高血圧被験者の注意深い食事研究で歩行中血圧モニターが使われるとき、診断についての区分値は24時間測定で約5 mmHgの平均動脈血圧変化であると考えられてきた。

 

塩感受性テストに対する食事プロトコールの再現性

 表に述べられている特徴を持った好ましい食事プロトコールは正常血圧者または高血圧者のいずれかで行われ、塩感受性者としてまたは非塩感受性者として分類するプロトコールの再現性は非常に高い(90%以上;ここで我々はテスト-再テスト反復値を平均した再現性と言う言葉を使う;)。塩感受性の状態について被験者を分類する際に好ましい食事プロトコールの優れた再現性の強いエビデンスをこれらの研究は提供している重要な研究である、と我々は考えている。異なった食事をランダム化された順に与えたときと、高塩食の前に低塩食を与えたときの再現性は高かった。塩感受性の被験者を同定する再現性の高いレベルは他のテスト・プロトコールでは記録されていない。

 全研究を通して標準食が注意深く述べられなかったとき、または低塩食時または高塩食時に与えられた塩の量が表またはAHA科学声明で勧められている量に近くないとき、塩感受性について被験者の分類では食事プロトコールは再現性が悪いように思えることを述べるべきであった。塩感受性としての被験者の分類で優れた再現性を示す食事プロトコールの特性と劣った再現性を示す特性は付表の表(S1:省略)で詳細に示されている。

 GenSalt研究者達によると、好ましい食事プロトコールと類似の特徴を持ったテスト法は、元のテスト後4.5年経っても被験者が反復テストを受けたとき、再現された結果のエビデンスを示した。しかし、これらの幅広く分けられた反復テスト間の血圧変化の相関係数は高くなく、研究者達は特別な区分値によって塩感受性の被験者を分類することを試みなかった。研究者達が短期間で高い再現性を持つテスト・プロトコールを使うとしても、塩摂取量の変化に対する個人の血圧応答は数年の期間で変わるかもしれないことがあり得る。年齢の変化、環境要因あるいは生活様式の変化、あるいは疾患自身の特性変化のためである。

 

食事プロトコールで塩感受性をテストするとき、高塩摂取量の期間は低塩摂取量の期間に先立つべきか?

 塩感受性の食事プロトコール・テストで高塩摂取量期間が低塩摂取量期間に先んずるべきであることをAHA科学声明の勧告は示唆している。レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系(RAAS)の活性を一律に抑制し、それによって血漿ナトリウム濃度と動脈血圧を制御するホルモン系の基準線の変動を最少にするために食事プロトコールは高塩摂取量期間で始めることをAHA科学声明は示唆している。AHA声明によると、高塩摂取量によるRAAS活性のそのような抑制は低塩摂取量に対するその後の応答に対してより一様に寄与するかもしれない。しかし、RAAS活性の基準値変動が高塩摂取量で抑えられるかもしれないのに対して、酸化窒素(NO)活性または交感神経活性の変動は増加するかもしれない(酸化窒素系や交感神経系の活性変化に関して、塩抵抗性者よりも塩感受性者は高塩摂取量に対して異なって応答する可能性があるからである)。高塩食の食事プロトコールで始める理論的根拠は、塩摂取量の変化に対する生物学的応答を調査するとき、血圧制御に寄与する他の系の最初の変動を抑えることよりもRAASの最初の変動を抑えることがより重要であることを仮定しているように思う。

 研究目的に基づいて低塩摂取量期間と高塩摂取量期間の一連の順序について研究者達は決定すべきであると我々は思う。目的が塩感受性者を同定することであれば、異なった塩分食をランダムに与えることが合理的である。異なった塩分食がランダム順に与えられたとき、塩感受性者を分類するための好ましい食事プロトコールの再現性は非常に高く示されてきた。どのようにして塩負荷が血圧を上昇させるかの機構を研究することが目的であれば、適当な時間管理を含めることを用意して低塩摂取量期間は高塩摂取量期間に先立てる。減塩の血圧低下効果の研究から塩で誘引される血圧上昇を起こさせる障害について我々は結論を引き出すことに対して注意する。

 

塩感受性者の発症率を推定する短期間食事プロトコールの使用

 塩感受性をテストする短期間食事プロトコールは現象を過少評価するかもしれないと何人かの研究者達は思っている。長期間の食事プロトコールで検出されるだろう短期間食事プロトコールは鈍い塩感受性者を見逃すかもしれないからである。例えば、HamlynBlausteinは、食事介入試験で本当の血圧応答を適正に捉えるために、低塩摂取量と高塩摂取量のそれぞれの期間は3ヶ月間にすべきであると主張する。しかし、この見解はAburtoらによって要約された研究結果と相反すると思える。彼等は次のように示唆している。3ヶ月間以下の試験で減塩により生じた血圧低下は3ヶ月間以上の試験で生じた血圧低下よりも実際に大きいかもしれない。さらに、短期間食事プロトコール(3ヶ月間以下)では長期間食事プロトコール(3ヶ月間以上)よりも血圧塩感受性の事例が少ないとしても、これは次の事のために短期間食事プロトコールで行われる血圧塩感受性診断の有用性を呼び掛けていない。(1)有害な心血管疾患の危険率増加を予測し、あるいは(2)塩摂取量の増加が血圧上昇をもたらす機構を研究する。

 

塩感受性テストするためのプロトコールで反生理的な塩量の使用

 何人かの研究者達は血圧に及ぼす塩摂取量(58 g/d以上)の極端な変化の効果を研究し、またはモデルにしてきた。塩摂取量の極端で非生理学的な増加はほぼ全ての正常者の血圧に実質的な血圧上昇を引き起こすように思える。実際の生活において塩で誘引される血圧変化のそのような状態の関連が不明であるので、塩感受性を調査するために塩摂取量の極端で非生理学的な変化の使用を我々は勧める。表で提案されている参考法とAHAの方法論的な勧告で述べられている塩摂取量は非実験的な状況で人の摂取量内である。

 

好ましい食事プロトコールの代替法として塩感受性テストの代替法

 提案された参考プロトコールは血圧塩感受性テストの非常に再現性の高い直接法であるけれども、行うのに大変な時間と物資も要求し、その使用は一般的に専用の研究施設に限られている。したがって、塩感受性テストの素早くて比較的安価な代替(間接的な)法を明らかにすることに大きな関心がある。簡単で信頼性のある代替テストは塩感受性の機構と因果関係に関する研究を促進させ、日常臨床業務で使うためにも評価される。塩感受性を明らかにするための代替テストの作業を調査するために、参考法に対して、またはあっても不完全な参考法との比較によって綿密に調べられてきた代替法に対してそれらを比較することが必要である。様々な研究者達が塩感受性の代替法を開発してきた。しかし、AHA科学声明で議論されたように、ほとんどの代替法には著しく制限があり、または広範囲には研究されず、一層の確認が必要である。議論されたテスト法の中で、フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコール塩感受性調査で最も幅広く研究された代替法である。フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールは日常臨床業務で使うには非常に複雑であるが、臨床研究施設ではしばしば使われてきた。

 

フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールは血圧塩感受性のテストで有用か?

 AHA科学声明は血圧塩感受性を調査するためのフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールをどのように実行するかについての特別な忠告を提供したが、塩感受性テストの他の代替法を実行する忠告を提供しなかった。AHA忠告によって行われたフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールは塩感受性者を同定するための有用な方法であることをこれは示唆しているかもしれない。塩感受性者を同定するためのフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールの潜在的な欠陥の理解に資するために、この方法の精度と再現性について関心事を我々は次に考察する。塩感受性の機構を研究するために、そして心血管疾患の結果を予測するためにこのプロトコールの有用性に関する疑問も我々は考察する。

 ワインバーガーらの研究から得られた良く知られている入院患者急性プロトコールは塩摂取量だけの変化に対して直接的に血圧応答を測定していない。むしろ、あらかじめ静脈と口から塩を投与された被験者のフロセマイド投与と同時に減塩したときの血圧低下効果に対する応答を測定している。フロセマイド感受性テストとして参考にもされているこの入院患者急性プロトコールでは、フロセマイドと減塩の組合せに対する応答で10 mmHg以上平均動脈血圧低下があれば、塩感受性と個人は分類される。

 

塩感受性として個人を分類するためのフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールの再現性は?

 ワインバーガーとファインベルグによるフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールの研究を引用して、AHA科学声明は、反復テストで生ずる動脈血圧変化値間の相関は0.56で、28人の被験者の内4人が塩感受性から塩抵抗性への、またはその逆に彼等の状態を変え、プロトコールのささやかな再現性を示唆していることを述べている。しかし、塩感受性として被験者を分類することに関するプロトコールの非常に限られた再現性の完全な情況をこの情報は提供していない。引用された研究では、最初のテストで塩感受性であると思われた被験者の約55%だけが反復テストで塩感受性として分類されたようである(反復テストでは、塩感受性者の約45%が中間または塩抵抗性のいずれかであると分類されるようになったようである)。これは、ワインバーガーらが使った10 mmHg区分値に基づいた塩感受性として被験者を分類するための入院患者急性プロトコールの悪い再現性を構成している。

 ワインバーガーらが使った方法とは違った塩感受性についての分類機構を使った研究者達はフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールの限られた再現性を示す結果も報告した。図に示すように、ワインバーガーとファインベルグのいずれかの区分値を使ってフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールで判定された塩感受性診断の再現性は、好ましい食事プロトコールで判定された診断の再現性よりも実質的に低いように思える。

 

塩感受性として被験者を分類するフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールはどれくらい正確か?

 フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールは塩感受性者を分類する再現性が悪く、血圧に及ぼす塩摂取量の変化だけの効果を測定できないので、我々は次の疑問を挙げた:個人が血圧塩感受性であるかどうかを決定するためのフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールがどれくらい正確か?

 フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールでテストされた個人が注意深く行われてテストされた多くの研究が利用できる。すなわち、多くの研究者達が塩感受性を調査するために好ましいテストであると考えているタイプのプロトコールである()AHA科学声明はこれらの研究の幾つかを参考にして、急性プロトコールを使って得られた結果とゆっくりとした塩摂取のプロトコールを使って得られた結果との比較は一貫して重要であったと述べている。しかし、2つのプロトコール間の比較は一貫して重要であったと言う全体的なコメントは、好ましい食事プロトコールで判断されたように血圧塩感受性患者を同定するためのフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールの精度を示していない。

 比較研究の全てを一緒に考察してフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールは塩感受性調査について約65 - 75%の精度であると思われる(ここで精度は本当のポジティブな数と本当のネガティブな数をテストされた総個人数で割ったものとして定義される)。したがって、フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールは、実際に被験者が塩感受性であるかどうかを決定することに関して限られた精度と悪い再現性によって特徴付けられる。

 入院患者急性プロトコールで、血圧を制御する機構に及ぼす経口塩摂取量変化の効果はフロセマイドと静脈塩負荷の効果によって潜在的な混乱要因となりやすいことをこころに止めておくべきである。例えば、フロセマイド自身は腎細管のNa+, k+, 2Cl-共輸送体に効果を及ぼすだけでなく、脈管構造のNa+, k+, 2Cl-共輸送体にも影響を及ぼす。さらに、静脈経由の塩投与は多くの生理学的な経口投与による塩投与よりも異なった生物学的効果を持っているかもしれない。

 

フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールまたは好ましい食事プロトコールで診断された塩感受性は心血管罹患率または死亡率について独立した危険因子となるか?

 モリモトらによる研究は、高血圧者で好ましい食事プロトコールで行われた塩感受性診断は大きな心血管疾患に対する時間について独立した危険因子であると言うエビデンスを提供している。AHA科学声明によると、心血管疾患危険因子として血圧の塩感受性について独立した役割のより確かな証明はワインバーガーと同僚達によって提供された。彼等は塩感受性診断にフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールを使った。しかし、死亡危険率(心血管疾患危険率ではない)を調べたワインバーガーらの古いコホート研究は自然に予備的で、異なった死亡率解析間で一貫した結果を得られなかった。その研究で、フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールは塩感受性の代替テストとして使われている研究では、論理的回帰分析は、そのような塩感受性は死亡の危険因子であるかもしれないことを示した。しかし、理論的回帰分析の知られている限界のために、研究者達はコックス比例ハザード解析も行った。コックス解析で、フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールで調査された塩感受性は死亡までの時間の独立した予測因子ではなかった。

 ワインバーガーらの研究の新しい観察は、塩抵抗性高血圧者と塩感受性正常血圧者の生存曲線は大きくは違っていなかったAHA声明は述べている。しかし、それら2つの患者グループ間の生存曲線の差を検出するための統計解析力に関するワインバーガーらの研究で情報は提供されなかった。フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールで判定されたように、塩感受性の死亡率に及ぼす効果はワインバーガーらによる異なった解析間で一貫していなかったので、古いコホート研究の予備的な性質のために、入院患者急性プロトコールによるワインバーガーの死亡率研究の結果は決定的ではない。

 フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールによる塩感受性診断は心血管疾患死亡または心血管疾患までの時間について独立した危険因子であることを示した研究を我々は知らない。今日までのエビデンスは、注意深い食事プロトコールによって塩感受性は判断されるが、フロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールで塩感受性は判断されないことは心血管疾患までの時間について独立した危険因子で十分にありえるかもしれないことを示している。どのような種類のプロトコールで判断された塩感受性は心血管疾患を原因(または他の原因)からの死亡までの時間について独立した危険因子であるかどうかを確立されることが残っている。

 

塩感受性の機構を理解することに及ぼすプロトコール選択の影響

 塩感受性の機構は論争や議論が続いている問題である。著しい論争の程度は特別な研究や理論の解釈に関する異なった見解を自制するので、塩感受性者を同定するために使われる方法間の差にも関係している。例えば、フロセマイドをベースにしたプロトコールによる研究は、減塩期間中に塩感受性高血圧者は塩抵抗性高血圧者が経験するよりも血漿カテコラミンに同様のまたはより大きな増加を経験する。しかし、好ましい食事プロトコールによる研究は、減塩期間中に塩感受性高血圧者は塩抵抗性高血圧者が経験するよりも血漿と尿中カテコラミンに小さな増加を経験する。

 塩感受性のテスト法は塩感受性の人口統計の理解にも影響を及ぼすかもしれない。例えば、正常血圧者でフロセマイドをベースにしたプロトコールによる研究は、黒人の塩感受性頻度は白人で見られる頻度と同様であったことを示した。しかし、好ましい食事プロトコールによる研究は、塩感受性が正常血圧白人よりも正常血圧黒人でより一般的であることを示してきた。これは疑問を生じさせる:フロセマイドをベースにしたプロトコールによる研究で、好ましい食事プロトコールによる塩感受性研究で診察がチェックされ、確認されなかったら、塩感受性に関係する機構や人口統計的結果をどのように解釈するか?確認テストの必要性を挙げても、フロセマイドをベースした入院患者急性プロトコールによる研究が好ましい食事プロトコールによる研究から得られた知識を越えて塩感受性の機構や人口統計の理解をどのようにして進展させるかは不明である。

 

結論

 AHAからの最近の科学声明によると、血圧の塩感受性は伝統的な心血管疾患危険因子の関係と同じほど強い前兆の関係を潜在的に持っている一般的な疾患である。塩感受性の機構と結果を理解することの進歩は、この疾患を持つ個人を同定する手間に使われるプロトコールや基準の標準化が進んでいないことで阻害されたままである。塩感受性テストの様々な方法の中で、ここに述べられた注意深く管理された食事プロトコールは塩感受性者を同定するための最高のテスト-再テストの反復を提供する。我々自身を含めて多くの研究者達はそのような食事プロトコールを塩感受性テストの現在の参考法であると考えている。参考食事プロトコールは著しい時間と物資を要求し、研究施設で使用されることが目論まれている。日常の臨床業務で有用な塩感受性テストはまだ明らかにされていない。最も幅広く使用されている代替塩感受性テストはフロセマイドをベースにした入院患者急性プロトコールで、それは潜在的に混乱因子を含んでおり、劣ったテスト-再テスト反復性と塩感受性者を同定するために疑問のある精度を示している。他の代替塩感受性テストが述べられてきたが、限られた確認テストだけで行われてきた。フロセマイドをベースにしたプロトコールまたは他のどのような種類のプロトコールによってではなく好ましい食事テスト・プロトコールで判断される塩感受性は心血管疾患までの時間についての独立した危険因子であることを示してきた。どのような種類のテスト・プロトコールによって判断された塩感受性が心血管疾患を原因とする死亡または他の死因による死亡までの時間についての独立した危険因子であるかどうかを決定することが残っている。最後に、粗末な塩感受性テストが容易に行われ直ちに臨床業務に導入されるように開発されたとしても、そのようなテストの日常使用が臨床結果に有益な効果を持っているかどうかを決定するために先見性のある研究が必要である。