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ナトリウム摂取量と慢性腎臓疾患

Sodium Intake and Chronic Kidney Disease
By Silvio Borrelli, Michele Provenzano, Ida Gagliardi, Michael Ashour, Maria Elena Liberti, Luca De Nicola, Giuseppe Conte, Carlo Garofalo, and Michele Andreucci

Int J Mol Sci 2020;21:4744     2020.07 03

 

要約

 慢性腎臓疾患(CKD)患者で、高い血圧はしばしば見られる所見で、伝統的にナトリウム感受性の直接的な結果と考えられる。事実、血液量増加を引き起こすナトリウムと体液貯留はCKDで高血圧発症をもたらす。他方、非透析CKD患者で塩制限は血圧を下げ、非透析CKD患者のレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系阻止剤の抗タンパク尿効果を強化する。しかし、心臓・腎臓予後に及ぼす低塩食の長期的な効果に関する研究は矛盾した結果を示した。ネガティブな結果は測定偏向(スポット尿およびまたは1回の測定)、逆疫学、および食事療法への不十分な順守の結果であるかもしれなかった。腎疾患の最終段階では、ナトリウム摂取量を排泄するために透析だけが効果的な手段として残っている。ナトリウム摂取量と排泄量の不一致は体液過剰、高血圧、左心室肥大を引き起こし、最終段階の腎疾患患者の予後を悪くする。このことは、これらの患者におけるこの測定の有効性を証明する試験の欠如に関係なく、これらの患者に低塩食の実行を強要する。したがって、低塩食は全てのCKD段階で体液過剰と高血圧を修正する合理的で基本的な手段である。低塩食の実行は利尿剤治療と同様に、自由行動下の血圧測定によって評価される高血圧の量の状態と真の負担を考慮して個別化する必要がある。

 

1.      はじめに

ナトリウムは体液収支を維持する上で重要なミネラルであるだけでなく、その経済的、宗教的、象徴的な重要性のために世界の歴史において重要な役割を果たしてきた。塩が有益な物質であると言う概念は非常に根付いていたので、低ナトリウム摂取量と血圧低下との患者に関する初期の研究は1948年に溯る。国際社会が高血圧の病態生理学における塩摂取量の役割を認識したのはほぼ40年後のことであった。WHOによると、ナトリウム摂取量(5.8 gの塩に相当)2.3 g/d以下に制限することは公衆衛生を改善する最もコスト効果のある手段の1つである。蓄積された証拠はナトリウム消費量の増加が血圧上昇に寄与し、したがって、心血管疾患の危険率を増加させることを強調している。しかし、最近の研究は健康な一般集団における低塩食の真の利点について幾つかの懸念を提起した。特に、18ヶ国100,000人以上の大規模コホート研究で、高塩消費量の役割は血圧値上昇と悪い心血管疾患結果と関係していた。同時に、3 g未満のナトリウム摂取量はより高い心血管疾患危険率を予測し、U字型の死亡率曲線を書くことが明らかになった。これらの結果は他の研究者達によっても得られてきたが、これらの研究は、逆因果関係(例えば、患者は病気や栄養失調が多いため、塩摂取量が少ない)、共線性(例えば、ナトリウム摂取量が少ないとタンパク質エネルギー摂取量が少ないことに関連している可能性がある)、および個々の塩摂取量を評価する単純明快に使われる偏向した方法(例えば、1回のスポット尿試料)によって方法論的に間違っている。

 CKD患者で、高血圧は頻繁に似られる所見であり、これは伝統的にナトリウム感受性の直接的な結果と考えられる。したがって、低塩食はCKDで高血圧治療の基礎と広く考えられている。

 本レビューで、我々はナトリウム調節における腎臓の重要性、初期のCKD段階から末期の腎疾患までの高血圧とナトリウム摂取量の関係、および非透析CKDと末期腎臓疾患集団で塩制限の利点に関する入手可能な証拠について説明する。

 

2.      低塩食の順守:CKD患者の定義と評価

3.      CKDにおける高血圧と塩

4.      ナトリウム毒性の代替機構

5.      非透析CKDにおける低塩食の臨床効果

6.      末期腎臓疾患における塩摂取量

以上は省略

 

7.      結論

ナトリウムが血圧値に及ぼす悪影響はCKD患者では、体液過剰と心臓、血管系、腎臓への直接的な毒性の結果として増幅される。非透析CKD患者では、低塩食は血圧値に関係なくレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系阻止剤の抗タンパク尿作用を増強することによりタンパク尿を低下させる高血圧管理に有益である。これらの効果が心臓・腎臓の予後を改善できるかどうかはまだ不明である。それにもかかわらず、ナトリウム摂取量と排泄量との間の一般的なミスマッチのために、塩制限は末期腎臓疾患においてより重要であると想定され、それは高血圧、左心室肥大、および高い心血管疾患危険率につながる。したがって、塩摂取量低減は高血圧のCKD患者で初期から末期腎臓疾患まで非常に重要である。しかし、それは不十分に、およびまたは不十分に適用されたままである。したがって、長期的に低塩食の順守を改善するにはさらに多くの研究が必要である。