戻る

塩と心臓

Salt and the Heart

By Franz H. Messerli and Louis Hofstetter

European Heart Journal, Vol.38   2017.05.21

 

アメリカ心臓協会のトマト・スープ関門またはお金は臭わない

 

 メンテらの論文に関係して2016年に行った科学的研究に明白な反対をアメリカ心臓協会は表明してこなかった:本研究の結果は確実ではない’…‘欠陥のある研究’…‘どのように食べようとするかについて自分に伝えるために素の研究を使うべきでないアメリカ心臓協会による辛辣な文章の幾つかを読んでみた。そう言うことでアメリカ心臓協会はエビデンスに勝つために機関の優位な立場を使うことを試みようと、科学に対して前例のない立場を取った。

 減塩は必ずしも何時も有益ではないが、塩摂取量があまりにも低くなりすぎると、有害になることもあることを反対の立場の研究は示唆した。減塩が心疾患、脳卒中、あるいは死亡の危険率を下げたのは100,000人の研究集団中すなわち、高血圧患者の約10%に過ぎなかった。注目すべきことに、これは、キャンベル・スープ会社の数多くの製品を‘心臓の健康に良い’として無差別に是認するために何年間も手数料を取ってきた正に同じアメリカ心臓協会である。それら製品は、アメリカ心臓協会事態が心臓の健康に良い食事として勧めているよりも多くに塩を含んでいる。

彼等のウェブサイトで、ほとんどの成人に3.8 g/g以下の塩摂取量と一回の給餌で0.36 gを含む低塩食またはそれ以下の塩摂取量をアメリカ心臓協会は勧めている。アメリカ心臓協会の推奨値とは遠く離れて、アメリカ心臓協会の承認を得たキャンベルの製品は1回給餌当たり約1 g、あるいは1食当たり1.5 – 2.5 gの塩を含んでいるが、キャンベルの通常スープの1回給餌のカロリーはわずかに90カロリーである。キャンベル・スープだけで一日の総カロリー摂取量に替えてアメリカ心臓協会の‘心臓の健康に良い’食事に厳密に従うとすれば、塩摂取量は約36 g/dまでになる!

現在、平均的なヨーロッパ人は約7.1 – 13.2 g/dの塩を摂取している。前述のアメリカ心臓協会のトマト・スープ推定値にもかかわらず、この量はまだ過剰として受け容れられており、ヨーロッパ委員会は減塩のEU枠組みを作成した。海を挟んだアメリカ人は平均8.9 g/dの塩を摂取しており、アメリカで心疾患の劇的な低下にもかかわらず過去数十年間、摂取量は変わっていない。アンディ・ウォーホルが1962年に不朽にしたキャンベルの美味しい缶詰スープは、アメリカ心臓協会に‘心臓の健康に良い’製品と言われたり、言われなかったりして半世紀以上も多くのアメリカ人で高い塩摂取量を維持するのに役立ってきた。

アメリカ心臓協会の善意の勧告と減塩に関する同じように善意のEU枠組みは、塩が血圧を上昇させ、それにより高血圧は心血管疾患を発症させるという幾つかの基礎のしっかりした観察を信頼している。メンテらの研究でも、塩摂取量と血圧との間には直線関係があった。しかし、血圧が、しばしば必ずしも心血管疾患の危険性を反映していない代理終点であるままであるので、注意が必要である。したがって、高血圧であるかどうか、塩摂取量が過剰か、中程度か、過少かに関係なく、血圧を下げる目的の減塩は心臓発作と脳卒中の危険率を低下させる結果となるというアメリカ心臓協会の仮説はぐらぐらした地上にある。

メンテらによると、減塩は高い血圧の高血圧患者では有益であるように思える。しかし、正常血圧者では減塩があまりに厳しくなると、減塩はほとんど効果なく、有害でさえあるかもしれない。

最近の論説と同様に、通常の塩摂取量と低い塩摂取量(5.8 g/d以下)UまたはJ字型曲線のエビデンスがない総死亡との間の直線関係の結果について我々は疑問を呈する。低塩摂取量と中程度塩摂取量との間の死亡率に有意な差を示すことに研究は失敗したからである。慢性腎臓疾患患者で別の最近の研究はアメリカ心臓協会の勧告値よりずっと多い7.4 – 9.1 g/dという中程度塩摂取量で心血管疾患の最低値を明らかにした。さらに、24時間尿収集を使った2つの研究は、中程度塩摂取量と比較して低塩摂取量が有益であると言うエビデンスを提供できなかった。注目すべきは、低塩摂取量が交感神経系とレニンーアンジオテンシンーアルドステロン・カスケードを刺激することが述べられてきた。それぞれは両方とも心血管疾患と死亡の増加と関係しているかもしれない。

中程度塩摂取量と比較して低塩摂取量が心血管疾患の危険率を低下させるエビデンスを観察研究が提供できない限り、人口レベルの減塩は公衆衛生で優先されるべきではない。高塩摂取量(12.7 g/d以上)の集団で減塩に焦点を置くことはもっと効果があるだろう。したがって、減塩と共に薬物ではない以上にしばしば真実であるとして;‘あらゆる情況に当てはまる’と言うことに注意する必要がある。しかし、科学に共通であるがそのような両義性はアメリカ心臓協会には受け容れられないように思え、その前会長は次のように述べた:‘そしてそれは何故か、この信頼されている機関の会長として、過剰な塩摂取量が受け容れられないほど危険であることについての混乱を払拭させることが私の義務であると思っている。我々が社会に負っていることは最も科学的に健全な食事アドバイスを用意することである。’

 我々の考え方では、アメリカ心臓協会は以下のことを社会に負っている

1.キャンベルのトマト・スープのように多くの塩を含んでいる心臓の健康に良い製品として承認するための資金を受け取らない。

2.正常血圧者の最適塩摂取量に関して科学的なコンセンサスはないことを知っておくこと、そして

3.この‘混乱’にもかかわらず、高血圧者であるとき、現在では‘最も科学的に健全な食事アドバイス’は減塩である。

 多分、アメリカ心臓協会はH. L. メンケンの見解を心に銘記すべきである:‘全ての複雑な問題には、明確で、簡単で、間違った答えがある。’