塩、炎症、IL-17そして高血圧
Salt, Inflammation, IL-17 and Hypertension
By Ulrich O Wenzel, Marlies Bode, Christian Kurts, and Heimo Ehmke
Br J Pharmacol 2019 Jun; 176:1853-1863
要約
伝統的に動脈高血圧とその後の末端器官の損傷は血行力学的要因に起因しているが、炎症もこの疾患の有害な結果に貢献していることを示すエビデンスが増えている。免疫系は外来微生物の侵入を防ぎ、損傷後の組織治癒を促進するように進化してきた。しかし、免疫系が前高血圧のような内部損傷に過剰反応したとき、この有益な活動は巻き添え損傷を伴う。過去数年間で、重要な発見が高血圧研究に革命をもたらした。第1に、2007年に環境順応を助ける免疫は高血圧の病因に含まれていることを将来性のある論文は示した。第2に、皮膚の塩貯蔵と心臓血管生理学への塩の影響が発見された。第3に、塩はCD4+細胞をTH17細胞への分化を促進させることが発見された後で、塩は生得と適応した免疫系の幾つかの細胞を直接的に変化させ、自己免疫疾患を悪化させるが、抗菌防御を改善させるかもしれないことが示された。ここに我々は塩の複数の役割と動脈高血圧と自己免疫疾患における免疫を理解するために枠組みとして高血圧で塩による免疫細胞活性化の経路をレビューする。
はじめに
高血圧は世界中で10億人以上を苦しめている。正常血圧と高血圧との間の境界は恣意的で、最近の収縮期血圧介入試験は、高血圧人口の厳密な血圧管理は心血管疾患をかなり改善できることを示した。したがって、「成人の高血圧予防、検出、評価そして管理」の最新の更新で、高血圧1ステージの境界は130mmHgへ10mmHg下げられた。その結果、高血圧患者は劇的に増加し、例えば、アメリカ合衆国では一夜にしてアメリカ人口の32%から43%に増加した。この高発症率と数十年間の研究にもかかわらず、ほとんどの場合の高血圧の原因は明らかにされないままであり、血圧は一部の高血圧患者の最大50%で管理されないままである。一方、高血圧と高血圧性の末梢器官損傷は血圧依存性と非依存性機構を通して媒介される。ここ数年間にわたって、3つの重要な発見が高血圧研究に革命を起こした。第1に、2007年にデビット・ハリソンのグループによる将来性のある論文は、適応免疫が高血圧病因の鍵として貢献していることを示した。第2に、ティッツェと同僚達は皮膚の非浸透性ナトリウム貯蔵と心臓血管生理学への塩の影響を示した。第3に、結果として自己免疫疾患を悪化させるが抗菌防御を改善させる適応免疫系と生得免疫で、塩は細胞の分極と活性化を直接的に変えることが確立された。
動脈高血圧における免疫の役割は他の所で包括的に
レビューされてきた。以下に我々は自己免疫疾患と高血圧における塩、IL-17そして炎症性応答の協力的な役割に焦点を置く。
適応免疫
IL-17
生得免疫と高血圧
補体
以上、省略
塩論争は塩の歴史によって引き起こされたか?
現在の過剰な塩摂取量は高血圧や心血管疾患の目標器官損傷を含めて深刻な健康への影響をもたらすことは疑いない。高塩摂取量を血管疾患に関係付ける幾つかの潜在的な病態生理学的機構は特徴付けられ、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系とROS(活性酸素種)の変化を含んでいる。塩が血圧を上昇させる主な効果は体液量増加によると考えられている。有名な黄帝は紀元前約3000年に既に書いた、「多すぎる塩を食品中に使えば、脈が強くなり、涙が出て顔色を変える。」塩と高血圧との間のこの関係を仲介するのに腎臓が重要であった、と後にガイトンは仮説を立てた。体液量ホメオスタシスとナトリウム再吸収を制御する腎臓の機能を通して、腎臓は正常血圧を維持できる、と彼は主張した。これは圧ナトリウム利尿によるためで、持続性高血圧は腎臓がナトリウムを適切に排泄できないことを反映している。それでもまだ最適塩摂取量と減塩の重要性について活発な論争がある。その様な感情的な議論は科学的な疑問ではからり珍しい。塩問題を取り巻く感情的なエネルギーは、過去数千年にわたるこの物質の文化的、歴史的重要性から来ているのだろうか?
塩は幾つかの社会では純粋性、不朽、さらには不死の象徴として考えられてきた。過去においては、医者達は塩の潜在的な治療効果を認識しており、塩の浸透圧やイオン強度から来る静菌性に帰すると考えていた。健康や健康的なについてのラテン語「サルテム」や「サルブリス」は「サル」(塩)から実際に来ている。多分、フランス人が「サルート」という言葉でお互いに挨拶するとき、彼等はこの言葉が塩から来ていることを今日でも無意識のうちに気付く。サラダという言葉もローマの料理で緑色植物や野菜の塩漬けに戻る。塩はまた、活力と権力の象徴でもあった。これは例えば、ウィリアム・シェクスピアーの「ウィンザーの陽気な女房達」の声明を説明している:「我々は正義であるが、我々の中には若さの塩がある。」ドイツのババリアでは、結婚の日に花嫁の多産を願って新婦のベッドに何某かの塩を撒く。塩「白金」は高い政治の目標であった。塩の高い商品価値は消費者に塩を運ぶために多大の努力が払われたという事実に反映されている。古代ローマは塩の役人によって維持された特別な塩通り(サラリア街道)を持っていた。ハンザ同盟は北ヨーロッパで主として魚の取引で富と共に優れた取引場所を持っていた。魚は保存のために塩漬けにされた。したがって、ハンザ同盟は片方でバルト海と北海のニシンを入手でき、他方で北ドイツのリューネブルグ製塩所から高品質の塩を入手できた。代替方法、特に冷凍の導入で、塩はもはや食品保存で重要ではなくなった。今日、塩は安く生産でき、高級品と貴重品としての役割を完全に失った。それにもかかわらず、伝統的に歴史的な行動を取ることによって、近代の人々は生理的必要量よりもはるかに多くの塩を摂取している。
新しい塩の概念
塩で誘引される免疫系の変化
塩と微生物叢
塩と皮膚
塩と感染
皮膚は腎機能に影響を及ぼすか?
進化的観点
以上省略。
要約と結論
利用できる全てのエビデンスを合わせると、高血圧と高血圧性の末梢器官損傷についての機構として我々に次のような連鎖を提案している(図)。皮膚は単核細胞由来のVEGF-C依存性リンパ管生成による何某かの塩量を緩衝する能力を持っている。アンジオテンシンⅡや高塩摂取量都の組合せたアルドステロンのような前高血圧因子の小さな増加が生得免疫と適応免疫を活性化する。Na+で誘引される高張性は生得の単核細胞/マクロファージ、樹枝状性細胞、そして適応免疫細胞を活性化する。TとB細胞やγδT細胞も活性化され、心臓、大動脈、腎臓に移動する。これらの細胞は局部炎症、腎臓のナトリウム再吸収そして大動脈や抵抗性器官の硬化を引き起こす。さらに、高塩摂取量は変化した代謝と腎臓に移動し塩貯蔵に影響を及ぼすかもしれないTH17細胞の増加した生成の結果により消化管のLactobacillus murinusの調整を鈍らせる。高血圧の交感神経活性の重要性とニューロン発火におけるNa+交換の重要性を考えると、腸内Na+は血圧に及ぼすCNSの免疫依存効果にも影響を及ぼすかもしれないことが最もらしく思える。
高血圧治療の主な理由は末梢器官損傷を制限するとことである。血圧低下はこの目標に達するために明らかに重要であり、研究界は高血圧や器官損傷を伴う局部炎症を防ぐ戦略も開発しなければならない。免疫系は前と同様に坑炎症機能を持っているので、免疫系の非特異的阻害は動脈高血圧に好ましくない影響を及ぼす結果になるかもしれない。対照的に、明らかにされた経路の特定な目標化は、高血圧性障害から心臓、脳、腎臓そして血管の保護をかなり改善するかもしれない。
図 塩と高血圧。皮膚は単核細胞由来のVEGF-C依存性リンパ管生成による何某かの塩量を緩衝する能力を持っている。塩貯蔵をできないこと、または飽和はNa+過負荷の結果である。高塩摂取量はLactobacillus murinusの調整を鈍らせ、腎臓に移動したTH17細胞の生成を増加させ、塩貯蔵や機能不全を引き起こす心血管系における結果により消化管のメタボロームを変化させる。心臓と大動脈で炎症、硬化、肥大を引き起こさせる。Na+高張性は生得免疫と適応免疫系の細胞に影響を及ぼすことによって前炎症性環境を作り出す。レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系の活性化と組合わさって、これらの変化は動脈高血圧の結果となる。さらに、インフラマソームと補体活性化は直接的な損傷を引き起こし、または適応免疫に微妙な影響を及ぼすかもしれない。
したがって、本レビューの目標は塩、炎症そして心血管研究における発見と驚きの「熱い領域」のいくつかを強調するだけでなく、塩、生得免疫と適応免疫そして動脈高血圧との間の複雑な関係の認識をさらに高めることである。