ナトリウム・イオン電池性能の障害:注文が多すぎることが悪い場合
Obstacles to Sodium-Ion Battery Performance: When Too Much Order Is a Bad Thing
By Philip Koth
The Advanced Photon Source
https://www.ans.anl.gov/より
Argonne National Laboratory 2020.11.19
充電式蓄電池の基本原理は陽極と陰極との間のイオン(電気的に荷電された原子または分子)の可逆的移動である。最も普及している充電式蓄電池はリチウム・イオン(Li-ion)電池で、1970年代に開発が始められた。ほぼ同時に、ナトリウム・イオン電池も研究されたが、リチウム・タイプが次第に優勢となった。ナトリウム・イオン(Na-ion)電池への関心は最近再び持たれてきた。それらはより安く、より安全で、リチウム・イオン電池よりも戦略的に重要な元素にあまり依存しないからである。両方の蓄電池性能は、充電と放電中にリチウム(またはナトリウム)イオンが如何に効率的に正に荷電した陽極に入ったり、出たりするかによって影響される。この工程により大きな洞察を得るために、研究者達は、短い飛程順のイオンを観察するために層状の酸化物バナジウム化合物に詰め込まれたナトリウム・イオンを徹底的に調べた。調査が困難であることが証明されている領域である。短い飛程イオン順は米国エネルギー省のAdvanced Photon Source(APS)で行われた拡散X線散乱を使って様々な温度で観察され、コーネル大学のコーネル高エネルギーシンクロトロン源(CHESS)施設の測定で補完された。この研究チームで開発されNature Materials誌で述べられた先駆的X線法は充電式蓄電池性能を改善するために新しい戦略に導いた。より一般的に、これらのX線技術は結晶性化合物内の構造的な順序を研究するために全く新しい手段を提供する。
ナトリウム・イオン電池の陽極は数多くの微小な層で詰まっている。電池が装置にエネルギーを与えるとき(放電)、ナトリウム・イオンは電池の陰極から陽極へ移動し、そこでイオンはインターカレーションと呼ばれる工程で陽極の層に移動する。前の研究は、陽極の層内の高い順序のイオン配列はイオンが素早く出入りする動きを困難にし、電池性能を低下させる。
X線回折は陽極内の長飛翔イオン順を調べるために高範囲に使われた。ブラッグ回折としても知られている標準的なX線回折はある範囲の角度で結晶性化合物のX線ビームの反射である。得られた結果のブラッグ・パターンの鋭いピークは結晶構造の理論的に推理するために使われる。ブラッグ・ピークの解析は長飛翔結晶秩序を良く決定できるが、短飛翔秩序を検出するには劣る。これは大きな欠点である。総合的な性能は陽極内の長飛翔と短飛翔両方のイオン順の最適化に依存しているからである。短飛翔イオン順を明らかにするために、アルゴンヌ国立研究所のこの研究で研究者達は拡散X線散乱技術を始めた。その技術はブラッグ・ピーク間の散乱強度の詳細な測定を要求する。
散漫散乱は格子空孔または不整列原子のような結晶格子内のひずみから生ずる。名称が意味しているように、散漫散乱は角度の連続分布にわたって散乱したX線を含んでおり、それはブラッグの回折に関連した通常の反射と比較してでたらめのように見える。2つの現象を比較すると、ブラッグの回折は結晶性物質の全体的な格子構造を明らかにするのに優れており、散漫散乱はナノメーター・レベルでスパン間の原子配列を表している。
短飛翔順を表す独特の値にもかかわらず、散漫散乱の潜在能力を開発することは何時も挑戦的である。しかし、幾つかの最近の発展は、研究チームが前例のない品質のデータを首尾良く作り出させた。第一に、APSの(アルゴンヌの科学局ユーザー施設)X線科学部磁気性材料グループの6-ID-DビームラインとCHESS A2ビームラインで改良された高速エリアX線検出器と共に高エネルギー・サイクロトロンX線を採用することにより、十分な実験データが合理的な時間 (20分) 内で集められた。さらに、研究者達は異なったイオンの位置を示す確率図として散漫散乱を解釈する溜めに必要なアルゴリズムを開発した。最終的に、彼等は実験によって集められた大量の散漫散乱データを処理するために必要な複雑な計算を行うために必要な計算資源を得た。
これらの道具を武器として、研究チームはナトリウム・イオンで部分的に満たされた(間に差し込まれた)酸化バナジウム(V2O5)の単結晶を厳密に調べた。同じ方法がリチウム・イオンに対しても適用される。実世界の陽極内のイオン順は温度依存であるので、散漫散乱測定値は室温からほぼ絶対0度までの温度範囲で得られた。散漫散乱は、短飛翔イオン順がジグザグ配置に従っていることを示した。結局、ナトリウム・イオンが凍結され、結晶内を拡散できなくなるまで、温度を下げることはイオン順の範囲を広げた。
層状材料内のイオンの短飛翔順を明らかにすることは、イオンの移動を整理し、増加させることを乱すための戦略を開発するのに重要である。希望的には、その様な戦略は電池性能を改善するために実際のリチウム・イオン陽極とナトリウム・イオン陽極に適用される。層状材料を超えて、この研究で示された散漫散乱技術は様々な混乱した結晶性化合物を調査するためにも使える。