血圧の塩感受性:個体特性に合わせて抗高血圧治療をするときか?
Salt-Sensitivity of Blood Pressure: Is It Time to Customize the Antihypertensive Therapy?
By Lanfranco D’Elia
Am J Hypertens 2018;31:772-773 10 April 2018
血圧の塩感受性は塩摂取量の変化に対する血圧応答の個人間の差と関連している。個人の大多数は塩摂取量の低下に伴って血圧を下げ(訳者注:この部分は間違いで集団の1/3程度しか下がらないと言われている)、少数の被験者は応答しないかあるいはいくらか血圧を上昇させる。事実、塩摂取量の変化に対する血圧応答はガウス分布(訳者注:正規分布)様に連続的に変化するように振る舞い、如何なる明確な部分母集団も検出できない。それにもかかわらず、これらの応答に基づいて個人は特別な手法と“任意の”区別を使ってしばしば塩感受性または塩抵抗性のいずれかに分類される。注目すべきことでは血圧の塩感受性は幾つかの心臓代謝危険因子と関係しており、それらの中には過剰な体重、糖尿病や代謝症候群、そして器官損傷の高い危険率や心血管疾患さえもある。
本誌で最近発表された論文で、キ(Qi)と共著者は、塩感受性成人高血圧患者と正常血圧者で抗高血圧剤の有効性を異なるクラスを比較したネットワークのメタアナリシスの結果を報告した。主な結果はカルシウム拮抗剤と利尿剤との組み合わせの大きな血圧効果を示し、一方、カルシウム拮抗剤とメトホルミンとの組み合わせは肥満患者で一番有効であった。クロニジンは低塩摂取量でより有効であることも結果は示したが、この特別な抗高血圧剤の効果を調査したのはわずか1件の研究であった。
この研究の限界は血圧の塩感受性を評価するために使われた異なった方法で明らかにされた。別の限界はランダム化比較試験とランダム化されてない比較試験の両方の解析に含まれており、それらの大多数はカルシウム拮抗剤の使用に基づいていた。結局、追跡研究の期間、試料の大きさ、そして調査中の抗高血圧剤の異なった投与量や形態に関して異なった研究の特性にある大きな異質性であった。
研究の興味深い結果は高塩摂取量中に明らかなナトリウム誘因による血圧低下の抑制であった。この傾向は塩摂取量と血圧値とのポジティブな関係と、抗高血圧剤治療をしている患者で器官損傷に及ぼす塩摂取量低下の有益な効果の結果に反するように見える。事実、この効果は利尿剤だけでなくカルシウム拮抗剤とACE阻害剤投与でも治療の利尿効果によって説明されるかもしれない。特に、低塩摂取量よりも高塩摂取量中に塩感受性高血圧者でカルシウム・チャンネルの場所に結合する異常なデハイドロピリジンと高い細胞内カルシウム濃度があった。他方、カルシウム拮抗剤投与後に増加した尿中ナトリウム排泄量は血圧の塩感受性とは関係なかったことを他の研究は示した。さらに、多民族の塩感受性被験者に関する研究で、ACE阻害剤とカルシウム・チャンネル拮抗剤について両方で血圧低下は達成され、3民族全てで低塩摂取量の時それは一致して大きかった。
カルシウム拮抗剤とメトホルミンとの組み合わせの高い効果に関して、過剰な体重とインスリン抵抗性とのポジティブな関係と言う明らかなエビデンスと血圧塩感受性に及ぼすその役割とインスリン感受性と体重に及ぼすメトホルミンの好ましい効果についてのためであると、これは予想された。
今の時代で個体特性に合わせた治療に調和させ、塩感受性者の高い心血管危険率を考慮して、この研究は基本的な話題を強調している。
もちろん、考えられるところでは塩感受性者の高血圧治療の第一線は5 g/d以下に減塩することである。その上世界中のほとんどの諸国で習慣的な平均塩摂取量は科学的エビデンスを基礎として決められた推奨されている十分な摂取量を越えている。しかし、血圧の塩感受性の原因であるメカニズムが完全に明らかにされていないので、塩感受性患者についての特別な治療法はまだない。
これらの結果から、何らかの決定的な結論に到達しようと試みることは危険である。血圧変化、器官損傷、心血管危険率の点から塩感受性に関連して、高品質の調査が異なったクラスの効果や抗高血圧治療の投薬に関して必要とされる。この目的を達成するために、将来の研究を設計するとき血圧の塩感受性調査用の適正で標準化されたテストが勧められる。